AI生成画像があふれる時代に、実在する作家の表現を守り、世界へ届ける新たな場が生まれた。株式会社miramiruと株式会社TAIINは2026年4月13日、作家一人ひとりが自らの作品のみで構成する「個人ギャラリー・美術館」をメタバース上に構築し、発信と販売までを一体化できるサービス「カスタム アート ギャラリー」を正式にローンチした。
このサービスは、単なるオンラインポートフォリオではない。作家の思想や世界観を空間そのものに反映させ、鑑賞体験と購買体験を統合した汎用型のプラットフォームである。基盤にはメタバースプラットフォーム「Spatial」を採用し、PCやスマートフォン、VRに対応する。URL一つで世界中から24時間アクセスでき、一度構築した空間は解体されず、作家のキャリアとともに永続的に残り続ける点が特徴だ。
事業立ち上げの背景には、AI時代特有の表現環境への問題意識がある。2026年現在、SNS上にはAIが生成した画像が大量に流通し、長い時間をかけて制作された作品であっても数秒で消費されてしまう状況が常態化している。一方、物理的なギャラリーでの個展は、搬入や搬出に高額な費用がかかり、展示期間も2〜3週間程度に限られる。地理的制約も大きく、作品が届く相手の数には限界があった。両社は、表現者が世界と直接つながるための「場所」が決定的に不足していると捉え、このサービスの開発に至った。
カスタム アート ギャラリーでは、鑑賞者が実際の美術館を歩くように空間内を自由に移動できる。照明の角度や空間設計、音響、音声ガイドまで含めて演出することで、絵画や写真、染め物などの物理作品が持つ質感や存在感を可能な限り再現する。デジタルアートにおいても、単なるデータ表示にとどまらず、作家の息遣いを感じさせる体験を目指すとしている。
また、展示空間には直接購買システムを組み込み、作家とコレクターが仲介を介さずにつながる仕組みを整えた。これにより、輸送コストや保険料といった物理的負担を抑えながら、東京で生まれた作品がニューヨークやロンドン、シンガポールの鑑賞者に瞬時に届く環境を実現する。作品展示だけでなく、作家の創作の軌跡やメッセージをアーカイブとして残せる点も、物理展示にはない利点だ。
料金は、最大20点の作品を収蔵できるベーシックプランが税込98,000円で、月額費用は不要とした。一度制作すれば永続的に利用でき、作品追加にも対応する。さらに、空間設計から照明、音響、ナビゲーションまで作家の世界観を完全再現するオリジナルプランも用意し、規模を拡張して美術館として構築することも可能だという。
本プロジェクトは、カルチャーウェブマガジン「cinefil」の運営やオリジナルIP開発を通じて表現者の活動を支援してきたmiramiruと、CG制作やメタバース空間設計を手がけるTAIINの協業によって実現した。テクノロジーを効率化のためではなく、「表現の尊厳を守るため」に使うという思想が根底にある。
正式ローンチを記念し、両社は独自の表現世界を持つ作家3名を対象に、ベーシックプランを無償提供するオープン記念モニターを募集している。対象は絵画や写真、染め物、グラフィックなどの平面作品を制作する作家で、プロ、アマは問わない。応募は特設サイトのフォームからポートフォリオと作品に込めたメッセージを添えて行い、締め切りは5月15日としている。
AIによる均一化が進む中で、わずかな感性の共鳴を積み重ねることこそが最大の抵抗になる。両社はそうした信念のもと、メタバース上に「消えない個展」という新たな選択肢を提示した。
