大手インターネット広告会社であるサイバーエージェントの子会社として福岡に拠点を構える株式会社ハシゴ。「360度にワクワクを」を理念に掲げ、各種サービス開発やクリエイティブデザインなどの事業を展開しています。

2019年に設立5年目を迎えた同社は、約30名程度のメンバーが福岡拠点に常駐し、東京や大阪などの拠点と互いに連携しながらそれぞれの担当する案件を進めています。
一見非効率とも思える離れた拠点同士の連携作業をどのように工夫しているのか、そして地方におけるクリエイティブスキルの向上をどう図っているのか。同社代表と現場で働く社員の方にインタビューしてきました。

平井達也(ひらい・たつや)(写真左)
株式会社ハシゴ 代表取締役。
1988年、神奈川県生まれ。
「年齢や地域に関係なく活躍できる社会を創る」を掲げ、地方拠点責任者としてサイバーエージェントグループのメディア運営や学生向けのサービス「hasigo@」などを立ち上げる。2016年にはサイバーエージェントグループにてベストマネージャー賞受賞。
2018年9月4日に株式会社ハシゴの代表取締役に就任。


後藤啓佑(ごとう・けいすけ)(写真右)
株式会社ハシゴ デザイナー。
愛知県出身。クリエイティブ職として地元企業で勤務し、その後フリーランスとして活動。さらなるフィールドを求めて株式会社ハシゴへ転職をし、同時に福岡へ移住。

サイバーエージェントグループの1社としてメディア運用を事業ドメインとする

――早速ですが、ハシゴさんの事業内容を教えていただけますか?
平井 もともとは九州の優秀な人材を採用する目的で設立されました。その後、サイバーエージェントグループのメディア運用を行うようになり、今はそれに加えてゲーム運用事業も行っています。
有名なところでは、サイバーエージェントグループのプロレス団体「DDT」のファンクラブサイトを当社で運営しています。

――九州の優秀な人材を、ということですが、どの地域にも優秀な人材はいると思うのですが・・・?

学生を例に挙げればその通りで、どの地域も学生のレベルにそれほど大きな差はないと思います。ただ、東京の学生は普段からビジネスマンと接する機会が多いためか、「自分を優秀に見せる」スキルに長けています。そのため、地方の学生は相対的に損をしているということです。広い意味でのコミュニケーションスキルというか、そういう部分を補うために地方で優秀な人材を探して活躍する場所を創るのが当社の役割だと認識しています。

――後藤さんはデザイナーということですが、どういう業務を担当しているのですか?

後藤 今は会社のブランディングをメインで担当しています。今使っている名刺のロゴも、社内のデザインコンペに応募して受賞したものを採用してもらいました。それ以外にも、弊社で運用しているゲーム事業のデザインなども手伝っています。
また、まだリリースされていませんが、今後予定されている自社プロダクトのブランディングやストーリーのデザインも担当しています。

東京ではなく、地方都市である福岡で会社を立ち上げた理由とは?

――そもそも、サイバーエージェントは東京が本社であるため、子会社を作るなら目の届く東京でと考えるのが普通だと思うのですが、なぜ福岡で創業したのですか?

平井 会社を立ち上げたのは2014年なのですが、当時はソーシャルゲームが非常に盛り上がっていました。東京には多くのゲーム会社が存在し、その分人材ニーズも過熱している状況で、優秀なクリエイティブ人材獲得競争が激しかったんです。
サイバーエージェントグループとしては、従来出会えてなかった地方の優秀な人と出会うために東京以外への拠点展開と人材確保を模索していました。

そこで福岡を選んだ理由ですが、福岡には既にクリエイティブ系企業が多く進出していたこと、サイバーエージェントグループとして福岡での拠点構築に出遅れていた感があったことなどが挙げられます。
多くのクリエイティブ企業が進出しているということは、すなわち潜在的にクリエイティブ人材が多いということであり、拠点構築のメリットは大きいと判断しました。
それと、東京の社内にも福岡出身者が多くいて、福岡のメリットを耳にタコができるほど聞いていたので、福岡で楽しいことができそうという雰囲気があったことも事実です(笑)

距離が離れているからこそさまざまな工夫で業務を行う

――クリエイティブ職の場合、東京が最も刺激のある場所であるため東京で仕事をしないと不安になるような気がするのですが・・・?

後藤 一度フリーランスを経験しているので、ハングリー精神というか、自分で自分の価値を高めていく意識は持っていました。そのため逆に地方で、東京に負けないという反骨精神を持ってがむしゃらに取り組むことが、クリエイティブの質の向上に繋がると考えています。また、今はリモートワークなどの働き方をするクリエイターも多いので、必ずしも東京がベストという環境ではなくなってきていると思います。
どれだけ学んで、どれだけスキルアップするかは、働く場所ではなく自分の意志によると思っているので、ストレスのたまる東京ではなくストレスフリーな地方で仕事する方がメリットだと感じています。

――仕事をする上で、東京や大阪といった離れた拠点の社員とチームを組むこともあると思いますが、支障はないですか?

平井 サイバーエージェントは、グループ全体として社員同士の濃厚なコミュニケーションを促進しています。やや過剰かもと思えるくらいにコミュニケーション量を増やしていくことを心がけているため、離れて仕事をしていてもさほど不便を感じることはありません。

後藤 仕事でわからないことがあったらすぐにテレビ会議でつないで聞くことができるので、距離は言い訳にもなりません(笑)。今、毎日の朝会は大阪とつないで実施しています。内容は今日のタスク確認であったり、プロジェクトの進捗報告であったりと簡単な内容ですが、やることが明確になるので助かっています。普段はSlackを使って文字ベースでコミュニケーションをとっていますが、Slack内で使えるオリジナルスタンプをデザインして社内のコミュニケーションが活性化されるようにいろいろ工夫をしています。

平井 テレビ会議については今後常時接続も導入してみようかと検討しています。常時接続だと常に監視されているというネガティブな意見もありますが、何より一緒にいる感がでるのでまずは導入して様子を見ようかと考えています。

福岡の住みやすさは異常!?

――ところで、お二人とも福岡は縁もゆかりもない土地ですよね。住んでみていかがですか?

平井 福岡の人は暖かいし飲み会が好きだということを痛感しています。というもの、仕事のことやプライベートなことをtwitterでつぶやいているのですが、一度名刺交換しただけの方がリツイートして広めていただいたり、「今度飲みに行きましょう」と誘っていただいたりと、すぐに懐に入ってくる感じがあります。ざっくばらんというか、開放的というか。かといって必要以上に干渉してこないので、心地いい人間関係が築けると思います。

また、福岡市から東京や大阪へのアクセスが抜群に良いのも素晴らしいと思います。例えば東京までは今住んでいる自宅から2時間ちょっとで行けます。以前勤務していた渋谷で考えると僕の実家の神奈川からだと通勤は2時間かかります。その時とほぼ変わらない時間で福岡から東京に行けるというのは驚愕です。

後藤 街がコンパクトにまとまっているのがいいなと思います。買い物でも食事でも、あちこち移動しなくて済むのがありがたいです。
休日には近所の温泉に行くことが多いのですが、そこで年配の方が話しかけてくるんです。世代の違う方がこんなに気軽に話しかけてくれるというのは福岡ならではかもしれません。普段生活をしている中で全く接点のない人と話ができるのが新鮮で色々な刺激をもらえるので、そういう部分は仕事にも活きてます。時々モノをくれるのにもびっくりしました(笑)

――逆に福岡に住んで残念だったところは?

平井 福岡で生活することに対するデメリットがあまり思いつきません。こちらで生活を始めてから、プライベートでのストレスがゼロですね。

株式会社ハシゴで働く魅力を探る


――株式会社ハシゴでは、クリエイティブ人材を育成するためにどのような制度を導入していますか?

平井 働く社員が何をしたいのか、何を目指しているのかを対話によって引き出し、支援するという目的で1on1ミーティングを取り入れています。それにより自発的に挑戦する社員を育て、社員それぞれのモチベーションを高めることを心がけています。クリエイティブスキルという点では、福岡のようなストレスのない環境だと新たな発想が生まれない危険性があるので(笑)、東京から常に新しい情報を仕入れては共有したり、新規事業に取り組む際は社内デザイナー全員でコンペするといった取り組みも行っています。

――働く側から見て、株式会社ハシゴの魅力とはどういうところにあると思いますか?

後藤 社員がすごく優しいし、仲良くなるのが早いと思います。私も入社してすぐに飲み会に誘われました。社員同士のコミュニケーションがスムーズで、新入社員を受け入れやすい雰囲気があります。
また、代表との距離が近いというのもメリットだと思います。特に私の席は振り返れば代表がいるという席なので、普段からたわいの無い会話もあれば、仕事についてはお互い真剣に厳しい意見をやり取りすることもあります。程よい緊張感で仕事ができる、最適な職場です。

後は基本的に残業が少ないというところですね。定時は10時―19時なのですが、残業があっても平均して20時くらいまでには帰ります。ゲームの運営もやっているので、繁忙期やトラブル発生時はもちろん残業が増えますが、一時的なものですね。
なぜこんなに早く帰るんだろうと思ってたんですが、理由はみんな飲みに行きたいからかもです(笑)。大名(おしゃれなお店が多いエリア)が会社の近くにあるので、安くて美味しいお店が多いし、接客も素晴らしいのでよく会社の人間と仕事終わりに飲みに行ってます。

――最後に、地方で働きたいと考えているクリエイティブ人材の方にメッセージがあれば

平井 当社は設立から5年目を迎え、サイバーエージェントグループの支援を受けながら福岡にしっかりと根を張って活動しています。クリエイティブ人材が地方で働くというのは決してハンデではなく、むしろワークライフバランスの実現のためにはどんどん地方へ出ていくのが正解だと実感しています。

後藤 場所や会社に依存せず自分でスキルアップしていくという自分の覚悟があれば地方でも十分に活躍できるのではないでしょうか。私は福岡に来てよかったなと日々実感しています。生活環境上のストレスがほぼゼロの環境であることや、都会に比べ積極的にコミュニケーションをとってくれる人も多いことを考えると、ストレスを最小限に抑えて人と意見交換をしながらクリエイティブに関わりたい方には、とてもオススメの環境だと思います。

インタビュー・テキスト:桂 浩一(hk-challenge)/撮影:Ken Hidaka

会社プロフィール

株式会社ハシゴは、2014年に設立されたサイバーエージェントのグループ企業です。福岡をメイン拠点として、大学生の就業体験支援や新規サービスの開発を行って参りました。現在は「360度にワクワクを」をビジョンに掲げ、地方や年齢、場所や立場の垣根を越えて360度すべての人にワクワクを届けられる企業を目指すべく、メディア・サービスなどの新規開発やゲーム運用などを行っています。

社名 株式会社ハシゴ
所在地 福岡県福岡市中央区天神2-7-21 天神プライムビル5階
設立 2014年11月4日
代表者 平井 達也
事業内容 スマートフォンアプリをはじめとした各種サービスの企画、製作及び運用
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