フォントメーカーの株式会社モリサワは、佐賀県上峰町の中心市街地活性化事業の一環として、まちづくりの理念を視覚的に表現したオリジナルフォント「カゼマチ明朝」を開発した。開発にあたっては、町と民間事業者による合同会社つばきまちづくりプロジェクトと協力し、地域の風土や住民の思いを丁寧に汲み取ったデザインが実現された。

「カゼマチ明朝」は、モリサワが手がける明朝体「A1明朝」を基に、やわらかさと自然な温かみを意識して設計された書体である。交差部分には墨だまりのような風合いを残し、やや平体気味のプロポーションに整えることで、落ち着きのある独特な印象を与える。町のスローガン「自由が吹く。」と呼応するような、開放感と親しみを兼ね備えたフォントに仕上がっている。

このフォントは、上峰町の新たなランドマークとして整備された「道の駅かみみね」の案内サインに採用されている。今後も施設内外の案内表示や看板、解説キャプションなど、さまざまな場面での活用が予定されており、町の景観に統一感をもたらすとともに、地域ブランドの強化にも貢献すると期待されている。

フォントという視覚的要素を通じて、住民の地域への愛着や誇りを育み、まちづくりを支えることがモリサワの狙いだ。同社は今後も、地域とともに歩むデザインソリューションの提供に力を注ぐとしている。

モリサワは、2,000書体以上を利用できるフォントサブスクリプション「Morisawa Fonts」や、ユニバーサルデザインに対応した「MORISAWA BIZ+」、Web向けフォントサービス「TypeSquare」など、用途に応じた多様なサービスを展開している。今回の取り組みもその延長線上に位置づけられ、フォントを通じて社会に貢献するという企業理念を体現したものといえる。