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データだけでなく、クリエイターの情熱を大切にした作品制作「Netflix」が徹底して追求していることとは? コンテンツマネージャー・坂本和隆さんインタビュー 

世界190カ国以上で約1億2500万人のメンバーシップを有する、世界最大級の動画配信サービス「Netflix」。日本でも2015年にスタート以降、あっという間に世間に浸透しています。コンテンツマネージャーを務める坂本和隆さんは、当初より日本のオリジナルコンテンツ制作に携わり、数々のヒット作を生み出してきました。今回は、Netflixの特徴や独自の制作手法など、「全世界配信」ということを踏まえた上で制作する醍醐味について伺いました。

坂本 和隆(さかもと・かずたか)
映画、ドラマにおける国際共同製作の現場を経て、2015年のNetflix Japan 日本進出後、入社。
Netflixでは、日本のオリジナル作品のクリエイティブを担当。(現在は実写オリジナルのみ)
主な作品、『火花』『深夜食堂:Tokyo Stories』『僕だけがいない街』『BLAME!』『DEVILMAN Crybaby』『B: the beginning』『アグレッシブ烈子』などNetflix Originalとして190ヶ国に配信。

全世界に共通する「普遍性」と「時代性」を意識した作品づくり

――坂本さんの「コンテンツマネージャー」という職種はどのような仕事内容なのでしょうか。
主にNetflixオリジナル作品におけるクリエイティブ担当です。企画のコンセプトから脚本のプロット、ストーリー全体に至るまで、日本から出ているオリジナル作品に携わっています。

――日本のオリジナル作品といえば『火花』や『DEVILMAN crybaby』など既に多くのヒットがありますが、直近で話題になっているのはどんな作品ですか?
直近ですとサンリオさんのキャラクターとコラボした『アグレッシブ烈子』というアニメシリーズが全世界で大きな反響になっていて。配信直後からNYタイムズも含めて多くの海外メディアがレビューを書いてくれたこともあり、日本に限らず全世界で盛り上がっていますね。

(c)2015, 2018 SANRIO サンリオ/TBS・ファンワークス / Netflixで独占配信中

――やはりNetflixは190カ国以上に配信されるということを常に意識して制作されますか。
はい。企画を考える上で、「普遍性」と「時代性」は意識をします。『アグレッシブ烈子』がヒットした一つの背景には、ストーリー的にも世界中の視聴者の共感を強く掴むことができたのではないかなと。

――なるほど。他国の人が見て共感できるストーリーだったと。
そうですね。全世界の方が見て共感できる作品というのは強いです。これまでは、ハリウッド作品が全世界でヒットする傾向がありましたが、今まで見る機会が少なかったスペインやドイツなどのドラマでも全世界で広く観られているということを我々は実感しています。やはり普遍的なテーマや、ストーリーに国境はないんだと強く感じますね。

――今まで見る機会がなかった番組を見られる仕組みにもヒットの要因がありそうですね。
現在世界で約1億2500万人の方にお使いいただいていますが、ひとりひとりの画面上ではおすすめされる作品タイトルが異なります。これは、世界中のメンバーの方々の視聴傾向を機械が自動的に判断し、ひとりひとりに好みに合わせたおすすめ作品を表示しているからです。我々はよく「Your Netflix is not My Netflix」と呼んでいます。日本にいる自分の視聴作品のパターンが、例えば何処かの国の80歳のおばあさんと私の見ているものが非常に近しいなんてこともありえます。

実際に75%の人がおすすめにリストアップされている番組を見ているので、今まで絶対見なかったであろう番組がおすすめとして上がってくることで、国を問わず幅広い作品を見てみるきっかけになっていると感じます。

――見られる作品数自体も激増してますよね。
全世界でいうと、今年は弊社でしか見られない優れたオリジナル作品が昨年よりも数多く配信されます。日本の作品も含めて、各国の高品質なオリジナル作品がどんどん豊かになってきていているので、きっと見たい作品が見つかると思います。

配信ならではの強みをトコトン生かして、クオリティを担保する

――時間をかけて制作できるというのは、特に日本の地上波のように短いスパンで毎週見せ場を作るというような作り方と大きく変わってきそうです。
Netflixでは脚本を完成させてから撮影/プロダクションに入ります。作り始めるまでのプロセスに十分な時間と人のリソースを費やせるので、そこでまずクオリティが担保できる。

以前『深夜食堂:Tokyo Stories』を完成させたときにプロデューサーの方がおっしゃってくれた言葉が象徴的でした。「撮影の前に脚本を煮詰める時間がありそれを全部固めた上で撮影に臨めたので、制作環境に余裕を持つことができ、これまで以上に満足のいくクオリティになった」と。これは嬉しいフィードバックでした。

その他、技術的にも最先端での制作環境を目指しています。現在の実写オリジナル作品では、4K撮影を基本としてますし、作品によってはHDR配信も増えてきています。技術面にお金がかかっても、10年後も見てもらうことを考えて今のうちからできる限り高いレベルでつくるという発想があるので。

――いつになっても、いつでも見られるというのは配信の大きな強みですよね。
そうですね。あとは地上波との大きな違いとして「全話一挙配信」ということ。ドラマで言えば『DEVILMAN crybaby』は全10話一挙配信で、視聴者にとってはひとつの長い完成された映画のようでもあるんですね。「イッキ見(ビンジ)」をしてみたくなるような、ひとつの長い作品として見ることができるので、ひとつのシームレスな流れになる。さらにCMも入らないので尺の規制がなく、各話ごとに48分だったり56分だったり、ストーリーに一番フィットした尺で作れるのも大きな特徴ですね。

(c)Go Nagai-Devilman Crybaby Project / Netflixで独占配信中

徹底的に議論した後はクリエイターを信じる

――どうしても民放だとCMや尺のことなど、制限ありきの中でつくるのが当たり前ですよね。とは言えNetflixさんのように「時間も尺も制限なく、自由に作れるからこそ難しい」と感じるポイントってありますか?
制限によって生まれるクリエイティブも僕はあると思うんですよ。「予算がこれしかないからこういうアイデアで作ろう」と言ってそこで爆発する何かとか。
最近いろんな人と話す中で感じることは、制限がないからこそヴィジョンが問われるということ。今この時代になぜこの作品をやるのか、なぜこの登場人物を描くのか?クリエイターの主義、主張だけが全面に出過ぎると視聴者は置いていかれてしまうので、冒頭にお伝えした、「普遍性」と「時代性」のビジョンはより問われる環境だと思っています。

――クリエイターと視聴者が乖離しすぎないように坂本さんが調整なさると。
そうですね、すごく議論します。かといって難しいのは、我々はグローバルオーディエンスを抱えている中で、全世界の視聴者を意識しすぎて企画を考えるということもするべきではないと思うんです。まずは自分たちが信じるストーリーがないと、世界には通用しないので。

でも、最初に議論を煮詰めて「これで行こう」となったらあまり口は出さず、クリエイターの意思を尊重して、サポートするという立場に徹します。決まったら、あとはクリエイターのやりたいようにする。アメリカではパイロットシステムというのをよくとっていて、1話を流して評価がよければ2話以降やりましょう、悪ければ終わりっていうことがよくあるんです。でもNetflixはやると決めたら全部作っちゃうし一気に配信するっていう、ある意味革命的なアプローチだったわけですよね。でもその分後悔しないディスカッションをちゃんとして、あとはクリエイターを信じてやっていきます。これは弊社の特徴かもしれないですね。

ヒットの法則よりも情熱を大事にしたい

――では、競合他社との差別化は意識していますか。
社内でこれほど出ない言葉はないっていうくらい「競合」っていう言葉を使わないんですよ(笑)。自分自身が意識してるのはいかに良いオリジナル作品を作るか。動画配信サービスは本当に始まったばかりで、誰かが勝ったら誰かが負けるっていうことはないんです。なので一緒になって業界を盛り上げていこうという気持ちが強いし、他社さんもそうだと思っていて。いかに新しいエンターテイメントを楽しんでもらうかっていうことをみなさんに知ってもらうことのほうが大事なんじゃないでしょうか。

――なるほど。番組編成に関する戦略はありますか?
ライブラリーを豊かにするという意味では、大多数の方がハッピーな気持ちになれて必ず見るだろうという作品に大金を払うというよりも、誰しもが見るものじゃなくても、しっかり見てくれる良質な作品を数多く揃えるっていうのが特徴としてありますね。

そしてオリジナル作品に関しては1つひとつしっかり作っていくことを心がけています。どの作品が当たる当たらないなどに関して、データだけでヒットが算出できたら苦労しないですし。最終的にはクリエイターの情熱だったり、自分たちがやってみたいと思う気持ちを大事にして、これに賭けてみようということですね。

――分析はもちろんしっかりするけれども、それを全てにはしないと。
最初にお話しした『アグレッシブ烈子』に関しても、ここまでヒットするとは予想してなかったんです。でも口コミで広がってバズが起きて、実際にパートナーさんも反響を肌で感じてくれたようで、大変喜んでました。
バズが起きる作品、つまり「誰かに伝えたい」「誰かと話したくなる」ような作品は強いです。
これはアメリカでの話ですが、Netflix オリジナルのドキュメンタリーで『殺人者への道』という作品があり、たくさんの視聴者がホワイトハウスに署名を提出する活動が始まり、社会現象になったりもしました。他には『13の理由』というドラマも2017年にアメリカのドラマ史上最もツイートされた作品として非常に強いバズが起きました。

もちろん自分自身の作品でも、どのようなカンバセーションがソーシャル上で展開されていて、どう捉えているのかっていうのはしっかり把握しますが、それによってクリエイティブを変更することや、影響が及ぶことはほとんどないです。

僕自身はヒットを意識するよりもクリエイターのビジョンを最大限引き出すことを心がけているので、予想を上回る反響があると嬉しいですね。

――今後どんなコンテンツを手がけたいというヴィジョンはありますか?
今までやっていなかったような作品ですかね。我々はこれからも驚きを提供したいので、「こんな作品見たことない」とか、「これできるの?」っていう部分を積極的にやっていきたいと思ってます。

――ありがとうございました。

インタビュー・テキスト:上野 真由香/撮影:TAKASHI KISHINAMI/企画・編集:市村武彦(CREATIVE VILLAGE編集部)

企業プロフィール

Netflixは、190ヵ国以上で1億2500万人のメンバーが利用するエンターテインメントに特化した世界最大級のオンラインストリーミングサービスです。各種受賞作を含む幅広いジャンルのコンテンツ、ドキュメンタリー、長編映画などを多言語で配信しています。メンバーはあらゆるインターネット接続デバイスで、好きな時に、好きな場所から、好きなだけエンターテインメントを楽しむことができます。当社サービスには、広告や契約期間の拘束は一切ないうえ、Netflix独自のレコメンデーション機能が一人ひとりのメンバーの好みに合わせて作品をオススメするので、お気に入りの作品が簡単に見つかります。

https://www.netflix.com/jp/


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