株式会社宝島社(東京都千代田区、代表取締役社長・関川誠)は、2025年10月1日、第24回「このミステリーがすごい!」大賞の受賞作を発表した。大賞には犬丸幸平氏の『龍犬城の絶対者』が選ばれ、文庫グランプリには四島祐之介氏の『アナヅラ様の穴場』、宮島明道氏の『馬と亀』の2作品が選出された。応募総数461点の中から1次、2次選考を経て選ばれた。大賞の賞金は1200万円、文庫グランプリは合計200万円で、3作品はいずれも2026年1月から順次刊行される予定である。
大賞作『龍犬城の絶対者』は、1920年の北京・紫禁城を舞台に、日本人絵師と元皇帝が事件の謎を追う物語だ。少年皇帝と若き日本人画家の交流を軸にした描写や、清朝末期を背景にした巧みな構成が高く評価された。選考委員の大森望氏は「この時代、この場所を選んだ着眼が見事」と評し、香山二三郎氏も「異郷で育まれる絆が印象的だった」とコメントした。
受賞者の犬丸氏は大阪府出身で、約40カ国を旅した海外絨毯の買い付け人。大学時代に訪れた中東や南米の体験が創作の源になっているという。コメントでは「清朝を舞台にした小説に挑戦する勇気を与えられた」と、創作への情熱を語った。
文庫グランプリの一作『馬と亀』(宮島明道)は、警察内部の光と影を交錯させた犯罪ドラマだ。新人刑事と悪徳刑事という対照的な人物を軸に、事件と人間の行方を描く。宮島氏は立川市在住のDJで、「人生の分岐点を迎えられた」と受賞の喜びを語った。
もう一作の文庫グランプリ『アナヅラ様の穴場』(四島祐之介)は、地方都市の怪異伝説を題材にした異色のミステリーホラー。女性探偵が“アナヅラ様”と呼ばれる連続事件に挑む。独創的な発想と展開が評価を集めた。四島氏は栃木県出身のITエンジニアで、「読書嫌いだった自分が物語を書く喜びを知った」と喜びを述べた。
「このミステリーがすごい!」大賞は、2002年に創設された新人賞で、ミステリーやエンターテインメント作家の発掘と育成を目的としている。これまでに『チーム・バチスタの栄光』の海堂尊氏や『元彼の遺言状』の新川帆立氏、『さよならドビュッシー』の中山七里氏など、数多くの人気作家を輩出してきた。受賞だけでなく「隠し玉」制度からも『スマホを落としただけなのに』シリーズなどのヒット作が誕生している。
宝島社は「今後も新しい才能を発掘し、エンターテインメント業界の活性化に努めていく」としている。




