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フジテレビ独立直後にかけた1本の電話から始まった『闇金ウシジマくん』 プロデュース・監督 山口雅俊さん

フジテレビ在籍時代から『ナニワ金融道』などのお金をモチーフにした作品や、『きらきらひかる』等の職業をクローズアップした作品など、恋愛ドラマ全盛期の中で異色とも言えるドラマを多く手掛けてきた山口雅俊さん。その山口さんがフジテレビから独立後に企画、プロデュースなどに一貫して携わってきたのが『闇金ウシジマくん』シリーズです。金に困り“後がない”客たちに「10 日で5 割(トゴ)」、時には「1 日3 割(ヒサン)」という超暴利で金を貸し付け、返済が滞る債務者は徹底的に追い込んで回収するヤミ金「カウカウファイナンス」。冷静沈着、冷酷非道なカリスマ社長・ウシジマを山田孝之さんが演じ、深夜ドラマから映画版へと成長して大ヒットしました。ドラマ『Season1』から6年、ついにファイナルを迎える本シリーズについて等、お話を伺いました。

 

■ 『必殺仕掛人』と『木枯し紋次郎』に受けた影響

小さい頃からテレビドラマが好きで、時代劇の『必殺仕掛人』や『木枯し紋次郎』は特に印象に残っています。『木枯し紋次郎』の主人公は、弱い人に助けを求められても「私には関係ない」と言って去っていくんです。時代劇で、そんな主人公いないですよね?でも、よく考えたらその時代には、身の危険があって弱い人を助けてばかりもいられないはずで。
それに加えて『木枯し紋次郎』はキャラクターが際立っていて、『ウシジマくん』を演出する上での参考にもしています。例えば食べ方一つをとっても、洗練されていなくて、全部汁かけ飯にして食べるんです。渡世人が食べる作法を知っているわけもなくて、汚い食べ方しかできないわけですよね。それは、映画『Part2』に登場したウシジマの宿敵、女闇金・犀原茜(高橋メアリージュンさん)の演出の参考にしています。
さらに篠原涼子さん主演のドラマ『ハケンの品格』の企画を手伝った時も、『木枯し紋次郎』のように、自分の腕一本で歩いていく、というキャラクターが念頭にありました。

そして同時期に放送されていた『必殺仕掛人』。この作品の凄いところは、主人公がお金をもらって人を殺すところです。それって犯罪じゃないですか?っていう(笑)かたや「私には関係ない」かたやお金をもらって人を殺す、という時代劇の面白い2作品を見ながら、当時は自分が作る側に携わるとは思っていなかったですが、今考えると、『ウシジマくん』もその印象的だった2作品の影響を受けていますし、その2作品を見ながら考えていたことが、自分のものづくりに影響していると思います。

 

■ 恋愛ドラマ全盛期の中、異色のドラマを数多く手掛けたフジテレビ時代

僕がフジテレビでプロデューサーになった時はトレンディドラマの最盛期でした。当時のトレンディドラマを見ていると、24時間しかない1日のうち、睡眠時間を除いて8時間くらいを恋愛に費やしている人たちの物語なんです。
でも、本当は恋愛に費やす時間は数時間、数分ですよね。それ以外は仕事をしたり、お金のこと、生活のことを考えているわけで。恋愛ももちろん大事ですが、そんなに時間を使えないはずなんですよ。綺麗なマンションに住んで、恋愛の話ばかりしている人たちのストーリーが人気を集めていた中で、その既に存在するジャンルとは違うところで独自性を出したいと考えました。そこで、『きらきらひかる』のように職業に関わるモチーフが明確なものに自分自身が魅力を感じて映像化したいと思い、そのジャンルで人間ドラマを描いていくようになりました。
結果、独自性が出て、自分の得意なジャンルを確立することにも繋がったのだと思います。

フジテレビを退社して、独立しようと思ったきっかけは、『ロング・ラブレター~漂流教室~』のドラマ化でワンクール1億円の赤字を出したことで怒られたりして(笑)、今後、何かの機会で制作から離れてしまうかもしれないと思って、そこで誰にも束縛されず自分の腕だけでドラマを作っていきたいという想いがあったからですね。

 

■ フジテレビ退社直後にかけた1本の電話から始まった『闇金ウシジマくん』シリーズ

(C)2016真鍋昌平・小学館/「闇金ウシジマくん3」製作委員会・MBS

(C)2016真鍋昌平・小学館/
「闇金ウシジマくん3」製作委員会・MBS

フジテレビ退社後に思い立って、真鍋昌平さんの原作コミックを発刊している小学館に電話したんです。「SMAPの中居正広くんの『ナニワ金融道』を作っていた山口です」と電話したら、すぐに「お名前は知ってます!映像化を進めてください」となりまして。
フジテレビを辞めたら、食べていかなくてはいけないので仕事の題材を探していたんです。『闇金ウシジマくん』を読んだ時に感じた2つのポイントは、まず僕の得意分野、お金を巡る人間ドラマであるということ。そして、このハードな世界を映像化するということは自分にしかできないと思ったこと。それで電話したらOKでした(笑)

友達や周りには、転職や独立をするなら、辞めてからのことを考えておくものだと言われましたが、僕は考えていなくて、辞めてから思い立って電話しました(笑)

フジテレビを辞めてから他局の企画を手伝うこともありましたが、そのためにはクリエイター同士で説明しなくてはいけないですよね。その説明は、できるだけ少なくて済む方が良くて、なるべく少人数で作った方が良いんです。だから他局を手伝うのも良いけれど、本当は一から立ち上げた方が良くて、『ウシジマくん』のように必要であれば脚本も書き、演出もやるような仕事のスタイルが確立していきました。

『闇金ウシジマくん』に関しては主人公が犯罪者だからMBSと相談して「犯罪です」というテロップを出すことも話し合いの結果ですが、それ以外のクリエイティブな部分を大枠で信頼してもらった上で自分で作って、見てもらって、というのが理想なのでそういうやり方をしてきました。

 

■ 共に作り上げるキャスト・スタッフがいるからこその作品

(C)2016真鍋昌平・小学館/「闇金ウシジマくん3」製作委員会・MBS

(C)2016真鍋昌平・小学館/
「闇金ウシジマくん3」製作委員会・MBS

今回、原作の中から「洗脳くん編」の映像化に挑むのは、『Season3』まできたからこそだと思います。「洗脳くん編」は原作の中でも過激と言われていますが、人間の救済、自己の救済という観点では、主人公まゆみがウシジマからの借金のプレッシャーもある中で、神堂という怪物を乗り越えて、罪を償い、自分を取り戻していく壮大なストーリーです。あるポジティブなメッセージが根幹に流れていれば、個々の表現はこれまでのSeasonを踏まえて考えていくことができますし、それでギリギリ表現できるくらいの成熟に『Season3』で達したのだと思います。

しかも「洗脳くん」編のような過激なものを、映画でやるならまだしも地上波でやるのは、MBSやTBSには迷惑をかけるかもしれないけれど、地上波で表現できるギリギリのところを探りながら作っていく面白さもありますよね。

山田孝之さんとも話しているのですが、『闇金ウシジマくん』は一つの状況なんです。キャラが立っている怪物、怪獣映画の怪獣のようなものだから、そこに大きな人間ドラマはなくて。ゴジラでもガメラでも良いのですが、その状況の中に置かれる人々の側に人間ドラマがあるんです。ウシジマくん自体は立ちはだかる壁であり、そこに大きなぶれはないという話をしています。そこが僕と山田さんの間でコンセプトとして共有されているから、造形は山田さんにお任せしました。あの特徴的なメガネに、汗をかかない、瞬きをしないというキャラクターも、山田さんによって作り上げられていきました。

そういう意味では、Seasonを重ねるにつれて、作り手と役者の競争にもなっています。今はウシジマくんのキャラクターに関しては、こちらから演出的に口を出さなくても、山田さんがやってくれるものになっていますね。

撮影の面では、ズームと細かいカメラワークをそんなに使わないでやりたいという気持ちはありますね。ドラマでも映画でもそこはあまり変えないようにやっていますが、『闇金ウシジマくん』の場合、逆光を背負うというか…後ろから光を背負う…ウシジマくんが何か発言した時に、後ろからライトを当てることにはこだわりました。
あとは色味的にはアンバーというか…深夜ドラマはブルー系が多いのですが、敢えてアンバーで柔らかい色味をベースにしています。殺伐とした話なのですが、割とアンバーベースなんです。映画の場合は思う存分カメラを引いたり、寄り引きのメリハリはつけているつもりです。ライティングもそのカメラの動きに対応するよう心がけていますね。

2010年の『闇金ウシジマくん Season1』に始まり、ドラマ3シリーズ、映画4作とここまでよく来たなぁという感じはあります。振り返っても、スタッフがいるから作ることができたと思います。基本、怠け者なので(笑)撮影も、朝この時間に行かなきゃいけない、というのがあるからできるんです。小説家とかで、ずっと1人で書いているというのは凄いと思いますね。今日はいいや、とか思わないのかな?って(笑)撮影はスケジュールも立ててあって役者もいるから、監督が現場に行かないわけにいかないので(笑)そういう意味でも、共に作り上げてきたキャスト・スタッフにはとても感謝しています。


■作品情報

ドラマ『闇金ウシジマくん Season3』
MBS
7月17日スタート 毎週日曜深夜24:50~
TBS
7月19日スタート 毎週火曜深夜25:28~
ほかにて放送

(C)2016真鍋昌平・小学館/「闇金ウシジマくん3」製作委員会・MBS

(C)2016真鍋昌平・小学館/「闇金ウシジマくん3」製作委員会・MBS

キャスト:
山田孝之
綾野 剛
光宗 薫 中村倫也 佐々木心音
本多 力 久松郁実 小瀬田麻由 今野鮎莉
佐々木麻衣 卯水咲流 希崎ジェシカ 倖田李梨 ムートン伊藤
マキタスポーツ 高橋メアリージュン
崎本大海 やべきょうすけ

原作:
真鍋昌平『闇金ウシジマくん』(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中)
企画・プロデュース:山口雅俊
脚本:福間正浩
演出:山口雅俊・川村泰祐
製作:「闇金ウシジマくん」製作委員会・MBS

■オフィシャルサイト

http://ymkn-ushijima-movie.com/dorama/

profile

山口雅俊(やまぐち・まさとし)

兵庫県神戸市出身。フジテレビのプロデューサーとして、「ナニワ金融道」シリーズ(96~/CX)、「ギフト」(97/CX)、「きらきらひかる」シリーズ(98~/CX)、「カバチタレ!」(01/CX)、「ロング・ラブレター 漂流教室」(02/CX)、「ランチの女王」(02/CX)、「ビギナー」(03/CX)など数々のユニークなドラマを手掛ける。2005年に独立し、株式会社ヒントを設立。『カイジ 人生逆転ゲーム』(09/佐藤東弥監督)、『カイジ2 人生奪回ゲーム』(11/佐藤東弥監督)を企画・プロデュース。『スマグラー おまえの未来を運べ』(11/石井克人監督)、「ひみつのアッコちゃん」(12/川村泰祐監督)では企画・プロデュース、脚本を手掛ける。深夜連続テレビドラマ「闇金ウシジマくん」シリーズ(Season1,2,3)(10,14,16/MBS・TBS)で企画・プロデュース、演出を担当。映画版『闇金ウシジマくん』(12)『闇金ウシジマくん Part2』(14)に続き今年9月22日(木・祝)公開の「闇金ウシジマくん Part3」、10月22日(土)公開の「闇金ウシジマくん ザ・ファイナル」でも企画・プロデュース、脚本を手掛けるとともに監督を務めた。

TBS・MBS関連インタビュー

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