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Webディレクションの現場を“ワクワク”する場にクリエイトする―Webディレクター 田口 真行さん

長年Webディレクターとして企業サイトのディレクションに携わり、また数々の企業研修やセミナー等の場において講師を務めてきた株式会社デスクトップワークスの田口真行さん。最近では、自らのディレクションノウハウを凝縮したツール『Webディレクター手帳』をリリースするなど、活躍の場を広げています。
そんな田口さんに、Webディレクションとの出会いから制作現場における課題感、ついにリリースされた『Webディレクター手帳』の開発に込めた想いやきっかけなどをインタビュー。
Webディレクターとして、これから成長していきたい!という方にもぜひ、田口さんの言葉が届くといいなと思います。

株式会社デスクトップワークス 代表取締役/Webディレクター 田口 真行
1999年、フリーのWebディレクターとして独立。企業サイトの企画制作運用を手掛ける傍ら、攻殻機動隊トリビュートアルバムのアートディレクションや、SKY PerfecTV!のクリエイター向け番組『DesktopTV』のプロデュース、セミナーイベント『エンタミナ』の主催など、Web以外の分野でも幅広く活動。 2014年、Webディレクター育成機関『Webディレクタースクール』を設立。独自手法のディレクションを題材にした実践型の研修講師として全国各地での講演活動や、株式会社スクーのレギュラー番組『田口真行のWebディレクション講座』の生放送配信を行う。2017年にWebディレクター向けのサイトプランニングツール『Webディレクター手帳』を開発。著書に『現場のプロが教えるWebディレクションの最新常識 知らないと困るWebデザインの新ルール2』(エムディーエヌコーポレーション、共著)ほか。

作るだけのデザインではなく“役割”に徹したWebサイト制作がキャリアの原点

僕がWeb制作の仕事を始めたのは1997年頃です。とある通販会社にアルバイトとして入社しました。

当時はデザイナーやプログラマー、マークアップエンジニアなど、職種の線引きがまだあまり無い時代で、ひとくくりに「Webクリエイター」と呼ばれていました。

周りにいたクリエイターはデザインを作るのがとても上手で、正直、デザインだけでは勝てないなと思いました。じゃあどうしたら勝てるだろうと考えた時に、依頼者に電話をかけて直接コミュニケーションをとるという方法にいきつきました。

これが僕のWebディレクションの原点です。

その後、1999年からはフリーのWebディレクターとして独立。それ以来、企業サイトの企画~設計~制作、そして運用業務に加えて、Webディレクションに関する講師を全国各地で行っています。Webディレクションを教える側に立ってから20年近く経ちますが、Webディレクションを学びたい人たちって、今も昔もさほど変わらない課題をもっていたりします。

技術的な革新はたくさん起こっているのに、Webディレクションの革新があまり起こっていないかもしれない…。そこで、依頼者と制作者の狭間で、苦悩しがちなWebディレクションが、理想的な「橋渡し」として機能するようなツールが作れないかなと思い開発したのが『Webディレクター手帳』です。

Webディレクターの現場である“会議”をクリエイティブにするツール『Webディレクター手帳』誕生

例えばデザイナーであればPhotoshopや関連する参考書、プログラマーを目指すのであれば入門言語や関連する参考書がありますが、Webディレクターには、分かりやすい“とっかかり”が用意されていません。
またデザイナーやプログラマーの作業現場とは違い、Webディレクターのメインとなる現場は「会議」です。参考書を片手に会議を進めるわけにもいかず、よくよく考えたら、Webディレクターの現場をダイレクトに支えてくれるものって無いなと…。

そこで『Webディレクター手帳』を開発しました。そして、あえてアナログのツール、「手帳」という形態をとっています。

なぜデジタルでやらないのかとよく聞かれるんですが、これには理由があります。

Webディレクターの仕事は、先の会議もそうですが人とのコミュニケーションが業務の大半を占めます。特にWebサイト制作の前段階である「サイトプランニング」は、相手の要望を引き出し、要件としてまとめていくこと、クライアントと共にアイデアを出し合いながら進行する工程です。
例えば、クライアントと共同作業で進めるアイデアブレストの場では、PCなどのデジタルツールを用いるよりも、紙やホワイトボードといったアナログツールのほうが、参加者同士の意見の発散、そして収束に向けた「場」の取りまとめをスムーズに行うことができます。
重要なのは、クライアントと共に同じ温度感でサイトプランニングを進めていけること。会議の場を、双方が身をのり出して参加できるような状況にもっていくことが、私たちWebディレクターに求められていると考えています。そのような場には、アナログツールが最適だと考えました。

『Webディレクター手帳』は、クライアントとの共同作業を円滑にすすめるファシリテーションツールに近いです。

ディレクションスタイルの確立にも役立つツール

『Webディレクター手帳』は、自分自身のディレクションスタイルをまだ確立できてない方に、ディレクションのフレームワークとして取り入れてほしいと考えています。この手帳はA5サイズのリフィル形式になっているため、ご自身の現場にマッチした使い方で、カスタマイズできます。

あと『Webディレクター手帳』を一連のサイトプランニングを可視化するツールとして使っていただければ、クライアントとの会議での成果や、Webディレクションにおける思考の過程を、自分の実績として残すことができます。自分自身のスキルを可視化して伝えたい場面、例えば転職活動の際にも役立てていただけるのではないでしょうか。

いかにプロジェクトの舵を取り、自ら決められるか

Web制作の現場で僕が課題に思っているのは「持ち帰り文化」。その場ですべてを完成させるのは難しいかもしれないけれど、クライアントの要望を引き出して形にする前段階、つまり設計図を作る一歩前までは、持っていけるんじゃないかなと思っていて。

例えば画面構成を決める会議をしたとして「じゃあ、あとは考えてきますね」と次の会議まで持ち帰る。しかし次会った時には相手の温度感とだいぶズレてしまっていて、前回とは異なるアイデアが出てしまったり…。不必要に風呂敷だけが広がっていって何も決まらなかったり…という経験を少なからずしたことがあるWebディレクターも多いかもしれませんが、「持ち帰り」を減らすだけでも、結果は大きく変わってきます。よりスムーズに進行するサイトプランニングの工程をこの『Webディレクター手帳』を活用することで実践することができます。

『Webディレクター手帳』はサイトプランニング工程において「決めるべきを決まりやすく」するツールです。

そういった場面に対して『Webディレクター手帳』を用いることで、サイトプランニングの工程を可視化し、成果物の根拠として位置付けることができます。つまり制作者は、胸を張って相手に成果物を提示できるんです。

Webディレクター自身が「決める」ことに対する責任の持ち方を見直し、改善していけるツールになればと思っています。

“ワクワクする”現場づくりに貢献していきたい

持ち帰り文化の課題や、Webディレクターの仕事に対して”しんどい”と感じる方が多いという課題に対しても、一人一人のやり方をもっと磨き続けることで解決できると考えています。

やり方は一つではないと思うので、これからもみなさんにとってのヒントになるような支援を、『Webディレクター手帳』などのツールによって貢献できればと思います。

会議って面倒だと思う気持ちから「メールで済ませよう、チャットで済ませよう」という発想になるとマイナスな方向にいきがちです。

直接会って決めて、お互いが気持ちよく仕事をできて、かつ相乗効果につながる状況を作るという意味では「会議」ってすごく大事だなと思うんです。会議室という「一つの空間に一緒にいること」によって円滑に進むこともありますし、そこをどう実りあるものとするかを、さらに考えていきたいですね。

Webサイト制作のプロジェクト進行は、クライアントとの会議の進め方次第で大きく変わります。相手の話を聞くだけの場ではなく、相手の意向に目を向け拾い上げることで、Webディレクター自身がきちんと「場を仕切る」。それが会議のあるべき姿だと考えています。

撮影:古林 洋平 インタビュー・テキスト:佐藤由佳 編集:CREATIVE VILLAGE編集部

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