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都道府県擬人化バトル『四十七大戦』が舞台化! プロデューサー 下浦貴敬さんインタビュー「これまでにない演劇になる予感がする」

2019年2月3日、47都道府県の擬人化キャラクターが『首都争奪戦』を繰り広げる人気Web漫画『四十七大戦』(著:一二三 出版:アース・スター エンターテイメント)の舞台化が発表されました。単行本発売時には、鳥取県知事が本作の主役である鳥取さんのコスプレで作品を応援したことでも話題となり、2018年には「WEBマンガ総選挙2018」1位にも選ばれるなど、親近感の湧く世界観が多くのファンの心を鷲掴みにしています。

10月から公演の舞台『首都争奪バトル舞台(ステージ)「四十七大戦」-開戦!鳥取編-』は、主催をクリーク・アンド・リバー社、プロデュースを『からくりサーカス』『クジラの子らは砂上に歌う』『ダイヤのA』『DIVE!!』などの2.5次元舞台を手掛ける下浦貴敬さんが担当。本稿では、Office ENDLESSの代表取締役も務める下浦さんに、『四十七大戦』舞台化における現在の構想と舞台業界での仕事をテーマにお伺いしました。

下浦 貴敬(しもうら・たかのり)
株式会社Office ENDLESS代表取締役。
劇団AND ENDLESSのプロデューサーを経て、2011年にOffice ENDLESSを法人化。
現在は自らがプロデュースを務める主催興行に加え、「ダイヤのA」TheLIVE、「青の祓魔師」をはじめとした2.5次元舞台の企画・製作にも携わる。
2019年10月から公演の舞台『首都争奪バトル舞台(ステージ)「四十七大戦」-開戦!鳥取編-』ではプロデューサーを歴任。

「鳥取県vs島根県」47都道府県がリングで戦う!?

『四十七大戦』は47都道府県を擬人化した人気バトル漫画です!「WEBマンガ総選挙2018」でも1位を獲得するなど注目が集まっています。この作品を舞台化するきっかけは?

クリーク・アンド・リバー社さんが「面白い作品があるんですよ」と紹介してくれたことがきっかけです。いつもは企画をいただいてもお受けするか悩むのですが、この作品は1時間ほどの打ち合わせで「やりましょう」と即決していました。その場で「こうすれば面白いのではないか?」というアイデアもどんどん生まれてきて、新しい2.5次元舞台の企画になる予感がしています。

――どんなところが舞台化に向いていると思われたのですか?

まず、感情移入しやすいことですね。僕の両親が島根県出身なので、主人公である鳥取県と隣の島根県の切っても切れない腐れ縁的な関係が想像しやすかったこともあります。既に自分の中にイメージがあるものを膨らませるというのはやりやすいです。そもそも原作の物語が『県を擬人化した生身のキャラクターを応援する』という設定なので、そのまま舞台にするだけで物語と観客がリンクする。たとえ自分の出身都道府県キャラクターが登場していなくても「○○県はまだ出てこないなあ」とか「どんなキャラクターなんだろう」とか期待して楽しめます。誰にとっても感情移入できるキャラクターが絶対にいるのは面白いですね。

まだ構想段階ですが、舞台の見せ方も次々とアイデアが湧いています。たとえば会場はプロレスもできるライブハウスなので、中央のリングを囲み舞台にして戦ったり、ご当地のゆるキャラをセコンドにつけたりもできる。バトルの技で名産品を使うなど、見せ方にも自由度が高い。原作にはなかった技を登場させても面白いですね! ロビーで関連地域の名産品を販売したり、ドリンクを飲みながら観劇できたり、「あれ、これ演劇だっけ?」という雰囲気をつくっても面白いなあ。出演者は各県の出身者でオーディションしてもいいですね。鳥取県の県知事が原作を応援してくれているそうなので、県や関係各所のご協力もあり、鳥取での公演も準備しています。そうすると普段は演劇を観ない人にも届けられるし、いろいろ妄想が広がります!

――都道府県という身近なテーマだからこそ、アイデアが膨らみますね!

そうですね。観客参加型にして、お客さんの応援次第で展開が変わるということも考えられます。大変だけれど、クリエイター側が面白がれば実現できるはず。実際に動いていくとなるといろいろと制約もあるだろうけど、ネガティブに捉えるとキリがないです。チャレンジの可能性が広いのがこの作品の面白さなので、アイデアを楽しんでくれるスタッフやキャストと舞台を創っていきたいです。

――そういったアイデアはどこから出てくるのでしょう。普段どのようなインプットを心がけているのですか?

もちろん観劇もしますが、舞台以外にもいろんなものを見るようにしています。映画や、脱出ゲームや、街を歩いていてふと目にする広告に注目して写真に撮ったりすることもあります。そうすると企画会議だけでなく、演出や美術の打ち合わせでも「最近こういう面白いものを見つけた」と話ができる。プロデューサーはいろんな人と話すので、多くの共通言語を手に入れて各クリエイターに示すことで、新しいものを生み出すきっかけがつくれます。社員にも「気の持ち方一つで、目についたものをスルーすることも注目することもできるから、意識的に目を凝らすように」と話しています。

借金2,500万円からのスタート

――昔から舞台プロデューサーを目指されていたのですか?

いえ。もともとテレビやラジオに関わりたくて、大学は日本大学芸術学部放送学科に入ったんです。そこで友人に誘われて舞台を撮影して編集したりするうち、当時日本テレビで深夜に放送していた『劇場中継』という舞台公演を放送する番組で働きたいと思うようになりました。けれど僕が大学卒業する直前に番組が無くなってしまって。ちょうどその頃、AND ENDLESSの西田大輔に「プロデューサーやらない?」と誘われたんです。

経験もないのになぜ誘われたのかはわからないんですけれど、学生時代はただの客であったにもかかわらず友人の舞台チケットを何十枚も売りさばいていた経験があって、たぶん、そういうところに目をつけられたのだと思います(笑)。

当時はバイト先のテレビ局で「このまま働かないか」とお誘いを受けてもいたのですが、大学院進学のつもりで25歳までと決めてプロデューサーに専念することにしました。西田の語る未来にとても心を動かされたんです。でも、びっくりするほど食べられなかった! 既に劇団で予定していた公演をすると、チケット代金では劇場費や出演者の宿泊・交通費を賄えない。西田と「俺、財布の中2,000円しかない!」と大爆笑したけれど、実際のところ笑い話じゃなくて、卒業と同時に2,500万円の借金を抱えてしまいました。

――大学卒業と同時に2,500万円の借金……それは大変ですね。

芝居の借金は芝居で返すしかない。とにかくたくさん公演をして、3年で残り800万円というところまで返済したんです。でもそこで調子に乗って、本物の雨を降らす特殊効果を演出に加えたところ、借金が3,000万円にまで膨れ上がってしまって。さすがに心が折れかけました。

そんな時、サポートしてくださるイベント会社の社長が現れました。舞台好きな社長の助けを得て、僕はその会社で自分の劇団の運営をしながら借金を返すようになったんです。1億円規模の大きなイベントを担当させてもらい、20代のうちに自分の中の幼稚だった感覚が洗練されていきました。

けれど30歳を目前に体調を崩してしまったことをきっかけに、「劇団を会社にする」ことを決意し、借金も返して独立したんです。日本の演劇人たちは、人気俳優といえどもバイトをしながら舞台に立っている人がほとんどですから、彼らが演劇でご飯を食べられるようになることが一つの目標でした。ちょうど舞台『戦国BASARA』が動き始めていた頃で、2次元を舞台化することにも可能性を感じていました。

――2次元の舞台化、実際にやってみていかがでしたか?

2.5次元舞台なら、小さな劇団が数年かかって動員できる観客数を一週間で動員できる。手掛けるに当たっては劇団経営やイベント運営のノウハウが活かせるだろうと考えていました。まさか、ここまでブームになるとは思っていませんでしたけれどね。今や毎週末新しい公演が幕を開けているような状況です。連日いろんな業種の方から参入のご相談をいただきますが、正直にお話するなら、決して儲かるビジネスではありません。ただ僕は「演劇って面白いよ、観てみない?」という気持ちで続けているだけなんです。

この盛り上がりは、80〜90年代の演劇への熱狂と近いのかもしれないですね。でも時代もブームも違うから、当時とは違う熱狂を自分たちはつくっていかなければいけない。20代の時には既にその思いがあったのですが、明確な形はイメージできていませんでした。それが今、2.5次元舞台という形でつくれている気がします。

やっていることは20年間ずっと変わりません

――舞台を手掛ける時、何を大事にしていますか?

想いは20代の頃からずっと変わっていません。ただ当初はプロデューサーがどういう仕事かもよくわかっておらず、「僕が面白いと感じるものを観て欲しい」という気持ちでした。演劇はナマモノなのでタイミングを逃すと二度と観られない。だからなんとかして面白さを伝えようと工夫していったのです。きっと、それが僕の一番の役割なんですよ。人が創った“舞台”という作品を人に繋げていく。それを20年間ずっとやってきました。むしろ、飽き性なので「2.5次元舞台はこう手掛けるんだよ」というマニュアルがあれば今日まで続けていないでしょうね。

――これから先プロデューサーとして注目していることや、手掛けてみたいことはどんなことですか?

たくさんありますよ! でも最近は40歳を目前にして、自分より若い世代のことを考えなければいけないなという気持ちが大きくなっています。特にこれからは社会全体の人口が減るので、演劇に触れたことがない人たちの比率がもっと上がっていく。演劇を見てもらう場をつくって、もっと身近なものに捉えてもらわなければ、演劇が先細ってしまうんです。だからアニメや漫画の原作をきっかけに2.5次元舞台に足を運んでいただくのも一つのアプローチの仕方だし、古典演劇やストレート舞台、ミュージカルやショーなどのエンターテインメントを最初のきっかけにしてもらうのも良い道筋だと思います。

実際、僕の父も演劇に興味がなかったのですが、勧めたらどっぷりハマっているので、同じように何らかのきっかけで触れてみたら心底好きになってくれる人は大勢いるはずです。そういう方達にもちゃんと届く作品をこれからも創っていきたいですね。それにいつかは、ノンバーバルなショーや日本から世界に発信する力がある“何か”もつくってみたい。そうやって考え始めると、やりたいことが次から次へと出てきますね。

――「面白いものを見て欲しい」という気持ちが根底にあるのですね。

そうですね。やっぱり「ねえ見て、これ面白いでしょ!」という想いが原点。突き詰めると、演劇でなくてもいいのかもしれないですね。新しくて気分が高揚するものに魅力を感じるのは僕もお客さんも同じだから。演劇は儲かる仕事ではないですが、自分がワクワクするから続けていますし、皆さんに楽しんでもらえれば幸せです。

――舞台『四十七大戦』もこれまでにない演劇になりそうで楽しみです! 下浦さん、ありがとうございました!

インタビュー・テキスト:河野 桃子/撮影:SYN.product/編集:CREATIVE VILLAGE編集部

『四十七大戦』とは

四十七大戦(1)

極東の島国日本の最果ての地、魔境「鳥取」は、人口の減少により崩壊の危機に直面する消滅可能性都市であった。この物語はそんな不毛の地を必死に支えるご当地神「鳥取さん」の奮闘の記録である。

作者:一二三
出版:アース・スター エンターテイメント
https://comic-earthstar.jp/detail/taisen/