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テレビからネットへ。番組をつくるということ 演出・ディレクター 麻生裕久さん

2017年2月から配信スタートした、Amazonプライム・ビデオ『坂上忍流ディープな夜遊び』。企画・演出は、『ダウンタウンなう』などの番組で経験を積んできた麻生裕久さん。ネット配信番組を初めて手掛ける麻生さんに、番組作りについて伺いました。

台本のないバラエティを目指して

番組は“夜遊び”がテーマの旅バラエティですが、ドキュメンタリー要素が入ればいいなとプライベート感を意識しました。ふつうの旅番組では、訪れた場所を良く紹介しようという番組が多いと思うんです。でも『坂上忍流ディープな夜遊び』では、あくまで坂上さんたちのプライベート旅に僕らが同行している、というスタンス。坂上さんにもリアルな休日のように気楽にいていただけるように、初回は仲の良い野々村真さんらを同行者にお願いしました。
さらに、台本は用意していません。皆さんも、旅に行く時はあらかじめ予定を組むけれど、途中で変えることもあるでしょう。この番組も同じで、おおまかな訪問先などの予定は決めるけど、その場でどんどん変えます。とはいえ、昼の帯番組の司会をされている坂上さんの過密スケジュールの合間をぬっての撮影なので時間がありません。事前の訪問先調べなど、少人数のスタッフですが、全員が緻密に自分の役割をこなしています。

台本がないので、本気で夜遊び旅を楽しんでもらうことで、予定調和でなく他では見られない濃い内容の番組になっていると思います。またなにより、ギャンブルの勝ち負けについては予測ができません。坂上さんはもちろん勝つ気でやるんですけど、第一回のフィリピンのカジノでも、その次の北海道の競馬でも負けてしまいました。でも三カ所目のロケ地である韓国のカジノでバカラをやった時に、坂上さんが元手20万円から200万円勝ったんです。そんなに勝つことはめったにない!全員で大興奮しました。ギャンブルって、その人の感情がむき出しになるんです。勝てばめちゃくちゃ喜ぶし、負ければめちゃくちゃ悔しがる。タレントの方達がふだんテレビでは見せないリアルな感情を見せてくれるので、その空気を楽しんでいただければと思っています。

みなさんも出演者と一緒に遊びに行っているような疑似体験をして、「楽しそうだな。本当に行ってみたいな」という気持ちに繋がれば一番嬉しいですね。

Amazonでの番組制作

カジノの番組を作ろうと思ったのは、僕がもともとカジノがすごく好きだから。とはいえギャンブルの企画はなかなか地上波ではできないので、ネット配信でできたらなとAmazonさんに企画書を出して、今回の企画に繋がりました。当初は『ガチガチカジノ』という、ただただ自腹で本気でカジノで勝負する番組だったんです。でもカジノだけでなく、他の遊びも含めて韓国やシンガポールなど海外の旅ができたらなと案が膨らんでいって、最終的には、坂上さんが夜遊びをとにかく本気で楽しむ『坂上忍流ディープな夜遊び』という番組に至りました。坂上さんに企画を伝えると、超多忙にも関わらず「ぜひ!!」と言って頂きました(笑)

Amazonさんはテレビほど制約がないので自由にやらせていただいています。けれど、だからといって、テレビではできないことがネットだと何でもできるわけではない。たしかに、チャンネル数が決まっているテレビから配信方法が増えたことで、人前に出せる可能性は広がったと思います。とはいえ、ネット配信は企画が通りやすいのかと言えばそうでもない。企画としての面白さや、その媒体によって特色を踏まえる必要もある。
たとえばLINEライブなら、LINEを活用している世代にむけての生中継としてどんな番組が好まれるか…視聴者が参加しやすいコンテンツは何かとか。Amazonプライムの視聴者は層が広いので、初心者の方でもわかりやすいように説明をいれたり、女性のゲストを呼ぶ事で女性にも楽しんでもらえるようにしたり、それぞれの方が自分なりの楽しみ方を見つけていただければと思っています。

まずは作り手が楽しんで、それが視聴者の方に伝わって一緒に楽しんでいただけて、結果としてその先に繋がれば最高です。

映像の世界へ…

僕は、大学は法学部だったんです。就職活動の時に、好きな事を仕事にしたいという思いが高まって、卒業後1年半ほどはフリーターでした。いろいろ考えた結果、自分はすごくテレビが好きで、お笑いが好きだというところにたどり着いたんです。小さな頃からダウンタウンさんの番組を見て、憧れていました。そういう方々と一緒に仕事が出来たら楽しそうだなと思って、テレビの制作会社に飛び込んだんです。
入る前は、つらくて大変な業界だと聞いていたので不安もありました。初めての番組はフジテレビの『トリビアの泉』。ADとして入った初日に、いきなり夜中の3時まで帰れなかった。「あぁ、本当にこんなにつらいんだ……」と思いましたね。でも覚悟を決めてきていますし、なにより好きな事をやれるという喜びの方が強くて、一度も辞めたいと思ったことはないです。むしろ大変な環境だったからこそいろいろ勉強させてもらったおかげで、今があると思います。
『井の中のカワズ君』という深夜番組でディレクターになり、その後、『爆笑!大日本アカン警察』という番組でダウンタウンさんと初めて一緒にお仕事をさせていただきました。まるで夢みたいでしたね……ずっと憧れであり目標でもあったダウンタウンさんが目の前にいるなんて!この業界にいる以上「成り上がってやろう!」という気持ちはありましたが、ダウンダウンさんは憧れの人すぎて、一緒にお仕事ができるとは考えてもいなかったんです。僕が作ったVTRをダウンタウンさんが見る時は、笑ってくれるかどうか本当に緊張しましたね。

大好きで才能のある優秀なタレントさんたちとお仕事ができる環境は、とても刺激的です。いろんな勉強にもなりますし、間近で面白い発言が聞けたり、ディレクターほど幸せな仕事はないんじゃないかと思います。体力面で大変なことも多いけれど、会議もロケも編集も全部楽しいですし、このまま自分が面白いと思える事をやり続けられたら、すごく幸せな人生です。

思いがあれば、番組はうまくいく

ディレクターとしてなにか個人的に勉強をしている、ということはありません。テレビはもちろん見るようにしているけれど、それは好きだから。「ほかの人はどうやって番組を作っているのかなあ」という視点よりも、「こんなに面白い人がいるんだな」「世の中ではこんなことが起きているんだな」と、一般視聴者の感覚に近いと思います。

番組を作るには知識や技術も必要ですけれど、それよりもまず、とにかく一生懸命本気で頑張ること。目標に向かう思いがちゃんとあるかどうかがもっとも重要です。
仕事に限らず、人間関係も恋愛も、ちょっと素敵だなと感じた相手に対してどこまで真剣に頑張れるかということで、結果も変わってくるじゃないですか。シンプルなことですが、思いは相手に伝わります。だからこの番組でも、プロフェッショナルな人材よりも、この企画を一緒に楽しんでくれるメンバーに参加してもらいました。どれだけ真剣に番組を作ったかは、番組を見てくださる視聴者の方々に、必ず伝わりますから。スタッフ全員に番組愛があると、番組制作ってすごくうまくいくんですよ。

作品情報

坂上忍流ディープな夜遊び

©

クリーク・アンド・リバー社制作

Amazonプライムで絶賛配信中。毎週金曜更新。

麻生 裕久(あそう・ひろひさ)

1979年生まれ 千葉県松戸市出身
フジテレビ「トリビアの泉」のADとしてテレビの番組制作に携わる。
ディレクターとして「カワズ君の検索生活」「環境野郎Dチーム」「HEY!HEY!HEY!」「エチカの鏡」「爆笑!大日本アカン警察」「教訓のススメ」「バイキング」「ダウンタウンなう」「坂上忍流ディープな夜遊び」などの番組を手掛ける。