若年層を中心に広がる「推し活」が、いまや一大経済活動として注目を集めている。SNS総フォロワー11万人を誇る「推し活応援メディア」を運営する株式会社Oshicocoは、自社のInstagramフォロワーおよび公式LINE登録者を対象に、「オタクのグッズ事情」に関するアンケート調査を実施した。調査は2025年5月13日から14日にかけて行われ、有効回答数は1,010件にのぼる。

この調査結果から、推し活層の消費行動における著しい変化が浮き彫りとなった。とくに顕著なのが「グッズ代が高くなった」と感じている人の多さで、全体の約9割がコロナ禍以前よりも支出が増加したと回答した。その要因としては、世界的な物価上昇や人材不足に伴う製造・物流コストの増加に加え、コロナ禍でリアルイベントの機会が減少したことが挙げられる。アーティストやアイドルがファンとの接点を維持する手段として、グッズに応募券や特典を付加する手法が普及したことも、価格上昇の背景にある。

中でも音楽メディア関連のグッズ、特にCDやアルバムの位置づけが大きく変わった。かつては音楽を楽しむ媒体だったこれらの商品が、現在では「オンラインイベントへの応募券付きグッズ」としての役割を持ち、ファンの購買意欲を刺激している。このような“体験の付加価値”によって、仕様の豪華さや価格の上昇が進み、ファンは単に音楽を聴くためではなく、推しとつながる手段として商品を購入するようになった。

実際に、過去に支払ったグッズ代の最高額についての質問では、回答者の過半数が「3万円以上」と答えており、グッズへの投資額がチケット代を大きく上回る傾向が示された。イベント応募券付きアルバムやランダムグッズを集めて痛バッグを作るために、相当な金額を投じるファンも少なくない。

さらに、「高額でもグッズを購入する理由」に関する設問では、「推しへの貢献」「自己満足やコレクション欲」「実用性やデザイン性」の3つの要素が主な動機として挙げられた。特に「購入という行為自体が推しへの応援につながる」との意識は強く、商品が手元に残るか否か以上に、「買うこと」に意味を見出していることがわかる。また、グッズを通じて他のファンとの差別化を図りたいという自己表現の一環や、日常生活に取り入れられるほど洗練されたデザインも、購入の後押しとなっている。

ファッションの分野にも波及効果は広がっており、K-POPグループの世界観をもとにした「ウィッシュコア」と呼ばれるスタイルが人気を集めている。推し活における消費はもはや趣味の域を超え、生活スタイルや価値観の表現手段として社会に深く根を下ろしつつある。

今回の調査は、株式会社Oshicocoが提供する若年層マーケティング調査サービス『推しペディア』を通じて実施された。若者市場の動向を捉えるうえで、推し活をめぐる消費トレンドは企業にとって重要なインサイトの宝庫となっている。高額な支出にもかかわらず、ファンが「価値ある投資」としてグッズを購入する背景には、推しとつながりたいという純粋な願いと、それに応える商品設計・体験の工夫がある。今後、推し活層の心をつかむためには、より精緻で魅力的なマーケティング戦略が求められるだろう。