中国で映画製作を禁じられた映画監督 ロウ・イエさんに、これまでの生い立ちやプライベートなことまで、お話しを伺いました。

「映画監督には、映画を撮る権利がある」

両親が劇団員だったため、幼い頃から演劇や映画に触れる機会が多く、そこから影響を受けて「映画を撮りたい」と思うようになりました。

イメージ前作の『天安門、恋人たち』は、1989年の天安門事件を扱った内容だったため、5年間の映画製作・上映禁止処分を受けました。現在も処分が解けていない状況ですが、私は「映画監督には、映画を撮る権利がある」と思っています。 処分を受けている身ですが、今回の映画撮影に踏み切ることを決意しました。

前作の撮影中に、次は「現代の若者を取り上げた作品を撮りたい」と思い、できあがった作品がこの『スプリング・フィーバー』なのです。

若者は、新鮮なものを連れてきてくれる太陽と同じで、社会に何かしら新しいものを運んでくれ、社会を“変えていく力”を持っていると思います。 中国もここ数年で大きく変化しました。「中国の社会の変化」というものを、身の回りにいる若者を主役にした映画を通して伝えたかったんです。 本作品に登場する若者は、数年前の中国には少なかったと思います。

イメージ例えそれが同性愛であろうが異性愛であろうが、悩みは男女同じ。また“愛”に変わりはない。この映画は“純粋な愛”をテーマにした作品です。

シナリオ自体は、前作の編集段階から構想していて、1年半~2年くらいかけて書き上げました。 特にキャスティングにはこだわっていて、毎回300~400人くらいの方の応募書類チェックや面接を重ねるため、今回も決定するまで2ヶ月ほどかかりました。

今回のキャストたちには、もちろん今の状況を直接自分で説明し、出演するかどうかを自身で決めてもらいました。 出演してくれた方々には本当に感謝しています。 キャスティングは大変ですが、毎回すばらしいキャストに恵まれています。

カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したときは、とても興奮し、あまりの嬉しさにすぐにスタッフ全員に連絡しました。

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好きな映画

イメージ日本の映画が好きで、ずっと見てきました。
特に、成瀬巳喜男監督や木下惠介監督、黒澤明監督、最近ですと、黒澤清監督、山田洋次監督、青山真治監督などです。

ですから今回、『スプリング・フィーバー』が日本で公開されて本当に嬉しいです。

「人間とはどういう生き物なのか」

映画を撮るときに一番こだわっていることは、「複雑な人間関係をいかに細かなディテールで描くことができるか」というところです。

映画から感じるものは、一人ひとり違います。

「人間とはどういう生き物なのか」。
幸せを感じたり、時には悲しみを感じる“愛”とは、人間に何をもたらすのか。また、それに伴う“喪失感”など、映画を通して、「人間とは?人生とは?日常とは?」といった様々なことを表現し、伝えていきたいです。

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スプリング・フィーバー
渋谷シネマライズほか、全国順次公開中!

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監督:ロウ・イエ
脚本:メイ・フォン(カンヌ国際映画祭脚本賞受賞)
プロデューサー:ナイ・アン、シルヴァン・ブリュシュテイン出演:チン・ハオ、チェン・スーチョン、
タン・ジュオ、ウー・ウェイ、ジャン・ジャーチー
チャン・ソンウェン

現代の南京を舞台に、“春の嵐”(スプリング・フィーバー)により掻き乱された一夜を彷徨うかのような、男女五人。夫ワン・ピンの浮気を疑う女性教師リン・シュエは、その調査を探偵に依頼し、相手がジャン・チェンという“青年”であることを突き止める。 夫婦関係は破綻し、男ふたりの関係も冷え込んでしまう。その一方、探偵とジャンは惹かれあっていく。ジャンと探偵とその恋人リー・ジン。 奇妙な三人の旅が始まった…。

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