【メディアで一人勝ち!?するためのアイデア論】
このコラムは、CHOCOLATE Inc.の若手プランナーによるリレー形式で3回にわたり連載します。
様々なメディアの第一線で活躍している気鋭のプランナーが集うコンテンツスタジオCHOCOLATE Inc.。ユニークな個性が融合し、そこから生み出される数々のコンテンツは、国内のみならず海外でも注目を集めています。
当コラムでは、その制作の過程で積み重ねてきたCHOCOLATE独自のノウハウをおしみなく伝授!
第1回目は、プランナーで6秒商店店長の島村ビギさんによるコラムです。

第2回:ゲームから読み解く、人を動かす令和時代のコンテンツ カイジエンド
第3回:展示空間における心を動かす体験づくり 保坂夏汀

こんにちは。CHOCOLATE Inc.でプランナーをしている島村ビギです。
6秒商店は、CHOCOLATE Inc.が運営している「あったらいいなという商品アイデアを6秒の短尺動画で届けるアカウント」です。昨年の10月に立ち上げてから、各種SNS累計13万フォロー、動画総再生回数は6000万回を突破しました。特に立ち上げの3日目に公開した「魔法陣充電器」はTwitterで20万RTを超え、国内外問わず大きな話題を生むことができました。

私の肩書きは、「プランナー」かつ「6秒商店の店長」です。「6秒商店の店長」とは、6秒商店の全体戦略という上位レイヤーから、チーム単位でのブレスト、アイデア選定といったアイディエーション、個々の動画の撮影や編集などのディレクションを行う立場です。

そもそも6秒商店はなぜ「6秒」商店なのでしょうか?本稿の前提となる話として、「短尺」と「動画」という2つの軸からこのことをご説明させてください。

まず短尺である理由についてですが、動画コンテンツの中でも、短尺動画はその短さ故に視聴完了率が高くなり、それに相まって拡散性が高くなる傾向があります。
「まずはアイデアを多くの人に見てもらい反応を確かめる。そしてその反響に応じて商品化を検討する」という戦略で立ち上がった6秒商店にとって、多くの人に届けやすい。
短尺動画であることは必然でした。6秒商店は「6秒」に必ずしもこだわっている訳ではありませんが、実際に動画広告でも「6秒」がひとつの尺として機能しているのは、多くの広告テストでの結果をもとにしているようで、視聴性・拡散性を考えるとこれがベストの秒数と言えそうです。

もう1つの「動画」である理由についてですが、Twitterにおける拡散性でいえば「画像」投稿も同様に高いです。画像は一覧性が高いため、瞬発的に受け手に情報を伝えることができます。
一方で動画は数秒でも見ない限りは全貌を理解できないため、視聴離脱のリスクもあります。それでも動画が優れているのは、受け手に見てもらうことさえできれば、画像よりもより精緻にイメージを伝えることができる点にあります。
だからこそ爆発的に広がる可能性も秘めています。商品化が前提にあった6秒商店としては、より精緻にイメージを残すことができる動画のメリットは大きかったのです。これらが6秒商店が「短尺」の「動画」アカウントであった理由になります。

通信技術が進化し、各種動画メディアやプラットフォームが生まれ、人々の間にも動画視聴が根付いてきました。このような環境下で今後ますます動画コンテンツの需要は高まると考えられます。
そこで本稿では、立ち上げから1年弱が経とうとしている6秒商店を運営する中で、たくさんの実験を繰り返し見えてきた、私なりの拡散する短尺コンテンツ作成のノウハウを紹介していきたいと思います。

6秒商店のアイデアを考えるためのヒント

6秒商店のルール

6秒商店のアイデアを考える時、そして選ぶ時に、意識していることは大枠として3つあります。それが「ルール」と「ツボ」と「テーマ」です。ルールは「基本的に満たしていないといけない要素」、ツボは「それを満たしていると話題になりやすい要素」、そしてテーマが「都度、実験のために設定している条件」です。


まずはルールについて説明していきます。
私の中で現状6秒商店のアイデアを発想する上で、7つのルールを持っています。
1つ1つのルールの簡潔な説明は以下の画像を参照していただければと思います。

ここでは、特に大事だと思われるいくつかの要素について、ピックアップして説明していきます。
まずは「映像的な変化」について。例えば、2万RTを超えた「歩きスマホ」というアイデアは、スマホに脚が生え、自走していくというものなのですが、「スマホ自身が歩く」という映像上の奇妙な動きがあるとともに、「最後に倒れこむ」というオチを作ることができました。こうした意外な動きやオチなどの変化があるということが、視聴離脱を防ぐとともに、読後感を強めるために重要な要素となっています。

逆に、「マーライオンシャワーヘッド」というアイデアは、マーライオン型のシャワーヘッドから水が出るという非常にシンプルなアイデアなのですが、こちらは映像上はマーライオンの口から水が出るという、いわば順目な変化しか演出することができず、広がりを生むことができませんでした。こうしたいわゆる「映像映え」する要素をそのアイデア自身が持っているかどうかは、アイデア選定の上での大きな基準となっています。

また「遠すぎない未来」についても、6秒商店としては大きなルールとして考えています。一種のモキュメンタリーとしての側面を持っている6秒商店ですが、あくまでもそのゴールは「商品化」であったり、「世の中への影響」であったりだと私は思っています。
そう考えていくと、完全に実現不可能な商品については目的に反していますし、そもそも受け手からしても「どうせ嘘」だと思われてしまいます。
そうではなく、「本当にこんなものがあったら嬉しい」「欲しい!」と思っていただけるようなものにすることが、より多くの人に関心を持ってもらう上では大事です。
その点、「魔法陣充電器」はそうした気持ちを強く世の中に生み出すことができたため、非正規品ではありますが、多くの企業が6秒商店に影響された充電器を発売するといった現象まで起きたと考えられます。

こうしたルールは、アイデア発想のヒントというよりは、アイデアを選定する際やメンバーにディレクションする際の重要な基準となります。

6秒商店のツボ

続いて「ツボ」についてご説明していきます。ツボとは「全てのアイデアに含まれている必要性はないが、含まれていた方が拡散の確度が高くなるポイント」です。大別すると6つのツボがあると思っています。


① 共感:「あるある!」や、「懐かしい!」などと言った、共感を生むようなアイデアが該当します。共感と言っても様々な種類があるので、これについては後ほど紹介する画像を参照していただければと思います。

② 驚嘆:「その手があったか!」や「すごい!」など驚きを生むようなアイデアが該当します。既視感のあるコンテンツは、基本的にはそれだけで話題性を失ってしまうため、これまで見たことがない企画であることが理想形です。①共感と合わせて最も一般的な要素だと思います。

③ 時流:〇〇の日などのモーメントや、ソーシャル上でのトレンド、ニュース、流行など時流を捉えた企画が該当します。時流を捉えた企画は、ソーシャル上での言及量も新鮮で多く、言の葉に乗りやすいです。

④ 意見:6秒商店の動画を媒体にして、受け手自身の意見を表明しやすくするアイデアが該当します。いくつかの方向性があり、例えば社会風刺的な意見を誘発する時もあれば、無駄な商品に対して「要らないでしょ」などといったツッコミを誘発する時もあります。

⑤ 本能:これはシンプルで、人間としての本能に基づいているアイデアです。例えば「可愛い」や「怖い」などと言った感情は、人間誰もが持っている感情なので、うまく映像内に包摂させることができれば強い起爆剤となります。

⑥ クラフト:商品自体の完成度についてです。本当に売られていてもおかしくないくらいプロトタイプが完成していた方が良い商品もあれば、逆にユーモアを重視するために雑なつくりだったり、手作り感だったりを全面に出すケースもあります。

この6つの大枠の中で、さらに多くの要素があります。
これらは日々アップデートしているものなので、これが完全版という訳ではないのですが、抜粋して以下の画像で紹介いたします。


こうした数あるツボの中でも、6秒商店のこれまでの傾向から、特に確度の高いと考えられるツボを選択して、毎月ブレストをする際の「テーマ」としています。

例えば、「共感」の中に「中二病」というツボがあります。漫画やアニメのかっこいい1シーンやよくある演出をモチーフにするなど、少年心をくすぐるアイデアがこれに該当します。6秒商店といえば「魔法陣充電器」を筆頭に、中二病アイデアというイメージを持たれている方も多いかと思います。これは意図的に「中二病」を「テーマ」として発想している影響でもあります。

この「テーマ」の設定に至るまでのプロセスについて、「魔法陣充電器」を例にもう少しご説明します。

テーマ設定に至るプロセス~「魔法陣充電器」の場合


「魔法陣充電器」の投稿後、その投稿結果からは例えば、以上の要素の抽出ができます。
「ルール」としては、以上の4つが考えられました。あくまでもこの段階では仮説ですが、他のアイデアを分析した際にも、これらの要素が抽出されたため、仮説の確かさが確認できました。
逆に「非音ネタ」や「非文脈依存」などといったルールは、成功事例よりも失敗事例から学ぶことができたものです。音をメインにした企画や、日本人しか分からない企画の結果と比較をすることで、そういった要素を抽出することができます。

続いて、「魔法陣充電器」の反響を支えたツボとしては、「中二病」「流行りの商品」「高クオリティ」「ムダな商品」が考えられます。
魔法陣という中二病のモチーフを用い、それをワイヤレス充電器という流行りの商品に載せ、「欲しい!」と思えるくらいのクオリティまで丁寧にプロトタイプ/動画を作成し、しかし多くの人からすれば無駄な商品としてツッコミどころもある、というのが「魔法陣充電器」のポイントでした。
特に「魔法陣充電器」については、海外からの反響も強く、「中二病」というジャンルが海外にまで通用することが分かりました。必ずしも「中二病」要素を含んでいなければ拡散されない訳ではないので、これらの要素は「ルール」ではなく「ツボ」として考えます。

さらに別の「中二病」を軸としたネタについても、同じく多くの反響があったため、「中二病」はツボとしての確度が高いという仮説が立ちました。
そこで、ある月は「中二病」に関するネタを中心にしてブレストを行うということを決めました。これが「テーマ」になります。
こうした試行錯誤の結果、私達の中で確度が高そうなテーマがいくつか見えてきました。それをもとに、例えばこれまで「レトロ」や「課題解決」をテーマ設定してブレストを行ったことがあります。

まとめ

以上、抜粋にはなりましたが、6秒商店の実験から見えてきた短尺コンテンツの発想法についてご紹介しました。あくまでこれは「Twitterが主戦場」で「超短尺動画」、「テーマが雑貨」という6秒商店ならではの発想法ではあります。
特にTikTokのようなTwitterとは全く違うユーザー層、アルゴリズム、UXのSNSでは全く違うツボやルールも出てくるでしょう。それでも、今回のように多くの実験を繰り返し、その中から重要な要素を抽出し仮説を構築し、それをもとに実験を繰り返し、法則を見出して行くという考え方は普遍的なものであると考えられます。

5Gが実装され、動画やSNSなどの各種プラットフォームが成熟し、動画の存在感がより強まる時代はつい目前まで迫ってきています。今回ご紹介した思考が、少しでも多くの方にとってこの先の動画時代を戦い抜いて行くための参考となれば幸いです。

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