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映画『グラスホッパー』監督 瀧本智行さん

フリーの助監督として様々な現場で経験を重ねた後、2005年に『樹の海』で映画監督デビューした瀧本智行さん。様々なタイプの作品に挑み続けてきた瀧本さんの最新作は、伊坂幸太郎の同名小説を映画化したサスペンス『グラスホッパー』。その公開に際し、ご自身のことやクリエイターへのアドバイスなど、お話を伺いました。

 

■ 映画を一生の仕事と決意した『鉄道員(ぽっぽや)』の現場

img02大学の時に映画サークルに所属しながらも、将来は新聞記者になりたいと思っていました。最初は映画監督になる気はなかったのに、映画の現場に入ったのは、7年通った大学を除籍になった時に、映画サークルの先輩が、助監督の見習いの仕事を紹介してくれたからです。
紹介された時は、迷いながら入った映画の現場でしたが、実際に働き始めると、一つの作品のために集まって、集中して制作する、ある種のお祭り騒ぎのような賑やかな感じが性に合っていましたね。

それで暫く助監督の仕事を続けていたのですが、90年代当時は助監督から監督になれる道がほぼない状況でした。最近でこそ、助監督から監督へ、という道があり得るようになりましたが、当時は本当に監督になるには狭き門で、一方で“異業種監督”が重宝される時代だったんです。

そんな中、32歳の時に助監督として参加した映画『鉄道員(ぽっぽや)』の現場は、大きな刺激になりました。監督は降旗康男さん、カメラマンは木村大作さんという大ベテランの方々と仕事をして、死に物狂いで取り組まないといけないような大変な現場でしたが、そこで素晴らしい先輩たちから刺激を受けて、「映画は一生の仕事だな」と強く思いました。一生この仕事をやっていきたい、そのためには、やはり監督になりたいと決心しました。それから、どうしたら監督になれるのかを意識して、シナリオを書くことにも真剣に取り組むようになりましたね。

 

■ “小説でしかできない” 伊坂幸太郎さんの表現を、どう映像化するか

伊坂幸太郎さんの原作「グラスホッパー」は、ある事件を機に、恋人の復讐を企てる元教師、自殺専門の殺し屋、驚異的な身体能力を持つ殺し屋の運命が交錯するサスペンスです。その3人の視点が複雑に絡み合って、錯綜して、最後には拡散していくという構造で、それが伊坂さんの文体ならではの“小説でしかできない表現”で描かれています。

(C)2015「グラスホッパー」製作委員会

(C)2015「グラスホッパー」製作委員会

それは読者としてはとても面白いのですが、そのまま映像に移行できるものではないので、映画独自の文体を見出すために、シナリオには苦戦しました。
脚本の青島武さんやプロデューサーたちと共に、どうすれば正解なのかを模索していき、決定稿の完成後も、撮影しながらも変わっていく部分が多くありましたね。

 

■ キャラクターの魅力を活かすためのバランス感覚

原作にしても映画にしても、『グラスホッパー』の魅力はキャラクターにあると思います。それぞれユニークで、個性的な登場人物がたくさん出てくるところですね。ただ、難しいのは、それぞれのキャラクターが際立ちながらも、1本の映画の中で調和を保つためのバランス感覚、緩急です。あるキャラクターが傑出して際立つことによって、他のエピソードが弱くなることもあるので、その足し引きのさじ加減が難しくて、最後まで手直しや調整を続けた部分ですね。

(C)2015「グラスホッパー」製作委員会

(C)2015「グラスホッパー」製作委員会

中でもキャラクターを描くにあたってバランスが難しかったのは、浅野忠信さん演じる鯨かと思います。自らも精神を病む自殺専門の殺し屋という設定のインパクトも強いですし、掴みきれない部分もあるキャラクターなので、どこまで分からない感じで描いて良いのか、分かりやすくなりすぎると違うし…という部分では模索しました。最終的には、浅野さんの存在感に助けられた部分が大きいかもしれません。

 

■ 生き延びるのは、我の強い人

img01映画制作の現場は、一番若手のスタッフの一言で変わることもありますし、偉い人たちの独裁的なものでもありません。だからこそ、現場の中で何を担当していても、皆もっと我を出して良いと思います。
我を出すとたいてい失敗するんだけど(笑)、失敗を恐れずに、どんどん自分を表現しよう、出していこうという意識を持つ事で、人は成長すると思うので。何もやらないよりは、何かやって失敗したことのほうが、自分にとっての財産にもなるし、10回失敗して1回何かが認められた時の自信は凄く大きなものになると思います。
そういう、自分を表現するということ、監督が何を言うかではなく自分がどう思うのか、それを人にどう伝えるかということの繰り返しが大切で。黙っていたら、ひどい目立ち方をする失敗もしませんが、それはその人がいるのかいないのか分からないという状態なので。集団でものを作るということは、集団の一人一人がいる意味は、そういうところにあると思いますね。

とは言っても、制作の現場に入ったばかりの若い方にとっては、なかなか言いづらくて…と感じることもあるかもしれません。それは、言える環境なんて基本的にはないと思った方が良いです、そこは自分で突破しなくちゃいけないもので。
僕は割と優しいですよ(笑)「どう?」と、若いスタッフに話しかけますが、昔は若手は牛や馬以下なんて言われていましたからね。牛や馬で悪いのかコラー!って言いながらやっていかないと(笑)、人は認めてくれないから。いない人と同じになっちゃうから。結局生き延びるのは、我の強い人ですよ(笑)

最初20歳で現場に入った頃、50歳の監督を「じじいがよ」って思っていて(笑)、常に上の世代がつっかえている状況なので。若い世代は、上の世代を追い出そうってぐらいの気概がないと、上にいる人間はしぶといから、待っていても席はなかなか空かないよ(笑)


■作品情報

『グラスホッパー』
11月7日(土)全国ロードショー

(C)2015「グラスホッパー」製作委員会

(C)2015「グラスホッパー」製作委員会

生田斗真 浅野忠信 山田涼介
麻生久美子 波瑠 菜々緒
村上淳 宇崎竜童 吉岡秀隆 石橋蓮司

原作:伊坂幸太郎「グラスホッパー」(角川文庫)
監督:瀧本智行『脳男』 脚本:青島武『あなたへ』

配給:KADOKAWA/松竹

■オフィシャルサイト

http://grasshopper-movie.jp/


■オリジナルクリアファイル プレゼント

s_プレゼントファイル画像殺された恋人の復讐のため、裏組織に潜入した元教師・鈴木(生田斗真)。自らも精神を病む自殺専門の憂える殺し屋・鯨(浅野忠信)。驚異的身体能力を持つ孤独な若き殺し屋・蝉(山田涼介)。
ハロウィンの夜、渋谷スクランブル交差点で起きたある事件をきっかけに、心に闇を抱えた3人の男達は次第に一つに繋がっていく…。圧倒的な存在感のキャラクターたち、そして疾走感溢れる物語に、強く惹きつけられます。
この度、本作の公開を記念して、映画の舞台となる渋谷・スクランブル交差点をモチーフとしたオリジナルクリアファイルを5名さまにプレゼント!

◆応募締切
2015年11月30日(月)

profile

瀧本智行(たきもと・ともゆき)

19661023日生まれ、京都府出身。大学在学中から自主映画制作や演劇活動をはじめ、フリーランスの助監督として活躍。助監督時代は『鉄道員(ぽっぽや)』(99/降旗康男監督)、『破線のマリス』(99/井坂聡監督)、『光の雨』(01/高橋伴明監督)、『陽はまた昇る』『チルソクの夏』(02/03/佐々部清監督)などの作品に参加した後、2005年に自身の脚本による『樹の海』で監督デビューを果たし、第25回藤本賞新人賞を受賞。社会派映画からヒューマンな人間ドラマまで幅広い作品を手掛ける。過去の監督作は『犯人に告ぐ』(07)、『イキガミ』(08)、『スープ・オペラ』(10)、『就活戦線異状あり』(10)、『星守る犬』(11)、『はやぶさ 遥かなる帰還』(12)、『脳男』(13)。

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