3歳から習っている書道をベースに、これまで誰も見た事がない漢字を次々と生み出し、「創作漢字」というジャンルを世に広めた新世代のクリエイター「もにゃゐずみ」さん。Twitterで発信された、タピオカを表現した漢字は、一瞬にして拡散され、メディアでも取り上げられるなど、多くの人の心に強い印象を残しました。

普段、素性を明かさずに創作活動をされているため、プロフィールの多くは謎に包まれたまま。今回は、ほぼ初めてという対面でのインタビューを通じて、書道家クリエイターとして活動するまでの経緯や、発信のベースとなっているTwitterとの関わり方、フリーランスのクリエイターとして活動していくうえでの苦悩についてなど、じっくりとお話を伺いました。一瞬で人の心をつかむコンテンツを生み出す発想の裏側を、一緒にのぞいてみませんか。

書道家クリエイター もにゃゐずみ
幼い頃から書道を習い、書道歴は20年近く。9年前からTwitterをはじめ、2019年3月より書道家クリエイター「もにゃゐずみ」としての活動を開始。タピオカを漢字で表現した「創作漢字」がTwitterで話題となり、メディアで取り上げられるなど、一躍有名に。現在は、企業の広告制作やプロモーションを多数手掛けるほか、2020年3月末には初となる書籍を出版するなど、独自の活動で注目を集めている。

書道家クリエイター「もにゃゐずみ」が誕生するまで

――まずは、お名前の由来について教えてください。

まず「ゐずみ」というのは、個人的にゆかりのある名前から付けました。加えて、書道家って少しかた苦しいイメージがあると思うんですけど、その点でもう少しフランクで馴染みやすい名前にしたくて、ふにゃっと感を「もにゃ」で表して付け足しました。

――書道はいつ頃からはじめられたんですか?

書道は3歳からはじめて、現在も続けています。書を書いているとなんか落ち着くんです。そんな中、皆さんに何か新しい、面白いものを出せたらいいな、と思って2019年の3月に書道家クリエイターとしての活動をスタートしました。

――「もにゃゐずみ」さんとしての活動は、今年の3月からだったんですね!

そうですね。元々書道家クリエイターの活動とは別に、9年前にTwitterをはじめていまして、SNSっていろんな人がいるので、怖かった部分もあるんですけど、でもやっぱり面白いコンテンツを出せば、それなりの反応がくるので、それが楽しくてずっと発信は続けていました。でも、5年前にフォロワー数が数十万人になったあたりでちょっと飽きてしまって、しばらくやめていた時期もありました。

もにゃゐずみさんの書道道具

――ちなみに5年前だと「創作漢字」はまったくやられてない頃ですよね?

そうですね。当時の自分は、そんなに何かを生み出したいっていう気持ちもなくって、ただただ、みんなに面白いと思ってもらえるものを発信する感じで、例えば、時事ネタに突っ込んだりとか、そういった事をやっていました。

――今では、書道家クリエイターとして、さまざまな企業の広告やプロモーションを手掛けられていますが、今のスタイルを確立されたきっかけなどはありますか。

確立したと言えるほどこの活動を始めて長くはありませんが、最初はただ、自分の中で胸を張れる特技の一つである書道をどうやって打ち出そうかな、という事をずっと考えていました。みんなが知っている漢字だけでなく、見た事もないマイナーな漢字を書いてみたりと、従来の視点とは異なった方面から書道の面白さを伝えていくうちに、漢字の深みにはまっていった、という感じです。その一つが「創作漢字」ですね。「創作漢字」を作るときにはルールを決めています。漢字ってみんなが使っているものなので、ポイントとして、まず漢字として「ありそう」である事、次に「インパクト」、ちょっと特徴的なところがあったり意外性がある事、そして、ぱっと見たときに何を表しているかが「伝わる」事。この3つのポイントを意識して作っています。「インパクト」と「ありそう」って相反すると思うんですけど、そこのバランスがすごく難しいです。

――普段、吸収したものをアウトプットする際に、気を付けている事はありますか。

創作漢字に関して言えば、例えば、街中を歩いていて、この企業のロゴ面白いなぁ、とか、Twitterで流行っている、このトレンドワードを漢字にできたら面白いんじゃないか、という事は常に考えます。30秒ぐらい考えて、面白くならないな、となったらすぐに捨てて別のアイデアに移るのですが、たまに、どうしてもこれを漢字にしたい、という場合は、メモしておいて一人でブレストする事もあります。でもじっくり考えたものって、やっぱり数日後には使えないなと感じて、全部切り捨てる事の方が多いです。実際に思いついたアイデアの中から使えるものって、300分の1ぐらいの割合だと思います。

もにゃゐずみさんのスマートフォン

Twitterはもっとも人の感情を反映できるツール

――Twitterで一躍有名になられましたが、SNSをうまく活用する方法についてお伺いできますか。

Twitterって、一つのツイートの滞在時間がものすごく短いので、ぱっと見て心を揺らぶられるものじゃないといけないんですね。それと、いいものを作るのと同じぐらい打ち出し方って大事だと思っていて、ツイートが伸びなかった場合って、創作物だけでなくツイート文がいまいちだったなという事もかなりあるので、そういう場合は、メモしてツイートの心得として蓄積しています。

あとは、Twitterってトレンドの流れが速いですし、世の中や人々の中にある、不安や興味をいち早く反映して、それに対する人々の反応も分かる、という意味で、もっとも人の感情を反映できるツールなんじゃないかなと思うんです。それに「こんなこと言うんだ」っていうような、素直な意見が皆さんから聞けるっていうのもいいと思っていて。もちろん、あまりよくない意見をいただく事もあるのですが、いい意見もよくない意見も一つの意見として参考にしています。

自分はTwitter以外のSNSに関しては知識があるのみで実際の運用はしていませんが、キャッチーな言葉をのせて多くの人に拡散できる、という点ではやはりTwitterが一番だと思いますし、9年間、自分はそれが好きでやってきたので、個人的にはTwitterが一番肌に合っていると思います。

【クリックで拡大】Twitterで話題となった、タピオカの「創作漢字」。パッと見て誰もがうなずいてしまう説得力とインパクトを併せ持つ。

苦しくても、常に新しいものを生み出していきたい

――フリーランスのクリエイターとして活動していくというのは、楽しい面もある一方で、難しさもあると思うのですがどうでしょうか。

発想で勝負している以上、思いつかなかったら終わりなので、あ、終わったな、って恐怖を感じる日も正直あります。ひたすら情報を吸収していっても「これだっ!」っていうものにありつけるかどうか分からない、っていうプレッシャーもすごくありますし。

あまのじゃくなのかもしれませんが、みんなと同じことをしたくなくて、だから「創作漢字」とか、いろんなことを考えてやっているんです。一方で、みんながやってないところに一人足を突っ込んでいくのはすごく怖い、というのもあります。

もにゃゐずみさん

――クリエイターとして活動されていて、一番楽しかったのはどんな瞬間ですか。

やはり、「創作漢字」っていうものを発信してそれが広まって、みんなに漢字の面白さを再発見してもらった事ですね。最近、自分に関係のないところでも「創作漢字」が話題になったりして、そんな風に、世間の漢字に対する興味が広がったな、って思える瞬間があると、とても楽しいです。

――フリーランスとして働くうえでの、こだわりや自分なりのルールなどはありますか。

とにかく新しい事をやり続ける、という事を強く考えています。ずっと同じ事ばかりしていても、自分も飽きちゃうので、新しい事をどんどんやっていきたいです。やっぱり自分が人と違う事を発信して、それをみんなが面白がってくれると、新しいプラットフォームを作れたかな、っていう感じがしますし、それが創作の原動力になっているのかな、と思います。

あとは、どちらかというと、熱が入ると病的に頑張ってしまうタイプなので、疲れたら休む時間をちゃんと確保するようにしています。もうちょっとやりたいけど無理やりここでやめておこう、みたいな。自分でスケジュールを立てて、融通を利かせて働けるのは、フリーランスのいい部分かな、と思います。

今後は、素性を明かして発信するのも面白いかな、と思っています。

――今後のビジョンについて、教えてください。

最初は書道家として、従来の書道家のイメージを覆すべく、新しいものを生み出そう、って思ってやっていたんですけど、気がついたら書道家という枠を飛び越えていて。もちろん「漢字」に焦点をあてたコンテンツもまだやっていくつもりなんですが、正直、それにとらわれずに広い視点で進んでいきたいな、と思っています。

昔はTwitterでフォロワー数を増やして、書道家として売れるようになる、っていう明確な目標があったんですが、ある程度反応をいただけるようになって、想像以上にいろんなことがあったので、そこはもう達成したかな、と。クリエイターとしての目標は、次のフェーズに入ったんじゃないかな、と思っています。

最近、ユーチューバーさんの影響もあると思うんですが、インターネットってその人の素性を明かすっていうか、人間性に興味を持ってもらわないといけない時代になっていると思っていて、今は素性を隠していますが、今後は、もう少し自分の素を出して発信していったら、もっと面白い事ができるのかな、とも思っています。そんな風に、今までこうだったからこう、みたいな枠にとらわれないで、今後もいろんな形で皆さんの心に残るコンテンツを発信しつづけていければいいな、と思っています。

撮影:小池友美/テキスト:杉本浩美/インタビュー:福崎くるみ