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WOWOW『連続ドラマW グーグーだって猫である2 -good good the fortune cat-』監督 犬童一心さん

ディレクターとして、数多くのCMを手掛けてきた犬童一心さん。高校生の頃に8㎜フィルムでの映画制作を始めて以来約40年、作り続けているとのこと。2008年、映画『グーグーだって猫である』を監督。2014年にはWOWOW『連続ドラマW グーグーだって猫である』で、映画からドラマに形を変えて、同作の映像化に挑みました。そのWOWOWドラマの続編制作にあたっては「メンバーのキャラクターが出来上がっていて、自然と物語が転がっていくようなもの」をイメージしていたそうです。本作についてや、クリエイターへのアドバイスなど、お話を伺いました。

 

■ 「その日を描く」映画を作りたかった

小学生の頃から映画ファンでしたが、実際に初めて8㎜で映画を作ったのは高校生の頃でした。それから40年くらい作り続けています。
IMG_7059高校生の頃に、大学生が8㎜で作った映画を観に行くようになって、一番影響を受けたのは黒沢清さんの『SCHOOL DAYS』でした。圧倒的に面白くて、天才だと思いましたね。その影響が強くて、自分が撮るなら8㎜でしか作れないものを、と考えました。大半の大学生の作品は、本当は劇映画を撮りたいのに8㎜カメラしかないからそれで撮っているように見えたんです。でも黒沢さんは8㎜でしかできない表現をしようとしていて、なおかつ間違いなく真似事でない「映画」を撮ろうとしているように感じました。迫力が全然違って、僕は僕なりにそういう映画を作りたくて、17歳の春休みにキャンディーズの解散を題材にした映画を撮ったのが、最初の作品ですね。

僕の10年くらい先輩の頃は学生運動が盛んで、例えば原将人さんが高校生当時に撮った『おかしさに彩られた悲しみのバラード』には、ベトナム反戦運動が出てきます。それを見るとその時代だということが分かるんです。そこで、僕の高校時代を象徴することは何だろうと思ったら、キャンディーズの解散でした。10年前はベトナム反戦運動で盛り上がっていた高校生、大学生が僕の時代はアイドルが「普通の女の子に戻ります」と言って解散することに夢中になっていました。最後は後楽園球場で5万人を集めてライブをするのですが、その現象が映画のバックボーンに必要で、時代を象徴すると思ったので、それを撮りに行ったのが最初の撮影です。その映像を使って、高校生の男の子を主人公に、解散した4月4日の話を作りました。主人公はコンサートには行きませんが、当日その男の子にどういうことが起きたかを映画にして、背景にキャンディーズの解散コンサートやそこに集まってくる人たちが映像としてカットバックしてくる映画です。17~18という、過ぎゆくその年齢が貴重だと分かっていたから、それを残しておかなければいけないという気持ちでしたね。

その考え方は少女マンガの影響だと思います。当時から『グーグーだって猫である』の原作者でもある大島弓子さんが好きで読んでいたのですが、少女マンガはそういう視点です。今が過ぎ去ってしまうから、ちゃんと見ておかなくてはいけないという。将来のために今に目を背けてはいけないというか。成功するため、将来のために今を捨てるという考えはありません。少年マンガの登場人物は、野球なら野球に没頭して他のことを捨てたりしますが、少女マンガは今日に夢中なんですよね。その視点が新鮮だったので、「その日を描く」映画を作れば、1978年に18歳でいたことが映画の中に残ると思いました。

 

■ VPの編集がきっかけでCMディレクターに

IMG_7082高校生で初めて作った映画は、ぴあフィルムフェスティバルに入選しました。今でこそ、入選は映画業界、広告業界に進むのに効果がありますが、当時はその効果がなくて、自主映画を撮っているということと映画業界に行くということは断絶していました。

なので、入選した他の人たちもはっきりプロの世界に行く意識はなくて、僕自身、映画監督になるという想像もできない中、入れる会社は広告業界の方がたくさんあったので、そちらに進むことにしました。最初は広告には全く興味がなくて。糸井重里さんなどが注目され始めた頃で、面白いCMだなぁと思うことはあっても、自分が作るという意識ではなく、最初はVPの制作に携わっていました。

VPは長いので、ディレクターの人が編集をやりたがらないんです。そこで全業務のアシスタントでもある制作のポジションにいた僕が、編集をやる機会が増えていきました。
そうして何回か編集をしているうちに、代理店の方にディレクターに指名されまして。その後制作の仕事もしながらVPのディレクターを担当することになりました。すると今度は別の代理店の方に、CMもやった方が良いんじゃない?と言われて。手掛けた地方の15秒CMがACC賞を獲ったことで、企画演出部に異動になりました。まずは、おもちゃのCM、お菓子のCMをたくさん作るうちに、車など予算の大きなCMにも携わることになり、CMディレクターとしての仕事をするようになっていきました。

 

■ イメージは“寅さん”?! メンバーのキャラクターが出来上がっていて、自然と物語が転がっていく

2008年の映画『グーグーだって猫である』を監督したことで、大島弓子さんのあの原作をどう映像化すれば面白くなるかを掴むことができました。その上で、もう一度映像化したいという想いはあったのですが、それをどうやるのか、主人公の小島麻子を誰に演じてもらうのが良いのかを考えていたんです。

(C)WOWOW

(C)WOWOW

そんなある日、映画『トニー滝谷』を観て、宮沢りえさんを撮りたいと思うようになりました。あの映画の宮沢さんが大好きで、それを超えるような宮沢さんを撮りたいと。するとある時、宮沢さんに小島麻子を演じてもらったら良いんじゃないかと、結びつきました。宮沢さんが大島さんのストーリー漫画の登場人物を演じられるという確信があったんです。『グーグーだって猫である』は大島さんの自伝的な作品なので、主人公の小島麻子は実際の大島さんですが、大島さんが描く漫画の中のちょっと普通の人とは違うキャラクターを宮沢さんが演じたら上手くいったので、撮っている最中も新しい物語が浮かんでくるほどでした。今回でいうとイッセー尾形さん演じる賀川のエピソードはドラマの1作目を撮っている最中に考えていて。最終話のエピソードもそうですね。キャラクターがすごく明確に自分の中にあるので、エピソードがどんどん浮かんで、今はシーズン3の構想まで考えているんです(笑)

(C)WOWOW

(C)WOWOW

今回の『グーグーだって猫である2 -good good the fortune cat-』を手掛ける前に『男はつらいよ』のことを考えていて、100%キャラクターが出来上がっている凄さを実感していました。あのオリジナルメンバーが出来上がっているおかげで、物語が自然と転がっていくような…そういう風にできそうな気がしたんです。『グーグーだって猫である』の世界にも、寅さんでいうマドンナみたいなゲストを加えれば物語ができてしまうというか。そういう作り方でないとできない面白さがあると思いました。

宮沢さんも2年ぶりでも、すぐに麻子になれたと言っていました、そして、また演じたいと。それは渥美清さんが寅さんを演じる時と同じですよね(笑)歩き方も話し方も初日から小島麻子なんです。そして、長塚圭史さん演じる大森のリアクションも、どんどん深まっています。僕は、大森はタコ社長にしたいと思っているんです(笑)寅さんがとんでもないことを言い出すとテンションが上がるキャラクターがタコ社長ですが、そのタコ社長的な面白さを大森の役柄でどれだけ表現できるか『男はつらいよ』を意識しながら考えたりもします。『グーグーだって猫である』は恋愛の話ではないので、マドンナの代わりがイッセー尾形さんや西田尚美さんです。このドラマでは恋愛とは違う深い人間関係を描きたいので、恋愛ではない対象の相手としていろいろな人が出てくる、という感じだと思っています。

 

■ 目の前にある仕事を本気で

IMG_7141映像制作に携わる方に伝えたいのは、まず、目の前にある仕事を本気でやるということです。自分に向いている、いないを考えるのではなく、目の前にある仕事をまず真剣にやる。僕もCMディレクターに興味はなかったですが、本気でやってみたからこそ分かることがありました。
そして、本気でやったことは誰かが見ているのだと思います。僕はCMの世界で、とことん一つの企画を考えて、じっくり向き合って取り組んできました。するとある時、大きな仕事のディレクションも任されるようになったんです。それは、依頼された以上は真剣に企画に取り組んでいた姿を見てくれた人たちがいたからだと思っています。あとは、できればオリジナルの作品を残しておいた方が良いと思いますね。


■作品情報

WOWOW『連続ドラマW グーグーだって猫である2 -good good the fortune cat-』

6月11日(土)スタート 毎週土曜よる10:00(全5話) ※第1話無料放送

(C)WOWOW

(C)WOWOW

原作:大島弓子(「グーグーだって猫である」角川文庫)
シリーズ構成・監督:犬童一心(「連続ドラマW グーグーだって猫である」『のぼうの城』)
脚本:高田亮(「連続ドラマW グーグーだって猫である」『そこのみにて光輝く』)
音楽:高田漣(「連続ドラマW グーグーだって猫である」『横道世之介』)
出演:宮沢りえ 長塚圭史 黒木華 / 前田敦子 西田尚美 イッセー尾形 / 田中泯
中村ゆりか 光宗薫 志磨遼平(ドレスコーズ) 柳英里紗 岸井ゆきの / 河井青葉
塚本晋也 陰山泰 つまみ枝豆 ほか

■オフィシャルサイト

http://www.wowow.co.jp/dramaw/gou-gou2/

profile

犬童一心(いぬどう・いっしん)

1960年生まれ。高校時代より自主映画の監督・製作をスタートし、大学在学中に脚本・監督を手がけた『気分を変えて?』がぴあフィルムフェスティバルに入選。大学卒業後はCM演出家としてTV-CMの企画・演出を手掛け、数々の広告賞を受賞。その後、長編映画デビュー作となる『二人が喋ってる。』が、映画監督協会新人賞を受賞。1998年に市川準監督の『大阪物語』の脚本執筆を掛け、本格的に映画界へ進出。2003年には『ジョゼと虎と魚たち』で第54回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。その他の代表作に、『メゾン・ド・ヒミコ』、『のぼうの城』など。

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