ゲームには世界中で爆発的なヒットを飛ばしたシリーズや世代を超えて語り継がれてきた名作が多々ありますが、どんなに素晴らしい作品であってもプレイするとバグや不具合が少なからずあります。そうしたゲームにおける欠陥を限りなくゼロに近づける役割を担っているのがゲームテスター・デバッガーです。ゲームテスター・デバッガーの職種にアルバイトから就く人も多いですが、その道のプロフェッショナルとして大成を果たすには、どんなスキルを身につける必要があるのでしょうか。
4年以上のキャリアを誇るベテランゲームテスター・デバッガーに向けて、開発現場とスムーズな連携をするために何を意識すべきかを紹介します。ゲームプログラマーらに重宝されるゲームテスター・デバッガーの特徴としては6つの共通点がありました。

ゲームテスター・デバッガーに求められる6つの素養

良いデバッガーの条件_デバッガーのイメージ

ゲームテスター・デバッガーの仕事は際限がないものであり、どれだけテストやデバッグに時間を割いてもリリース後に必ず不具合が発生するものです。しかし、そうしたゲームにおける欠陥が発生するパーセンテージを限りなくゼロに近づけられるかは、ゲームテスター・デバッガーの腕にかかっています。求められる素養は下記の6つです。

素養1:疑う視点

疑う視点とは、違和感や小さな変化を見逃さない、広い視野のことです。これはゲームテスター・デバッガーのみならず、社会人として必要な能力と言えます。俯瞰的な視点を持つことで偏りなくフラットにゲームに向き合うことで、バグを見つけやすくなります。広い視野を身につけるには、ゲームに関する知識や経験を積むことが先決です。広い視野が身につくことで信頼が得られたり、発想力や分析力がテストやデバッグの業務に活かされたりします。

素養2:応用力

広い視野にもつながりますが、一般的ではないプレイを考えて実行できる応用力も必要です。疑いの目を持ちつつ、常識にとらわれない発想力を養う必要があります。単にゲームを楽しんでいるだけでは、細かなバグを探すことができません。ユーザーがプレイする可能性がある行動をすべて実行することがゲームテスター・デバッガーには求められるのです。細かい部分に気づいて、バグが起きないかをすぐにチェックすることを繰り返して、長時間取り組める人物がゲームテスター・デバッガーの最前線で活躍しています。

素養3:根気強さ

ゲームテスター・デバッガーは、長時間の作業になることが大半です。そのため、ぶっ通しでゲームをプレイし続ける根気強さが求められます。特にデバッガーはテストで見つかった不具合の原因究明、不具合の解消・修正を行う必要があります。そのため、不具合の再現性を繰り返して検証する根気強さも求められるのです。

素養4:洞察力

ゲームテスター・デバッガーには、不具合から要因を考察できる洞察力が必要です。単にバグを発見するだけではなく、「なぜそのバグが起きたのか?」「どの操作でバグが起きたのか?」「再現性はあるのか?」「機種やOSのバージョンの相性なのか?」など、さまざまな視点からの洞察力が求められます。
バグに対してさらに深堀りするのか、別の目線から探ってみるのかなど、次の一手を示すためには、これまでの検証結果をもとに更なる洞察力や考察が必要です。当初は関連がないと思われた原因も、最終的にはつながっていたというケースも十分にあり得ます。論理的思考にも通じるところがあり、プレイテストを行ったうえでロジカルに報告書としてまとめることもゲームテスター・デバッガーの重要な業務です。

素養5:コミュニケーション能力

ゲームテスター・デバッガーは、エンジニアやディレクターなどと連携をしてゲームの品質を高めます。報告書だけではなく、口頭で行う依頼や議論なども必要な場面も多いでしょう。円滑なチームワークを構築するには、お互いの信頼関係が大事です。信頼関係の構築には、コミュニケーションの濃度が重要になります。「どんな情報があれば対応しやすいだろうか」と先回りしたコミュニケーション能力があると、重宝されるゲームテスター・デバッガーとなります。

素養6:プログラミング言語などの基本知識

ゲームに使われるプログラミング言語などの基本知識が豊富だと視野が広がって業務に活かせます。プログラミング言語の知識があると、開発者と相談しながら不具合を解消することにもつながるでしょう。他にもワードやエクセルなどの事務的なスキルがあることで報告書作成やチーム管理がしやすくなるはずです。
上記の6つの素養をすべてまんべんなく習得することは簡単ではありませんが、根幹の部分で共通しているのは「ゲームに本気で向き合う情熱」になります。ゲームが好き、開発に携わりたいという情熱こそ、重宝されるゲームテスター・デバッガーとして成長するための源となるのです。

流行りのオープンワールドのゲームのデバッグ法

良いデバッガーの条件_オープンワールドのイメージ

近年は現実世界のようにプレイヤーを自由に動かせるオープンワールドのゲームが主流になりつつあります。ただ、オープンワールドはプレイ領域が広く、あらゆる可能性を想定してバグを見つける必要があるので、ゲームテスター・デバッガーにとってはかなり厄介と言えるでしょう。マップに限界はあるのでまずすべてを踏破するのは基本です。限られた時間の中で効率的に行うには、開発側とのコミュニケーションが重要になります。

オープンワールドゲームではすべてを踏破するのが基本

オープンワールドゲームの特徴としては、マップやステージがシームレスであり、プレイヤーの自由度が高い点が挙げられます。しかし、自由度が高いことからバグが多い傾向にあります。展開が一本道のゲームであればデバッグの手順が明確であり、バグの発見や対処が比較的容易です。一方、オープンワールドゲームは、操作手順が無限に近いため、デバッグ漏れも起こりやすくなります。たとえば、マップのオブジェの間に挟まってしまってスタックするのもありがちな不具合です。
まずはマップには限界があるため、すべてを踏破することです。その中でプレイヤーがスタックしないかを確認していきます。それから、すべてのアイテムをすべての要素に使用することです。ただし、これは非効率であるため、開発現場から実施すべき内容を必ずヒアリングします。

開発側に寄り添った対応ができると信頼度が高まる

プログラマーサイドとしては各系統の最初と最後、特殊なパターンさえ確認できれば、基本的にその他は確認不要で(バグが起きないと想定して)設計するのが一般的です。だからこそチェックに入念に行い、ミスがないと想定される箇所もすべてチェックすることでプログラマーからの信頼度は高まります。しかし、人海戦術でしらみつぶしにバグを探すのは途方もない一面もあるので、今後はAIによる補助には期待をしたいところです。
また、ゲームテスター・デバッガーは、開発側に感想を伝えるのではなく結果を伝え、詳細はその後に検証通りに伝えることが重要になります。再現性や一致性は「100回中に1回」「この操作の時だけ」など、数値で表現することが大切です。

上級ゲームテスター・デバッガーに必要な俯瞰の視点

良いデバッガーの条件_ゲーム画面のイメージ

ゲームテスター・デバッガーは主観的にゲームにのめり込み、いろいろなプレイが実際に可能なのかを確かめるのは重要な役割となります。しかし、一方で歴が長くなればなるほど、より俯瞰の視点でゲームをプレイすることも重要です。開発側がどう考えているのか、ユーザー的にもっと自由度があったほうがいいなどの所感を建設的に伝えてゲームの質を高める存在になることが理想だと言えます。

ゲーム構造の深い理解が仕事の質を高める

ゲームテスター・デバッガー初心者のアルバイトなどの場合、とにかくがむしゃらにバグなどの撲滅のためにプレイするのが基本になります。しかし、歴が長くなることで、客観的なゲームプレーによってゲームプログラマーなど開発側がどんな意見がほしいかまでが何となく見えてくる方も多いでしょう。ゲームテスター・デバッガーの意見が開発側でも重宝されるようになったとしたら、それ以上に仕事冥利に尽きることはないでしょう。ゲーム構造の深い理解が仕事の質を高めるのは、ゲームテスター・デバッガーにおいても例外ではありません。
デバッグの信頼度が上がると「●●さん、修正をしましたので確認お願いします」と開発側により頼られる存在となるでしょう。まずは「何かしらの不具合があるかもしれない」という疑う視点から意識を変え、小さな疑問をバグ発見という結果につなげる成功体験を1つでも多く増やすことが重要です。

単なるバグ探しの仕事ではないことを理解しよう

【ゲームテスター・デバッガーのまとめ】

  • 何よりもゲームに本気で向き合う情熱が重要に
  • 開発者側とのコミュニケーションが特に不可欠
  • ゲームの質を高めるという仕事の本質理解が必須に

ゲームテスター・デバッガーにはさまざまな素養が求められますが、特に大事なのが今回紹介した6つの素養です。そして、それらの根底部分にあるのは、何よりもゲームに本気で向き合う情熱ではないでしょうか。地味で淡々とこなさないといけない作業が多いですが、「より良いゲームを作る」という気構えが重要になります。
ゲームがとにかく好きでゲームテスター・デバッガーの仕事を始める人は多いですが、そこからいかに大成するかは開発者との「フィードバックコミュニケーション」の精度が差を分けます。日々の業務では開発者とのコミュニケーションを重視して、チームの連携力を高めることを特に意識しましょう。ゲームの質を高めるというゲームテスター・デバッガーの仕事の本質を理解して取り組むことが大切です。