モバイル市場の成長が加速している。アプリ市場の調査会社Sensor Towerが発表した「2025年版モバイル市場年鑑」によると、2024年のモバイルアプリの消費者支出は、iOSおよびGoogle Playを合わせて1,500億ドル(約22兆円)に達し、過去最高を更新した。前年比13%増となり、2021年以来の最高成長率を記録した。
モバイルアプリ市場は成熟しつつある。2024年のアプリダウンロード数は1,360億件となり、前年比ほぼ横ばいだった。新規スマートフォンユーザーの伸びが鈍化する一方で、消費者のアプリ使用時間は増加傾向にある。iOSとGoogle Playの合計利用時間は4兆2,000億時間に達し、1人あたり1日平均3.5時間をアプリに費やしている。
しかし、一部の国では「デジタル疲れ」の影響も見られる。アメリカ、日本、韓国、中国などの主要市場では、使用時間が横ばいとなり、世界全体でも前年比5.8%増と成長率が鈍化した。
2024年のゲームと非ゲームアプリの収益動向を見ると、アプリ収益を牽引したのは非ゲームアプリで、前年比23%増の成長を記録した。一方、モバイルゲーム市場は2年連続の減少から回復し、前年比4%増の810億ドルに達した。ストラテジー、パズル、アクションゲームの成長が顕著で、規制強化や市場の変化にも適応している。
地域別市場の成長を分析すると、アメリカは依然として最大の市場であり、2024年のアプリ内課金(IAP)収益は520億ドル(前年比16%増)と、世界全体の3分の1以上を占めた。一方、ヨーロッパ市場の成長率は前年比24%増と、アメリカを上回る伸びを見せた。特にイギリス、ドイツ、フランス、イタリアなどが市場拡大をけん引した。
AIがモバイルアプリ市場を変革しつつある。AI関連アプリの成長も著しい。AIチャットボットや画像生成アプリの2024年の収益は13億ドルに迫り、AI技術はモバイル市場における新たなマネタイズ手法として確立されつつある。アメリカがこの分野の市場をリードし、世界収益の45%を占める。日本やドイツ、カナダも主要市場として名を連ねている。
また、AIの活用はチャットボットや画像生成にとどまらず、教育、金融、ライフスタイル、音楽、ショッピングなど多岐にわたる。『Duolingo』や『Strava』といった人気アプリもAI機能を活用し、ユーザーエクスペリエンスを向上させている。
今後の展望として、「デジタル疲れ」が広がる中、リアルとデジタルを融合したアプリ市場が成長している。健康・フィットネス、食料品店、レストランアプリなど、実体験と結びつくサービスの需要が高まっている。
また、動画ストリーミングやSNSアプリでは使用時間の伸びが鈍化する一方で、収益は急成長している。さらに、暗号通貨アプリもビットコイン価格の上昇などを背景に活況を取り戻しており、2021年以来の盛り上がりを見せている。
Sensor Towerのレポートは、10業界・20以上の市場を対象に、モバイル市場の最新動向を詳細に分析している。レポート全文は無料でダウンロード可能だ。