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テレビとラジオ、人気番組の作り手が語るそれぞれのメディアの魅力とは。テレビ東京プロデューサー・板川侑右さん×MIXZONEラジオディレクター・石井玄さん対談

人気バラエティー番組『勇者ああああ』や『モヤモヤさまぁ〜ず』を手がける板川侑右さん。テレビと同様にラジオも大好きで、中学時代から深夜ラジオを愛聴するヘビーリスナーでもあります。そんな板川さんが好きなラジオ番組のディレクターを務めていたのが、石井玄さん。偶然同じ大学の同級生でもあったというお二人に、テレビとラジオそれぞれの面白さや、各メディアが向き合っている現状などについて語っていただきました。


板川 侑右(いたがわ・ゆうすけ)
2008年入社
『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ』などのADを経て『ピラメキーノ』でディレクターデビュー。
その後『ゴッドタン』『トーキョーライブ22時』等のディレクター業務を経て『ぽい図ん』という特番で初演出を堪能。
現在は『勇者ああああ』演出・プロデューサーと『モヤモヤさまぁ〜ず2』のディレクター業務を担当。

 


石井 玄(いしい・ひかる)
1986年、埼玉県生まれ。明治大学政治経済学部卒業後、東放学園専門学校を経て、2011年、サウンドマンに入社。 以来、主に深夜ラジオ番組の制作を担当。ディレクターとして『アルコ&ピースのオールナイトニッポン』『back numberのオールナイトニッポン』などを手掛け、 現在はMIXZONEに所属し、『星野源のオールナイトニッポン』『オードリーのオールナイトニッポン』『三四郎のオールナイトニッポン0』『アルコ&ピース D.C.GARAGE』のディレクターと『オールナイトニッポン』全体のチーフディレクターを担当している。

 


テレビとラジオ、ディレクターの仕事内容の違い

――大学の同級生ということですが、知り合ったキッカケはどのようなところからだったんですか?

板川 僕がラジオ大好きでずっと聴いてて、当時アルコ&ピースさんのオールナイトニッポンが特に好きで「すごいおもしろいもの作ってる人いるなー」と思って何となく調べたら石井くんがディレクターだと知って。最初はTwitterのDMからやりとりが始まったんです。

石井 だから大学時代は接点ゼロです(笑)。Twitterで板川くんが大学名を入れてたのを見て同級生だと知り、1回飲みに行きましょうってことになって。そのとき彼はゴッドタンをやってて、僕も好きで見てたので、お互い自分の番組見たり聴いたりしてるし話が合うだろうなと。

――初めに石井さんの仕事内容について伺いたいんですけれども。ラジオディレクターのお仕事というのは、テレビディレクターとは結構違うんでしょうか?

石井 テレビだとプロデューサーがいてディレクターがいてADがいて、って感じだと思うんですけど、ラジオはディレクターとADと作家さんと技術さんが基本のチームで。プロデューサーも一応いるんですが、最終決定権を持ってるのはディレクター。でも雑用もありますし出演者へのオファーもしますし、とにかく全部やるんですよね。

板川 石井くんは週4本ディレクターやってチーフDもやっていて、テレビで同じ本数やろうとしたらまずどんだけ時間あっても足りないです。だからテレビのディレクターとは全然意味が違うんでしょうね。

石井 ラジオは生放送がほとんどで、収録でもほとんど生放送と同じように録るので、はみ出しても2〜3分くらい。だから編集作業がほとんどない。その日のうちに仕事を完結させないと、次の日にしわ寄せがくるんです。

――仕事量は多いけど、編集がない分週4本できると。

石井 そうですね。大まかには枠を作るのが仕事で、あとはパーソナリティありきなので。最終的に話す内容は事前に打ち合わせしてるとはいえ、本人が話すことなので、一般的なテレビの作り方とは違いますね。色んな人の意見が入らないし、パーソナリティの意向が大きいです。

――そもそもラジオ業界に進まれたキッカケはどのような……?

石井 僕も元々はテレビ制作に興味があったんですけど、ラジオのほうが性格的に向いてそうだなと思って。大学卒業後に就職せずラジオ制作の専門学校に入り直したんですよ。そこの先生が現役で活躍してるプロの方たちだったので、コネクションを作ったりして。今の会社は普通に就職試験を受けて入りました。

――ラジオ業界って間口が狭そうなイメージです。

石井 狭いと思いますよ。僕が就職するときもテレビの求人はたくさんあったけどラジオは少なかったですね。やはり現場の人の数自体も少ないので。

ラジオならではの良さを奪いつつあるネットニュースでの書き起こし

――お二人から見てラジオとテレビの面白さの違いってどんな部分でしょう?

板川 僕、テレビのバラエティって生放送がそんなに面白くないことが多いと思うんですよ。なんでかというと、グダつく部分がグダついたまま画で見えちゃうじゃないですか。でもそれって見てる人にとってどうでもいい。一方で深夜ラジオは、夜中の1時とか3時にリスナーが今この時間を共有して聴いてる、しかもテレビよりは圧倒的に聴いてる人が少ないので、「俺だけが知ってる」みたいな秘密基地で集まってる感覚なんです。これって、深夜ラジオならではだと思うんですよね。テレビって視聴者との距離が若干遠いから、現場のわちゃわちゃも「身内で何ふざけてんだ」って見えちゃうと思うんですよ。だけどラジオは、パーソナリティの人が自分の送ったメールを読んでくれることもある。距離が近いからグダついてるのも含めて友達っぽい感覚というか。知ってる人がふざけてるから笑ってられるっていうのは、テレビではないんです。でもラジオは身内感があればあるほど「またあの人出てる」って嬉しさもある。

石井 テレビってやっぱり広く色んな人に向けて作ってるから、そういう面でみんなが広く楽しめるもの。そして、編集して完璧なものを作ってる感じがするんですけど、ラジオってそこをあきらめてるんで、たくさんの人に聴いてもらおうなんて誰も思ってない。聴いてくれるコアなリスナーに向けてやってるんで、刺さる人には刺さるんですよね。例えば通りすがりにradikoで局を切り替えて聞いてくれたとしても、全然面白くないと思うんですよ(笑)。何言ってるかわかんないし、知らない人の名前いっぱい出てくるし。でもテレビは入り口が広くないとダメだと思うので、そこの違いはすごくあると思います。

――ラジオというメディアならではのメリットやデメリットはどんな部分ですか?

石井 ラジオは音声メディアで、見えないからこそパーソナリティの方も力抜いて喋ってくれるという側面があるんですね。例えばテレビの現場でカメラが回ってスタッフもたくさんいて「なんでもしゃべってくださいよ」って言われても、絶対喋れないってみなさん言う。でもラジオは小さいブースに作家と本人しかいなくて外も3人くらいしかいないので、全く意識せず喋れるから本音が漏れるという。

それに対してネットでの(ラジオ放送)書き起こしというのが、結構今問題になってるんですけど。ネット上に勝手に書き起こしがアップされて、全体の文脈から一部が切り取られて、そこだけが注目されて炎上することがあるんですよね。ちゃんと放送全体を聴けば意味が違ってくるんですけどね。いい話を文字にしていろんな人に拡散して番組を聴いてもらうっていうのはいいんですけど。そういう側面と、「炎上しちゃうからもう喋るのやめよ」っていうのが両方ある状態で。どうすればいいかなと思ってます。

板川 ネットニュースの悪意ある書き起こしは結構見てて萎えますね。ネットニュースでラジオでこんな発言したっていう芸能人の炎上は、ほとんどが抜き出して書き起こしたらそうなるだろうっていうものばかりで。そこまで言論を統制する必要ってあるのかなと。深夜ラジオなんてそこがよかったりしますからね。

石井 (放送を)聴いてない人がネットニュースを拡散してることも多いんですけど、聴いてない人が聴いてない人に向けて言ってるから、関係ない人たちが怒ってるっていう(笑)。なんだかなって思いますね。

板川 テレビは意外と書き起こしがないんですよね。書き起こすんだったらVTR見ればいいやってなるので。テレビで言ったことで炎上するって実はそんなにないんですよ。大体芸能人のこんな発言で炎上しましたってラジオなんです。だから、さもラジオが悪いかのように報道されちゃってますけど、ちゃんと聴いた上で発信するってことをしてない人が意外と多いなとは思います。

全てのメディアに共通する、生き残るためのカギとは?

――作り手として、石井さんが今後ラジオでやっていきたいことやラジオに対する希望などはありますか?

石井 YouTubeやLINE LIVE、SHOWROOMなどのネットメディアとうまく連動して、お金を獲得できる方法を考えていきたいですよね。ネットに違法で上げられてる放送の再生数が非常に多かったりするんで。クリーンな仕組みを誰か考えてくれないかなって思います(笑)。

板川 ラジオは当たり前のように違法アップロードされてる状況も気持ち悪いですよね。YouTubeで違法アップロードされてる動画に番組のクレーム入れてる人ってどうなんだろうって思うんですよ(笑)。でもそれって、自分がやってることが違法であるっていう認識すらないから、結構やばい状況で。

石井 若い子はそういう感覚全くないんだよね。へたするとラジオはYouTubeで聴くもんだと思ってたりするので。それをなんとかうまく権利処理してYouTubeにあげたりして、パーソナリティとかスタッフにお金が行くようにならないと、ラジオがなくなってしまいそうな気がしてならないので。反面、YouTubeをキッカケに聴いてくれる人もいるので難しいところではあるんですけど。あともうひとつ、オールナイトニッポンは今年50周年でイベントとかもやるようになってるので、リスナーと直接交流しつつ、ちょっと応援してくださいっていう(笑)形で残っていかないと難しいのかなと。うまく時代に沿った形を取り入れて、ラジオを守っていきたいですね。

――板川さんは長年のラジオリスナーとして、今後ラジオはどうあってほしいですか?

板川 これはただのリスナーとしての意見なんですけど。YouTubeの違法アップロードはよくないのはもちろんなんですが、その一方でラジオって聴きづらい環境にある物だって思われてるのかなと。テレビだと日本国内だったらどこでも一定期間なら公式でしかも無料でネットで再生できる配信体制が整備されてきた中で、radikoって追加で課金しないと地方のラジオは聴けなかったりするんですよ。そういう部分がちょっとだけハードル上げてるのかと思ったりします。

石井 radikoが先に始まったわりにはね。

板川 何かしら法律とか音楽のルールがあるんだろうなっていうのはみんなもなんとなくわかってるんですけど、アマゾンプライムみたいな動画配信サービスが山ほどある中で今後はいつでもすぐ見られるもののほうに軍配が上がるに決まってるんです。そうなったときに、その辺の整備をしてないメディアがどんどん遅れていくんだろうなっていうのはラジオに限らず思います。Netflixで1,000円払えば、TSUTAYA1個買ったのとほぼ同じなわけじゃないですか。そのコストパフォーマンスを考えたときに意外と大変になってくるんじゃないかっていう。

で、次に「リアルな体験」っていうのがデカくて、コアな層に向けてモノを作っていけば、ながら見する番組ってなくなると思うんですよね。ながら見するような番組にファンっていないですから。で、深夜ラジオのリスナーは1時や3時に起きて聴いてる確実にコアなファンなわけで、逆にライブをやったらお金を落としてくれる人たちなんです。

例えば僕はリアル脱出ゲームが好きなんですけど、家でゲームするのと違って1回3000円くらいチケット代を払うんですね。普通に考えたら2時間3,000円ってそこそこじゃないですか。だけど、みんなで1つのところに集まってなんかわちゃわちゃやるっていう何かそのお祭りに参加するチケットと思えば、そんなに高くないしむしろおもしろい。同じように、ラジオもテレビもゲームも他のメディアもそうですけど、今まではただ見させられていたものを実際に体験していくっていうコンテンツを作ってそこにファンを作ることができれば、そこに5,000円6,000円、もしかしたら10,000円出してくれる人も大勢いるわけですよね。それが日本武道館や横浜アリーナでオールナイトニッポンのライブが成立してる理由でもあると思うんですけど。

だからこそ、これからどんどんメディアが多様化していく中で、よりコアな所に向けて作ってくっていうラジオの根本の考え方は、結構正しいんじゃなでしょうか。

石井 そうだね。お金が欲しいな(笑)。

“執念”がある奴は強い!

――最後にお互い聴き残したことなどありますか?

石井 この前ラスベガス行ってたよね?(笑)

板川 そうそう、先日『勇者ああああ』のロケで、ラスベガスで行われたeスポーツの大会に取材に行ったんです。僕ずっと小学校でゲームしてて、先生から「ゲームなんて将来役に立たないぞ」って言われたけど、それがきっかけで海外ロケに来られてるじゃんっていう。意外と役に立つ事もあるから何でも続けとくもんだなと思いましたね。今あの先生に会ったらマジで一言いってやりたいです(笑)。

だからとにかく好きなことがある人は強いと思うんですよ。石井くんもずっとラジオが好きで、しかもお笑いが好きで。僕はテレビとお笑いとゲームが好きで。昔は多分役に立たなかったのかもしれないけど、今って割と何でも仕事になるんですよ。eスポーツが仕事になるって昔の人は思ってなかったでしょうから。だから1個でも強い武器を持ってたほうがいいんです。ある程度技術は入ってからでも身につくんですけど、やっぱ好きな奴には勝てないんですよ。
でも、ゲームとお笑いは好きだけど映画と芝居は詳しくないってときに協力してくれるのが作家の方とかで。自分の知識が足りない分をプロの方を呼んでチームを作って一緒に番組作ろうっていうのは、テレビもラジオも共通だと思うんですけど、楽しいですよね。知識を持ってる人と持ってない人同士が喋るから新しいものを作れるし。そういうチームを作れたときに、番組やっててよかったなと思いますね。

石井 今まさに後輩のディレクターにも同じようなこと言ってますね。「何か好きなこと1個でいいからあったほうがいいよ」って。ラジオが好きなのはもうわかってるから、ラジオでどういう番組やりたいのかを聴いたときに「特にない」っていう子が多いんですよ。なんとなくラジオやりたい、みたいな。僕はお笑い好きだって言い続けてようやく芸人さんと番組できるようになったので、好きなものに対する執念がありますから。板川くんもゲーム好きだから番組やってるし、どうにかして形にしようっていう執念があるんですよね。

板川 それがないとやってらんないよね(笑)。執念っていいね。

石井 でも(ラジオの)パーソナリティの方達は僕たちの更に上の執念というか知識を持った方達で。お笑いが好きな芸人さん、音楽が好きなミュージシャンの方、そのネタ作りとか曲作りの話を聞いてると「勝てないな、ほんとに好きなんだなこの人たち」っていうのを近くで見られるんですね。そこはすごく刺激になりますし、ラジオディレクターをやっててよかったなと思います。漫才のネタを考えている芸人さんも、楽曲を作られているミュージシャンの方も、尋常じゃなく好きだからできるっていう。僕はそこまではいけないですけど、やっぱりラジオが好きだから続けられてるんですよね。

――ありがとうございました。

インタビュー・テキスト:上野 真由香/撮影:TAKASHI KISHINAMI/編集:CREATIVE VILLAGE編集部

板川さん 担当番組情報

勇者ああああ
(毎週木曜日 深夜1時35分~放送)
公式サイト:http://www.tv-tokyo.co.jp/aaaa/

©テレビ東京

石井さん 担当番組情報

TBSラジオ『アルコ&ピースD.C.GARAGE』火曜24時~25時
https://www.tbsradio.jp/dcg/
ニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』火曜25時~27時
http://www.allnightnippon.com/hoshinogen/
ニッポン放送『オードリーのオールナイトニッポン』土曜25時~27時
http://www.allnightnippon.com/kw/
ニッポン放送『三四郎のオールナイトニッポン0(ZERO)』金曜27時~29時
http://www.allnightnippon.com/sanshiro/

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