全国に5店舗を展開する次世代型書店「天狼院書店」が、この夏、異色の挑戦に踏み切る。「本だけではなくその先の体験」を届けることをコンセプトに掲げる同書店は、ブックカフェとして運営する旗艦店「天狼院カフェSHIBUYA」にて、「映画×演劇」を融合させた公演『劇場版 百秘本物語』を上演することを発表した。
『百秘本物語』とは? 残された謎が舞台で解き明かされる
『百秘本物語』は、昨年から天狼院書店がInstagramやYouTubeなどで無料公開してきたショートムービーシリーズである。何者かに囚われた少女たちが、ミッションクリアのため強制的に本を読まされるという設定で、本を読み終えた際に聞こえる「読了されましたでしょうか?」という不気味な音声が印象的だ。ショートムービー版では、4名の女性が囚われるものの、その後の行方は描かれず、多くの謎が残されていた。今回、天狼院書店はこの謎の解決編を「舞台演劇」として上演する。
天狼院書店が独自に展開する「秘本」が物語の鍵に
物語のタイトルにもなっている「秘本」とは、天狼院書店が独自に展開する書籍商品である。店主・三浦崇典氏がセレクトした珠玉の物語が、タイトルを隠した黒いブックカバーに包まれて販売されており、「タイトル秘密」「返品不可」「他人に教えない」という三つのルールを守れる者だけが購入を許される。長年同店の人気商品として展開されてきたこの「秘本」の中から新たに100冊をセレクトしたのが「百秘本」であり、ショートムービーではそれぞれの書籍に割り当てられたナンバーと、その物語にインスピレーションを得た別の物語が展開される仕組みだ。
なぜ書店が「演劇」を上演するのか? アナログの価値を再定義
右肩下がりの出版業界において、天狼院書店は「本だけではなくその先の体験」を提供し、「お客様の人生を変える」ことをコンセプトに掲げる特異な存在だ。書籍販売だけでなく、ライティング、小説創作、マーケティング、健康、さらには近年人気のAI系講座など、多岐にわたる講座やイベントを企画運営し、全国から参加者を集めている。
しかし、なぜ書籍販売や講座とは一見かけ離れた「演劇」に挑戦するのか。代表の三浦氏は「AIやデジタル優勢の流れは止められないが、だからこそこれからは“アナログ”の価値が再認識される」と語る。デジタルやAI技術とは程遠い「演劇」は、目の前で生身の俳優が演技し、その熱量や“空気”ごと楽しむエンターテインメントである。デジタル/オンラインが隆盛を極める現代において、一見逆行するプロジェクトに見えるが、だからこそ“生”で行われる「演劇」は、これまで以上の価値を持ってくるだろうというのが天狼院書店の考えである。まさにそれこそが、天狼院書店が顧客に届けたい「体験」なのだ。
「映画×演劇」で描かれる物語の結末、そしてAIを理解する者への仕掛けも
今回の公演は、先行して公開されてきたショートムービーの上映とセットで行われる。物語の解決編となる本作をより深く楽しむためには、映画版の展開を知っておくことが推奨されている。映画シリーズから引き続き出演する女優の悠木紫真に加え、ホリプロインターナショナル所属の藤咲めぐみ、元AKB48の女優・下口ひななが演劇版では重要な人物を演じる。そして、謎の男として登場する石綿大夢が物語にどのような影響を与えるのかにも注目が集まる。
さらに、数々のAI系講座を展開する天狼院書店ならではの仕掛けも盛り込まれているとのこと。生成AI隆盛の昨今、その仕組みや仕様を理解している層にも楽しんでもらえるような工夫が凝らされているという。
書店が街から姿を消しつつある現代において、様々な取り組みで生き残りを模索する書店が増えている。その中で、講座展開やイベント開催を通じて「アナログ」の価値を再定義しようとする天狼院書店の新たな挑戦は、書店業界に一石を投じるものとなるのか。ぜひ、その目で確かめてみてはいかがだろうか。
引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000162886.html