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子どもとしごと ママたちのお仕事復帰ストーリー Vol.9 ゲームデザイナー 高原 佐緒理さん

子どもを育てながら働き続けるクリエイターはどんな出産、産後、復帰を経験してきたか。
さまざまな職種のクリエイターによる「子どもとしごと」の関係をリレーインタビュー!

高原 佐緒理さん
新卒でゲームの制作会社へ入社。以来ゲームデザイナーとして10年間勤め、2009年長男を出産。1年間の育休を経て翌年9月に仕事復帰。親会社への吸収合併、転職を経験し、現在はゲームデザイナー及び社内スタッフのレベルアップの手伝いや、チームのメンター業務に就く。

 

子どもを転職への足かせにはさせない

ゲームデザイナーとして新卒から入った会社ではコンシューマのゲームソフトを作っていたという高原さん。今までゲーム業界一筋で働いてきたその仕事の魅力を尋ねると、「第三者に何をしているのか聞かれたときに『このゲーム作ってるんです』というと誰もが分かってくれます。ワールドワイドで展開されているものだと、そのタイトルを言うだけで外国の方たちも『本当に!?』と驚き喜んでくれるんです。言葉がなくてもつながっていたり伝わったりという感覚がうれしいんですよね」と答えてくれた。

1社目で10年間のキャリアを積み2009年9月に長男を授かった。育休を1年間取得して2010年9月に復帰。年度の途中ということもあったが、そういった消極的な理由でなく、長男を預けたのは無認可保育園(※1)だった。
「まず、家と駅からその保育園が近かったということがあります。それに見学に行った際、先生方とのコミュニケーションがとても円滑だったんです。すごく個人的な意見ですが、私と先生の気が合ったということです。でもそれが一番大切なような気がしました。無認可は確かにお金がかかります。その分、先生方のバックアップがとても厚く、ここに預けなければ仕事復帰をすることはできなかったと、今でもすごく感謝しています」
認可保育園(※2)と違い、先生方と休日に遊びに出かけたり、密に交流したりしていたという高原さん。
「自分の大切な子どもを預けている方たちです。先生のことを知りたいということもありますが、私自身も子どもの好きな先生と仲よくなりたいという思いもあって、クラスのお友だちと一緒に先生を誘って公園に遊びに行ったりもしましたね」

この夏は息子と地域の虫取りイベントに参加したり、学童ではまったプラバンやアイロンビーズをやったりしました

この夏は息子と地域の虫取りイベントに参加したり、学童ではまったプラバンやアイロンビーズをやったりしました

そんな安心して子どもを任せられる頼もしい環境を手に入れ、復帰後も精力的に働くが、勤めていた会社が親会社に吸収され、業界は同じゲーム業界だったものの、図らずも違う会社へと異動することになったそう。
異動先の会社では、ケータイゲーム(ソーシャルゲーム)の開発に携わった。そこでは30人規模のチームで制作し、そこでデザインディレクターというデザインのまとめ役と、各グループの進行管理、制作物の管理などを行っていた。
新しい仕事も順調で、デザインディレクター業務にもやりがいを感じていたのだが、会社が進めていく方向が、自身の思うものと乖離していることを感じて転職を考え始めたのだそう。

1社目から2社目の転職は、異動という形だったが、今度は自主的な転職だ。子どもがいて時短勤務の状況で転職をすることがハードルにならなかったか聞くと
「1社目で働いていた4年目あたりからディレクション業務をしてきて、チームごとに作られたものを一つのクオリティの高い製品にまとめ上げるには橋渡し的な役割が必要だということを感じていました。そして、そのポジションがこの業界で枯渇していることも当事者としてわかっていました。ゲーム制作には一人一人のスキルややる気ももちろん大切ですが、人と人をつなぐこともとても大切なことで、私は橋渡し的役割ができるゲームデザイナーだということを強みに、そこをプッシュしてきたから転職ができたのかもしれません」

デスクワーク時の間食はナッツ類。栄養補給の要になっているそう

デスクワーク時の間食はナッツ類。栄養補給の要になっているそう

3社目となるクリーク・アンド・リバー社には2015年6月に入社した。今は新卒入社した社員への人材育成や実務的な業務指導、社内スタッフのレベルアップの手伝いの他に、メンター的なこともしているのだそう。
「スタッフの『ちょっと行き詰っているかな』というところを感じ取ると話を聞いたりします。『そんなに難しいことじゃないよ』と言ってあげると軽くなってくれているみたいで。そんなとき、自分のしていることが役に立っているのかなと感じます」
そのような仕事が認められ、今年の4月からは社内のクリエイター育成アカデミーの業務にも携わるようになったそう。
「専門学校や美大を卒業したての人や、一度違う仕事を経験したけれど、ゲーム業界を諦めきれないという25、26歳くらいの人が多いですね。専門学校や美大などとも違う、プロフェッショナルが直接教えるというスクールを支える業務です。今は絶賛生徒募集中です!」

 

仕事での充実は、周りの理解や協力があってこそ

高原さんのお子さんは、現在小学1年生。昨年引っ越しもしたが、新たな環境でも人に恵まれ、良い人間関係が築けているという。
「息子が小学校に上がるまでの間に、最初は無認可保育園からスタートし、周りに同じ年の子がいなくなってしまったので4歳児で認可保育園に転園しました。それから息子が小学生になる前に引っ越しも考えていたので、その前に少しでも友だちを作っておいてもらおうと、卒園の数カ月前、通うことになる小学校の学区の保育園に転園しました。転々としてはいますが、いつも周りの人には恵まれています。保育園の先生もそうですが、今まで働いてきた3社に共通して、子どものいる社員に対してとても理解がありました。会社の規約はもちろんですが、一緒に働く周りのスタッフに理解があり、そういう環境で仕事をしてこられたことは本当にありがたいことだと思っています。今の職場のスタッフも、色々あるけどみんな大好き(笑)」
周りの協力があって思うように仕事を続けてこられたというが、それには夫も含まれるという。
「夫も息子の保育園時代には毎日の送りと、帰れるときはできるだけ早く帰ってきて、子どもをお風呂にも入れてくれていました。それに週に1度、平日の夜に私を完全フリーにしてくれる日も作ってくれています。その日は夫が息子の迎えから寝るまでのすべてを担当してくれるので、私は友人と食事をしたり映画を観に行ったり……。私が育休から復帰してからずっと続けてくれています。明日がちょうどその日なのですが、どこに行こうかと今からワクワクしているんです(笑)」

 

楽しんで働いている母の姿を見せたいから

「子どもが中学生になるころ、自分の進路に思いがめぐったとき、『母ちゃんは何ができるの?』と言われたら、パッと答えられる親でありたいなと思っています。子供にはやりたいことを自分で選んで、つかみに行ける人になって欲しいんです。楽しくて好きなことが仕事になるんだよということを私自身で体現してあげたいと思っています。」
そんな思いもあって、これからも「大好きなゲーム業界で働く」という思いからブレることはないが、その関わり方は作り手にこだわらないという。いままでそうして自身のキャリアを築いてきたように、これからも仕事のニーズを肌で感じながら、ゲームデザイナー兼ディレクター兼メンターとして、スタッフの環境をより良くすること。それがスタッフの作品にいい形で反映されればという高原さんの言葉に、たくさんの『ゲーム愛』が感じられた。

(※1)国が定めた認可基準に何らかの要件が足りなかったり、クリアしていても、行政の都合で認可が下りなかったりした保育園を、無認可保育園という。無認可保育園は認可保育園より要件が足りないところとみられがちだが、独自の保育理念を持ち、認可保育園よりきめ細やかなサービスやカリキュラムを持つところもあり、業態はさまざま。
(※2)国の基準で作られた公立の保育園。入園の際は自治体に申し込みをする。

 

一日のスケジュール

5:00 起床 (1時間は自由時間。趣味を楽しんだり終わらない家事を済ませたりする)
6:00 自分の支度と朝食
6:30 家族の朝食や家族の支度
6:50 夫と子ども起床
7:40 小学校へ行く子どもを見送り
8:00 夫と一緒に出発
17:00 退社

やりくりテクニック
夫とgoogleカレンダーでスケジュール管理をしています。夫も私も残業になりそうな日、予定の入った日は、できるだけすぐにカレンダーに入力して息子の迎えや食事などの対応をしています。
19:30 子どもと一緒に帰宅
20:00 夕食
20:30 夫帰宅
21:00 夫と子どもがお風呂
22:00 子どもと一緒に就寝

 

ホッと一息
新しくて唯一無二なものがたくさんある原宿が大好きです。デザインの仕事をしている身としてはとても刺激的で、「ホッと…」ではないですが頼りになる街ですね。最近は増田セバスチャンさんが好きで、『KAWAII MONSTER CAFE』が聖地です。

▼ 他の記事一覧 ▼
Vol.1 ライター 真貝友香さん
Vol.2 テレビ番組ディレクター 木元菜々子さん
Vol.3 イラストレーター にわゆりさん
Vol.4 アートディレクター 渡邉有香さん
Vol.5 Webディレクター 守屋綾希さん
Vol.6 Webプロデューサー 小野梨奈さん
Vol.7 アシスタントディレクター 関口亜希子さん
Vol.8 カメラマン 関戸聡子さん

profile

赤荻 瑞穂

子どもとママに向けて「育つこと」「働くこと」をテーマにした企画、記事、イベントを多く手掛けるフリーランスのライター及びディレクター。
フリーランスで働く女性のためのサイト「Rhythmoon」の編集メンバーでもある。

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