はじめまして。core words株式会社のCEO兼クリエイティブディレクター、佐藤タカトシと申します。

大手情報会社系列の制作会社にて、クリエイティブディレクターとして、100社以上の採用広報のサポートを行いました。その後、ディー・エヌ・エーにて3年間、自社の採用活動に従事。主にデザイナー職の採用を担当し、数百名の転職志望者の方と接してきました。

さて、こちらの連載では、Web系デザイナー(一部のゲーム系デザイナーの方も含む)の皆さまのキャリア形成にお役に立ちたいと思い、「元・クリエイター」かつ「元・採用担当」かつ「現・制作会社の経営者」の経験を元に、さまざまなノウハウを書かせていただきます。

ここ3年くらいで、デザイナーが担える領域と、社会からの期待が急速に拡大しています。例えば、スマホアプリの領域で、UI(ユーザ・インターフェース)デザイナーという職種が生まれました。画面遷移やフリックやタップなど、機能面のデザインにも踏み込むことが求められます。そして、UX(ユーザ・エクスペリエンス)デザイナーという職種も生まれました。サービスが生み出す「価値」や「体験」をデザインする仕事です。

このように、デザイナーが担うべき領域が広がっている中、これからのキャリアのつくり方として、大きく以下の3つの道があるかと思います。

(1)デザイナーとしての道を極める
(2)企画者として上流から携わる
(3)コーディングスキルを身につけ、実装全てを担う

まず、「(1) デザイナーとしての道を極める」 です。デザイナーからキャリアを始め、アートディレクターとして統括する立場にステップアップする道です。広告代理店や制作会社では王道のキャリアですが、特にWebやスマホ(ゲームも含む)の領域においては、「アートディレクター」という職種は、今後は一般的なものではなくなる可能性があります。「指示を出すだけで、自分は手を動かさない」アートディレクターの求人は、ここ2-3年でかなり減少しています。

特にスマホのアプリ開発の現場では、微妙な手触りや使い心地が、見た目のデザインと同様に重要になることが多く、「クライアント→ディレクター→アートディレクター→デザイナー」の伝言ゲームでは、いいモノをつくり出すことが難しくなっているからです。これからの時代において、「デザイナーの道を極める」ということは、「アートディレクターになる」ではなく、「アートディレクションもできるデザイナーになる」ことを意味するのだと感じています。

次に、「(2) 企画者として上流から携わる」 についてですが、このキャリアは多くの企業から求められているものと言っていいでしょう。企画からデザインまでワンストップで行えるのは、スピードだけではなく、ブレのないクオリティを体現できるという意味でも、大きな価値があります。クライアントや自社サービスの責任者との打ち合わせの中で、実装予定の機能を即座に可視化できるのも、非常に有用です。では、どうすれば、企画力を身につけることができるのか。「もっとこういう機能をつけたほうがいいのでは」「ペルソナとサービスの提供価値がずれている」などといった指摘を日頃の打ち合わせの中で行うことや、業務外でアプリをつくってリリースすることが効果的です。これからのデザイナーのキャリアとして、おそらくひとつの主流になり、市場価値も上昇するのが、この「プランナー兼デザイナー」だと思います。

最後に、「(3)コーディングスキルを身につけ、実装全てを担う」、つまり、「デザイナー兼エンジニア」という働き方です。(2)の企画スキルを身につけるよりも、難度は高いかと思いますが、市場のニーズは非常に高い印象です。「ワンストップで実装ができる」ことの価値は、初回のローンチまでの開発はもとより、その後の運用のフェーズにおいても、より高まってきています。自らで実装まではできなくても、コーディングおよびシステム構築における実現可能性や工数が読めるデザイナーになれれば、重宝されるのは間違いありません。また、表現の自由度が高まっている中で、自分独自の手法を確立することもできるでしょう。独立を目標にしている方、もしくはすでに独立されている方で、「単価を上げたい」という方には、とても有効な手立てになりえます。

デザイナーへの期待は、大きく、幅広くなってきています。また、上記のように、キャリアの起点としても、他の職種に比べて有利なポジションにあると言えます。一人でも多くのデザイナーの方が、よりよい自らキャリアを築いて行っていただければと切に願っています。

次回は、「デザイナーの新しい転職活動」について書かせていただきます。引き続き、よろしくお願いいたします!