驚くべきスピードで進化を遂げているゲーム業界。中でも度肝を抜くのは、その映像美でしょう。オープンワールドの世界やリアルな3Dのグラフィックが、近年ではもはや当たり前と化しています。今後ゲームエンジニアをめざす方は、3D制作ツールの知見や技術を持ち合わせておくことが必須です。

中でも注目すべきは、UE5にバージョンアップを果たしたUnreal Engineでしょう。今回はゲーム開発初心者でも分かるようにUE5について、UE4やUnityなどと比較して解説します。この機会に、ゲームエンジニアにとって基礎中の基礎と言えるUE5に関する見識を深めておきましょう。

世界のゲーム市場は約21.9兆円、国内も2兆円

スマホでゲームをしている人

2020年のゲーム市場は、新型コロナウイルスの影響による特需があったため、大きく市場が拡大しました。アフターコロナと言える2021年のゲーム市場が、どのように推移しているのか解説します。

依然好調のゲーム業界

株式会社角川アスキー総合研究所が発売した、国内外ゲーム業界のデータ年鑑「ファミ通ゲーム白書2022」によると、2021年の世界ゲームコンテンツ市場は前年比106%の約21.9兆円だったそうです。一方、国内ゲーム市場はほぼ横ばいではあったものの、2兆円の大台をキープするなど、業界の好調さをアピールする結果となっています。

世界の地域別ゲームコンテンツ市場

出典:株式会社角川アスキー総合研究所「ファミ通ゲーム白書 2022」

オンラインプラットフォームが主戦場

オンラインプラットフォームとは、PlayStation5やNintendo Switchのような家庭用ゲーム機やスマホをはじめ、タブレットやPCなど、オンライン通信を介してゲームをプレイするプラットフォームのことです。2021年におけるオンラインプラットフォームの市場規模は、1兆6,414億円ですが、そのうち1兆3,001億円がスマホアプリによる売り上げとなっています。

オンラインプラットフォーム ゲームコンテンツ市場規模推移

出典:株式会社角川アスキー総合研究所「ファミ通ゲーム白書 2022」

近年オンラインプラットフォームを中心に、世の中に出回っている多くのゲームで、Unreal Engineが活用されている状況です。Unreal Engineの需要は、今後も高まることが予想されています。Unreal Engine習得はゲーム開発における基本となっているため、すべてのゲーム開発者にとって必須と言えるでしょう。

Unreal Engineでは何ができる?開発ゲームも紹介

3Dゲームレベルデザイン

今やゲーム開発のスタンダードとも言われるUnreal Engineは、どのようなことが実現できるのでしょうか。ここではUnreal Engineの概要と実現できることを紹介します。

Unreal Engineとは

Unreal Engineとは、2Dゲームから3Dゲームまで作れる汎用性の高いゲームエンジンです。最大の特徴はその美しいグラフィックであり、とてもゲームとは思えないようなキレイな描写を表現できます。

もともとUnreal Engineは、Epic GamesがリリースしたFPS「Unreal」のミドルウェアとして、デベロッパーに有償提供されていたものです。Unreal Engine には3Dゲームの制作に必要な機能が網羅されていたため、世界中のデベロッパーに浸透し、バージョンアップを繰り返してきました。

FFやドラクエなど、世界中でヒットしている日本の代表作とも言えるゲームの最新作においても、Unreal Engineを使用してグラフィックが制作されている状況です。

Unreal Engineで実現できること

Unreal Engineの最大の特徴は、プログラミング不要でゲーム制作を実現できることです。「ブループリント ビジュアル スクリプティング システム」と呼ばれる機能を活用することによって、非プログラマーでも比較的簡単に3Dキャラクターの動きや演出を作成できます。

Unrealが3DのFPSだったことから、オープンワールドやシューティング、アクションゲームに必要なテンプレートが多数提供されており、ゲームの土台をスムーズに作成できる点も大きなメリットです。また「3ds Max」や「Maya」などで作成したオブジェクトを、スムーズに取り込んで結合できる点も、Unreal Engineが広く活用される理由と言えるでしょう。

そして、Unreal Engineは家庭用ゲーム機やスマホをはじめ、タブレットやPCなどあらゆるプラットフォーム上で動作するゲーム制作ができるだけでなく、AIやVRコンテンツの開発も行うことが可能です。そのため、あらゆるターゲットに向けたゲーム制作を実現できます。

UE5と旧バージョンのUE4、競合となるUnityとの比較

3Dゲーム画面の例

Unreal Engineは2022年4月に新バージョンのUE5をリリースしました。UE4においても常に機能はアップデートされてきましたが、新バージョンのリリースは約8年ぶりです。旧バージョンのUE4と比較して、UE5はどのような追加機能があり、どれほど進化を遂げているのでしょうか。また、シェアを大きく分け合っているUnityとはどのような違いや優位性があるのかについても解説します。

UE5とUE4の違い

UE5とUE4の違いはいくつかありますが、代表的なものが「Nanite」と「Lumen」でしょう。

Naniteとは、仮想化マイクロポリゴン・ジオメトリ・システムと呼ばれる、数百万ポリゴンのメッシュデータをそのままインポートできる機能です。Naniteを活用することで、UE4では処理が重くて不可能だったハイクオリティな素材を取り込み、かつスムーズなストリーミングを実現できます。

一方、Lumenとは、動的にグローバルイルミネーションと反射を実現する機能で、陽光やライト、場面転換などの変化をリアルタイムに演出することが可能です。Lumenを活用することで、これまで調整に時間がかかった陽光やライト、爆破シーンなどのライティングを簡単に作成できます。

この他にもさまざまな機能が追加されているので、UE5のWebサイトでチェックしてみましょう。

また、UE4の機能や学習方法について詳しく知りたい方はこちらの記事も合わせてご覧ください。

UnityとUE5の違い

UnityとUE5の違いは大きく3つあります。1つ目は開発対象です。Unityはモバイルアプリの開発に特化していることに対し、UE5は家庭用ゲーム機のゲームからモバイル向けのアプリまで、幅広く開発ができます。UE5であれば、コンシューマーゲーム品質のクオリティでゲームやアプリを作成しやすいでしょう。

2つ目の違いが、プログラミングスキルの必要可否です。Unityにもノーコードで開発ができる「Bolt」と呼ばれるプラグインはありますが、UE5のブループリント ビジュアル スクリプティング システムに比べると、やや使い勝手がよくありません。そのため、UnityはC#で開発したほうがスムーズです。

そして3つ目が、利用料金の違いです。Unityは基本無料で利用できます。プロの開発者向けのUnity Proは、年間267,960円の費用が必要です。一方、UE5のスタンダード ライセンスは無料で利用できます。カスタムライセンスの費用は、ビジネス規模によって応相談とのことです。

両者を比較すると、ゲーム開発初心者にはUE5がおすすめだと言えるでしょう。

ゲーム開発初心者はUE5を使いこなすことが先決

3Dゲームデザインのツールチップ

【初心者が分かる Unreal Engineのまとめ】

  • オンラインプラットフォーム向けゲームの多くがUnreal Engineによって制作
  • Unreal Engine習得はゲーム開発における基本
  • Unreal Engineは開発初心者でも利用しやすくおすすめ

世界のゲーム市場は約21.9兆円、国内も2兆円規模のため、依然堅調と言えます。その中でもオンラインプラットフォームが主戦場であり、多くのゲームがUnreal Engineによって制作されている状況です。

Unreal Engineを活用することで、3Dを活用した本格的なオープンワールドやシューティング、アクションゲームが簡単に開発できます。今回UE4からUE5にアップデートされ、「Nanite」や「Lumen」などの新機能が実装されたことで、さらに高品質なゲーム制作が可能になりました。

今やUnreal Engineは業界スタンダードと言えるため、ゲーム開発初心者の方は早めに習得することが望ましいでしょう。