テクノロジーの革新が進むことでゲーム業界は大きな転換期を迎えています。オンラインゲームが進化し、さらにはメタバースへの注目が高まっている昨今においてゲームへの向き合い方も変わりつつあります。それがゲームを「楽しむ」から「稼ぐ」へとシフトさせた「GameFi(ゲームファイ)」の存在です。GameFiの登場により、ゲームが楽しむに加えて稼ぐという選択肢を持つようになりました。

ゲームでどうやって稼ぐのかという視点に立った際に、仮想空間と現実世界の経済がどのようにリンクするのでしょうか。そして、ゲーム開発現場ではどんな変化が起きるのでしょうか。歴4年以上のベテランゲームプログラマーの方に向けて、注目のGameFiについて解説します。

ゲーム開発現場でも認知はまだまだのGameFi

GameFiについて_ゲームとファイナンスの融合

「GameFi」とは「Game」と「Finance(金融)」を組み合わせた造語です。ブロックチェーンゲーム上で使われる通貨やNFT化されたアイテム・土地などは、現実世界と同様の価値があります。それらは仮想通貨取引所やNFT販売所などで取り引きして、法定通貨への換金が可能です。プレイヤーがゲームプレイを進めることで通貨・アイテム・土地などを獲得・売却して利益を得られる「ゲームで稼げる」仕組みがGameFiです。

GameFiにおいてキーワードとなるのが「スカラーシップ」

GameFiでは、ゲームをすることでお金を得られる「Game」+「Finance」の考え方が基盤となります。GameFi自体がゲーム開発現場でもまだまだ知らない人もいるようなホットなトレンドなだけに、まずはどうやって稼ぐのかという仕組みを把握することが大切です。その根底になるのが、NFTを貸し出すこと、つまり「スカラーシップ」の考え方になります。

「スカラーシップ」とは日本語では奨学金制度のことですが、GameFi上でも似た位置づけにあります。ブロックチェーンゲームで稼ぐためには、最初にNFTを購入しなければならないケースがほとんどです。人気があり稼ぎやすいと言われるゲームほど初期投資は高額となり、新規参入者にとっては高いハードルになっています。どんなゲームもそうですが、新規参入者がいなければ廃れてしまいます。そこで導入されたのが「スカラーシップ」制度です。

知っておきたいP2E(play to earn)の仕組み

スカラーシップではまず、稼ぐのに必要なNFTアイテムを保有するプレイヤー(マネージャー)が、新規プレイヤー(スカラー)にNFTを貸し出します。そして、スカラーはそのNFTをプレイで活用し、得られた利益をマネージャーと折半するという仕組みです。これにより、新規参入者は初期費用をかけずにゲームで稼ぎ始められ、古参ユーザーは自分のNFTでプレイしなくても稼ぎを得られます。お互いが得をするWin-Winな収益モデルであるP2E(play to earn/稼ぐためにプレイする)を実現できるのです。

ゲームの話ではありますが、GameFiではプレイだけでなく、スカラーシップの導入により賃貸業や業務委託の形式で稼げる、現実と遜色ない経済社会が成立します。メタバースの普及が進めば、より現実とリンクする未来が予想されます。

GameFiの流行とメタバース普及によるゲーム開発現場のリアル

GameFiについて_ゲーム開発環境の変化

GameFiやメタバースなどゲームを取り巻く環境は急速に変化を遂げています。特にヴァーチャルでの仮想空間でのプレイヤー同士のやり取りは、ゲーム業界が先駆者とも言えるでしょう。ではこうした新しい取り組みに関する開発現場では、業界の新しいテクノロジーに対してどんな準備をしているのでしょうか。現場のリアルに迫ります。

現場の認知度は意外にも低い傾向に

意外かもしれませんが、実は開発現場においてGameFiの認知度はまだそれほど高くないのが現状です。特にハード向けゲームの開発者にとってはあまり縁のない未知の領域と言えるでしょう。「State of the Game Industry」によれば、ゲーム関係者の7割がNFT技術や暗号通貨決済について「興味がない」と回答しています。また、EAのCEOアンドリュー・ウィルソン氏は、NFTについて「現在は熱心に推進していない」としています。

もちろん今後、メタバースの進化・普及に伴いNFTも関わりを持ち、GameFiの考え方が広がる可能性はあります。しかし、現在のところ、多くのゲーム開発者や関係者がGameFiに対しては静観の姿勢を取っているようです。

ゲーム開発の基本はそれほど変わらない

もし今後ブロックチェーンゲームやNFTゲーム開発の需要が増した場合、ゲームプログラマーにはどんな素養や技術が求められるのでしょうか。結論から言うと、実は基本的な部分はそれほど変わらないと予想されます。そもそも、具体的な技術面については共有されるはずであり、大手ゲーム会社はブロックチェーンゲームに携わった人材を登用していく流れになるはずです。そのため、エラーチェックやリカバリーについて意識する点は変わりません。

ただ、提供されるソフトウェアデベロップメントキット(SDK)やミドルウェアについては、ブラックボックス化する恐れがあります。そのため、不具合が発生した際には、どこに責任があるのかを切り分ける設計力が求められるでしょう。

メタバースの発展はゲーム開発にどう影響するか?

今後はメタバース領域でのゲーム提供も増えていくでしょう。そうした中でゲーム開発現場にはどんな変化があるのでしょうか。実際のゲーム開発関係者からは「(メタバース領域は)ゲーム機が増える感覚なので、開発現場は大きく変化しないと考えております」という声が寄せられています。メタバースを1つのハードと考え、それぞれに合わせて開発を進めるだけであり「やることはそれほど変わらない」というのが現場の認識のようです。

GameFiに携わるなら「面白い」×「稼ぐ」の両立を模索すべし

GameFiについて_PLAYtoEARN

GameFiやメタバースは新しい分野であり、ゲーム開発者の間でもまだまだ浸透しきれていない面があります。しかし、新しいトレンドであるため、まずは実際にブロックチェーンゲームをプレイすることは必須と言えるでしょう。これは競合他社のゲームをプレイしてみるのと同じことであり、「トレンドにアンテナを張る」ことはクリエイターにとっては当然です。GameFiという新たな価値観のゲーム体験をすることで、今後のゲーム開発に何かしらのヒントを得られるかもしれません。

金融知識や不具合事例を知ることも大切

GameFiが拡大していくと予想される中で、金融知識やさまざまな事例についても学ぶ必要はあるでしょう。たとえば資金の流入をどうすべきか、法的な問題点はないのか、詐欺等の事例など現実の資産とリンクするからこそ、あらゆる角度からの学びは必須となります。

また、GameFi最大の課題である通貨の暴落についても考えておかなければいけません。2022年に流行したNFTゲームの多くは、既存プレイヤーの売り圧によって衰退しています。こうしたさまざまな知識・事例を学んでおけば、今後GameFi関連に携わった時に役立つはずです。

ゲーム×稼ぐを両立させるために考えるべきこと

既存のGameFiは「稼ぐ」ことが注視され、「楽しみにくい」ことについても考えなくてはいけません。たしかに、プレイすることで稼げることがGameFi最大の魅力です。しかし、ゲームである以上は「プレイして楽しい」と感じることがゲームの本質でしょう。「稼ぐことが楽しい」という考え方もあるかもしれませんが、それは単にお金稼ぎが楽しいだけであって「ゲームが楽しい」わけではありません。

昨今のソーシャルゲームでもそうですが、ゲーム性よりもガチャなどのゲーム内課金ばかりが注目されれば、短命で終わる恐れがあります。GameFiもサービス開始当初は注目されるかもしれませんが、ただ稼ぐだけでなんの面白みもない内容であれば、新規参入者は増えずすぐにサービス終了となる未来が待っているかもしれません。その結果、「集金だけの詐欺ゲーム」という烙印を押されてしまう可能性もあります。

GameFiに携わることがあるならば、「ゲーム×稼ぐ」を両立させるためには何が必要なのかを考えること、答えを模索することが大切になるはずです。

ゲームプログラマーは常に学びが大切になる

GameFiについて_まとめ

【ゲームプログラマー gamefiのまとめ】

  • GameFiはハード向けゲーム開発者にとって未知
  • メタバース浸透はハード機器が増えた程度の感覚
  • トレンドを理解して実務への活かし方を学ぶことが大切

ゲーム業界は、テクノロジーの進化に合わせて新しいものをどんどん取り入れていく業界です。特にここ数年はメタバースやブロックチェーンの進化・普及に伴い、NFTやブロックチェーンをゲームに取り込み「遊ぶ」だけでなく「稼ぐ」こともできるGameFiが注目されています。もちろん、GameFiがこのまま発展していくかどうかは分かりません。しかし、将来的にメタバースの普及により現実の金融・経済と何らかの形で、今以上にリンクしていくことが予想されます。

だからこそ、基礎的な部分は押さえつつ、銀行や行政等の社会的インフラについても学び、新しい環境に適応していく姿勢が大切です。GameFiの登場は、これからも発展していくゲーム業界の1つのトレンドとして学んでおいて損はないでしょう。