1歳の頃、日本に来た韓国人のスクジンさん。 日韓のバイリンガルで、両方の文化を背景に持つスクジンさんは、現在クリーク・アンド・リバー社(以下C&R社)のデジタル・コミュニケーション・グループ(DCG)で、Web制作に携わっています。

C&R社でのキャリアや、日韓の文化の違い、仕事観についてお話を伺いました。

株式会社クリーク・アンド・リバー社 デジタル・コミュニケーション・グループ
ディレクター/エンジニア スクジン(Sookjin)
韓国・プサン生まれ、東京育ち。大学で中国語を専攻し留学経験もあり、日本語・韓国語・中国語を話すことができる。
羽田空港での飲食業を経て、職業訓練校でプログラミングを学び、2017年12月C&R社に入社。Webサイト等の制作に携わっている。

語学力を活かした接客の仕事から、Web制作へ

──スクジンさんは韓国籍ですが、幼い頃から日本にお住まいで、外国人という印象はまったくありませんね。生い立ちを教えてください。

父は日本に留学していて、母も一緒に生活するために日本にやってきました。私が1歳くらいの頃です。両親の「日本の環境・友達になじめるように」という方針から、日本の学校へ通いました。両親との会話は韓国語、外では日本語という環境で育ちました。

父はなぜか日本に留学して中国語を専攻していたそうです。その影響もあり、私は大学で中国語を学び、中国に留学もしました。ですから、日本語と韓国語に加え中国語も使うことができます。

新卒のときには、語学力を活かし、外国のお客さまが多い羽田空港で飲食の接客をする仕事に就きました。父はとても喜びましたね。

──飲食業とWeb制作、全然違う分野ですが、転職のきっかけは?

将来のキャリアを考えて、何か技術を身につけようと思い、職業訓練校でプログラミングなどを学びました。IT関連の需要が高いと考えたのですが、パソコンでものづくりをするクリエイティブな仕事は、自分に合っていると感じています。

未経験から着実に無理なく力をつけ成長する

──C&R社入社後のお仕事内容を教えてください。入社は2017年12月ですね。

はい。現在は入社して3年目に入りました。

最初に担当したのは、C&R社が提供するblogサービスでのコーディングでした。訓練校で学んだとはいえ、業務は未経験です。先輩や上司からサポートをしていただき、仕事としての実践的なやり方を学びながら進めていくことができました。

次に担当したのは、人材募集やセミナー情報などを掲載するサイトのリニューアル案件です。国際協力関連の法人がお客さまで、開発業務はパートナー企業にお願いし、私たちは開発されたものを受け入れて、テストを行っていました。

──まず自社が運営するサービスで経験を積んで、次にはお客さまから依頼を受け外部の協力企業ともやりとりのある案件と、自然に少しずつレベルアップできていますね。

私もそう思います。上司に恵まれ、順を追って力をつけることができています。サイトリニューアルの案件では、1年程度で、上司からの伝達ではなく、お客さまからの要望を直接聞いて全体のディレクションを担当するようになりました。

──その後は、またさらに新しいステージに進まれたのでしょうか。

はい。2019年の6月からは、ECサイトのリニューアル案件に携わっています。

これまでは、システム開発の要素が多い仕事をしてきましたが、今回はワイヤーフレームの作成を含め、サイトのデザインの面に大きく関わっています。もともとデザインには苦手意識があるのですが、やってみて本当に難しいと感じます。

──特にどのような点が難しいと感じますか。

何がよいのか答えがないところです。システムづくりは「YesかNoか」というもので、実現する形がはっきりします。しかし、デザインはやればやるほど奥が深く、模索中です。

──デザイン面への挑戦は、ご自分から志願されたのですか。

「デザインにも関わる案件があるけどどう?」と上司に勧められたのが発端です。幅広い技術や工程に携わることで、ディレクターとして実力をつけられると思い、やってみることにしました。

Web制作の仕事は、悩むこと自体が楽しい

──自社の運営サイトから、お客さまとの直接やりとり、さらにデザイン構築と、Web制作の幅広いところを経験されましたが、このお仕事のやりがいや面白さはどこにあるのでしょう。

悩むことは多いのですが、悩み自体は苦ではなくて、「これをこうするためにはどんな方法があるのかな」と考えたり、そうして迷っているときにアドバイスをもらったり、とても楽しいです。転職をしてこの仕事に就いて本当によかったと感じています。

──悩み過ぎて袋小路にはまってしまうことはありませんか。

ダラダラと悩むことはしないように気をつけています。わからないことがあれば、自分の中でまずは10分、15分考えてみます。それでわからなければ、周りの人に聞いてみます。ひとりで悩むより、周りの複数の人に頼る方が、解決にいたる可能性が高いのです。だからといって、はじめから人に尋ねていては成長がありません。

まず悩む。わからないから周りの人に聞く。これを何度も経験していると、自分で解決したい「欲」が湧いてきます。アドバイスをいただく経験を積むことで、解決への道筋の立て方もわかってきます。今は、入社当時より、自分で解決できることが増えていると思います。

それができるのは、1日に何度質問しても丁寧に答えてくれる上司がいるからです。この環境には感謝しています。

──成長できる環境ですね。

はい。自分が上司になったときに真似したいと思います。

語学ができることと、それを仕事にすること

──スクジンさんは韓国と日本、二つの文化に属していますが、両国の文化の違いを感じるところはどこですか。

自分の中で、意識することなく切り替えができてしまって、違いを認識することが難しいですね。

韓国に行ったときに韓国人のように行動していることはあります。韓国では人前で感情を表に出すことが普通です。たとえば、地下鉄で大きい声で話している人がいたら「静かにしてください」と言い、高齢の方が立っていたら座っている人に「席を譲ってくれませんか」と頼みます。日本ではそういうことはしませんが、韓国に行けば自然とそのモードに切り替わります。

私は韓国人の友達が少なかったのですが、中国に留学したときにたくさんの韓国人と友達になりました。韓国の友達は親しい人と政治の話をしたがります。日本では友達同士で政治の話をする文化がなく、そういうときはちょっと困ります。この場合は韓国モードに切り替えたくても、韓国の政治に関する教育を受けていないので、正解がわからないのです。両親から話は聞きますが、私の世代とは受けた教育も異なります。

──隣の国でも、人々の考え方や行動がずいぶん異なるのですね。韓国と日本の感覚を意識しないで切り替えられるスクジンさんでしたら、働く場所も、日本だけでなく韓国、そして留学経験のある中国も候補に入ったのではないでしょうか。

韓国・中国は、国際化が進んでいるので、日本語が話せる人はすでに大勢います。とても競争率が高い印象があり、韓国・中国での就職はあまり考えませんでした。比較すると日本では、国際的な人材の需要がこれから高まってくるところだと感じ、日本で語学を活かした接客の仕事に就きました。

──先ほど、転職の際には「将来のキャリアを考えて、技術を身につけようと思った」とおっしゃいましたね。語学を使ったキャリアを伸ばそうとは考えなかったのですか。

言葉でいろいろな国の人とコミュニケーションをとるのは好きです。でも、実際に働いてみて、仕事にするのは違うなと感じました。韓国語と日本語は子どもの頃から使ってきたもので、今思えば、最初の就職では「ずっとやってきたことだから、就職でもそれをやろう」という感覚だったように思います。転職するときには、技術を改めて学んで身につけて、ITを専門の仕事として頑張っていこうと決心したのです。

日本と韓国の架け橋として

──今のお仕事で韓国や中国との関わりはないのでしょうか。

今のところはありません。でも、社内の他の部署で、中国語・韓国語を話せる人を探しているときに、お手伝いをしたことはあります。部署を超えたコミュニケーションができて、ふだんは触れない業務を見ることもできて、楽しい経験でした。

仕事としては、ITやWebで力をつけて頑張っていくつもりですが、そこから派生して韓国とつながりができたり、中国語を含めて語学でお手伝いできることがあれば、積極的にやりたいと思います。

韓国人として日本で育ち、両親や学校の先生、習い事の先生など、周りの大人からはいつも「両国の架け橋になりなさい」と言われてきて、いつも意識をしています。

──幼い頃から二つの文化に属してきた方ならではの言葉ですね。最近は両国関係の悪化が盛んに報道されましたが、身の回りで何か変わったことは?

昔とは違い、国と国の関係が悪くなっても敵対心は政治家にだけ向けられて、一般の人同士の関係に変わりはないと思います。

友達から「今韓国に行って大丈夫?」などと尋ねられることもあるので、留学で知り合った韓国の友達や情報通の母に、状況を聞くようにしています。両国の関係がよくなることがあれば、自分が役に立ちたいと思うからです。

──人とのつながりが、国の関係をつくっていくのですね。最後にこれからの目標を教えてください。

プロジェクトマネージャーとして、ディレクション業務をしっかり行えるようになりたいと思います。そのためには、まだ技術が足りないので、さまざまな案件を担当して経験を積んでいきたいと思います。

また、この先もしも、自分の仕事が韓国とつながることがあれば、挑戦していきたいと思います。

──ありがとうございました。

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取材・ライティング:あんどうちよ/撮影:柴崎まどか(SYN.PRODUCT)/編集:田中祥子(CREATIVE VILLAGE編集部)