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~飛躍するクリエイター~ 第54回 富岡 幸春 照明

ドラマ作品を中心に照明を手がける富岡幸春。NHK土曜ドラマ「ロング・グッドバイ」<第4回 墓穴にて>で平成26年度 第34回 日本照明家協会賞 テレビ部門大賞・文部科学大臣賞を受賞した。
「みんなでいい作品にしようと創意工夫している現場が好きだし、いまこのときに、このメンバーでしかできない仕事をして、しかもそれを視聴した方から反響をいただけるなんて、本当に仕事冥利に尽きます」
それこそが、もっと面白いものをつくりたいという原動力だと語る。

 

■ 映像に憧れたスポーツ少年

いまは照明を担当していますが、実は最初はカメラマン志望だったんです。子供の頃から中学校までは野球、高校はレーシングカヌー部でずっとスポーツをやっていました。僕が生まれ育った徳島県三好市の山間部ではNHKと民放1局しか映らなかったし、とにかくスポーツ少年だったので、そんなに家でテレビを見て過ごすということもありませんでした。ただ、小学校高学年の頃に叔父が新しいビデオカメラを買って、学校が休みのときなどに録らせてもらったりして、撮影の面白さは感じていました。それが高校時代にMr.Childrenさんの「【es】〜Theme of es〜」のミュージックビデオを見て、「カッコいいなー、こういう映像ってどうやって撮るんだろう!」と。そこから映像制作にすごく興味を持つようになりました。
 高校卒業後はスポーツの方面に進もうかとも考えたんですが、カメラマンになりたい、なるためにはどうすればいいんだろうと思うようになり、調べるうちに映像制作を学べる専門学校があると知りました。ただ授業料が高いのがネックでした。それでまたいろいろ調べて、新聞奨学生制度というのがあって、授業料が免除になったり、住むところと食べることも保証されると知り、キツそうだけどそれでもやってみようと思いました。
 東京には修学旅行で行ったぐらいで、親戚も知り合いもいなかったし、体験入学に参加する余裕もなかったので、パンフレットを見て研究し、カリキュラムも設備も整っていてしっかりしてそうだと日本工学院専門学校放送メディア科(現クリエイターズカレッジ 放送・映画科)に決めました。家族は快く送り出してくれました。特に親父は左官職人だったのですが、自分も大阪に出て修行したこともあったからか、一番に理解してくれました。

 

■ 期せずして開かれた照明の道

高校を卒業してすぐに上京しました。僕は3月生まれなので、まだ17歳でした。次の日から配達の訓練、入学してからは朝3時前に起きて、朝刊に折り込みチラシをセットして約500紙配り、朝ご飯を食べてシャワーを浴び、学校に行って、夕刊を配っての繰り返し。大変でした。でも授業はすごく面白かったし、真面目に受けていました。新聞配達と学校の往復がほとんどの毎日でしたが、本屋は好きでよく通いました。写真集は高くて買えないので、立ち読みしてアングルなどを勉強したり。ずっとカメラマン志望で、実習でもカメラを担当したのですが、撮る難しさよりも、集団でものをつくる難しさばかり感じていました。
 2年生になって、先生から現在所属しているNHKメディアテクノロジーの受験を薦められました。ちょうど日曜日の朝の新聞配達を終えて部屋に帰ると「小さな旅」(NHK総合)が放送されていて、僕はいつもそれを見ながら、こういうドキュメンタリー番組をやりたい、ロケ系のカメラマンになりたいと思っていました。NHKの番組の画(え)づくりにも興味がありましたし、せっかく東京に来たんだからやりたいことに挑戦してみようと思い、それで受験し、6月には無事内定通知を受け取りました。
 入社後すぐに全業種に触れられる研修があり、その後志望の部署を聞かれて、第1希望に撮影、第2希望に小さく照明と書きました。照明は撮影と直結する仕事だし、研修で先輩の担当された番組を解説付きで見せてもらって、いろんな角度からライティングしてあれだけの光量を当ててこういう映像になるのかと、すごい技術だし奥が深くて面白そうだと感じたからでした。それであくまでも第2希望という気持ちで照明って書いたら、志望者が僕だけだったようで、まさかの照明部配属となりました。「ドラマとエンターテインメントとどっちがやりたい?」と聞かれたのですが、「照明がなんだかまったくわからないんですけど……」みたいな話で(笑)。「じゃあ富岡、ドラマやるか!」って、そんな経緯で照明を担当するようになりました。

NHK土曜ドラマ「ロング・グッドバイ」 <平成26年度 第34回 日本照明家協会賞 テレビ部門大賞・文部科学大臣賞受賞作品>

NHK土曜ドラマ「ロング・グッドバイ」
<平成26年度 第34回 日本照明家協会賞 テレビ部門大賞・文部科学大臣賞受賞作品>

担当しているときは必死でしたし、評価していただけたことはありがたく、とても嬉しかったです。ただもう昨年担当し終わった作品だと、僕は切り離して考えています。でも授賞式をきっかっけに一緒に苦労した照明スタッフのみなさんとお酒を呑んで撮影を振り返ることができたのは良かったし、すごく貴重な時間でした。

 

■ みんなでつくる醍醐味

基礎知識も何もない中でクオリティーの高い現場に付けてもらっていたのですが、照明ってなんだろう? わっかんないなーってことばかりで、3年目ぐらいまでは辞めてしまいたいという思いもありました。それが、最初は言われるままにドラマのほかにも教育番組、ニュース、生放送、中継、音楽といろんな経験をさせてもらい、やがて小さな番組を任されるようになって、ようやく照明が面白いと思えるようになりました。ただ、難しいんですよね、光をコントロールするって。イメージをそのまま完璧に表現できることなんてなくて、試行錯誤の繰り返しで、でもその難しさも照明の面白いところだと思います。
 それに、撮影部さん、音声部さん、システムさんをはじめ、技術だけでなくディレクターさん、出演者さん、美術部さんも含めて、いろんな人とひとつの番組をつくりあげていくというのは、ひとりでは絶対に味わえない醍醐味があるんです。どうやったらうまくいくか、魅力的になるかとみんなで一生懸命考えていると、想像もしていないところでいきなりすごいプラスαがボンッと出ることがあって、それもこの仕事の大きな魅力だと思っています。
 僕はあまり監督のイメージを細かく聞いてやるタイプではありません。原作や台本を読んで自分なりのイメージをつくり提案する。それがもし監督の求めているものと合わなければ、どう修正していくかというやり方です。監督も初めてやらせていただく方が多いですし、照明スタッフもいつも同じではないので、すごく新鮮な気持ちで、毎回、毎回やり方や伝え方を自分なりに考えてやってきました。だから転機となった作品は?と聞かれれば、これまでの作品ひとつひとつ、すべてだと言えます。
 経験年数の浅い人たちには、あれこれ頭で考えるより、実際に自分が体を動かす、やってみる、そこで自分で感じてみて、じゃあ次どうしようって考えることが大事じゃないかとアドバイスします。あとは、安全第一! これは絶対です。僕も現場に初めて入った時からずーっと言われ続けてきたことですし、それがプロフェッショナルの現場で一番大切なことです。
 毎回魅力的な番組にしたいという思いはずっと変わらずあるのですが、いまの目標は、仕事として2020年東京オリンピックに関わりたいということです。日本で開催されるオリンピックの番組に照明として参加し、どれだけ良質で魅力あるものをつくれるか。自国で開催されるオリンピックの現場にスタッフとして関わることができるなんてチャンスは一生に一度だろうから、楽しまなきゃもったいないと思っています。

NHK土曜ドラマ「ロング・グッドバイ」

NHK土曜ドラマ「ロング・グッドバイ」撮影現場

同じ番組でも、今日は今日、明日は明日、1日の中でも時間で切って、割り切って考えていくタイプです。いつまでも悩んでいては次には進めない。その日1日、区切った時間で一生懸命やる。それを重ねてきたからいまがあるような気がします。

富岡 幸春(とみおか・ゆきはる)

照明


1979年徳島県生まれ。高校卒業後、1997日本工学院専門学校放送メディア科(現クリエイターズカレッジ 放送・映画科)入学。卒業後1999年株式会社NHKメディアテクノロジーに入社。放送技術本部 照明部に所属し、ドラマを中心にさまざまな番組で活躍。NHK土曜ドラマ「ロング・グッドバイ」<第4回 墓穴にて>で平成26年度 34 日本照明家協会賞 テレビ部門大賞・文部科学大臣賞を受賞した。担当した主なNHK作品は、「ハチロー~母の詩、父の詩~」(05)、「坂の上の雲 第2部・第3部」(1011)、「塚原卜伝」(11)、「あっこと僕らが生きた夏」(12)、「シングルマザーズ」(12)、「真夜中のパン屋さん」(13)、「あさきゆめみし~八百屋お七異聞~」(13)、「芙蓉の人~富士山頂の妻~」(14)、「美女と男子」(15)ほか多数。

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