2020年3月、経済産業省のWebサイトにて「高度デザイン人材育成ガイドライン」が公表されました。社会に必要とされるデザイン人材のマインドやスキル、育成・輩出のためのカリキュラムをまとめあげた全72ページの資料で、株式会社コンセントは採択事業者としてこの取り組みに参画しています。

2009年から同社でWebディレクションと情報設計を中心に活躍しメンバーの育成にも携わる浜島恵美さんに、仕事内容やマネジメントや育成での工夫についてお話しいただきました。

浜島 恵美(はまじま・えみ)氏
2004年よりWebコンサルファームにて、大規模サイト再構築、ガイドライン・ガバナンス策定、ECサイト立ち上げ・運用などを経験。2009年にコンセントに入社。Webディレクター/インフォメーションアーキテクトとして、大手の学習塾、紳士服メーカー、下着メーカー、酒類メーカー、出版社などのWebプロジェクトを手がける。

プレイヤーとして、チームリーダーとして、幅広い領域に関わる


——浜島さんのご経歴や、現在の仕事に携わるようになった経緯を教えてください。

大学を卒業後、Webについて体系的に学べるスクールで勉強し、Webコンサルファームに入社しました。運用ディレクターからキャリアをスタートさせ、学校時代から興味のあった情報設計の分野に少しずつ関わり、ジョブチェンジをしていきました。その後、やはり情報設計を重視するコンセントに入り、Webディレクターとインフォメーションアーキテクトという肩書きをもって、Webプロジェクトの戦略フェーズから運用フェーズまで、幅広く関わっています。

——現在はとても広い範囲でお仕事をしていらっしゃるのですね。

はい。Webプロジェクトにおいて、ディレクターとプロジェクトマネージャーを兼務したり、他のメンバーがディレクションを担当しているプロジェクトに情報設計のリードとして参加したり、調査人員として入ったり、その都度メンバーと話しながら責任範囲を決めています。いろいろなことに携わることが好きなので、とても楽しくやっています。また、マネジメントや育成業務も担当しています。

複雑な情報をわかりやすく伝える情報設計


——以前から情報設計に興味があったということですが、情報設計の面白さはどんなところにありますか。

複雑な情報をわかりやすく伝えるため、考えるべき目的・方向性や伝えるべき情報を整理分類していくことで、やるべきことがだんだん明確になっていくところが面白く、長年やり続けています。

——ディレクションやデザインをする上で情報設計はなぜ重要なのでしょうか。

たとえばWebサイトを制作するとして、まず、誰のため・何のためにつくるのか、整理するところから始める必要があります。そこを明確にしたら、サイトを訪問したユーザーから何らかのアクションを得るために、サイトの中ではどういう体験をしてもらうことが必要なのか、そのためにはどのような順序でどんな情報を提供していくべきか、などを考えていきます。このように体験を一連で考えることが情報設計の基本です。

狭義では、そのように体験を考えた後に、それを画面やサイトの構造に落とし込むとどうなるのか、と考えていくことを情報設計と呼ぶ場合もあります。情報設計を明確に行わないままにサイトをつくっても、誰のためにどんなアクションを期待してつくるのかがぼやけてしまいます。実際に情報設計をする工程に関わらないデザイナーやディレクターも、制作物への落とし込みでは、情報設計の方針を共有して制作に取り組むことが大切です。今はディレクターやデザイナーに向けて、情報設計の観点や手法を伝えることにも力を入れています。

体系立てた育成と同時に、経験でしか得られないものも大切に


——マネジメントや育成を行う上で、大切にされていることはどんなことですか。

体系立てて伝えることも大事ですが、何事も経験しないと引き出しは増えないので、OJTで力をつけられるようにタイミングを逃さずアサインすることは心がけています。そのプロジェクトで何をしたいのか、何を学びたいのか、目的意識をもって取り組み、事後に振り返りを行うようにもしています。
また、全体の流れや前後関係を含めて伝えることも意識しています。日々の業務の中では、ともすると、Aという作業をしましょう、Bをすることも大事、など、やるべきことひとつひとつを点でしか伝えられなくなってしまいますが、AとBの関係など、その意味をきちんと理解してもらうことも大事です。

——いろいろなことを考えて教えていらっしゃって大変そうですが。

いやいや、とても楽しんでいますよ!というのは、人に伝えることは、自分が今までやってきたことを棚卸しすることにもなるからです。みんなと「こういう観点もあるよ」「こうして考えたらいいのでは?」と一緒に考えていくのも楽しいですし。
今年は、ディレクター以外の職種の育成も担当しているので、新たな工夫も必要かなとは考えています。自分が直接経験していない業務についても伝えていく上では、コンセントが採用している「技術マトリクス」が役立っています。

キャリアチェンジをするときの足がかりにもなる「技マト」


——職種ごとに必要な技術がレベル分けして規定されている育成ツールですね。

はい。技術マトリクス、略して「技マト」には、各職種が身につけるべき能力が細かく規定されているので、育成対象のメンバーが、自分と異なる職種であってもブレのない対応ができます。
職種が異なっていても、共有している基準として技術マトリクスをベースに会話することができるため、一緒に目標を設定する上でも、目標の達成を検証する上でも、とてもスムーズです。
技術マトリクスで規定されている内容に対する解釈が人によって異なることもあったため、今年度は、技術マトリクスに書かれている内容をその技術を目標としているメンバーで読み込んで、これをどのように解釈するのか、ひとつずつ自分の言葉に置き換えてディスカッションする試みも始めています。その上で、各自、今何が足りていないのか把握してもらい、アサインの方針もそれに合わせて進めていくつもりです。

——ご自身は、2018年に技術マトリクスが運用開始になったときには、どのように感じましたか。

「すごいのが出てきたな!」というのが率直な感想でした。職種分類の多さや一つ一つの規定の細かさに驚きましたが、自分に足りないものが見えやすくなって、次にどんなスキルを身につけていくとよいか、理解につながるよい仕組みだと思っています。自分の強みを知るのにも役立ちますね。
導入の初期に、技術マトリクスをベースに自己評価と組織からの評価を比較する試みがありましたが、自分の技術が客観的にどのように評価されるのかがわかり、発見がありました。これも自分の経験や持っているスキルの棚卸しになって興味深い体験でした。
また、周囲を見ていると、キャリアチェンジを図るときに、そのために何をしたらよいのか、の目安になっているということも感じます。別の領域に挑戦したいと思っても、必要な能力が漠然としていては挑戦自体が難しくなりますが、何を学習すべきかわかりやすいので、チャレンジのハードルも低くなっていると思います。

「やりたいことをやろう」を大切にする会社


——コンセントの「ここが素晴らしい」と思うのはどんなところでしょうか。

会社全体で「やりたいことをやろう」という姿勢が貫かれていることです。売上はもちろん大切ですが、「やりたいことや可能性が広がる仕事ができるかどうか」も大事な観点です。
組織の透明性が高く、仕事へのアサインも、全員で見られるところでやりとりされます。誰もがそこに手を上げるチャンスがあり、1年目の新人社員もやりたいことをやる意識を持てていると思います。

——技術マトリクスの効果などをうかがっていると、異なる職種間で共通の基準・ものさしを持てることも大きな特徴だと思います。

そうですね。無意識のうちにそれが当たり前になっていますが、共通認識を持とうという気持ちは強いかもしれません。それによって、職種ごとの連携もできて相互理解が進み、ジョブチェンジなど新たな領域への挑戦もしやすい環境だと思います。
あともうひとつ。実は私は今、大阪に住んでいて、ほとんどの業務をリモートで行っています。私は家族の転勤をきっかけに、以前は北海道に、今(2022年時点)は大阪に住んでいるため、ここ9年ほどはリモートワークが中心です。こうした、社員が自分の生活に合わせた働き方を会社と一緒に考えていけることも、コンセントの特徴だと思います。

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