インターネット上に情報が氾濫し、多様性が求められる昨今では、Web施策も一筋縄ではいかなくなりました。サイト制作の提案をすれば売れていた2000年代後半から2010年代の初頭のように、型に当てはめて画一的な成果物を量産する「パッケージ型のWeb施策」では顧客満足につながりにくくなっています。
経営視点での提案が求められるWebプロデューサーは、オリジナリティがありつつも再現性のある施策を考える必要があります。キャリアが4年以上あるWebプロデューサーであれば、パッケージ型が流行らなくなった今、カスタムメイドのWeb施策に注目すべきでしょう。オーダーメイドではなく、カスタムメイドを推奨する理由についても紹介します。

「パッケージ型のWeb施策」では、顧客の満足を得られない時代に

Web施策のカスタムメイド_決められたプランのイメージ

パッケージ型Web施策は、現在のトレンドではありません。2010年代初頭は画一的なWebサイトを制作するだけでも商品・サービスが売れましたが、2010年代後半から2020年代にかけて、「量産型Webサイト」では他社との差別化を図れなくなりました。単に作るだけでは他社と差別化が図れなくなり、現在ではきちんとニーズ(顧客の要望)とシーズ(施策の提供価値)に基づいたマーケティングを意識し、顧客それぞれに独自の価値を提供できるWeb施策が求められています。

ニーズとシーズを両方持ち合わせることが重要に

Web施策におけるパッケージ型が流行らなくなった背景には、市場の変化が挙げられます。常に移り変わる市場において、Webプロデューサーはマーケティング思考を持って、施策を考える必要があるのです。特に重要になるのが、ニーズとシーズの考え方でしょう。Web黎明期は企業が提供できる商品・サービスの価値・強みであるシーズを前面に押し出す形でも売ることができました。しかし、顧客が求める潜在的な欲求・要望であるニーズが多様化した現在では、型に当てはめる売り方は、残念ながら時代遅れです。
それぞれの要件を正確に把握したうえで、顧客や市場が求めるニーズはなんなのか、また自社で提供できるシーズは何なのかをきちんと把握・整理したうえで提案を行うことが基本になります。

画一的なマーケティング手法から個々に向き合った手法に

多様化が進む現代において、顧客ニーズに向き合い、長い付き合いを果たすためには、LTV(Life Time Value)視点が欠かせません。長く選ばれ続ける企業になるためには、そのための努力が欠かせないため、「自社の強み」「顧客の強み」「競合の存在」という3C(Customer、Company、Competitor)を常に分析する必要があるでしょう。そして、顧客のニーズ、自社のシーズを掛け合わせた「One to Oneマーケティング」という個々に向き合った方法が主流になってきています。
「画一的なマーケティング手法」が機能しなくなった昨今においては、多様化したニーズごとにマーケットをカテゴライズし、感度の高いセグメントに対してパーソナライズされた情報を継続的に提供する必要があります。BtoCはもちろん、BtoBにおいても、取引先である顧客の関心・行動が多様化しているため、パーソナライズを避けてマーケティングを行うことは難しいでしょう。

「カスタムメイド」と「オーダーメイド」の違いとは?

Web施策のカスタムメイド_オーダーメイドのイメージ

価値観やニーズが多様化する昨今においては、パッケージ化された画一的なWeb施策は十分とは言えないでしょう。「プロダクトアウト」ではなく「マーケットイン」の視点で、顧客1人ひとりに合わせた「One to Oneマーケティング」が前提となります。しかし、One to Oneマーケティングと言っても、ある程度の「提案の型」は必要です。自社が提案できるWeb施策の「型」を事前に構築・準備したうえで、顧客の課題に合わせて調整する「カスタムメイド」が、今の時代に合っています。

「カスタムメイド」と「オーダーメイド」の違い

「カスタムメイド」に似た単語に「オーダーメイド」があります。日本人にとってはオーダーメイドのほうが慣れ親しんだ言葉かもしれません。カスタムメイドとは「ある程度の型が用意されている状態から、注文で仕様を決められるオーダー」を指します。一方のオーダーメイドとは「型が何も存在しない状態から、完全に希望に合わせて制作するオーダー」です。
1社1社にオーダーメイドの施策を考えるのは大変ですが、自社で構築した型をベースに顧客に合わせてカスタマイズする手法であれば、提案のベースで迷うことも少なくなるでしょう。つまり、企業のノウハウや成功体験を基盤とした「型」(いわゆる「勝ちパターン」)を事前に準備・作成しておけば、ゼロの状態からスタートするのに比べてWeb施策を効率化できます。自社の「強み」をベースに組み込んだうえで、他社と差別化したり独自性を出したりする手法が注目されているのです。
場合によっては、完全なオーダーメイドを余儀なくされるケースもありますが、ゼロの状態から丹念に作り上げるには、膨大な時間とコストがかかります。顧客はオーダーメイドを支持する傾向が見受けられますが、Webプロデューサーとしては可能な限り「カスタムメイドの施策」を提案する体制を構築したほうが、応用力や対応力のある制作チーム作りにもつながるでしょう。

企業のノウハウ・成功体験を基盤とした「型」を構築しよう

Web施策のカスタムメイド_成功のための勝ちパターン

個々の顧客に刺さるオリジナリティがありつつも、どの顧客にも汎用的に活用できる再現性のある施策があれば、Webプロデューサーも後世の育成に活かしやすいでしょう。Webプロデューサーは上手なやり方を構築し、それをメンバーに伝承していくことが役割です。それだけにカスタムメイドできる、企業ノウハウや成功体験を基盤とした型(いわゆる勝ちパターン)の構築はいわば不可欠だと言えます。

勝ちパターンを構築したうえでクリエイティブは個人の裁量に

企業のノウハウや成功体験を基盤としたいわゆる「勝ちパターン」が構築されてあると、担当する人が変わっても(経験が浅い若手メンバーが担当することになっても)、用意された土台をベースにして、Web施策の提案ができます。なお、勝ちパターンを確立するためには、クライアントの先にいる消費者の思考・行動を徹底的にリサーチする必要があるでしょう。Webサイト制作を受託した際には、サイトを所有する顧客だけではなく、閲覧者(消費者、エンドユーザー)を常に意識することが大切です。
「カスタムメイドしたWeb施策を提案するための基盤」を構築したうえで、クリエイティブな部分に関しては「個人の裁量」に任せるやり方を採用すれば、より自由度が高く、創造性にあふれる仕事を各メンバーが遂行してくれるでしょう。

統括的な立場から利益創出に貢献するのがWebプロデューサー

Web施策の統括的立場にあるWebプロデューサーは、自分がこれまでに会得した業務スキル・ノウハウを若手に伝承することが、将来的な会社の利益になる(企業における本質的な価値の創出にもつながってくる)と心得ておきましょう。「事業戦略」といった経営視点を持ち、「後進の育成」を常に意識しながら、勝ちパターンを構築でゼロイチを生み出すことで事業のスケールを図ることが求められます。
大切なのは、「個々の顧客に突き刺さるオリジナリティがありつつも、あらゆる顧客に対して汎用的に使える再現性のある施策」を遂行できるように、基盤となる「型」を整備し、社内で共有することです。昨今、「新型コロナウイルス感染症の流行」など、想定外の自体が発生し、ビジネスと取り巻く環境が激しく変化しています。企業が環境変化に適応し、不確実性を乗り越えていくためには、人材を育て、組織を最適化させていくことが欠かせません。

いつの時代でも、「時流に合ったWeb施策」を提案することが大切

Web施策のカスタムメイド_まとめ

【Web施策 カスタムメイドのまとめ】

  • 画一的な「パッケージ型Web施策」は、現在のトレンドではない
  • 一定の「型」がありつつも、顧客に合わせて調整するカスタムメイドが、今の時代に適している
  • Webプロデューサーは勝ちパターンを共有し、Web施策を提案する基盤を構築しよう

Webプロデューサーの仕事領域は、単なる制作に留まりません。時代の流れを読んだうえで、制作しやすい体制を構築し、そのノウハウや勝ちパターンを後世に伝承することで、事業スケールを目指すことが第一の役目となります。そのためには、マーケティング思考が不可欠であり、市場原理を正しく理解するうえでも、常にマーケットにアンテナを張ることが大切です。
マーケティング施策の精度を高めていくためには、意識してたくさんのユーザー体験をすること、上質なサービスをたくさん受けることがヒントになります。上質なサービスをたくさん受けること以外にも、生活者として何らかの商品を購入する時に「なぜこれを買ったのか?」ではなく、「なぜ他を選ばなかったのか?」を具体的な言葉にして検証してみると良いでしょう。確実にマーケティング思考力を鍛えられるはずです。そうした日々の思考のトレーニングが、時流に合ったWeb施策のヒントになるのではないでしょうか。