「リスキリング(reskilling)」とは、新しい職業に就いたり、今の職業で必要なスキルの大幅な変化に適応したりするために、新たなスキルを習得することです。
求められるスキルや知識が急速に変化する現代のビジネス環境において、成長機会の獲得や将来の雇用安定性の向上など、多くのメリットがあると言われています。
CREATIVE VILLAGEでは、読者・会員の皆さまにご協力いただきリスキリングに関するアンケートを実施!アンケートの調査結果をもとに、クリエイターからの注目度が高いスキルや学習方法、自己投資できる金額感を年代別に解説。さらにこれからリスキリングに取り組む方に向けて、オススメの学習方法や継続のコツについても紹介していきます。
調査方法
対象:クリーク・アンド・リバー社(以下、C&R社)会員と一般ユーザー 計105名/男女/全国
方法:インターネット調査
記事のポイント
- 学びたいスキル上位は「映像・動画編集」「プログラミング言語・開発」「デザイン」
- 学習方法、教わりたい人、リスキリングにかけられる金額感に関する年代別の傾向
- よくある悩み別・オススメの学習方法や継続のコツ
調査詳細
リスキリングの必要性。最も意識しているのは40代
全体の96%、年代別にみると30代・40代では全員がリスキリングの必要性を感じたことが「ある」「ややある」と回答しています。
中でも40代はリスキリングの必要性を感じたことが「ある」と回答した方の割合が最も高く、スキルの獲得・アップデートを差し迫った課題として捉えている傾向があるようです。
リスキリングが必要だと感じた理由として、各年代で最も多かった回答は「仕事の幅を広げるため」。リスキリングの本来の目的に沿った回答が寄せられました。
次いで多かったのは、20代・50代・60代で「アウトプットの質を高めるため」、30代・40代で「待遇・勤務条件の良い仕事に就くため」となっています。
また40代以上では「業界標準が常にアップデートされるため」の回答も多く、ビジネス環境の変化を自らの実体験として感じたことからリスキリングに関心を寄せる方も一定数いらっしゃるようです。
学びたいテーマと学習方法
リスキリングの対象としては、「映像・動画編集」「プログラミング言語・開発」「デザイン」を学びたいと回答した方がそれぞれ約40%、「データ分析」「AI・DX」を学びたいと回答した方がぞれぞれ約30%と、比較的人気な傾向にあります。
クリエイターとして実務経験がある、もしくはクリエイターを目指す方が大半を占める、C&R社会員及びCREATIVE VILLAGE読者ならではの結果となりました。
年代別にみると、20代は「デザイン」「データ分析」といった専門スキルの習得を志向する方の割合が高い傾向にあります。
一方30代以降では、「マネジメント・コーチング」「コミュニケーション術」といったポータブルスキルから、「経営」「会計」「法律・契約」といったビジネスの上流にかかわる知識・スキルまで、テーマの幅が広がっていく傾向があるようです。
20代は学びにデジタルコンテンツを積極活用する傾向が見られ、約80%が「インターネット・SNSでの情報収集」、約60%が「オンライン学習、e-ラーニング」での学習を希望しています。一方「書籍・テキスト」での学習を取り入れる方の割合は「インターネット・SNSでの情報収集」の半分の約40%に留まりました。
30代で「インターネット・SNSでの情報収集」「オンライン学習、e-ラーニング」による学習を希望する方は、20代と同程度の割合でいらっしゃいました。加えて30代回答者の80%以上が「書籍・テキスト」による学習を視野に入れており、多くの選択肢の中からライフスタイルや学びたいテーマに合わせて教材を選んでいることがわかります。
40代・50代回答者の間でポピュラーな学習方法は「オンライン学習、e-ラーニング」、次いで「ウェビナー」でした。20代・30代においてはリスキリングへの活用度が低いウェビナーですが、40代・50代においては積極活用されているようです。
続いてリスキリングに取り組むうえで、どんな人から学びを得たいか伺いました。年代問わず多くの方が「業界のトップランナー、著名人」の話を聞きたいと考えているようです。
一方「SNSで情報を頻繁に発信し、フォロワー数が多い方」「学びたいテーマに強い企業で働く社員の方」に対する考え方は、年代によって差が出ました。
まず「SNSで情報を頻繁に発信し、フォロワー数が多い方」に対しては30代以上の回答者が慎重な姿勢を示す一方で、20代では半数が話を聞きたいと回答しています。
リスキリングの学習方法としても「インターネット・SNSでの情報収集」を積極活用していることから、20代はインターネット・SNSを信頼のおける情報源として活用する傾向がありそうです。
また「学びたいテーマに強い企業で働く社員の方」に対しては、30代回答者の70%以上が話を聞きたいと回答しています。
一般的に30代は現場の中核としての役割を期待される年代。リスキリングにおいても「経験」を重視する傾向にあり、事例を中心に学びスピーディーに自社の施策に反映していきたい意向があるのかもしれません。
リスキリングにかけられる金額
続いて、リスキリングのために投資できる金額について聞きました。
単発講座で28%、シリーズ講座で25%の方が、e-ラーニング講座を「有料なら購入しない」と回答しており、書籍と比べて購入対象としての認識が薄いようです。
e-ラーニングコンテンツを有料購入する方に絞ると、39%の方が単発講座の購入金額上限を2,000円まで、34%の方が5,000円までしています。またシリーズ講座では、1万円以上の投資が可能と回答している方も38%いらっしゃいました。
コンテンツの種類ごとに、各年代の許容金額をまとめると下記の通りです。いずれの媒体においても、40代回答者の中には1万円以上のコンテンツにも投資を検討できる方が一定数いらっしゃいました。
さらに月額制のサブスクリプション方式で提供される教育サービスについても伺いました。
「有料なら利用しない」と回答しているユーザーの割合が30%と、最も高い結果となりました。サブスクリプションは比較的新しいコンテンツ提供方式であることから、買い切り型のe-ラーニング講座よりも慎重な姿勢をとる方が多いようです。
一方、有料サブスクリプションの利用を検討する層に絞ると、「2,000円まで」許容できると回答した方がもっとも多い結果となりました。
参考までに、総務省統計局の調査によると、日本十進分類法(※図書分類法の一つ)で「産業」に分類される書籍の1冊あたり平均単価は令和3年(2021年)時点で1,745円でした。
リスキリングへの投資を考えるうえで、多くの人にとっておよそ書籍1冊分の「2,000円まで」が一つの基準となるようです。
リスキリングの障害とオススメの学習方法、継続のコツ
最後に、リスキリングで苦労したポイントや着手・継続にあたって障害になることを聞いてみました。
もっとも多かった回答は「時間がない」です。特に20代~40代の半数以上のユーザーが「時間がない」と回答しています。
また20代では「何から始めるかわからない」という回答をした方も多くいらっしゃいました。
キャリア開始当初でまだ目指すゴールや求められるスキルセットが明確でないために、限られた時間の中で何を学ぶべきか迷いがあるのかもしれません。
また30代では「学習してもスキルが身につくかわからない」と回答した方が多くいらっしゃいました。
これらの課題に対しては試行錯誤されている方も多いようで、リスキリングに取り組む中で発見したオススメの学習方法について多数のご回答を頂きました。
ここからはアンケートの回答を一部抜粋しながら、学習のポイントやコツについて考えていきたいと思います。
「時間がない」
オススメの場所・時間帯について多数のご意見を頂きました。
場所はカフェや図書館、シェアオフィスなどの「サードプレイス」派と「自宅」派に分かれており、時間帯は「朝」「仕事帰り」のほか、電車移動やお昼休憩などの隙間時間を活用している方もいらっしゃいました。
- 家だけでなく、カフェなどで勉強してリフレッシュすること。(20代/営業・Webプロデューサー)
- 「疲れの少ない朝時間を学習に充てる、または夜に少し眠った後に起きて、静かな環境で学習します。(30代/ゲームデザイナー)
- 子供が起きている間はなかなかできないので、イライラしてしまうこともあったが、「多少期間がかかっても仕方ない」と割り切って、仕事のお昼休憩等のスキマ時間や寝かしつけが終わった後に、取り組むようにしています。(40代/Webディレクター)
まずは、自分のモチベーションを保てる場所・時間帯を設定することが第一歩といえそうです。
加えて「学習シチュエーションに合わせた教材の選定」をポイントとして挙げている方も。
- 隙間時間、時間がある時、それぞれに合わせた教材を併用できるようにする。(40代/カメラマン)
隙間時間に活用できる教材例としては、こちらの回答が参考になりそうです。
- スマホアプリ(起動が容易でいつでもできる)(40代/営業)
- 隙間時間にKindleを開いて本を読む習慣を身に着けることは有効だと感じます。(30代/コンサルタント)
教材に関しては上記の他に、Youtubeチャンネルやオンデマンドなど動画で学習するというご意見も多く頂きました。
さらに、期限付きのプランに申し込んだり一緒に学ぶ仲間をつくったりと、自らのお尻を叩く方法にも様々な工夫が見られました。
- 3カ月間いつでも学べるなどのプランがあれば、時間ができた時に学べるかつ有限なので調整する必要があるので、計画的に学べるかなと思います。(30代/編集者)
- スクールに通って、強制的に勉強時間を確保する。勉強仲間を作る。移動時間などのスキマ時間を活用する。(40代/不明)
「学習してもスキルが身に付くかわからない」
こちらの課題に対しては、多くの方が学習内容を実務に結びつける重要性を指摘しています。
- 学習した内容を仕事で使用してアウトプットしていくこと(30代/Webディレクター)
- 「得た物を即実践に移してみる。」を繰り返す。知識を寝かせない。(30代/Webディレクター)
- 資格を取る。自分の学んだことを、アピールし、仕事につなげることで定着させる。(40代/校正)
学習を継続するコツ・心構え
最後に、学習を継続するためのコツや心構えについての回答をご紹介します。
- 1日にどこまでのページまでやるか決めておく、できる範囲内で無理はしないように勉強しています。(30代/Webプロデューサー)
- 複数の目標を立ててその目標ごとに日々の学習をこなすようにすることです。大きな目標だと断念する可能性が高いので少しずつステップアップする感じで勉強するようにしています。(30代/Webエンジニア)
- カフェなどで、もう少し勉強したくなるあたりで切り上げて、持続を苦にしない(40代/不明)
- 学習のトラッキングをする(40代/ゲームエンジニア)
- 忙しいなどでできなくなっても、半年後、1年後、また始める。最終的に辞めない。(40代/Webディレクター)
まとめ
クリエイターからの注目度が高いスキルや学習方法、自己投資できる金額感についてお伝えしてきました。
学習方法やモチベーション維持のためのアドバイスも参考に、自分に合った学習スタイルを見つけてスキルアップにつなげていきましょう。