クリーク・アンド・リバー社(以下C&R社)のオンライン・クリエイター・ディビジョン(以下OCD)に所属し、映像制作やYouTubeクリエイターの映像制作・編集をサポートするお仕事をされているフランス人、トーマスさん。

来日や入社のきっかけ、C&R社での働きやすさや、映像制作にかける思いを伺いました。

株式会社クリーク・アンド・リバー社 オンライン・クリエイター・ディビジョン
専門職正社員トーマス(Thomas)

フランス北東部、シャンパンで知られるランス出身。大学卒業後、ワーキングホリデービザで来日。英会話カフェやフレンチレストランでのアルバイトを経験した後、C&R社にアルバイトで入社。

契約社員を経て2018年10月より専門職正社員に。数々の動画制作とYouTubeを使う映像クリエイターのサポートに携わる。

専門教育を受けても仕事がないフランス、公平にチャンスのある日本

──日本でクリエイティブな仕事をしたいと考えている読者も少なくないと思います。トーマスさんが、C&R社で働くことになったきっかけを教えてください。

まったくの偶然でした。大学在学中に旅行して日本を好きになり、卒業後にワーキングホリデービザで来日しました。

アルバイトをしていた英会話カフェのパーティでC&R社の社員と出会い、大学で映像制作の技術を学んだことなどを話したところ、「ちょうど映像の編集ができる人を探している」と。そこでポートフォリオなどを見てもらって面接となり、アルバイトとして働くことが決まりました。

──それは、すごい偶然ですね。日本で映像などのクリエイティブな仕事を探していたわけではなかったのですか。

はい。ちょっとしたアルバイトはともかく、私の専門である映像の仕事が見つかるとは思っていませんでした。

──では、日本でワーキングホリデーを過ごした後、フランスで仕事を見つけようと考えていたのでしょうか。

はい。しかし、フランスで専門職に就くことはとても難しいのです。一般的にその会社に知り合いがいなければ入社は難しく、ある程度の経験がないと雇ってもらえません。

日本のように大学在学中に就職を決めるというシステムがなく、卒業後に家族や友人のつてをたどったり、インターンシップ等で実績をつくったりして就職先を探します。

私の大学は13人のクラスでしたが、現在映像の仕事をしているのは半分くらいです。

仕事の経験が少なくても、専門的に学んだ経歴と作品を見て、公平に面接をしてもらえて仕事に就くことができるのは、日本のいいところだと思います。

自分のセンスと技術を活かして、幅広く力を発揮できる

──なるほど。日本にいると、求人に応募してクリエイティブな仕事を見つけることは普通だと思ってしまいますが、世界中が同じシステムではないのですね。クリーク社に入社後、どんなお仕事をしてきましたか。

入社直後に携わったのは、子ども向け動画のアニメーション制作です。現在は正社員となり、動画コンテンツ制作とYouTubeで活躍するクリエイターのサポートをしています。

動画コンテンツ制作では、ニュース、パブリシティなどさまざまなクライアントから映像制作の依頼があり、私も多種多彩な映像制作を行っています。

また、私の所属するOCDは、YouTube MCN(マルチチャンネルネットワーク)※である「The Online Creators(以下OC)」を運営しています。

YouTubeで活躍するクリエイターがつくった動画を私が編集し、より質の高いものにするサポートも仕事の大きな柱のひとつです。

10代前半でパソコンを持ったときから、ずっとYouTubeが好きでよく見ています。好きなものに仕事として関われるのは本当にうれしいことです。

(注釈)

※YouTube MCN(マルチチャンネルネットワーク)


複数のYouTubeチャンネルと提携し、視聴者の開拓、コンテンツのプログラミング、クリエイターのコラボレーション、デジタル著作権管理、収益化、営業などをサポートする。

C&R社が運営する「The Online Creators(OC)」は日本初のMCNである。

──C&R社での仕事や働く環境はいかがですか。

仕事はとても楽しいです。フランスでは大学在学中に、テレビ局のインターンシップで番組制作の仕事を経験しましたが、そのときは、指示通りに映像編集作業をしているような状態でした。

C&R社では、誰かの指図ではなく自分のセンスで映像制作ができます。クライアントの依頼は、要望が厳しい場合ももちろんあります。しかしその場合もコアのところでは私のクリエイティビティを大切にして作品づくりができています。

OCの仕事でも、クリエイターさんの動画を最高の状態にするために、自分のセンスを活かしきることができます。

動画の制作や編集だけでなく、C&R社が運営するYouTubeチャンネルのコンセプトを考えることにも参加して、幅広く力を発揮することができるのもよい点です。

OCDという部署の雰囲気もとても気に入っています。皆仲がよくて、意見を言いやすい環境です。動画の制作や編集では、私の目から見たら自然でも、日本人の目から見ると違和感があることもあるので、作業途中に他のメンバーから意見を聞くように心がけています。

私自身も、新しいメンバーが来たらリラックスできるように、わからないことは何でも質問してもらえるように考えています。

実をいうと、最初にアルバイトで入社したときには、私が担当したアニメーションの技術を持つ人が他にいなかったこともあって、質問しにくいと感じたのです。

「バカな質問」というのはありませんから、基本的な事柄であっても恥ずかしく思わず、聞きやすい環境は大切だと思います。

ツールを活用して、メールの読み書きも自在に

──それではトーマスさんが、今のOCDのよい雰囲気をつくったともいえますね! フランスとの文化の違いで戸惑うことはありませんか。

フランスにまったくない考え方では「先輩・後輩」というものがありますね。フランスでは、1年目でも10年目でも同じ仕事をしているのならステータスは同じです。上下関係はありません。でもそれは単なる文化の違いですから、日本にはそういう文化があるとわかっていれば特に問題はありません。

私は失礼がないように、どんな人にも「さん」をつけるようにしていますよ。

──「さん」づけは、先輩でも後輩でも自然ですし、丁寧な印象になるので正解だと思います。トーマスさんは日本語が上手ですが、どこで覚えたのでしょう。日本語で仕事をするのは難しくありませんか。

好きなアニメを日本語音声と英語字幕で見て、聞き取る練習は日本に来る前にしていました。でも話すという点ではゼロからのスタートでした。学校では勉強していなくて、いちばん上達したのは、フレンチレストランのウェイターの仕事でした。

そのレストランは全員日本人のスタッフで、ほとんど誰もフランス語を話すことができませんでした。フランス人がウェイターをしていると本格的に見えるということで雇われたようです(笑)。

お客さまから注文をとったり、他のスタッフに必要事項を伝えたりと、仕事をする上で日本語は絶対に必要ですから、わからないながらも使っているうちに、日ごとに新しい言葉を覚えて、どんどん上達しました。

C&R社に入ったときには、かなり話せるようになっていて、コミュニケーションで困ったことはありません。

もちろん、日本人と同じようには話せませんから、わからない言葉や表現に出会ったら質問するようにしています。

──読み書きはいかがですか。メールでのやりとりも問題ないですか。

ひらがなとカタカナは読めますが、漢字は難しすぎて挫折してしまいました。メールを読むときはGoogleの翻訳機能を使っています。

書くときは、漢字変換機能があるので自分で日本語で書くことができます。メールでのやりとりも困ることはありません。たまに漢字の変換は間違えてしまいますが。

これから伸びていく、日本のYouTube文化の発展に貢献したい

──先ほど、YouTubeをずっと見てきたというお話がありましたが、海外のコンテンツも多く鑑賞されているトーマスさんから見て、日本のYouTubeにはどんな印象がありますか。

ヨーロッパやアメリカでは、YouTubeのコンテンツは、スタジオでカメラ3台を駆使して撮影するような、お金をかけたものが主流となりつつあります。

そういう意味で、日本のYouTubeはまだまだ発展途上です。今まさに伸びているところで、チャンスでもあるでしょう。

また、テレビ番組の影響が大きく、テロップを多用したものが好まれるのは日本の特徴だと思います。

海外のYouTube事情に詳しいことから、社内で意見を求められることも多いです。

しかし、海外で成功している事例を挙げて新しい企画を提案しても、「日本では好まれなさそうでリスクが高い」と、従来の日本のテレビ番組に近いテイストのものになってしまうことがあります。そういったときには悔しいと感じます。

──では、今後もYouTubeの仕事には力を入れていきますか?

はい。今OCの事業で私がサポートをしているクリエイターは1名ですが、もっと多くの人のサポートをしていきたいと考えています。

今はまだ、日本のYouTubeは多くの制作費をかけられる状態ではありませんが、その中でも、私が編集をサポートするときには、技術を活かして、可能な限りスタイリッシュで視聴しやすいコンテンツに仕上げていきたいと思います。

それを通して、日本のYouTube文化がより盛り上がり、全体の質が上がることに貢献できればうれしいですね。

そのためには、YouTube以外の動画制作の仕事においても、つねに完璧をめざして、クライアントの想像を上回るようなものを生み出せるように経験を積んでいきたいと思います。

──トーマスさんの映像制作への熱い思いが伝わってきました。このお仕事の魅力はどんなところですか。

毎日新しいことができる可能性にあふれているところです。使いたいエフェクトのために新しい技術を覚えたり、未経験のソフトを使ったり、クライアントやクリエイターから新しい依頼がきたり。

いろいろな新しいことを経験し、未知だったものを身につけて、また新しいことに挑戦していけます。

同僚とお互いに知らない技術を教え合いながら一緒に成長できるクリーク社の環境では、情熱をもって仕事ができます。

──ありがとうございました。

取材・ライティング:あんどうちよ/撮影:柴崎まどか(SYN.PRODUCT)/編集:田中祥子(CREATIVE VILLAGE編集部)