注目企業の中の人によるコラム
今回は、Oisixの商品改善について、オイシックス・ラ・大地株式会社でアートディレクターを務める戸田俊作さんに解説いただきました。
お月見まんじゅうにうさ耳と台座を付けて売ったら5000個がわずか1週間で完売したという事例です。

こんにちは。オイシックス・ラ・大地株式会社、アートディレクターの戸田俊作です。日頃からOisixで取り扱う商品やサイト自体など、自社サービスのクリエイティブコントロールやディレクションに携わっています。今回は、2018年に発売した「うさぎのお月見まんじゅうセット」の成功事例をご紹介します。

“お客さま離れ”の課題をクリアするために「シーズンイベント」に着目

Oisixは1000軒以上の優良生産者が作った野菜やフルーツ、魚、肉、牛乳など、厳選した食材を販売するネットスーパー。
現在19万人のお客さまにご利用いただいています。

Oisixは、入会してから時間の経過とともにサービスを利用しなくなってしまう “お客さま離れ”という課題を抱えていました。

「定期的にお客さまにOisixの商品を購入していただきたい」

そこで目をつけたのが、毎月のシーズンイベント。クリスマスやお正月のような行事に合わせて商品を企画することで定期的にお客さまの関心を集め、購入意欲の維持と商品の販売促進につなげたいと考えました。

シーズンイベントに関連した商品として、2018年に特に力を入れたのが、十五夜に合わせて販売した「お月見まんじゅう」。

実は2017年にもお月見まんじゅうを企画しましたが、500個の販売目標に対して147個しか売れず、お客さまの反応もあまり良いものではありませんでした。

2017年のお月見まんじゅう

2018年は「お月見まんじゅうに何らかの付加価値をつけて昨年の10倍の目標5000個を販売する」というチャレンジングな目標を掲げ、企画をスタートしたのです。

“体験”という価値提案。誰かに自慢したくなる商品を目指して

アートディレクションの方向性を決める際、EC事業部から提示されたのが「大人が子どもと一緒に楽しめる商品」ということでした。

2018年の夏には、夏休みに合わせて子どもと大人が一緒に作るレモネードのキットを販売し、良い反応を得られていました。

レモネードキット

そういったラーニングを経ての今回。EC事業部のオーダーを踏まえたうえでもう少しターゲットの裾野を広げ、「日本の行事を楽しむという“体験価値”を提案し、なおかつその体験を誰かにシェアしたくなる」そんな心踊る商品を目指しました。

おまんじゅうをうさぎに見立てて、台座で十五夜の舞台を演出!

ここからは、決まったコンセプトに従って実際にどんなものをどのように作ったかという具体的なお話です。

まず、企画の段階でおまんじゅうの仕様だけ決まっていました。それは、白いおまんじゅうに焼印で“ウサギの目”だけがついているもの。

仕様に沿ったうえで、十五夜の夜、お客さまにどんな体験をしてほしいか、どんなふうに周りに自慢にしてほしいか……お客さまに“してほしいアクション”から逆算して何を作るかを考えていきました。

そして完成したのがこちら。

2018年のお月見まんじゅうセット

おまんじゅうに“うさ耳”を刺してうさぎに見立て、それをステージに飾る、おまんじゅうと台座のセットです。

制作するうえでポイントにしたのが「スピード感」、「学びも提供すること」、「サイトデザイン」、「ターゲットのセグメンテーション」という4点。ひとつずつ解説していきます。

ポイント1:スピード感

Oisixでは毎週20の売り場を更新しており、仕事のサイクルが早いためひとつひとつのプロジェクトでスピード感が求められます。

このときは初回のEC事業部との打ち合わせでコンセプトを決めてからその場で僕がイメージを手描きし、メンバーに共有しました。さらに、台座のカッティングが対応可能か、すぐに印刷会社に電話をして手描きのイメージを共有すると、翌日にはモックを持ってきてくれたんです。企画から納品までわずか2ヶ月弱というスピード感でした。その中でも、台座はテープを使わずにスリットに差し込むだけで組み立てられる仕様にしたり、お客さまがストレスなく制作を楽しめるように配慮しました。

手描きスケッチ

ポイント2:学びも提供すること

お月見まんじゅうを飾ることを楽しんでもらうだけでなく、食育という観点でお月見という日本の行事を学んでもらえるよう、台座に付属する紙を満月の夜がひと目でわかるお月さまカレンダーにしました。

ポイント3:サイトデザイン

お月見まんじゅうセットの販売開始に合わせて、OisixのECサイト全体で2018年は9月24日がお月見(十五夜)であることを宣伝しました。子どもと親が一緒にお月見まんじゅうセットを作っているビジュアルも展開。サイト内を“お月見一色”にしました。その時に気を付けたのは、お客さまにとって必要な情報だけを載せるということ。Oisixを利用しているお客さまは夫婦共働きの忙しい方が多いので、通勤中などの隙間時間でサイトを閲覧します。ページを一目見てお月見まんじゅうセットの楽しみ方が伝わるよう情報を精査して、ビジュアルとしても文字としても、必要の無いコミュニケーションは徹底的に省きました。

当時のサイトデザイン

ポイント4:ターゲットのセグメンテーション

お月見まんじゅうセットのメインターゲットはお子さんがいるご家庭ですが、そこだけにフォーカスしすぎるとデザインはポップで可愛らしいものになり、逆に他の層のお客さまが遠ざかってしまうという危険性があります。できるだけ多くのお客さまに受け入れてもらえるように、ターゲットのセグメントは絞りすぎず、子どもっぽすぎず、かつ大人っぽすぎないよう、イラストのテイストにはかなり気を付けました。

5000個のお月見まんじゅうが1週間で完売!

こうして完成したお月見まんじゅうセット。発売した結果、前年比33倍の販売を達成しました!(昨年注力しなさすぎた、、ということもありますが・・・

お菓子というジャンルで短時間で5000個売れたことは過去にも前例がなく、当初からかなりチャレンジングな設定でしたが、私たちの予想を上回って、その魅力が多くの人に届いたということ。
お客さまからも「来年も買いたい!」といった嬉しい反応があり、SNSで作った作品をアップする人もいました。

まとめ

お月見まんじゅうセットが大ヒットした最大の理由は、「商品だけでなく“体験”を販売した」ということ。

多くのプロジェクトでは「何個売る」、「何万円売る」といった数値上の目標が前提にあって、それを達成するために施策を考えますが、お月見まんじゅうセットは数値を横目でチラ見しつつも、“お客さまにどのような体験を楽しんでほしいか”をチーム全員が本気で考えながら制作しました。そうしたプロジェクトの想いがまっすぐお客さまに届いたという理想的な事例だったと思います。

つい最近、会員のお客さまにインタビューを行ったのですが、食べ物を作る楽しさや食べる楽しさを味わえる体験をOisixに求めている、という事が分かりました。今回の成功体験を活かし、今後もさらに良い商品と素敵な体験をお客さまに提供できるよう、成長を続けていきたいと思います。

ありがとうございました。

オイシックス・ラ・大地はこれからも私達はよい食を作る全国の生産者とご家庭の食卓を繋ぎ、より多くの人が幸せな毎日を送れる食の未来をつくります。

企業サイト:
https://www.oisixradaichi.co.jp/

関連記事