クリエイティブ業界の注目情報や求人情報などを発信する、クリエイターのための総合情報サイトです。
eyecatch_IMG_5284

シンタロウ・シモサワ監督に聞く、ハリウッドでの映画作りの環境の変化とは?

ハリウッドでテレビドラマの脚本を数多く手掛け、清水崇監督作のハリウッドリメイク『THE JUON/呪怨』(04)では共同プロデューサーを務めたシンタロウ・シモサワさん。40歳を超えての映画監督デビューは、思わぬきっかけからだったそうです。それは、巨大製薬会社で起こった薬害問題に挑む若き弁護士の物語『ブラック・ファイル 野心の代償』の脚本をリライトしていた時。シーンの見せ方について提案を重ねるうちに、プロデューサーから監督に指名されたとのこと。そこでスタッフ、キャストとどのように接して、皆からアイディアがたくさん寄せられる現場を作り上げていったのか?そして、本作のキャスティングから見える、映画作りの環境の変化とは?

『X-ファイル』の衝撃

ジョージ・ワシントン大学で政治学を専攻していた頃に見た『X-ファイル』はとても印象に残っています。想像力に溢れていて刺激的で…いつかハリウッドで働きたいと思うきっかけになりました。
卒業後すぐにハリウッドへ移り、テレビドラマの脚本を書く日々が始まるのですが、いざその世界に入ると大変なこともありました。
まず、テレビの脚本を書くことと、映画の脚本を書くこと、映画を撮ることは異質のものです。
テレビでは、やはり安心して見られる物語が求められます。例えば犯罪ものなら、勧善懲悪というような…若い頃は野望もあったので、テレビを変えよう!とも言っていましたが、仕事をしていくうちに映画とテレビは違うメディアだと気が付きました。

やがて、テレビのやり方に慣れていったのですが、今度いざ長編映画を撮るとなると、テレビのマインドから映画に切り替えるのが大変で、それはそれで難しかったですね。

初めての監督で、手探りの状況を素直に認める

(C) 2015_MIKE AND MARTY PRODUCTIONS LLC.All Rights Reserved.

(C) 2015_MIKE AND MARTY PRODUCTIONS LLC.All Rights Reserved.

今回、初めての長編映画監督を務めることになったのは、意外なきっかけからでした。と言うのは、もともと、巨大製薬会社で起こった薬害問題に挑む若き弁護士の物語『ブラック・ファイル 野心の代償』の脚本をリライトしていたんです。リライトをしていく中で、このシーンはこう見せた方が良いのでは?と提案したり、こう変えたらどうかとアイディアを出していたら、プロデューサーに監督を打診されました。

今振り返ると、初めての監督で手探りなその状況を、素直に認めたことが良かったと思います。監督デビューの時は、明確なヴィジョンを持っていて、自分が今何をすれば良いか僕は分かっていますから!と虚勢を張ってしまうものですが、僕は正直に「右も左も分からないので、皆さんの方がお分りだと思うので教えてください」とスタッフにもキャストにも言いました。結果、それが功を奏したのだと思います。

実際に監督をやっている友達もいますが、皆同じ失敗を繰り返しています。例えば、この壁は赤じゃないといけないと言い張ったり、人のアドバイスを聞かないで突っ走ってしまって失敗するんです。

(C) 2015_MIKE AND MARTY PRODUCTIONS LLC.All Rights Reserved.

(C) 2015_MIKE AND MARTY PRODUCTIONS LLC.All Rights Reserved.

そのように独断で進めようとするのではなくて、皆さんそれぞれの分野で僕より経験があるので、どんどんアイディア出してくださいと。最終的には僕が判断しますが、どんどん意見をくださいとお願いしました。

特にニューオーリンズのスタッフに対しては、美術、メイクそれぞれの方に一案ずつ出してもらえるようにお伝えしました。俳優に対してもそうで、アル・パチーノにアイディアを聞いたら「ニューオーリンズ鈍りで喋らせてくれ」と提案され、それも取り入れました。メイクさんにもらった、もっと古典的なクラシックなメイクでいこうというアイディアも取り入れて、そうした方が、皆が自分の映画だと思ってくれますし、僕は何も分からないので…というスタンスだったので、演出も皆で作っていったような感じでしたね。

自分のできる範囲で始めた活動に、スタジオから声がかかる時代

今の映画制作の環境は変わってきています。その良い例は、今回の『ブラック・ファイル 野心の代償』のキャスティングです。候補としてスタジオから貰った写真を眺めていると、無名の女優さんで、綺麗な子がいたので、どんな子なのかと聞いてみたら、VineというSNSで2番目にフォロワーが多い、人気の子だというんです。
どうして人気が出たかというと、キッチンで撮っていた短編映像がきっかけとのことでした。自分のできる範囲で、お金をかけずに始めた活動から、スタジオが求める人材にまで育っているんです。お金をかけずに作った映像で、スタジオから声がかかるようになるのは凄いことですし、時代が変わってきていると実感しましたね。

僕も、この時代にスタートを切れていたら、と思うくらい、映画作りの環境は変わってきていて、それは刺激的なことだし、大きな可能性を秘めていると思います。なので、映像制作を志す方は、自分たちのできる範囲から、まずは作ってみて欲しいです。

元ネタのあるものが90%!ハリウッドの現状

映像制作の環境は変わってきていますが、残念ながらハリウッドの体質はあまり変わっていません。
現在でも、原作など元ネタのあるものが90%を占めています。ほとんどが実話、続編、リメイクで、10%が新しいことに挑戦するオリジナルです。

僕が2004年に共同プロデューサーとして参加した『THE JUON/呪怨』にも、またリメイクの話があります。『THE JUON/呪怨』は2008年に続編が公開されているのですが、再度やろうとしている…。確かに、『呪怨』のオリジナルでは、女の子がMP3プレーヤーを聞いているだけのシーンなのに、そこから何が起こるか分からないような底知れない恐怖を感じて衝撃を受けました。アメリカのホラーにありがちな、謎解き要素ではないところ、呪いや霊などの感覚的な恐怖にも、日本のホラーの面白さがあります。

でも、だからと言って、同じネタを使いまわすような風潮は良くないですよね。ただ、認知度もあるから、ある程度のお客さんが確保できるという勝算があって、その結果『トランスフォーマー』やゲーム『モノポリー』『レゴ』などが映画化されていく。でも、もう少し新しいものに挑戦する気概は持つべきだろうし、日本のコンテンツも、もっとハリウッドに持ってくることができれば良いのにと思います。
あれほど独創的な…キャラクターにしても、コマの中の動きにしても、あの世界観を作れるものはそうないので、もう少し日本のコンテンツを見られる環境が整って、ハリウッドとしても、さらにコンテンツの幅が広がっていくと良いなぁと思っています。


作品情報

『ブラック・ファイル 野心の代償』
2017年1月7日(土)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:松竹メディア事業部

<STORY>
全米を牛耳る巨大製薬会社。世間ではその薬害問題が報じられていたが、弁護団は決定的な証拠を掴めずにいた。そんな中、野心家の若手弁護士ベン・ケイヒル(ジョシュ・デュアメル)は金髪の美女(マリン・アッカーマン)と出会い、機密ファイルを受け取る。その出会いをきっかけに、ケイヒルを取り巻く人間達のありとあらゆる欲望<出世欲・金欲・独占欲・愛欲…>が複雑に絡み合い、ケイヒルの人生は予想もつかない意外な展開に巻き込まれていく…。

(C) 2015_MIKE AND MARTY PRODUCTIONS LLC.All Rights Reserved.

(C) 2015_MIKE AND MARTY PRODUCTIONS LLC.All Rights Reserved.

監督:シンタロウ・シモサワ
脚本:アダム・メイソン、サイモン・ボーイス
製作:エレン・ヴァンダー
音楽:フェデリコ・フシド
出演:ジョシュ・デュアメル、アンソニー・ホプキンス、アル・パチーノ、イ・ビョンホン、アリス・イヴ、マリン・アッカーマンほか

http://blackfile.jp/


prof_IMG_5278

シンタロウ・シモサワ

1974年6月9日アメリカ生まれの日系2世。
高校卒業後、ジョージ・ワシントン大学で政治学を専攻。映画への愛に目覚め、卒業後すぐにハリウッドへと移る。昼は脚本を書き、夜はナイトクラブDJという日々の後、『THE JUON/呪怨』(04)の共同プロデューサーを務め、清水崇監督に日本人監督初の全米オープニング興収1位の栄誉を与えた。その他に『クリミナル・マインド 特命捜査班レッドセル』(11/脚本)、『リンガー 〜2つの顔〜』(11-12/製作・脚本)、ケヴィン・ベーコン主演『ザ・フォロイング』(13-15/製作・脚本)、フォレスト・ウィテカー主演『エンジェルの狂気』(13/脚本)など。本作で念願の監督デビューを果たす。

こちらもオススメ!世界の映像業界

関連記事