日本は労働人口が減少傾向にあり、働き手が不足している状態が続いています。求職者が仕事を選べる売り手市場が続いており、企業は優秀な人材を確保するために採用にこれまで以上力を注いでいる傾向が目立っています。そうした背景もあり、近年の採用活動で注目されているのが採用動画です。採用動画では採用インタビューを掲載する企業が多く、有名企業を筆頭にさまざまな採用動画を目にする機会があります。
採用動画によって求職者に自社のイメージを伝えることは、どんな効果があるのでしょうか。そして、採用動画を制作する際は何がポイントになるのでしょうか。4年以上のキャリアを持つ映像ディレクター向けに、採用動画のメリットに加え、自社ブランディングの側面についても紹介します。

求職者へのアピールに留まらない採用動画の活用

採用動画とブランディング_動画のイメージ

企業が制作する採用動画と聞くと、どんなコンテンツをイメージするでしょうか。一般的な採用動画は、企業が自社の仕事内容や職場の様子などを動画にします。そのため、バリエーションのあるコンテンツを作ることが可能です。なおかつ他のプラットフォームでリンクを経由せずにプラットフォーム上でそのまま見せられる、流用できるというメリットがあります。企画構成・配信プラットフォームにより、尺・ジャンルに自由度があり、インパクト重視に振り切った演出のCMを作ることもできるでしょう。

求職者が企業選定において注目する採用動画

採用動画は会社代表や先輩社員からのメッセージ、1日の流れ、部署紹介、会社イベントなどを網羅的に伝えることで求職者がより具体的なイメージをしやすいようにする構成が一般的です。これまでの採用活動は求人広告を出稿したり、インターンで求職者に仕事を体験してもらったりする方法がありました。しかし、YouTubeなどを中心とした動画コンテンツの普及によって、採用動画の需要が高まっています。
求職者側も採用動画を閲覧する機会が増えています。レバージ株式会社と株式会社プルークスの合同調査「就職活動におけるスマートフォンの活用と採用動画視聴に関するアンケート調査」によると、約半数の学生がYouTubeで採用動画を視聴していることが分かりました。また、採用動画によってその企業への志望度が向上した学生が6割ほどになっており、採用動画の意義がより高まっています。

テキストよりもイメージを想起しやすい動画コンテンツ

求職者が採用動画を重要視するのは、テキストなどよりも分かりやすい面が挙げられます。企業としても動画であれば、バリエーションのあるコンテンツを作ることが可能です。動画コンテンツは、視覚、聴覚に訴えかけることができます。
また、もっとも需要がある採用コンテンツは自社のオウンドメディア上のコンテンツだと考えられますが、自社のオウンドメディアとなると採用コンテンツとしての縛りがあるなど、自由度に欠ける場合があります。一方の動画コンテンツは企画構成や配信プラットフォームによって、尺・ジャンルに自由度があるため、インパクト重視に振り切った演出の動画にすることも可能です。
制作した採用動画は採用活動だけではなく、結果的にインナーブランディングにもつながります。これは求職者向けに自社の魅力を発信していくため、働く人にどういう見え方の会社にしたいのかという内省が必要になるからです。このように採用動画の制作は、さまざまな面に価値をもたらします。

テキストで伝わらない魅力を伝えるのが動画の価値

採用動画とブランディング_Web動画のイメージ

文字だけでは伝えきれない職場・社員・代表の雰囲気も伝えられる点は採用動画のメリットです。採用におけるミスマッチをなくせるという利点があり、動画を視聴して面接に来る求職者は入社へのモチベーションが高い、または上がるという傾向にあります。また、TikTokなど若者が使うSNSでの動画マーケティングも採用現場で活用されているようです。

求職者はよりリアルな現場での情報を欲している

企業の成長性や事業内容、沿革といった情報も重要ですが、求職者は「実際に自分が就職した時にどんな仕事をするのか」「やりがいは感じられるのか」「将来的にどのように成長できるのか」などに興味がある傾向にあります。求人票や募集要項だけでは見えてこないリアルな職場の様子は、社員の生の声からしか出てきません。
そうした社員の生の声はテキストと写真で伝えるのがベーシックではありますが、動画コンテンツであれば社員本人の雰囲気から感じ取れるものがあります。テキストでは伝えきれない雰囲気が伝われば、採用後のミスマッチも防げるでしょう。また、先述のとおり、動画を視聴してから面接に来る求職者は入社へのモチベーションが高い、または上がる傾向があります。企業としては意欲的な求職者により多く出会えると言ってもいいでしょう。

採用動画も多様な手法での発信を

採用動画で社員インタビューを起こす場合は、事業部や役職ごと、新卒、中途採用などさまざまなカテゴリで再生リストを作ってみるといいでしょう。できるだけ幅広い立場の社員インタビューをまとめることで、求職者が将来を段階的にイメージできるようになります。
近年ではTikTokなど、若者が使うSNSでの動画マーケティングが採用現場で活用されています。TikTokはスマホだけで動画の撮影や編集ができることから、コストをかけずに企業の情報を発信することが可能です。TikTokのユーザー層は30代や40代にも増加傾向であるものの、まだまだ若者向けのイメージがあるため、特に新卒向けのコンテンツ制作では有用でしょう。

採用動画では「求職者が知りたいことが伝わる」を重視

採用動画とブランディング_新卒採用のイメージ

一般的に企業イメージ・ブランディングの側面を持った動画の依頼が増加傾向にある。採用動画やコンテンツの発達とともに、採用活動における新卒・中途求職者の目も肥えてきていると言えるでしょう。採用動画においては、企業にとって自社が知らせたい情報を知らせるプッシュ型のコンテンツになりがちな点には注意したいところです。求職者が知りたいことが伝わる動画になるようにわかりやすく伝えるディレクションが不可欠となるでしょう。

求職者のニーズを見誤らないディレクションが重要に

より求職者のニーズにささるコンテンツ制作や、インサイトを踏まえた採用マーケティングをコンセプトとした動画制作が求められています。採用動画は、求職者が知りたいことが伝わる動画になるように、分かりやすく伝えるディレクションが必要になることは他の動画制作と変わりません。採用動画を制作する時は、採用したい人物像の設定、採用動画の目的の決定、制作・公開が大まかなステップです。採用したい人物像の設定は重要であり、それが決まることで動画の内容や伝え方が決まります。
ここで「なんとなくこういう人物」「できるだけ高学歴な人物」という、自社の課題から直接的に抽出できたとは言いにくい人物像を設定している場合には注意が必要です。事業戦略における課題、採用を通じて事業や組織に与えたい影響を洗い出して、そのために必要な人物を設定することが重要になります。

採用動画によって達成したい目的を明確に設定する

採用したい人物像の設定が済んだら採用動画の目的を決めていきます。これは採用動画を通じて何を達成したいかを検討することが重要です。たとえば、これまで入社後のミスマッチが課題であれば、やはり求職者が知りたいことを伝えられるインタビュー動画などが効果的でしょう。
採用動画で伝えたいことを決めたら、いよいよ制作・公開です。SNS上のコンテンツの活用や、最近注目を浴びて大手でも活用が増えてきたインタラクティブ動画に関するリサーチ、トレンドの把握などを通じて求職者に伝わる動画を制作しましょう。

採用動画はどの企業にとっても当たり前の施策に

採用動画とブランディング_まとめ

【採用動画の自社ブランディングのまとめ】

  • 採用動画は使い方次第で活用パターンが幅広い
  • 動画だからこそ伝えられる価値を上手く活用すべし
  • あくまで採用という目的に則した動画構成が必要

採用動画はクライアント向けに自社のUSPを訴求するのではなく、求職者に向けて自社の魅力を発信していくために、人事が中心となってどんな会社かを魅せることに力点を置くのが基本です。結果的にインナーブランディングにもつながるので、複合的な意味合いで制作する価値があると言えるでしょう。
採用動画を効果的に仕上げることで求職者の印象に残ったり、ミスマッチを減らしたり、採用コストが削減できたりするなど、さまざまなメリットがあります。さらにSNSでの発信を加えれば、より多くの求職者にアプローチすることが可能です。トレンドとしてはTikTok活用が一番顕著な例と言えます。スマホ1台あればコストをかけずに会社情報を発信できるため、大手企業は採用マーケティングの一環として、新卒を取れる余裕のある中小企業は今後も活用が予想されます。
また、採用動画を制作する際は、あくまでも採用という目的に即した動画構成が必要です。採用したいと思う人物像の設定、動画の目的を十分に検討したうえで制作に移りましょう。SNS、インタラクティブ動画やトレンドのリサーチを踏まえ、採用動画を仕上げることが求められます。