子どもを育てながら働き続けるクリエイターはどんな出産、産後、復帰を経験してきたか。
さまざまな職種のクリエイターによる「子どもとしごと」の関係をリレーインタビュー!

真貝 友香さん
携帯電話向け音楽配信事業会社にてSE、マーケティング職を経た後、妊娠・出産を機にフリーライターに転向し、子育て関連の記事や女性向けインタビューを中心に執筆中。

 

「娘の年齢より1ヵ月後輩」のライター経歴

以前からライターや出版系の会社に勤めていたわけでなく、IT関連企業でマーケティングをしていた真貝さん。仕事も好きだったし会社に対する愛着もあったけれど、「このまま出産をして復帰をした後に、この会社でそのままやりたい仕事をしている自分をイメージすることができなかったんです」と転職のきっかけを話してくれた。ところが、退職するとすぐに妊娠が分かり、そのまま転職をすることもできず、思い描いていた生活がガラッと変わっていくことになったという。

「ライターという仕事を始めたきっかけは、出産後間もないころにママピ(「mamapicks」子育て、育児のニュース&コラムサイト)でライター募集の告知を見てからですね」
いままで頭の中で考えていることをSNSで発信したり、PCや手帳に書き留めてその思いを整理したりと、考えを文章にすることは以前からよくやっていたことだった。以前それらの書き留めていたものを友人の編集者に見せたときに、「このまま続けていたほうがいい」とは言われたものの、その頃はまさか自分がライターになるとは思ってもみなかったそう。

2012年12月に女の子を出産し、夫婦ともに両親は遠方に住んでいるため、子育ての応援を頼める先は身近になかった。「夫もできる限りの協力はしてくれるけど、朝出勤した夫が戻るのは、毎晩子どもが寝付いた後で……」そんなこともあり、頑張りすぎていたのかバランスを崩し、産後に少し鬱のような状態も経験したという。

そんなとき、「きちんとした判断能力がなかったのか(笑)、なにか1点だけは感覚が研ぎ澄まされて引き寄せたのかは今となってはわからないけれど、出産前からちょこちょこと見るようになっていたママピでライター募集の告知を見つけ、まずは話を聞かせてほしいと連絡をしました」
その後、産後わずか3週間で編集長と会い、今まで書き溜めていたものを見てもらい、「やってみよう」と言われ、ライターとしての生活が始まった。

娘さんと行った北欧旅行でのショット
娘さんと行った北欧旅行でのショット

 

フリーランスゆえの厳しい保活時代。
でもライターという仕事には、その経験もプラスに思うことができた

最初のうちは月に1~2本程度の原稿を書くのがやっとだったので、翌年4月から0歳児クラスの保育園に申し込むつもりは全くなかったという。
「平日は私が24時間ワンオペレーションという状態で育児をしなくてはなからなかったので、そんなにたくさんの原稿を書くこともできなくて。でも育児以外の、ほかの何かに頭を使えるということは、ただうれしかったですね」と真貝さん。
その後自宅保育にも限界を感じ1歳児クラスの保育園入園の希望を出したが、この働き方で認可は無理だと役所に言われ、1歳児からの1年間は一時保育を利用した。そして2歳児こそは認可保育園に入園させたかったが、今度はその年齢は保育園の募集人数も少ないために、また入ることができなかった。そんなとき、自治体に認可され自宅で少人数保育を行う「保育ママ」を紹介され、次の1年を過ごしたのだった。
保育ママは「年休」という形で休みが月に1回程度あるため、そこは仕事を入れることができずに調整が必要だったそう。でも、今年の4月から3歳児クラスでようやくお子さんを認可保育園に入園させられることになり、これからますます仕事の時間をきっちり確保することができることになったのはとてもありがたいという。
「フリーランスということで、保育園まで一足飛びにできなかったことは、やっぱりストレスも多かったと思います。けれど、一時保育も保育ママも、私たち家族にとってはそれでよかったと思っているんです。少人数保育の保育ママという環境は、娘にきちんと向き合ってくれる時間も長いので、娘にも合っていたと。だから今となってはどれもいい経験だったと思っています」

 

必要としている誰かの一助のために

「ねりまこども食堂」の代表、金子よしえさんと
「ねりまこども食堂」の代表、金子よしえさんと

お子さんの出産からライター人生が始まったこともあり、今までは妊娠、出産、保活などをテーマに、そのくらいの小さなお子さんを持った人に、テーマを自分なりの角度で見つめ、記事にすることが多かったという。
「きっとこれから、子どもの成長と共に感じることも変化し、それによって記事を書く媒体も変わっていくのかもしれないですね。でもこれからも、妊娠、出産、保活の時期にいる人に向けての記事は書いていきたいと思っているんです」と真貝さん。
「すべての頑張っている母親たちに、目線の高さは同じでありながら、ちょっと違った視点を示すことができたら。常に「誰かが必要としているかもしれない」ということを意識して記事を書いています」

真貝さんが最近「ねりま子ども食堂」について書いた記事『【こども食堂】おばちゃんが300円でお腹いっぱいにしてくれる! “子ども専用”食堂があったかい』が、Facebookで3万シェアされ、その後テレビでも報道されて、その名は全国に広まったという。それも「必要としている人がいるはず」の思いで取材、執筆したが、その思いが大きく跳ねたと感じたそう。その後も子ども食堂のチャリティイベントに行ったりして、取材からはちょうど1年が経つ今、また続編を書いたりとつながりを持てることを喜んでいた。

 

「お子さんは働くママのことをきっと誇りに思ってくれていますよ」

お子さんが1歳児クラスの頃に一時保育を1年利用して、次の1年は保育ママへと移ろうとしていた頃、「ありがとう一時保育」 という内容の記事を書き、それを一時保育の先生に伝えたらとても喜んでくれたそう。そのときに「「お子さんは働くママのことをきっと誇りに思ってくれていますよ」と言ってくれて、先生のその言葉に救われ、とてもありがたかったんです。だから今働いている子育て中のママに、私も同じことを言ってあげたいし、私はライターとして「誰かの一助に」の気持ちで、これからも書いていきたいと思っています」

今まで紹介から仕事につながっているから機会がなくて……と、ライターになって3年半になるが、名刺を作っていないという真貝さん。弱い立場にいる人、がんばって働く母たちに寄り添った視点で書かれる原稿は、確かに「ライター」と書かれた小さな四角い名刺には収まり切らない情報だ。自分という人となりは、記事がすべてであるという表れなのだろう。そんなところに真貝さんの書くことへの信念のようなものを感じることができた。

 

一日のスケジュール

7:00 起床
8:40 保育園へ出発
9:00 登園
9:30 仕事開始
17:00 保育園へお迎え
やりくりテクニック
お迎えの前に炊飯器のスイッチだけ入れておいて、帰宅後はEテレを見せながら、簡単におかずとお味噌汁などを作っています。
17:40 買い物や道草をして帰宅、食事の支度
18:30 食事、その後入浴
22:00 寝かしつけ
24:00 就寝

 

ホッと一息
ノルウェーのお土産で現地友人の勧めで買ったKafe brennerietというエルサルバドル産のコーヒー(左)と、それが美味しかったので伊勢丹で買ってみたSWITCH COFFEEの同じくエルサルバドル産のもの。ちょっと高級品だけど、私は毎日スタバに行ったりもしないので頑張って買いました(笑)。
コーヒーが好きで、仕事に入るスイッチでもあるし、息抜きのスイッチでもありますね。

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