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Abema VX Studioディレクター・中村太洸さんインタビュー「日常のインプットや経験の積み重ね、それを削ぎ落としていく作業が重要」

サイバーエージェントとテレビ朝日が出資して設立したインターネットテレビ「AbemaTV」。2016年の開局以降、話題の番組を続々と発信しています。AbemaTV内にある映像制作スタジオ「Abema VX Studio」でディレクターを務める中村太洸さんは、音楽専門チャンネルでの映像制作からAKBグループをはじめとする数多くのミュージックビデオ、CMなどを手がけたのち、昨年AbemaTVへ入社しました。

現在はAbemaTVのオリジナル作品や、番組の映像全体のクリエイティブディレクションを手がけるなど、インターネットテレビならではの自由度の高さを満喫しながら制作活動をしていると言います。人気映像ディレクターとして引っ張りだこの中村さんがなぜAbemaTVに入社したのか、また映像業界に入ったキッカケやクリエイターへのアドバイスなどを伺いました。

「監督になりたい」という思いから映像の世界へ

僕がこの仕事に就いたキッカケのひとつは、小学校のときに読んでいた『AKIRA』でした。初めて見たときから夢中になり、ひたすらAKIRAの画を模写するような地味な子どもだったんです(笑)。模写を続けながら高校で進学校に入ったところ勉教しても全然周りに追いつけず、それなら映像を学んで仕事にしたほうが楽しそうだなと思うようになりました。

そして京都造形芸術大学のデザイン科に入ったものの、当時見た『セブン』という映画に衝撃を受けたんですね。ブラッド・ピットやモーガン・フリーマンなどが出ている豪華な作品で、内容はもちろん、特にオープニング映像がCGでめちゃくちゃかっこよかったんですよ。僕を含め学生の間でも「あの映像はどうやって作ってるんだろう」と話題になり、調べたら“カイル・クーパーというデザイナー(監督)がアフターエフェクトというソフトで作った”と分かって。今では主流のアフターエフェクトですが、当時はまだ流行り始めた頃だったので英語版しかなく、辞書をひきながら一生懸命使ってました。デザイン科なのに1人だけ映像ばかりを作っている変な学生でしたね(笑)。それからはCGとアフターエフェクトにハマり、自然と映像制作の道に進むんだろうなという流れになっていきました。ゆくゆくは監督になっていろんな映像を作ってみたいという思いも強かったです。

そして、大学4年生のときに作った映像がMTVのコンテストで賞を獲りました。当時の若手映像作家の登竜門的なコンテストで、そこで賞を獲るのがみんな目標としてあって。僕は賞をキッカケにMTVからCGのお仕事をいただくようになりました。就職活動もたくさんしたけれど、募集しているのに採用ゼロという会社が多い就職氷河期で。ようやくゲーム会社の内定がとれたものの、ゲームより映像を作りたいんだよなと思っていたところで賞を獲れたことは良いタイミングでした。その頃はCGをできる人が少なかったので、いただく仕事を次々受けていたらそのままMTVに入るか?とお誘いいただき、是非ということで就職。2000年に入社し、クリエイティブの部署でブランディングに関わるさまざまな映像制作に携わりました。

応援のつもりが応募していたことをキッカケにAbemaTVへ

MTVには約7年程勤め、番組のパッケージやグラフィック、テロップ、CM、オープニング映像など、チャンネルに関わるあらゆる映像を制作しました。とにかく制作本数が多くスキルアップにもつながったと思いますし、テロップだけ、CMだけ、と限定されずにやることができたのは楽しかったです。中でも、Video Music Awards Japanの全体のクリエイティブを担当させてもらった際に、CGで制作したオープニング映像が世界的なコンテストでゴールドを獲れたのは印象深い仕事のひとつ。やりがいもありましたし、それが外部から評価されたというのはやはり嬉しかったですね。

それから一度外に出てみようと思ったタイミングで撮ったMVが秋元康さんの目にとまり、AKB48のMVを撮影させてもらうことになりました。当時ちょうどNMBやHKT、乃木坂など、グループがたくさんできた時期だったのでいろいろやらせていただいて、おそらく合計で200〜300本以上は撮ったんじゃないでしょうか。

そして、AKB48をはじめ派生グループのMVやCM制作などを約6年間ほど担当させていただいた頃に、AbemaTVで働いていた知り合いが採用情報をFacebookでシェアしていたんですね。“応援する”というボタンがあったので押したところ、実際は“応募する”ボタンだったみたいで(笑)、採用担当の方から是非お会いしたいと連絡をいただきました。元々AbemaTVは面白そうだなと思っていたので、実際にお話を聞いてみたらますます興味が湧いて。開局したばかりのタイミングから参加できるのは今しかないし、自由度が高そうで勢いもある。今後はインターネットTVが主流になるだろうという確信もあり、全ての要素が魅力的で、自分のキャリアとしてもひとつ経験しておくのはアリだなと思い入社を決めました。

縮小ムードのテレビとは真逆のチャレンジ精神を発揮できるメディア

入社してからは「Abema VX(Visual and Video Xperience)Studio」という専門の映像制作スタジオに所属し、AbemaTVの番組宣伝やオープニング映像、サイバーエージェントのグループ会社のCM制作などを担当しています。AbemaTVオリジナル番組「オオカミくんには騙されない」では立ち上げ時期から関ることができ、番組全体の映像クリエイティブを手がけました。今まで番宣しか作っていなかったのをオープニング映像も作ったところ反響が良く、それ以降は自社広告もVXの部署で作ろうとなって業務の幅が拡がっていくのもやりがいがありますね。

また、最近では「指原莉乃&ブラマヨの恋するサイテー男総選挙」という番組で、サイテー男総選挙で1位になった人の特典としてイメージ映像を撮ったことも面白かったです。その映像は番組のオープニング映像としても放送されています。

開局してまだ1年ちょっとということもあり、手を挙げればチャレンジさせてもらえる環境はすごくありがたいです。今はどうしても業界全体が縮小傾向で、テレビは特に予算や表現が規制されている状況で、それとは真逆の印象が強いんですよね。逆にどんどん面白いことをやっちゃおうという雰囲気さえある。民放では絶対できないようなプロモーションに関わることができたり、チャレンジ精神を前向きに受けとめてくれるのがAbemaTVだと思います。また、インターネットTVならではの反響の早さも魅力的。もちろん他のメディアも一緒だけれど、自分が作ったものに対して反響が大きいのは嬉しいですし、その反面頑張って作ったのに再生回数が少なかったらショックも大きい。シビアだからこそやりがいにもつながってますね。

今は未だ受注的なものが多いので、今後はVX発のオリジナル映像やシリーズものを制作したいです。具体的なことは手探りですが、「VXはすごいな」と言ってもらえるような作品にしたいですね。さらに、外部の広告案件なども手広くやっていけるくらい部署自体が大きく成長できたら、ますますおもしろいんじゃないかなと思っています。

クリエイターはコミュニケーション力と経験の積み重ねが大切

かれこれ20年近く映像を作ってきて思うのは、“チャンスを掴むことの難しさ”です。そもそも何がチャンスなのかを見極める嗅覚が必要ですし、それは手当たり次第経験を積んで鍛えるのか、一点集中して取り組むのか、人によって向き不向きもある。だからこそ客観的に自分をジャッジすることは重要ですね。

あとは人との出会いもすごく大切。内にこもっているとチャンスも逃すし、積極的に外に出ることでひょんなことから仕事につながることもあります。飲み屋で知り合って仲良くなった人がたまたま代理店に勤めていて仕事をすることになった、とか。僕も積極的になれなかった時期はチャンスをたくさん逃したり失敗したりもしたけれど、それを経て自分の体感でチャンスの掴みかたや出会いの大切さを学んだからこそ、今があると思っています。
僕が学生の頃はインターネットも普及していなかったし、映像を見たいがために京都から夜行バスで東京に行くぐらい手間をかけて情報収集していました。でも今はずっと家にいても何でも見られてしまう。だからこそ、コミュニケーション力を身につけてたくさん経験を積んだ者勝ちかもしれないですね。

制作では最近特に“削ぎ落とす”という作業を大事にしているんですけど、言葉数や表現するものに関してはシンプルなほど伝わりやすくなる。でも、削ぎ落とすための作業ができるようになるのは、今までの膨大な経験や実務作業、インプットしてきたものがあるからこそだと思うんです。若い頃は自信がないからとにかくいろんなものを詰め込んで作っていたけれど、秋元(康)さんからも「それを削ぎ落とせないと先はないよ」というアドバイスをいただいてハッとしました。自信は日常的なインプットと経験の積み重ねから育てるもの。これからクリエイターを目指す皆さんも、常にアンテナをはりつつたくさん遊び、自分の可能性を拡げていって欲しいですね。

(取材・ライティング:上野 真由香/編集・撮影:CREATIVE VILLAGE編集部)

Abema VX Studio

VX studio ロゴ
VX Studioは、 AbemaTVで放送される番組宣伝、番組オープニング・エンディング、自社広告などの映像・グラフィックを制作している部署です。VXは「Visual&Video eXperience」を意味し、ハイクオリティーな映像やグラフィックを通して、ユーザー体験をより良いものにしていくことをミッションとしています。

事例動画はこちら
https://www.youtube.com/playlist?list=PLGNyX8GCuBE3Os5kpKqs3Cr_s8WmUuWnG

中村 太洸(なかむら・たいこう)

株式会社AbemaTV ディレクター
京都造形芸術大学卒業。音楽専門チャンネルでの映像制作を経た後、映像制作会社でAKBグループのミュージックビデオやCM制作に従事。2017年1月に株式会社AbemaTVに中途入社し、Abema VX(Visual and Video Xperience)Studio映像ディレクターとして活躍。AbemaTV初のオリジナルドキュメンタリー作品「オオカミくんには騙されない」のクリエイティブディレクションをはじめ、各番組のオープニング映像やオリジナル作品の制作など、活動領域を拡大中。