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広告代理店在籍時から、一貫してCM制作に携わり、ドラゴンクエストシリーズやファイナルファンタジーシリーズの企画演出も手掛ける臺 佳彦さん。パペットのアニメーションと実写映像が融合した映画『Present For You』では、監督・脚本・撮影を担当。本作は、ロサンゼルスで開催された3D Creative Arts Awardsで『ゼロ・グラビティ』、『アナと雪の女王』と並び、海外実写映画部門最優秀賞に選出されました。その臺さんのものづくりについて、お話を伺いました。

 

■ 演出まで全てに携わるCMの作り手

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映像制作に携わる方には「学生の時から志して…」という方も多いですが、僕の場合は少し違います。大学の専攻も建築でしたし、学生時代から設計事務所の仕事を手伝うこともありましたが、なぜか就職は広告代理店でした(笑)

入社後の配属先で「マーケティング」という言葉を生まれて初めて聞いて(笑)マーケティングに携わりながらも制作の仕事を希望していたら、CMの企画書を出すチャンスにも恵まれるようになりました。

そうして制作とマーケティングの両方に関わっていたら、旭通信社(現:ADK)から声が掛かり、そちらに移ったことで、本格的にテレビCMの制作を始めることになります。JTやSUBARU、グアム政府観光局などのCMのプランニング、プレゼンテーション、その後制作プロダクションと組んで制作をおこなうのが主な仕事でした。

プロダクションのプロデューサーから「演出もご自分でされたら良いんじゃないですかね?」と言われたことで演出も始めました。当時はCMに関わるプランナー、ディレクターなどで演出まで全て担当する人はあまりいない状況でしたね。

 

■ ゲームの世界観を実写で撮る

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ゲーム会社のスクウェア(現:スクウェア・エニックス)のCM制作では海外に行く機会も多くありました。「ゲームの世界観を実写で撮る」ことがテーマ。日本からは僕とアシスタントやプロダクションのプロデユーサーなど少人数で行って、「ロケ先の優秀なスタッフと仕事をする」というスタイルでしたね。

『ロマンシング サ・ガ3』のCMあたりからは、スコットランドに行き始めました。RPGは、基本的に中世のヨーロッパが舞台として設定されることが多く、ヨーロッパにシェイクスピア関連の舞台のものや、本物の鎧も豊富にあるので、撮影環境として最適でした。

『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』『ヴァルキリープロファイル(VALKYRIE PROFILE)』『チョコボの不思議なダンジョン』などのCMもヨーロッパで制作しています。当時私だけだったかもしれませんが、スクウェアとエニックス両社からお許しいただいて両方のブランドのCM制作をしていた時期もあります。そしたら、ある日その2社がひとつに。驚きました。

以来20年近く、ドラクエとFFシリーズなどの実写CMは僕が制作しています。ロケ地には、クライアントは基本的に行きません。ほぼ僕が1人で行って、ドラクエの場合は、宣伝部の方たちと、現地のオーディションで候補になった人の写真や、ロケ地の情報などをリアルタイムでやり取りしながら進めています。制作費のどこかのクォリティを予算内で最大限高くする為に効果的な選択肢です。

エニックス時代は、シナリオを借りて全部読んだ上でCMオリジナルのストーリーを作ってプレゼンしていました。そのプレゼンに出席している開発者に「ゲームの細かいところは分からないので、見てもらっても良いですか?」とお願いすると、シーンについて教えてくれたりして、そこでのコミュニケーションも、制作における大切な要素になっていると思います。

 

■ 作ることとブランディングすること、全てを担う『The World of GOLDEN EGGS』

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© 2004 PLUS heads inc.

CMを作る時は、一つの商品に対して、どのように触れると楽しいか、嬉しいかを考えるために見方を変えて作ります。その制作過程は楽しいものですが、商品のことを考えず、自分たちのものを作りたくなりました。その結果、生まれたのが『The World of GOLDEN EGGS』です。

その代わり、100%自己責任です。お金も用意しないといけないし、OAも決めないまま作ってから、流すところを探してブランディングしました。

通常、作った後にメディアで流す仕事は別の会社が行いますが、『The World of GOLDEN EGGS』の場合はそれも全部自分たちで、オールライツでメディアミックスもブランディングもコントロールしました。

そんな僕のやり方でOKなところだけ集まって欲しい、という方針で進めたら、DVDはワーナー・ブラザース、WEBはソニーと普段は一緒にいない人たちが、コンテンツのために集まって仕事をする環境が出来上がりました。「こういう機会じゃないと、普段一緒に仕事ができない相手だから楽しい」という声もありましたね。

OAにしても、通常だと地上波で流した後にCS系で展開しますが、その逆をやりたいという想いがありました。『The World of GOLDEN EGGS』の場合は30曲以上のオリジナル曲があって、キャラクターがミュージシャンになっているPVもあるので、MTVとキッズステーションで同時にOAして欲しいと僕の方からお願いしました。

『The World of GOLDEN EGGS』には入口をたくさん作りたかったんです。キャラクターが好きとか音楽が好きとかアニメが好きとか、いろんな人にとっての入口が欲しくて、そうして広げていくうちに、NECのノートブックパソコンLaVieのCMや、日産のNOTEのCMでも流れるようになります。

そうすると、特定の地上波放送局での展開をした場合のような制限がないので各局の情報番組にも局に関係なく出ていくことができたのです。

その後のコラボレーションはローソンや、PARCO(チャリティー)、楽天球団(『The World of GOLDEN EGGS』ナイターの開催)にも広がります。

ローソンでは『The World of GOLDEN EGGS』コーナーができて、カップ麺もパンも…全ての商品の味を僕が決めて展開しました。『王様のブランチ』でローソンの担当者に「こんなにうるさい社長初めてです」と言われましたが(笑)作ることとブランディングすることを両方やる中では、そうやって作品を守りながら進めていかなければいけないと強く思っていました。

 

■ 5年の制作期間を経て完成した『Present For You』

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© 2013 PLUS heads inc.

映画『Present For You』を最初に作り始めた時は予算も個人で出しているから、全編実写で撮影するのは大変かなと思っていたのですが、結果的にパペットのアニメーションも融合した方が大変でした(笑)

アニメーション部分は、1秒の映像を作るのに24コマの撮影(3D作品ですから実際には左右の目の素材で48コマ)が必要なのですが、1日3秒分しか撮れないとは思っていませんでしたね。最初は部屋の中を実写で撮影し、部屋の外をジオラマにしようとしていたのですが、自分でつまらなくなってきて、両方混在することにしました。結果的にシナリオ上のどこを実写にしてどこをジオラマにするかは、実写の撮影前に自分のイメージだけで決めました。この次はこっちの方向から見たいな、とか人形がいるジオラマの中に人間が入っているといいな、という視点の切り替えで作っていきました。

ジオラマの上から眺めていた人が、いつの間にか自分も中に入っているような感覚になってくれれば面白いと思いました。

劇中の出来事なんかよりもっと恐ろしいことが現実では毎日起きていて。それを描くことよりも「これは当たり前にそのへんに転がっている話ですよ」という描き方をしました。結果、オダギリジョーさんはじめ、劇中の登場人物たちも最後には日常に戻っていきます。

彼らにとってはその日一日が大事で、頑張って生きていますが、生きることが苦手なのだと思います。でも「心のどこかに愛はある」ということを感じて欲しいだけで。それは理解ではなくて感じて欲しい部分です。それは観終わった後にストーリーは忘れていても、心にざらざらと残っているものかもしれません。

基本はそれぞれの下手くそな愛情。でも「この映画は愛を描いています」というと、断片しか描いていないから「どこに?」となってしまうだろうし。パペットと人間が行ったり来たりする変な3D空間を味わいながら、宝探しゲームのような感覚で何度か楽しんでもらえると嬉しいです。

 

■ できるだけ多くの表現手法を身につける

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© 2013 PLUS heads inc.

映画『Present For You』の制作では、先に実写部分を撮って、その後に2年半~3年くらいかけて人形の部分を撮って合成しました。3Dの技術を習得するだけでも1年かかっています。

例えば、光が当たって初めてそこにものがあることが分かるので、本当は光が当たっていない壁にも少し光を当てると部屋の奥行きが分かります。

劇中の部屋でも柱を2本立てて、街灯の電気をつけ、途中に一度明るい場所を作ることで、柱より手前の空間と奥の空間がはっきり分かれて認識できるようにしています。

すると、通常多用されている3Dの「飛び出し」の他にも、「スクリーンの前後にどういう空間を作るか」を意識した演出が可能になります。

これから映像制作に携わりたいという方には、今回、実写とストップモーションと両方の知識でこの作品を完成させたように、できるだけ多くの表現手法を持っていて欲しいです。

それを自分で取捨選択しながら新しいものを組み立てていくことが大事だと思います。

そして作る過程で大変なことはたくさんありますが、何が一番大事かというと、途中で止めないで最後までやること。

最後の完成形をイメージして向かっていっても、自分が思い描いた100%のものにはなりません。でも、壁にぶち当たった時は、止めるのではなくて他のステップを考えて進むしかなくて、それは辛くて大変だけれど、辿りつこうと。エベレストの頂上まで行けず、9合目かもしれないけれど、5合目で帰るのとは全然違います。

あと、批評するのは簡単だけれど、作るのは大変だから、まずは作るしかないと。無性に作りたくなる時が来たら、最後までちゃんと作ることが大事だと思いますね。


 

■ 作品情報

『Present For You』

2月7日(土)全国3Dロードショー

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© 2013 PLUS heads inc.

監督・脚本:臺 佳彦
出演:オダギリジョー/風吹ジュン 青木崇高 佐藤江梨子 藤木勇人/永島暎子 山田麻衣子 石丸謙二郎 夏八木勲/柄本明ほか
製作:プラスヘッズ 配給:ティ・ジョイ

■ オフィシャルサイト

http://www.plusheads.com/pfy/

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臺 佳彦(だい・よしひこ)

株式会社プラスヘッズ 代表取締役社長。
1960年生。鳥取県立米子東高等学校卒。横浜国立大学建築学科設計意匠卒。広告代理店ADK在職中はCMプランナー・プロデューサー・CMディレクター。フリーランスを経て、2001年株式会社プラスヘッズ設立。ドラゴンクエストシリーズやファイナル・ファンタジーシリーズのTV-CMの企画演出。2004年からPLUSheadsnオリジナルコンテンツの企画制作をスタートし、クリエイティブディレクター・プロデューサーとして、アニメ「The World of GOLDEN EGGS」シーズン1&2を制作。2009年、スーダン ダルフール紛争をテーマにしたスペイン・オランダ合作映画「SING FOR DARFUR」を日本国内で配給し、全国の大学でリレー試写会を開催。2010/2011「大阪創造取引所」アワード審査委員長。
2012~「ナレッジキャピタル うめだきた グランフロント大阪 キュレーションコミッティ」メンバーを務める。2009年から映画「Present For You」の制作をスタート。3Dでのストップモーション撮影スタジオも同時に設立。


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