Webディレクターに欠かせないスキルの筆頭は「ヒアリング力」ですが、単に顧客の要求を闇雲に聞くだけでは案件の収拾がつきづらくなることもあるでしょう。ヒアリング力を高める方法としては、中学生の英文法で習う「5W1H」(When、Where、Who、What、Why、How)の活用が挙げられます。また、ビジネスシーンでは「5W1H」を強化した「5W6H」(5W1Hに「How many」「How much」「How often」「How long」「How soon」を追加)による要求定義が制作進行に大いに役立つのです。

発展型の「5W6H」はなぜビジネスシーンで活用しやすいのでしょうか。複雑なフレームワークを使いこなすことに困難を感じていたり、フレームワークに振り回されて本質から外れた議論に悩まされていたりするWebディレクターは、原点にかえって「5W6H」の活用を検討してみましょう。

報告・共有・提案の内容を具体化する「5W6H」

5W6Hについて_Webディレクターのイメージ

Webディレクターの仕事は、単なる「報告・連絡・相談」のホウレンソウではなく、顧客に対してより密に、さらにプッシュ型のコミュニケーションが取れる「報告・共有・提案」が求められます。顧客要求をより具体化するためには、「5W1H」の観点を活用することが基本です。ただ、Webディレクションにおいては「5W1H」の強化版である「5W6H」による11要素をベースとしたコミュニケーションを取ることをおすすめします。「5W6H」は下記の要素で構成されます。

【「5W6H」を構成する11の要素】

  • When いつ(時期・タイミング)
  • Whereどこで(場所・媒体)
  • Who 誰が(対象・対応者)
  • What 何を (課題・内容)
  • Why なぜ (動機・理由)
  • How どのように (手段・方法)
  • How many いくつ(規模・依頼数)
  • How much いくら(費用・予算)
  • How often どのくらい(頻度・計画)
  • How long どのくらい(期間・時間)
  • How soon どのくらいすぐ(納期・時機)

5W6Hはビジネスシーンでのコミュニケーションを網羅

「5W6H」を構成する11の要素の表組を確認すると、ビジネスシーンでよく出てくる内容を網羅していることが分かります。多くの方はこれらの11要素を「当たり前」だと思うかもしれません。しかし、Webディレクターがヒアリングの際に漏れてしまうことで、後になって要件が不明瞭なことで制作現場が混乱するというケースも珍しくないでしょう。
特に追加された「How+~~」の5項目は、よりビジネスに精通したヒアリングを可能にします。具体的には「How many(いくつ)、How much(いくら)、 How often(どのくらいよく)、How long(どのくらいの間)、How soon(どのくらいすぐ)」の5つ。多くの方が実際の現場で口癖のように言っているはずですし、Webサイト制作の現場でコンセンサスを取るためにも欠かせない要素のはずです。もしヒアリング要素に「5W6H」の内容が漏れている場合は、すぐに項目に付け足すようにしましょう。

5W6Hの中で特に重要な「How much」「How soon」

5W6Hについて_howmach

WebディレクターがWebサイト制作の打ち合わせや交渉の際に、顧客の発言内容が抽象的に感じられることはよくあるでしょう。そうした場合に、発言の真意を引き出すことがWebディレクターの役割です。全体的に5W6Hに沿って質問すれば、相手の要望は網羅できますが、「How much」「How soon」などの重要項目については、かなり詳細に聞くことを心がけましょう。

ヒアリングの際に出てくる「それいくら」「なるはや」というフレーズ

ビジネスシーンでは、高い頻度で、顧客から「その作業の料金はいくらですか」と質問されたり、「なるはやで(なるべく早めの納品を)お願いします」と要求されたりします。Webディレクターであれば、Webサイト制作の現場で耳にタコができるくらい聞いている言葉であり、さらに自身も使用頻度が高いフレーズなのではないでしょうか。つまり、5W6Hの中でも、特に「How much(いくら)」と「How soon(どのくらい迅速に)」の2つの要素を聞き漏らすことがないようにしましょう。
特に追加要件が発生しそうな場合、顧客は必ず「いくら?」と聞くはずです。また、Webサイトの納品を急ぎたい場合は、各工程で「なるはやでお願いします」とオーダーすることでしょう。Webディレクターは、顧客の考えを想定して対応するのではなく、常に「How much」と「How soon」を意識しながらヒアリングし、具体性のある回答を引き出すことを常に意識する姿勢が求められます。

「要求定義」と「要件定義」を明確に区別することが大切」

5W6Hについて_wantとneed

Webディレクターには「ヒアリング力」が欠かせませんが、ヒアリングのスキルを有しているだけでは顧客の要求をやみくもに受け入れてしまい、案件の収拾がつきづらくなる可能性があります。Webディレクションの業務は、5W6Hを意識しながら「要求定義」(「顧客が何を実現したいのか」を整理・具体化すること)を行うだけでは不十分です。スムーズにプロジェクトを進行するためには、「要件定義」(「自社が対応する内容」を明確化すること)も欠かせません。

「要求定義」と「要件定義」は明確に区別すべき

顧客の要求をすべて受け入れていると制作側が辛い状況に陥る場合があるので、それをセーブするのもWebディレクターの役割の1つです。基本的に要求定義の内容を、そのまま要件定義の内容にしてしまうのは絶対にやってはいけないタブーと言えるでしょう。大切なのは、「顧客がやりたいこと(要求)」を汲み取ったうえで、明確に線引きを行って「自社が対応する内容(要件)」を定義することです。

Webディレクションの業務は、「協力的な顧客とスムーズにやり取りを行える」という順風満帆なものばかりではありません。Webディレクターの中には、「次から次へと顧客から要望が追加され、そのまま受け入れたところ、スタッフが徹夜続きになった」「大変な思いをしたのに、追加料金を請求できなかった」という経験をお持ちの方もいるでしょう。

しっかりと要件定義を行って書面(要件定義書)を作成しておけば、後から顧客が「こちらが言ったことをやってくれていない」などと主張してきた際に、「要件定義書に記載されていない事項なので、対応できません」と毅然とした態度を取ることも可能です。ただし、必要もないのに「ケンカ腰」になるべきではありません。制作進行の業務を遂行する際には、要求と要件を峻別したうえで、丁寧に説明を行って顧客に納得してもらいましょう。

「5W6H」を操って、MECEなWebディレクターになろう

5W6Hについて_まとめ

【Webディレクター 5W6Hまとめ】

  • ビジネスシーンでのコンセンサス獲得には「5W6H」の疑問詞を活用しよう
  • ヒアリングをする際には、特に「How much」「How soon」を意識すること
  • 顧客の要求を汲み取ったうえで、明確な「要件定義」を行うべき

中学校の授業で習う「5W1H」。基本的な疑問詞であり、コミュニケーションを行う際の基本です。ただし、Webディレクターの中には、5W1Hが抜け落ち、抽象的なヒアリングに終始してしまう人もいるでしょう。ビジネスシーンでは、5W1Hに「How many」「How much」「How often」「How long」「How soon」を加えた「5W6H」を活用しましょう。なお、高頻度で顧客から「料金はいくらですか」「なるはやでお願いします」と言われます。そのため、特に「How much」「How soon」を意識してヒアリングを行いましょう。

5W6Hが役立つのは、「要求定義」の場面(顧客の「やりたいこと」を整理・具体化するシーン)です。要求定義の内容は、そのまま「要件定義」の内容になるわけではありません。ビジネスにおいては、「顧客がやりたいこと(要求)」を汲み取り、それと区別したうえで「自社が対応すること(要件)」を明確に定義することが不可欠です。だからこそ、5W6Hの11要素をうまく活用して、ヒアリングに抜け漏れがないMECEなWebディレクターを目指しましょう。