“声だけでなんだって表現できる!”――声優の醍醐味が芝居好きの少女の琴線に触れた。
「自分が嫌いだって人いますよね。すごく気持ちはわかります。でも声優は自分が売り物のお仕事だから、それではダメだと思うんです。自信はないけど、本当に好きだしやる気はある。そう思いながらやってきました」。叩かれても、どれだけへこんでも、自分の強みを忘れず前に向かって進んでいく。声に生かされ、声に思いを込め生きるひと、井澤 詩織。
「アニメーションのお仕事はもちろんですが、イベントでもラジオのお仕事でも、どんなときでも私は声優なんです」

 

■ なんて自由なんだ!

声優を目指すようになったのは、高校の放送部での活動がきっかけでした。でも始まりは舞台でした。小学3年生のときに、文化祭で演劇クラブの公演を観てすごく感動して、自分も演劇クラブに入りお芝居を始めました。泣き虫で引っ込み思案だった性格が一転、国語の授業で朗読を披露したり積極的な子に(笑)。中学校には演劇クラブがなかったので大道具で活かせるかもと美術部に入り、高校では絶対に演劇をやりたいと演劇部のある学校を調べて受験しました。でも新入生歓迎会での演劇部の舞台があまりしっくりこなくて。悩んでいたときに放送部の存在を知りました。朗読やラジオドラマもやるということで入部してみたら、声だけでどんな役も演じられる、演劇より自由じゃん!って。声優好きだった放送部の先輩たちの影響もあって、一気に声優へのあこがれが高まりました。
高校卒業後は、日本工学院専門学校演劇・俳優科声優コース(現クリエイターズカレッジ声優・俳優科)に進みました。声優の養成所っていろいろありますけど、短大卒と同じ専修士の資格がもらえるところということで日本工学院に興味を持ち、実際に何度も体験入学に参加し、設備も整っているし学校もきれい、環境もいいということで決めました。だけど、声優になりたいと両親に告げるのにすごく勇気がいりました。そんなに簡単にはなれない、夢の職業だってことは十分理解していましたから。でも本当に声優になりたいなら、まず親を説得する、そこがスタートなのかなって気がします。それもできない人間に、声優として大勢のひとに影響を与えるなんてことはムリだと思うんです。自分の熱意をどれだけ説得力を持って伝え相手の心を動かせるか、もしかしたら親は初めてのお客さんなのかもしれませんね。

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テレビアニメ「銀の匙 Silver Spoon」(吉野まゆみ役)
フジテレビ「ノイタミナ」にて毎週木曜24:45から放送中

「オーディションだったんですけど、大好きなマンガだったので、絶対合格するぞ!って意気込んで臨みました。オーディションでは監督から『ちょっと性格悪そうに、あまり可愛くしないでください』って言われて。可愛くなくていいなら私得意だ!って(笑)、リラックスして演じることができました」

 

■ 思い通りになんていかない

日本工学院での1年は想像以上にキツかったです。1年生は舞台中心の授業で俳優としての基礎を身につけるんですが、舞台の先生に、「アニメ声をやめて地声で話せ!」って何度も注意されて。私も負けずに「これが私の地声です!」って反撃したり、生意気でした(笑)。でもあの1年間で相当根性がついたと思います。
2年生のときにドリームチャレンジャーに合格し、ラジオ番組にアシスタントとして出演させていただけることになりました。自信はなかったですが、オーディションでは個性を出そうと頑張りました。学生のときって暗記した自己PRをそのまま披露してしまう人が多いんですが、私はあえて自己PRを覚えていかないで、審査員のどんな質問にも自然体で答えられるよう努めました。すごく緊張するくせに、どこか状況を客観視する冷静なところがあるんです。だけど、いまでもメチャクチャ緊張します。しかも私、緊張すると泣いちゃうんで、気をしっかり持てー!って、いつも自分に言いきかせながらやってるんです。最近ようやくアフレコの前日に眠れるようになりました(笑)。
2007年に日本工学院を卒業し、ドリームチャレンジャーでお世話になっていた文化放送の声優養成機関に通いながら、文化放送のデジタルラジオで『Voice of A&G Digital 超ラジ!Rookie』という1時間の生放送番組で週に一度パーソナリティーをやらせていただきました。2009年には「地獄少女」と「とある魔術の禁書目録(インデックス)」でアニメデビューもさせていただいたし、特にこの2年間は、いろんなお仕事に挑戦させていただけるようになりました。でも思い通りにいかなかったことなんていっぱいあります。最初はオーディションにも全然受からなくて、どんどん若い声優さんたちも出てくるし、どうしようどうしようってすごく焦っていました。

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Flashアニメ「Bloody Bunny」(Bloody Bunny役)
音楽情報番組「Music Launcher」内にて全国23局で放映中!
©2013 2SPOT/Bloody Bunny Project

「キャラクターものをやりたいとずっと思っていたので夢がかないました! ゲームセンターでBloody Bunnyのキャラクターグッズを見つけたときは大感激。家族にもグッズを見せたら、『ワァー、スゴいね!』って言ってくれて、アニメを見ない両親にも私の仕事が認めてもらえたようでうれしかったです」※毎週土曜20:00~ 文化放送A&G 「超!A&G+」にて「井澤詩織のブラッディーバニー放送局」放送中!

 

■ また会いたい人になる!

ある時期スタッフさんや事務所に、私の声は特徴があり過ぎていまのアニメのトレンドに合わないと言われ続けたことがありました。自己否定をされたような気がして完全に自信をなくしてしまった私を救ってくれたのが、先輩の声優さんたちでした。ある声優さんは、「あなたは声だけで存在感があるんだから、チャンスさえ掴めば絶対大丈夫」って言ってくださって、本当に勇気をいただきました。
声優のお仕事は大勢の人が関わって成り立っているから、対人関係がとても大事です。実力があるのは大前提ですが、プラス “また会いたいな”って思ってもらえるような人になれるかどうか。私はすごい人見知りなんですけど、直そうと心がけてきましたし、いろんなものに興味を持ちアンテナを広げる努力もしています。いま世の中で何が起こっているかを知っていれば、いろんな方とお話できるし、それって役づくりにも活かせるんです。
声優さんは、けっしてあこがれだけでやれるお仕事ではありません。やりたいこととやれることは違います。でも夢見た以上は、絶対に辞めない覚悟でやってきました。いまの私があるのは頑固だったからですね。あと、運と先輩にも恵まれました。運を良くするには、自分で動くこと。待っているだけでは絶対にダメだと思います。オーディションもそうだし、本を読むことも、学校に行くことも、友だちと遊ぶことだってそうです。声優さんになるという夢に向かってひたむきにやれば、何ひとつムダなことなんてないんです。
声優以外にやりたいことなんて私にはないんです。私はもともとからだが弱かったんですが、声優になると決めてからすごく丈夫になりました。気力かな(笑)。きっとだれだって、好きなもののためには頑張れるんです。あとファンのみなさんの存在。本当に力をいただいています。みなさんに少しでもお返ししたい、みなさんの期待に応えたい。そのためにも、私はずっと声優として生きていきたいんです。

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「ガールズ&パンツァー」(園みどり子・後藤モヨ子・金春希美役)
Blu-ray・DVD全6巻発売中!(販売元:バンダイビジュアル)

「私にとって転機となった作品です。自分の声に自信をなくしていたときに、監督の水島努さんが、私の声がいいと言ってくださって、『キャラクターをあなたに託すから、どうぞ思い通りに演じてください』って。すごく自信が持てました」

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