電通を経て現在は教育や育成、中国事業、メディア広告プロデューサーとして活躍されている吉良 俊彦さんに、これまでの生い立ちからプライベートなことまで、お話を伺いました。

電通ではやれなかったことをやろう。

イメージ小さい頃からサッカーが大好きで、将来は「サッカー選手になりたい」と本気で思っていました。転勤が多かったこともあって、新しい土地ではサッカーを通して友達をつくっていました。

何事も一度始めたものは止めさせてもらえない家庭だったこともあり、サッカーはずっと続けていました。今でもサッカーに関わり続け、土日には少年サッカーの監督をやっています。しかし、サッカー選手になることはやはり難しいことで、大学へ進学することにしました。法学部に進みましたが、特に法の番人になりたかったわけではなく、正直に言うと、ここしか受からなかったんです(笑)。

サッカー選手になる夢はあきらめつつも、サッカーに関することと、小さい頃から長けていたコミュニケーション力を活かした仕事に就きたいと考えていました。それを実現できる会社は電通しかないと思ったのです。

電通に入ってクリエイティブ局・営業局を経て、雑誌局へ。そこで念願のワールドカップの企画に関わることができたのです。しかもそのプロジェクトでは、尊敬し一緒に仕事をしたいと思っていた村上龍さんにも参画してもらうことができました。その後もワールドカップの仕事に関わり、ワールドカップ日本開催を終え、電通を退 社するまで多岐にわたるプロジェクトに携わりました。

ひとつの会社に居続けながら管理職を目指す人もいますが、自分は生涯現場の人間であり続けたいと思っていました。そして電通を辞めるときは「電通ではやれなかったことをやろう。自分が今まで学んできたことをもっといろんな人に伝えよう。」と決意しました。

ひとつの会社に居続けながら管理職を目指す人もいますが、自分は生涯現場の人間であり続けたいと思っていました。そして電通を辞めるときは「電通ではやれなかったことをやろう。自分が今まで学んできたことをもっといろんな人に伝えよう。」と決意しました。

一週間をふたつに割ろう!

独立してからの主な事業は3つ。1、教育/育成 2、中国事業 3、メディア広告プロデューサーです。その中でも教育/育成には特に力をいれています。

以前よりずっと疑問に感じていたことがありました。それは、「なぜ出版社が東京にしかないのか?」ということです。東京の情報=日本の情報というメディアの後押しにも疑念がありました。日本の成長にはローカルの発展が必要不可欠なのに、東京から発信される情報で本当に全国の人々は満足しているのだろうか。その土地その土地で必要とされる情報は違うからクリエイターだって地方にいても活躍できるはずだ。

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そんな思いもあり、独立してからは「一週間をふたつに割ろう!」と思い、週の前半を関西で大阪芸術大学での授業(2日間4コマ)をし、残りの3日間は東京でプロデュースなどの仕事をやりました。当初私の疑問は見事に的中し、関西で受けいれてもらうのに2年ほどかかりました(笑)。自分が橋渡しとなり関東・関西それぞれの学生が、お互いの良さを吸収しながら成長したと思います。

講義では主にメディア論やエディトリアルを教えているのですが、普段から学生たちと接していて強く望むことがあります。 それは『決して心を病んでほしくない』ということ。 その思いが常にバックグラウンドにあります。“気にしない精神力”を身につけてほしいのです。そして『みんな』という言葉を使わない。今の日本はみんな同じにしようとする傾向がありますが、これは本当によくない。クリエイターでもそうでなくても人間は同じじゃない。オリジナリティーを持ち合わせているんです。

また2011年に、新しいソリューションとして“マンガデザイン”をつくりました。マンガは企業広告に大いに活かせます。自分が教えた子供達に仕事がないという現状を打破するためにも、マンガをグラフィックデザインと同等にし、新たな仕事を生み出したいと思っています。最近出版した書籍 「嘘の破壊」でもマンガデザインを取り入れています。

FacebookやTwitterなど話題のソーシャルメディアについて

TVや新聞、ラジオといったマスメディアに加え、ここ数年でインターネットメディアが急速に発達しています。中でも急ピッチで拡大しているソーシャルメディアも地域性をとらえることが重要です。

「個」が発展すればするほど、メディアは分散するので、
より生活に密着していくようになります。ソーシャルメディアを含めての多岐に及ぶメディアの機能性をしっかりと考えてクリエイトすることが求められるようになってきていますね。

「たくさん負ける」こと。

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人は話す事によってその人の深さが出るものです。プレゼンテーションをするその姿は、相手にあなたという人間への興味を沸かせることができていますか?ただ暗記して読み上げるのではなく、自分の言葉で話してこそ、人間的な魅力を伝えることができるのです。そうすると『このプロジェクトをお願いしたい』ではなく、『あなたと一緒に仕事がしたい』に変わっていくはずです。

それから『たくさん負ける』こと。失敗から学ぶことはとても多い。だから失敗を恐れないことが大切です。

さらに、『時代対応力』も大切です。日常に気づきのない人はクリエイティビティが弱くなります。与えられたものだけをやるのではなく、新しいものをどんどん取り入れられる人こそ、今の時代・メディアに勝つ人なのです。

視点をずらす

基本的に“広く浅く”のスタンスなのですが、「たくさんの人が興味を持つもの」に興味を持ちますね。行列ができるものに対して、どうして行列ができるのか。そしてその行列がなくなったら残るものはあるのか、それとも無いのか。

それから、得意なことは『視点をずらす』ことですね。相手の立場に立ち、教えてもらおうとすることでコミュニケーションがスムーズにとれます。私はどんな世代の人とでも同じ目線で話しをしようと努力しています。そうすることで、新たな情報を得ることができるんですよね。

私の座右の銘は「教学相長也(きょうがくそうちょうなり)」です。教えることと学ぶことは互いを成長させるのです。

メディアをもっと勉強してほしい

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与えられたものをただ描いているだけではクリエイティブじゃない。それに技術だけ習得していても、ただのオペレーターにすぎません。考える事そのものがクリエイティブなんです。

今の若い方たちに伝えたいのは、「人生はそんなに早く決めなくていい」。色々と学び、経験していく中で見えてくるものもあるんです。そして「将来の道は変えてもいい」と。

それから私が最も伝えたい事は、「メディアをもっと勉強してほしい」。例えば自分はWeb業界のクリエイターだから映像業界のことは知らなくていいという訳ではありません。これからは多業界にもっと目を向けて幅広い業界をカバーできる人こそ、真のクリエイターだと思います。

私たちの世代が若い世代にどんどん抜かれ、バトンタッチしていきたいと思っています。