シリーズ累計1,500万部突破の大人気小説を原作にしたアニメ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』のゲーム最新作として、8月24日にサービスを開始した『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか バトル・クロニクル(ダンクロ)』。

この作品は『CARAVAN STORIES』などを手掛けてきた株式会社 Aiming(エイミング)のTeam CARAVANが開発/運営を担当。美麗な3Dグラフィックや迫力のバトルを生かして『ダンまち』の世界観を追体験できるアクションRPG作品となっています。『ダンクロ』開発/運営チームのみなさんに、ゲーム制作にかける想いやその魅力、チームづくりの工夫などをうかがいました。

中林
ディレクター兼、企画2課の課長/元デザイナー。プランナーとしては10年、業界歴は17年目。

寺島:
バトルコンテンツリーダーを担当。入社2年目で業界歴は5年。

椿:
バトルコンテンツプランナーを担当。新卒入社2年目。

赤岩:
運営ディレクター兼、運営3課の課長/マネージャー。転職で未経験からゲーム業界に挑戦。約10年ほどゲームの運営業務を担当している。

矢野:
運営リーダーを担当。入社1年半で業界歴は5年。

『ダンまち』の世界を自由に駆け回る。『ダンクロ』が目指したシリーズ初の試み

中林:『ダンまち』は原作小説が10周年を迎える長い歴史を持った作品なので、まずはファンのみなさまに納得していただけるような、みなさんをがっかりさせないようなものにしたい、と考えていました。『ダンまち』に出てくるダンジョンを自由に探索する楽しさを表現することは、作品の世界観にもマッチするのではないかと思い、『ダンクロ』ではバトルアクションRPG形式を採用しています。読みものとしても愛される『ダンまち』のユーザーの方々にも、アクションゲームが好きな方にも楽しんでもらえるものを目指しました。

赤岩:私たちとしては、3Dでキャラクターを操作してダンジョンを探索する『ダンクロ』ならではのゲームプレイを通して、原作の追体験をしていただきたいと思っていたんです。

――今回の『ダンクロ』は『ダンまち』シリーズのゲームで初めてのリアル等身での3Dのキャラクターを操作して冒険できる作品です。これは原作の追体験を目指したものなのですね。

赤岩:ストーリーに関しても、片角のミノタウロスのように原作でも印象的だった様々なシーンを用意しています。ストーリーのクエスト以外にも、原作に登場するゴライアスのように巨大なエネミーと戦える追加コンテンツも早い段階で実装していく予定です。

椿:『ダンまち』の魅力を詰め込むという意味では、キャラクター同士の横の繋がりを感じさせる要素も大切にしました。『ダンまち』ではファミリアのように横の繋がりを感じさせる組織が描かれています。そこで『ダンクロ』も、他のキャラクターや、他のユーザーの方々の顔が見えるようなコンテンツを意識しています。そのひとつが、バトルロイヤル形式の対人コンテンツ「魔石争奪戦」です。自分以外のユーザーが敵になると聞くと少し怖いと思う方もいるかもしれませんが、このコンテンツは他のユーザーを倒すことよりも魔石を集めることが主目的になっているので、よりお祭り的な感覚で楽しんでいただけると思います。

赤岩:また、『ダンクロ』ではフルボイスを採用していますが、クエストの戦闘時に特定のキャラクターが揃っていると、掛け合いボイスのような形で原作に出てくるようなセリフを楽しんでいただけます。これもキャラクター同士の繋がりを意識した要素ですね。

――『ダンまち』の原作小説やアニメ作品の魅力を読み込んだりはされましたか?

赤岩:もちろんです。実はちょうど、中林の後ろにも原作小説が全巻置いてあるんですよ。

椿:アニメだからこその表現がある一方で、原作小説の方が細かく描写されている部分もあるので、その両方を読み込んでいるメンバーはとても多いです。

中林:制作の途中からは版元さんとも直接やりとりさせていただき、裏設定も含めた各キャラクターの生い立ちなど様々な情報をうかがったうえで制作していきました。

――みなさんが感じている『ダンまち』の魅力はどんなものだと思いますか?

矢野:『ダンまち』はタイトルから一見ハーレム的な作品をイメージしがちで、実は私自身、今回担当させていただいて実際に作品に触れるまでは、「女性には刺さりにくい作品なのかな」と思っていました。ですが、実際には主人公のベルくんが色んな人を巻き込んで成長していく、内面も含めて強くなっていく様子が魅力的な作品です。女性視点から見ても、ベルくんはすごくかっこいい男の子で、応援したくなると思いますし、他のキャラクターたちもそれぞれに内面が描かれるので、キャラクターや物語がとても魅力的な作品だと思います。

赤岩:「俺TUEEE」というタイプではない魅力がある作品なのかな、と思います。ベルくんが成長する過程で、挫折や失敗や敗北がしっかり描かれていて、それに対して心が挫けそうになるけれども、周りのメンバーに支えられて立ち上がっていく。そういったストーリーが一番の魅力なのかな、と。『ダンクロ』ではボイスやストーリー、ビジュアル要素、そしてUIなども含む細かい部分についても、そういった作品の魅力を伝えるために考えています。

『ダンまち』の世界に“没入”してもらうために。作品に込めた没入感の工夫

――では、開発期間中に大きく改善されたことや、変化したことがあれば教えてください。

寺島:たとえばバトル部分ですと、リリース前にCBT(クローズドβテスト)を実施した時点ではカメラを俯瞰視点で固定していたのですが、ユーザーの声として「カメラを動かせるようにしてほしい」という声をいただきました。

中林:この部分は実際、没入感という意味では360°見回せるカメラが一番効果的で、実は開発当初はカメラを動かすことを想定していた時期もあったのですが、アクションゲームとしての爽快感などを考えた上で、一度は方針を切り替えていた箇所でした。ですが、CBTでのユーザーの意見を反映すべきだという提案が寺島からありまして、何とかより面白くできないかと追求していきました。

寺島:実際に変更してみると、それによって俯瞰視点では気づかなかったアクションとしての問題点に気づくことになり、その部分も改良しながら進めていきました。このカメラ操作は技術的にも難しい工夫がされています。というのも、ダンジョン内はある程度狭い空間なので、一般的な視点移動の方法ですとプレイに影響が出てしまうんです。そこで、『ダンクロ』ではカメラが壁にぶつかった際、あえてカメラが透過して壁の中に入っていくような形を取っています。アートチームと相談をさせていただきながら進めていきました。

――カメラの視点ひとつとっても細かい工夫がされているのですね。キャラクターたちの表情がとても豊かで、3Dモデルのクオリティが高いことも印象的でした。

中林:やはり、今回はキャラクターを魅力的に感じてもらって、没入感を楽しんでいただきたいと思っていました。

椿:その魅力を楽しんでいただける要素としてCBTでも好評をいただいたホーム画面は、もともとはベルくんがオラリオの街を走り回るようなものを想定していました。ですが、CBTの直前に「キャラクターたちの魅力をもっと間近に見てもらいたい」という話になり、3Dで動くヘスティアをドカンと大胆に配置したものに変更しました。こちらはユーザーからの反応もとても大きくて、すごくよかったのかな、と思っています。

矢野:ホーム画面のキャラクターは、ヘスティア以外にも様々なキャラクターに設定していただけますが、ここではダンジョンに潜っているときではない、普段のキャラクターたちの魅力が伝えられるよう意識しています。それぞれの登場人物たちが、たとえばお部屋にいるときはどういう仕草や表情をしてくれるだろうかと、様々な資料を読み込みながら話し合って決めています。

椿:モーション量がかなり多いことに加えて、チームのみんながキャラクターへの思いが強すぎるので、なかなか決まらなくなってしまうことがとても多いです。

赤岩:本当に、収拾がつかなくなるくらいですね(笑)。

中林:プレイヤーが操作できるキャラクターは、全員ホーム画面でモーションを楽しめるようになる予定です。今後実装されるキャラクターやイベント限定キャラクターも含めて、ボイス付きで実装していく予定ですので、楽しみにしていただけると嬉しいです。また、アニメーションから3D表現に置き換わる部分もこだわっています。たとえば、ストーリーの冒頭でベルが冒険に出るシーンも、アニメ版の素材を使わせていただきつつ、そこからアニメでは描かれていなかった広大な大地を3Dで起こして、オラリオの風景を伝えられるよう工夫しています。また、バトル時の必殺技やアシストと呼ばれる神様やサポーターキャラたちの演出は、アクションゲームとしてテンポの良い短いものにしつつも、それぞれのキャラクターたちの一番魅力的な瞬間を見ていただけるようにデザイナーさんと試行錯誤しました。

椿:僕らとデザイナーさんの間で、意見を交換し合うことが多かったのはその部分ですね。

寺島:中には原作では出てこなかったキャラクターの技も登場しますので、その辺りも楽しんでいただけると嬉しいです。

『ダンクロ』チームが目指した“ひとりひとりを尊重する”チームづくり

――『ダンクロ』制作チームにおいて、チームづくりの面で工夫したことはありますか?

中林:今回のチームメンバーは、前のプロジェクトの主要メンバーを中心として構成されていると同時に、今回初めて参加したメンバーも多かったので、「みんなで意見を出し合える環境をつくりたい」と考えていました。みんなで息をあわせてひとつのものをつくる中で、できる限りそれぞれのやりたいことを否定せずに、それを尊重したいと思っていました。

――みなさんに裁量が委ねられている部分が大きいのですね。

椿:そう思います。僕は昨年新卒入社したばかりですが「やりたいです!」と熱意を伝えれば、挑戦のチャンスがもらえる環境はとてもいい経験になっています。プロジェクトとしても弊社全体としても、風通しがよく、上長まで意見が通りやすい雰囲気を感じています。

矢野:Aimingは開発と運営の役割分担がしっかりしている印象で、立場が違うからこそより色んな角度から意見が出るような環境になっているように思いますし、上長が意見をよく拾ってくれるように感じます。私もとてもやりやすく仕事をさせてもらっています。

赤岩:(チームの中で管理職にあたる)私と中林はもともと『CARAVAN STORIES』にかかわっていたのですが、そのチームも、弊社の高屋敷(当時プロデューサー、現第二事業部事業部長)の中で確固たるビジョンがありつつも「みんなからの提案も受け付ける」という雰囲気でした。そして、それが自分たちのキャリアをステップアップさせてくれたと感じているので、今度はそれを若手メンバーにも体験してもらいたいと思っています。もちろん、締めるところは締めなければいけませんが、報連相をしっかりしてもらえる状況ならば、できるだけそれぞれのメンバーに裁量を委ねて仕事を進めてもらっています。

――中林さんと赤岩さんがそうした組織づくりのために意識していることはありますか?

中林:基本的に、中林と赤岩には気さくに話しかけてほしい、と伝えています。肩書がついていると、新しいメンバーは特に話しかけづらいと思うので、我々から積極的にきっかけをつくることも意識しています。

赤岩:『ダンクロ』の開発中も、メンバーが自主的に発言してくれていることもありましたし、中林から「これについてどう思うか教えてほしい」と意見を集める瞬間もありました。

――開発期間の中でも、印象的だった出来事について教えてください。

椿:先程も話に出てきたカメラの視点変更についてですね。CBTの後にユーザーの意見を聞いて、カメラを動かせるように変えよう、と寺島が最初に声を挙げた際は、リリースまで期間が迫っていたこともあり、それこそ、ディレクターの中林からも許可は出ませんでしたし、他のプロジェクトを担当しているスタッフからすると「何を言っているんだ」と思われていたかもしれません。ですが、そこで寺島が「ユーザーの意見を優先させるべきだ」という話を熱意を持ってしたことで、カメラ視点が変更になり、最終的には「いいゲームになったね」と言っていただけるようになりました。

寺島:ユーザーに没入感を楽しんでいただくためにも、これは大事な要素だと思っていたんです。

中林:実際、変更を加えたことで、ゲーム体験としてものすごくいいものになりました。私はディレクターとして、残りスケジュール、対応マップの多さ、描画範囲などの影響範囲の大きさ、建物や壁への透過シェーダーの検討などのリスクを考慮した結果、その案を止めていた張本人でもあるのですが、熱意のある提案をもらったこともあり、一定の期間までに特定のマップについて「カメラの変更点を反映させたものを作ってみてほしい」とリクエストしました。そして、それができるのであれば、他のマップについても品質が担保できるということで任せることにしたんです。その結果、いいものを上げてもらい寺島はチームメンバーと協力し見事にやり遂げたことから、カメラの仕組みをすべてをつくりかえる決断をしました。

――みなさんが分け隔てなく意見を出し合うことで、作品の品質が向上したのですね。

矢野:他に私が印象的だったのは、リリースを一度延期した部分にまつわることでした。実は延期前の時点でゲーム自体は一度完成していたのですが、「プロモーション計画の関係から」ということで、リリースまでにさらに期間をいただき、その間にもさらにブラッシュアップを重ねました。その結果、より自信を持ってユーザーのみなさんにゲームをお届けできるようになりましたし、セクション間のコミュニケーションも深まったように感じています。

――最後に。今後の『ダンクロ』の展開について教えてください。

赤岩:現在、サンジョウノ・春姫にフォーカスしたシナリオ付きのイベントが開催されていますが、その後は『ダンクロ』のオリジナルの衣装を使ったイベントも展開していく予定です。また、レイド機能の実装や、将来的にはファミリア同士で戦うようなGvG形式のイベントの実装なども考えていますので、楽しみにしていただけると嬉しいです。

中林:現在実装されている「魔石争奪戦」以外にも、他のプレイヤーさんと一緒に遊べたり、交流ができたりするような機会を増やしていきたいと考えています。あくまでユーザーさんの反応を見ながらですが、次の展開をフレキシブルに考えていきたいです。『ダンまち』のファンの方々にも楽しんでいただくためにも、入り口としてはライトなプレイヤーでも楽しんでいただけるものにしつつ、同時にアクション強度を求めるような方に向けた遊びも提供することで、そのどちらの方にも楽しんでいただけるものを目指していきたいです。

――楽しみにしています。ありがとうございました!

インタビュー・テキスト:杉山仁/撮影:SYN.PRODUCT