スマートフォンが広く普及して久しいです。さらにスマートフォンは年々進化しており、高機能で便利な機器となっています。特にカメラ機能が優れていることから、思い立ったらすぐに撮影することが可能になりました。さらに、編集機能や編集アプリを使うことで、オリジナルの1枚に仕上げて、写真を楽しめます。

こうした背景からデジカメの需要が減り、カメラ市場の冷え込みがみられます。しかし、全方位の動画や画像が撮影できる360度カメラは注目度を増しています。

今回は360度カメラにどのような機能があり、どのようなシーンで活用されるのか、最新のトレンドをご紹介します。

「360度カメラ」とも呼ばれる、VRカメラとは?

VRカメラとは、VR映像を撮影する際に使用するカメラのこと。撮影者の前方だけではなく、後方を含む360度の範囲を撮影できることから、VRカメラは「360度カメラ」や「全方位カメラ」とも呼ばれています。

VRカメラの歴史は古く、水平方向のみ360度撮影できる「QuicktimeVR」は1990年代に開発されました。その後も開発は着々と進められ、2019年現在では360度を見渡せる全天周パノラマを表現することが可能になっています。

VRカメラには2つの種類がある!

現在ではVRカメラにも様々な製品がありますが、VRカメラは大きく以下の2つに分けられます。

  • 全天球カメラ
  • 超広角の魚眼レンズを2つ使用したカメラ。
    2つの映像を撮影し、その映像を自動で縫い合わせる処理(スティッチ)を行う。この仕組みにより、上下左右360度の撮影が可能。

  • 半球カメラ
  • 超広角の魚眼レンズを1つ使用したカメラ。
    全天球カメラのように、全方向を一度に撮影することはできない。ただし、2つのカメラを使用し、撮影後に編集をすることで上下左右360度の映像になる。

上記の通り、全天球カメラと半球カメラは特徴が大きく異なります。両者の違いをもう少し詳しく見ていきましょう。

全天球カメラ 半球カメラ
編集技術 必要なし(自動編集) 必要あり
難易度 初心者~上級者向き 上級者~プロ向き
動画の質 高い
コスト 高い 安い
撮影できる範囲 上下左右360度
(※カメラの底面は撮影不可)
2つ組み合わせると、上下左右360度の撮影が可能
(※カメラの底面も撮影可)

半球カメラは低コストで購入できますが、上下左右360度を撮影するためには、2つの半球カメラを購入する必要があります。また、撮影後には編集が必要になるので、全天球カメラに比べると上級者向けのカメラと言えるでしょう。

VRカメラの選び方は?押さえておきたい3つのポイント!

VRカメラを選ぶ際には、上記でご紹介したタイプ以外にも押さえておきたいポイントがあります。選び方の主なポイントとしては、以下が挙げられるでしょう。

価格帯

VRカメラの価格帯は、数万円~10万円まで幅が広い。必要な機能に加えて、予算も事前に決めておく必要がある。

画質

VRカメラの画質は、「静止画品質」「動画品質」の2つに分けられる。静止画・動画のどちらを撮影するのかによって、確認するべき情報が異なるので要注意。

防水機能

雨天時や水場の近くなどで撮影をしたい場合は、防滴もしくは防水の製品を選ぶ必要がある。
特に水中で撮影をする場合は、「防水」が備わった製品を選ぶことが大切。

ほかにも重量や内蔵されているメモリなど、製品を比較するポイントは数多くあります。その全てのポイントを比較すると膨大な時間がかかってしまうので、最低限の要素として、上記3点の比較をおすすめします。

注目の360度カメラのおすすめ機器5選

virtual reality in industry, 360 degree camera

ここからは少し先取りをして、2023年も人気が出そうな360度カメラをご紹介します。

360度カメラの入門としておすすめ「RICOH THETAシリーズ」

「360度カメラをこれから始める」という方におすすめしたい機種が「RICOH THETA シリーズ」です。リモコン操作のような感覚で手軽に撮影ができます。専用アプリをダウンロードすると、スマホなどで簡単に編集もできます。

モデル THETA Z1
THETA X
THETA SC2
THETA V
THETA S
THETA SC
THETA m15
https://theta360.com/ja/
価格帯 30,000~120,000円
解像度 静止画:★★★☆☆~★★★★☆
動画:★★★☆☆~★★★★☆
防水機能 なし(オプションあり)
特徴 ・特徴やデザインがシンプル
・持ち運びがしやすい
・初心者向け

小型で使い勝手がいい「Insta360シリーズ」

「Insta360シリーズ」は、初心者からプロまで幅広く対応できるラインナップが魅力です。中でも「Insta360 X3」は世界で一番売れている360度カメラとして、ポケットサイズながら機能性が優れています。

モデル Insta360 TITAN
Insta360 ONE RS
Insta360 X3 など
https://hacosco.com/insta360/
価格帯 50,000~180,000円
解像度 静止画:★★☆☆☆~★★★★★
動画:★★★☆☆~★★★★★
防水機能 なし
特徴 ・さまざまなモデルから選べる
・モデルによって性能が大きく違う
・iPhoneに特化したVRカメラ

多機能な手のひらサイズのカメラ「GoProシリーズ」

超小型アクションカメラの「GoProシリーズ」は、4K動画の撮影が可能で、一般個人のみならずインフルエンサーや芸能人なども愛用しています。日常の撮影に加えて、マリンスポーツやウインタースポーツなどでも活躍するカメラです。

モデル GoPro HERO 11
GoPro MAXなど
https://gopro.com/ja/jp
価格帯 60,000~100,000円
解像度 静止画:★★☆☆☆~★★★★★
動画:★★★☆☆~★★★★★
防水機能 あり
特徴 ・解像度が高い
・防水機能が備わっている
・機種によっては画像のつなぎ目がきれい

タフな全天球360度カメラ「Kodak PIXPR 4KVR360」

前作の半天球から全天球に進化したモデルです。ハード面での完成度が高く、防滴にも対応しています。アプリを使って撮影などができる点もメリットでしょう。また、付属品が充実しており、リモコンやカメラアームがついてきます。

モデル Kodak PIXPR 4KVR360
https://kodakpixpro.com/AsiaOceania/jp/
価格帯 50,000~55,000円
解像度 静止画:★★★★☆
動画:★★★☆☆
防水機能 あり
特徴 ・軽量で持ち運びやすい
・防水、防滴の機能がある
・静止画の品質が良い

高スペック360度カメラ「360fly 4K」

防塵や防水、4Kなど高スペックなモデルです。防水性能は10mまで対応しており、ちょっとしたダイビングなどでの撮影が可能です。動画の撮影性能や大容量の内蔵メモリなど、4K対応の360度カメラの中では非常に優れた機能を備えています。

モデル 360fly 4K
価格帯 40,000~50,000円
解像度 静止画:★★★★☆
動画:★★★☆☆
防水機能 あり
特徴 ・防水加工がなされている
・アウトドアに特化したモデル
・ストレッチレスがある

近年のカメラ市場と360度カメラへの需要高まりの背景

Professional Digital Photo Gear

カメラ市場はここ10年で90%縮小という苦境に

近年のカメラ市場は非常に厳しい状況が続いています。
一般社団法人カメラ映像機器工業会(CIPA)「2021年デジタルカメラ生産出荷実績表」によれば、日本国内向けの市場において累計出荷台数は115万5,472台、前年比で89.2%に減少しており、カメラ市場はここ10年で90%の縮小となっています。細かな内訳をみると、ミラー構造がないミラーレスカメラの金額が前年に比べてわずかに上回ったのみで、その他の種類のカメラは前年を下回りました。

国内のカメラ市場の不調は、高性能・高機能なカメラ付きスマートフォンの普及が要因として考えられます。カメラ付きスマートフォンを持ち歩くことは「性能がいいカメラを携帯している」ことと同様であり、「わざわざカメラを購入しなくてもいい」というユーザーが増えているのではないでしょうか。

しかしカメラ市場の中でも、360度カメラなど特殊な撮影を可能とするモデルは、使用用途の幅広さから今後の需要の高まりが予想されています。

レジャーだけではない360度カメラの活用シーン

ドライブレコーダー

360度カメラと聞くと、VRゲームやイベントの際に使われているイメージを持つのではないでしょうか。もしくは、YouTubeのインフルエンサーや芸能人が、従来までと異なる映像技法を使って拡散・視聴数増を狙う目的での使用を連想するかもしれません。

しかし、360度カメラの使用目的はそれだけにとどまりません。たとえば、360度カメラはドライブレコーダーにも搭載されています。いわゆる全方位カメラのドライブレコーダーは、前方や後方のみならず、側面の様子も撮影できます。

それによって悪質なあおり運転、幅寄せ、無理な追い越しなどの証拠を映像として残せます。もちろん、車の交通事故の際の証拠映像となり、さまざまな場面で役立てることが可能です。特に近年はあおり運転によるトラブルが発生し社会問題にも発展したため、今後も防犯目的での導入が考えられます。

360度カメラが市場の主役になる日の到来も

360度カメラ2023_まとめ

【最新 360度カメラ事情のまとめ】

  • カメラ市場が低迷する中、360度カメラは増加見込み
  • 360度カメラの最新機種は常に進化を遂げている
  • 全方位を確認できるためドラレコなどでの需要が増加中

カメラ市場のにぎわいが薄れる中で、360度カメラの需要は増加の見込みです。ドライブレコーダーや、その他の防犯目的でも活用されることが増えてきました。

また、ゲームや動画視聴などの分野でも360度カメラの需要増加が見込まれており、ゲームなどの既存分野での伸びと、新たな分野での需要が加わることで市場拡大が期待されます。

それから、個人だけではなくビジネスシーンでも活用できる360度カメラは常に最新機種が登場しており、年々、進化を遂げています。機種選びでは価格帯や機能、特徴などを踏まえて選んでみてください。