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イタリア式喜劇で数々のヒット作を生み出してきたパオロ・ジェノヴェーゼ監督に聞く

大学卒業後、広告分野の仕事に就き、300以上のCMを監督して数々の賞を受賞したイタリアのパオロ・ジェノヴェーゼ監督。その後、映画制作に取り組み、イタリア式喜劇のお家芸である群像劇的手法で数々のヒット作を生み出してきました。そのパオロ・ジェノヴェーゼ監督の最新作は、時にシニカルなコメディ作品『おとなの事情』。「スマートフォンを使って現代社会の一面を切り取ってみたいと思った」という監督のアイディアから生まれた本作は、通常3週間程度で劇場での上映作品が入れ替わるイタリアの映画界において、28週間の上映という驚異的なロングランを記録しました。制作にあたって留意されていたことや、クリエイターへのアドバイスなど…お話を伺いました。

アイロニーを含めて軽やかに語る、コメディの魅力

大学ではビジネスを専攻していましたが、ストーリーを語ることが好きで、卒業後はCMの仕事に就きました。

監督したCMは300以上に及びます。日本では、携帯電話会社のCMがシリーズで頻繁に作られ、話題になっていると聞きましたが、イタリアのCM業界にも、そのようなトレンドがあります。
小さなストーリーを連続で紡いでいき、期待を集めているのは、イタリアでも携帯電話と車のCMですね。

イタリア映画のジャンルで一番多いのは、コメディだと思います。
アイロニーを含めて軽やかに語ることで共感を集められるところに、コメディの面白さがあると感じています。

日本の映画界は、マンガ原作の映像化で賑わっているそうですが、イタリアの映画界も小説の映画化や、外国の映画のリメイクが増えています。

ワンカット長回しで撮った、俳優陣の自然な表情

(C)Medusa Film 2015

(C)Medusa Film 2015

小説の映画化や、外国の映画のリメイクが増えているイタリアの映画界ですが、シニカルな部分もあるコメディ作品『おとなの事情』はオリジナルのアイディアから作ったものです。

きっかけは、スマホを使って現代社会の一面を切り取ってみたいという想いでした。今、スマホを使って描けるテーマがたくさんある、隠された秘密もたくさんある中で、一番面白くて、共感を得られるテーマを考えた結果、友人夫婦7人が集う夕食の場で、それぞれのスマホに届いたメール、電話の内容をオープンにするという設定を選びました。

脚本作りは5人で行い、最終的なジャッジは監督として私が行う形で進めていきました。
脚本の執筆段階から俳優さんを想定して当て書きをしています。実際の演技は想定どおりで、それぞれの役柄の解釈も出てきますが、役者陣の演技には大満足しています。

(C)Medusa Film 2015

(C)Medusa Film 2015

役者陣の演技が自然に見える理由は、ワンカットで長回しをしているからです。演技を止めないということ、演技をしていない時もカメラを回していて、後でそこから役者陣の表情を拾ってくることもありました。

さらに留意していたのは、セリフを言っている俳優だけではない、その周囲の“反応の演技”ですね。そこに一番気を遣って撮影していき、友人夫婦7人の会話に、観客も参加しているような臨場感を持たせるように仕上げていきました。

まずは良いアイディアを生み出すこと

通常3週間程度で劇場での上映作品が入れ替わるイタリアの映画界ですが、本作は28週間にわたってロードショーされました。これは予想を超えるもので、ここまで続くとは思いもしませんでした。

それはやはり、このテーマの共感性がポイントだったと思います。皆にとって、スマホはプライベートの詰まったブラックボックスで、近しい人でも、そこに秘められているものがお互い見えていない場合もあります。イタリアではグループ心理分析のようにSNSで盛り上がりましたし、テレビ番組に呼ばれてこのテーマで話すこともありました。

これから映像制作に携わりたいという方に対しては、まずはアイディアが大切ということを伝えたいです。今はスマホでも映画が撮れる、撮影して編集できる時代です。そうなると、技術は後からついてくるので、まずは良いアイディアを生み出すことが大切だと思っています。


作品情報

『おとなの事情』
3月18日(土)新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー

監督:パオロ・ジェノヴェーゼ
出演:ジュゼッペ・バッティストン、アルバ・ロルヴァケル、ヴァレリオ・マスタンドレア、カシア・スムトゥニアク、 アンナ・フォッリエッタ、マルコ・ジャリー二、エドアルド・レオ

配給:アンプラグド

(C)Medusa Film 2015

(C)Medusa Film 2015

<STORY>
月食の夜に交差する、愛と嫉妬の人生讃歌!
「今では携帯はプライベートの詰まったブラックボックス。ゲームをしない?食事中、かかってきた電話、メッセージをみんなオープンにするのよ」。友人夫婦7人が集う夕食の場で、エヴァはいきなりそう提案した。新婚のコジモとビアンカ、反抗期の娘に悩むロッコとエヴァ、倦怠期を迎えたレレとカルロッタ、恋人に今日のディナーをキャンセルされたペッペ。「何かやましいことがあるの?」と詰め寄る女性陣に、男性陣も渋々ポケットを探り、テーブルには7台のスマートフォンが出揃った。メールが来たら全員の目の前で開くこと、かかってきた電話にはスピーカーに切り替えて話すことをルールに、究極の信頼度確認ゲームが始まる!

http://otonano-jijyou.com/


パオロ・ジェノヴェーゼ

1966年ローマ生まれ。大学ではビジネスを専攻し、卒業後、広告分野の仕事に就く。300以上のコマーシャルを監督し、数々の賞を受賞し評価される。その後、映画製作に取り組むようになり、ルカ・ミニエロと共同監督した短編『Neapolitan Spell』(98)がロカルノ映画祭で上映されて脚光を浴びる。以後、2人の共同監督作品として短編のリメイクである『Neapolitan Spell』(02)で長編デビューを飾り、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞を受賞。以後、『Nessun messaggio in segreteria』(05)などを発表し、テレビシリーズなども手掛ける。『La banda dei Babbi Natale』(10)で初めて単独で監督デビューし、イタリアで大ヒットを記録。翌年の『Immaturi<未熟者たち>』(11)もヒットを記録し、コメディのヒットメーカーとして高い評価を得る。本作の驚異的なヒットによりスペインではすぐにリメイク作品が作られる(17年公開予定)など、世界中からリメイクのオファーも殺到している。

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