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TBSテレビ『クレイジージャーニー』演出 横井 雄一郎さん

独自の目線や強いこだわりを持って世界や日本を巡る人々(=クレイジージャーニー)がスタジオに集結し“その人だから話せる”“その人しか知らない”常人離れした体験談を語る『クレイジージャーニー』(毎週木曜 深夜00:10~)。クレイジージャーニーに密着したVTRでは、時にギャングの撮影現場に潜入するなど、その緊張感に息を呑む場面も多々あります。イレギュラーな事態やトラブルも発生する撮影現場で、心掛けていることとは?そして、刺激的な部分だけを切り取りがちなテレビだからこそ、伝えるために意識していることとは?演出を手がける横井さんに伺いました。

 

■ ダウンタウンさんの現場で培った、番組作りの基盤

IMG_6438取り立てて小さい頃からテレビの仕事を目指していたわけではなかったのですが、昔から、笑うのも笑わせるのも好きだったので、バラエティ番組はよく見ていました。
特にダウンタウンさんが好きで『ダウンタウンのごっつええ感じ』と『進め!電波少年』には影響を受けました。
『ダウンタウンのごっつええ感じ』は当時見たことのない笑いで、思春期の自分にすごく刺さりましたね。『進め!電波少年』はヒッチハイクの旅で“世界の日常”が見えたことがとても印象的だったんです。所持金がなくなった有吉弘行さんが、お寺に入って他の僧の人たちと一緒に町の人のお恵みを貰い歩く姿を見た時に、いつもの旅の道中とは違う“その国の生活”が見えたことで、その国の文化にとても興味を持って。そこから直接テレビの仕事に繋がったわけではないのですが、海外旅行が好きになって、それは今にも繋がっているように思います。

TBSに入社してからは、『学校へ行こう!』や『リンカーン』などのロケバラエティに携わる機会が多くありました。今でもロケものが好きで、ワクワクしますし、それを上手く作っていくことにやりがいを感じます。どうなるか分からないところを面白いと感じて上手く入れ込んでいくことが好きですし、今でもその要素は強いですね。

印象的だった現場と言えば、ダウンタウンさんの現場は良い意味での緊張感があります。
現場でどうなるか分からないことや、直前での変更もあったので、その時にいかに考えて臨んでいたかによって対応できる範囲が変わってくるんです。そのために、準備をたくさんして、きちんとシミュレーションを重ねて臨むこと、普通に考えて臨む量の倍くらいを準備する習慣がつきました。それは、今も番組を作るにあたって、大切な基盤になっていると思います。

 

■ 撮れなくても、撮れなかった現実も込みでゴールにする

企画書をいろいろ出しながらも、なかなか通らなくて少し煮詰まっていた時に、上司からの「自分の好きなことを突き詰めてもう一度冷静に考えてみたら?」というアドバイスを受けて作った企画が『クレイジージャーニー』でした。

IMG_6431僕は“松本人志さん”と“旅”が好きなので、それを形にしようと思った時に、松本さんは好奇心が旺盛でいろいろなものを見に行ったりしていると聞いていたので、僕が好きな世界の旅のディープなところ、例えばインドの路地裏とかを松本さんに見てもらったらどんな反応をするんだろう?きっと面白いコメント言うんじゃないかな?と思って、企画しました。そういうディープな世界を知り尽くした人たちが次々にその人しか知らない世界を話したら、松本さんの反応も楽しみだし、今まで見たことない番組になるんじゃないかと思いましたね。

人選については、実際に会いに行くようにしています。本屋で、変なタイトルのものを手に取ったり「こんなテーマを追求している人がいるんだ!」と思ったら僕自身で出版社に電話したり直接メールしたりして会いに行くようにしています。
そこで「一度、お話を聞かせてもらって良いですか?」とアプローチするのですが、これまで番組に出演していただいた方たちは、初対面の時から、ちょっと様子が違う感じが出ていました(笑)

松本紀生さん

松本紀生さん

例えば、アラスカの大自然の中でオーロラ撮影を試みる松本紀生さんは、一見穏やかそうで、刺激的な方ではありませんが、オーロラの話やアラスカの良さの話になると人が変わったようにまくし立て始めるんです(笑)「あれ?スイッチ入った?」という瞬間があって、そうなると、すぐに出演のオファーをします。

そして、実際に海外でロケを行う際に心掛けていることは、極力カメラを回しっぱなしにするということですね。イレギュラーな事態やトラブルは起こるものなので、その様子も込みで伝えられるように、交渉の様子やオフの感じもカメラは回せるだけ回しておこう、というのはチーム全体で心掛けています。

カメラはダメだと言われても下を向けてしばらく回していたりとか、映像は撮れていなくても、ディレクターの声だけでその緊張感を伝えたりとか。撮れることをゴールとはしていないんです。撮れなくても、撮れなかった現実も込みでゴールにするようにしています。

 

■ 一面だけを切り取らずに、ありのままを見せる

『クレイジージャーニー』では、一面だけを切り取らずに、ありのままを見せるということを意識しています。

例えば、2016年3月24日、31日の2週にわたって放送した、ギャングの撮影などを手掛けるスラム街に住む写真家、伊藤大輔さんの回は特にそのことを意識していました。伊藤さんは、ブラジルのスラム街、ファヴェーラに家族で住んでいます。家のすぐ近くで銃撃戦が勃発したりと危険な一面もありますが、やっぱりファヴェーラが好きで住んでいるんですよね。
僕らは刺激的な部分だけを切り取りがちですが、伊藤さんの話を聞くと何年も住むに至る素晴らしい部分、人との関係などがあると分かったので、放送上、両方をちゃんと入れたいと思いました。その両方があってこそ、伊藤さんの思うファヴェーラだと感じたので、特に子どもたちが水遊びをしている平和な光景、そこで楽しそうにしている伊藤さんの姿は伝えたかったんです。

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だからスタジオでのMC陣とのトーク部分でも、松本さんが「街はこんなにギャングだらけなんですか?」と質問して「そうじゃないです。100人いたら、99人が良い人で、1人がギャングになるんです」と伊藤さんが答える場面をちゃんと放送したいと思いました。皆がギャングのように見えてしまう内容でもあるので、そうじゃないという会話も使ったし、そうじゃないという光景も意図的に使いました。

伊藤さんに関しては、放送後に番組に寄せられるtwitterでも賛否両論がありました。今まで番組に登場した方は、好きなことに冷静沈着に向き合うタイプが多かったのですが、伊藤さんはそのノリ的な部分も含めてちょっと違うぞ、と(笑)。そういう意見もありましたが、それも想定していたというか。それだけ個性が溢れ出ていましたし、MC陣を圧倒しているんですよね。伊藤さんのリズムでMC陣が話す感じも印象的でした。

sub1MC陣は、1つのことを突き詰めている方に対するリスペクトがあって、それがスタジオの良い空気を生んでいるのだと思います。スタジオにやってくる出演者の方々、本当にいろいろなタイプの方がいらっしゃいますが、松本さんも、だいぶ年下の方に対しても敬語でお話されています。出て頂いた方は「楽しかった」とか「喋り過ぎたかな?」と言って帰って行かれることも多いので、僕らの取材では出てこなかった話が、スタジオで新たに聞けることが多々あります。そこも、MC陣と絡む良いところだと思っています。

さらに、ドキュメントっぽいVTRもMC陣が見ていることで、より面白くなります。ワイプで常に3人の表情を出して、コメントなども織り交ぜていくことで、少しとっつきにくい題材でも、安心感が出て間口が広がっていると思いますね。

 

■ 好きなことをやっていると思った以上に力が出る

IMG_6447最近『クレイジージャーニー』を作っていて思うことは、好きなことをやっていると思った以上に力が出るということです。踏ん張りどころで踏ん張れるというか。好きなことが必ずしも仕事でできるとは限らないですが、好きなことは頑張れるので、好きなことを時間のある時にしておいた方が良いと思います。僕は海外が好きで、お金を貯めては海外へ、ということを繰り返していたのですが、それが今活きているし、今、仕事で直接行けないこともありますが、番組が密着する、という形でいろいろな世界を見ることもできます。

実際、自分がロケに行くものでなくても、ディレクターが撮ってきた素材は全部見ているのですが、それは純粋に楽しみです。

偉そうなことは言えませんが、やはり、好きなことのサイクルで回っていると気分も良いので、これから映像制作に携わりたいという方は、好きなことに割く時間を多くして、自分の武器にしていったら良いんじゃないかなと思います。


■番組情報

TBSテレビ『クレイジージャーニー』
毎週木曜 深夜00:10~
http://www.tbs.co.jp/crazyjourney/

2016年5月7日(土)
DVD『クレイジージャーニーvol.2』発売
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profile

横井 雄一郎(よこい・ゆういちろう)

1981年神奈川県生まれ。2004年にTBSテレビに入社。
「学校へ行こう!」、「リンカーン」、「キングオブコント」、「ドリームマッチ」などを担当。

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