動画配信サービスの隆盛が華々しい昨今、各サービスのオリジナルコンテンツの豊富さからユーザーが選択できる番組数も格段に増えてきています。
そのような状況の中で2014年からHuluの日本版コンテンツ制作に乗り出した日本テレビ。また動画配信事業とリアルイベントの連動など、クリエイティブとそれを受け取る人との新しい出会いの場を作り出しています。今回はかつてお笑い番組『エンタの神様』でディレクター、『しゃべくり007』で演出として携わり、現在は総合編成部にてHuluオリジナルコンテンツの『TOKYO BEAT FLICK』をはじめとした音楽番組のプロデューサーを務めている、川邊昭宏さんにお話しを伺いました。

地上波の音楽・お笑い番組からHuluのコンテンツ制作へ

新卒で日本テレビに入社して20年間制作局で勤務しました。ADからスタートして、最初にディレクターとして番組に携わったのが『THE夜もヒッパレ』で、20代はずっと音楽番組をやっていましたね。そのあと30歳のときに立ち上げに携わってディレクターとして関わらせてもらったのが『エンタの神様』。35歳のときに初めて自分の企画でスタートさせたのが『しゃべくり007』。そのあと2年後に立ち上げたのが『嵐にしやがれ』という番組で、そのあとは24時間テレビの総合演出とか、40歳過ぎたところでもう一回音楽番組をやらせて頂く話しがきて現在に至ります。

最初の20代が音楽番組、30代がお笑い番組、40代になったときに音楽番組をもう一度という中で、去年初めての異動で制作局からHuluのコンテンツの企画やプロデュースも担当する「総合編成部」に来ました。単純な地上波放送だけにとどまらない、配信も含めたライブイベントや映画など、トータルリーチできるコンテンツを作る編成戦略を考える部署です。

時代の推移―配信コンテンツの台頭

『しゃべくり007』や『嵐にしやがれ』を立ち上げたときは、ここまで世の中が配信に注目している時代ではありませんでした。特に『しゃべくり007』でいうと単純に月曜10時のテレビの前にいる人たちが番組を見て、次の日、特に若い子が電車の中とかで「昨日のしゃべくりみた?」って言ってもらえるためのものをとにかく作る、という。

今うちでいうと『世界の果てまでイッテQ』がそうだと思いますが、とにかく見たら次の日誰かに喋りたくなる番組、というのがテレビの真骨頂だと思います。かつてはそれだけを意識して作っていたと思うのですが、配信コンテンツは一度伝送路に乗っかると「残るコンテンツ」なので、そういう意味でいうと何回も見られる、ということが地上波放送とは大きく違います。

放送ももちろん録画している人は何回も見ているんでしょうけれども、そこはあまり意識して作っていません。特に『しゃべくり』は刹那の美学、その瞬間だけ面白ければ良いと思って作っていました。配信はたとえば『TOKYO BEAT FLICK』みたいな音楽番組もそうですが、好きな人は何回も見ると思うので、ある種それに耐え得る映像だったり、残っていくものとして作っているというのが大きく違うな、と思います。

それが今の自分の年齢的にも瞬間的に消えていくものより残っていくものを作りたい、というのが若い頃よりも出てきているので、凄く今の自分としては配信コンテンツをプロデュースしていることにも面白さを感じています。

純粋に音楽と向き合える番組『TOKYO BEAT FLICK』の実現

地上波で紹介できる音楽というのには一定のラインがあります。たとえばある程度売れていてヒット曲を過去に何回か出している方々の新曲ですよ、ということであれば地上波で放送しても見てもらえます。

でも、まだ全然有名でなかったりもしくは、地上波の尺ではやらないアーティストさんだとか、深夜番組で1時間しかない中で何組か紹介しなくてはいけないから5分はかけられないなとか、様々な制限のなかで音楽を選んで紹介しているんです。その中でどうしても生バンドでやりたい、とかフル尺で歌いたいとか、シングルカットしていない曲を歌いたいとか、というアーティスト性が高い方々とどうやったら地上波の音楽番組は向き合っていけるのか。

でも、そういう方たちとこそ向き合っていかないと、先日放送された『THE MUSIC DAY』みたいな大型特番にその方々を口説こうというときに普段のレギュラー番組でお付き合いもしていないのに、大型特番だけ出てくださいと口説くのはなかなか難しいんです。

その流れの中で今、「配信」という新しいフィールドが日本テレビの中にできてきているわけです。当然配信は尺の制限がないので。そのような中でだったら、地上波で向き合えない大物やこだわりの強いアーティストさんと真剣に向き合うコンテンツを作るべきなんじゃないだろうか、しかもそれを一部地上波で放送できれば、地上波の音楽チームとしてもありがたいというか双方にとっておいしいスキームができるんではないか、ということで早速異動してきて作ったのが『バズリズム』とHuluとを連動させた『TOKYO BEAT FLICK』でした。

『TOKYO BEAT FLICK』 ©NTV

そこで最初にお声がけしたのがTHE YELLOW MONKEYさん。まずはHuluのために複数曲のライブをやってくださいと。そのうちのオシ曲の一曲は地上波の『バズリズム』で放送しますので、ということで。それをやって頂く代わりに、朝の情報番組だったりとかHuluの持っている深夜の番組ではしっかり特集を組みますのでということで。

そのようなかたちでTHE YELLOW MONKEYさんと向き合って成立したのが一番最初です。これが非常に好評をいただいたので、第二弾のDragon Ashさんに繋がったということですね。

オリジナルコンテンツの隆盛―今は探り探りの状態

今、丁度各社がやってどれくらいオリジナルコンテンツが日本人の国民性に根付くのかジャッジしている時期なんだろうな、というのはひしひしと感じています。つまり、日本人って生まれたその瞬間からタダで映像が見られてしまう、というのが決定的に欧米と違いますから。

正直地上波でも放送していない、宣伝もしていないオリジナルコンテンツを見るというところにどこまで日本人がお金を払うのかっていうのは未知数だなというのがありますね。だから、Huluの日本向けコンテンツを制作する際には結構少ない視聴者でもペイできるようなスキームで始めないと事業回収できないな、というのが如実にあります。いかに低コストでハイクオリティなものを作るのかというのも僕自身が心がけているところではありますね。

でも、作り手からすると、そこにオリジナルコンテンツをつくる魅力はあるのではないでしょうか。地上波では表現できなくなってきていることだったりとか、キャスティング一つを取っても地上波だとしがらみだったり、さまざまな配慮がある中で、配信コンテンツの中で本当に監督とかプロデューサーなどが作品を作る上でフラットにキャスティングができたりだとか、放送的にコードすれすれの表現ができたり。

また、視聴率だけで測れないところに出たいと思っている役者陣は多いと思うので、だからこそこれだけオリジナルコンテンツが増えているんだろうなというのはありますね。ただそれが本当に事業回収できるものなのか、それこそアメリカの『ハウス・オブ・カード』くらい大規模なものができるようになるのか、というのはみんな探り探りなのではないでしょうか。

配信事業の発展ビジョンは確かな制作力と技術力をベースに考える

それこそ日本テレビがHuluを買収して同じグループになった3年前に比べて競合他社が増えてきているので、ユーザーからすると選択の時代に入ってくると思います。Huluしか知らなかったからHuluを見ていた、という人がしっかりHuluと他社を比べてどちらかを選択するみたいなこととか、NetflixとAmazonとHuluを比べて今月はHuluの方が良いけれど、来月はHuluじゃないな、みたいな。

恐らく我々からすると厳しい選択の時代が来るのではないでしょうか。今、地上波も含めて日本テレビはおかげさまで好調なので、地上波からの送客も含めて、日本テレビとHuluのトータルでの日本テレビブランドというところで、どれだけ継続的に面白いコンテンツを切らさないで出せるかなんだろうな、と考えています。一本魅力的なコンテンツが出たら次の新しいコンテンツが出るまで3か月何もない、という状況にならないように継続的にコンテンツを出していくというのが日本テレビの制作力をベースに持つグループ全体の強みだと思うので。

そこは他社さんとは違うと思います。他社は作品によって初めての制作会社さんとやると思うので、どうしてもクオリティにバラつきがでたり、コストが物凄く高かったりすると思うのですが、Huluのオリジナルコンテンツはその点で言うと、技術力や制作力のベースに日本テレビがあるので、そういうところを最大活用しながら継続的に良いコンテンツを安価で制作できるのもHuluの強みだと思います。

特に日本テレビの制作現場の人間も、地上波番組だけでなく配信コンテンツの可能性にかなり気付き始めている頃だと思います。そのような人たちが配信用にコンテンツを作っていったときにHuluはより今のプラットフォームより面白く変わっていくのではないかな、と個人的には期待しています。

実は今、一本撮影に入っているのですが、ワンシチュエーションのドラマを撮っていて。いわゆる「シットコム」と言われるワンシチュエーションのドラマです。Huluの中でいうと『住住(SUMUSUMU)』だったり『ニーチェ先生』みたいな、場所がワンシチュエーションに限られていて、その中で巻き起こるドラマ。それもまさに地上波では中々できないような座組みで、ある種ニッチでマニアックな世界のドラマが、本番に入ったばかりです。秋冬にリリースすると思うのですけれども。そういうものもHuluでは好評を頂いているので、力を入れていきたいなと思っています。

「発明」のある番組づくりを求めて

『渡部の歩き方』 ©NTV

これから映像業界を目指すクリエイターには、誰もやったことがないことをやってほしいな、と思います。どこかで見たことがあるような番組や、流行に乗っただけの番組ではなくて、特に配信コンテンツにトライするのであれば、「そこは気付かなかったな」という番組が見てみたいので。
そこにあまり予算は関係なくて、低コストでもアイディアさえあれば突破できるのが配信の凄く良いところで、地上波と違うところだと思います。配信は登場人物一人でもアイディアさえ立っていれば凄く面白いものが多分できちゃうってことをインターネットは知らしめてくれるので。

ピコ太郎がまさにそうですけれども、誰も彼が流行るって思わなかったじゃないですか。でも、古坂大魔王さんのあのアイディアだけで世界を動かしちゃうわけですから、たぶんそういう誰も思いつかないことを「これは違うな」と思わずにやってほしいですね。そこがデジタルだったりネットだったり配信コンテンツの可能性だと思うので。特に若い子たちは気にせずやった方がいいんじゃないかなと思いますね。

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