東京・神保町のNew Galleryで6月13日から開催されていた企画展『konomad journal N°0 : Dream—Sleep issue【夢・睡眠・森】』が、7月3日をもって会期を終えた。クリエイティブ・プラットフォーム「konomad」が主宰した本展は、多様なメディアを横断するアートプロジェクトとして注目を集めた。
主催のkonomadは、ヘア&ウィッグアーティストの河野富広と、フォトグラファー/ビジュアルアーティストの丸山サヤカが立ち上げた創作集団で、アートディレクションやヴィジュアルデザインを手がけながら国内外で活動している。今回の展示は、彼らが編集・刊行した初のジャーナル『konomad journal N°0』(konomad editions)の出版記念として企画されたもので、「夢と睡眠の森」をテーマにしたこの書籍には、写真、絵画、ドローイング、エッセイ、インスタレーションなど多様な作品が収められている。
誌面には、国内外から選ばれた66名のアーティストが参加し、中村佳穂(ミュージシャン)や川上未映子(詩人・小説家)らもその名を連ねている。それぞれのアーティストが「夢」と「睡眠」にまつわる自身のルーティンや記憶、幻想的な世界を独自の視点で表現し、200ページを超える誌面に「想像の森」を展開させた。
展示空間では、誌面の世界を立体的に体感できる構成がなされ、来場者は書物の中から立ち上がった夢の断片を現実の空間で追体験するような没入感を味わった。さらに、サイケデリックバンド「Kikagaku Moyo」の創設者であるTomo Katsuradaが制作した音楽作品も展示の一部として展開された。彼が手がけたコンセプトアルバムは、「Dream/Sleep」をテーマに、音のグラデーションが緻密に重ねられたもので、静かに観客の感覚に作用し、深い内省へと誘った。
『konomad journal』は今後も継続的に発行される予定で、今後の展開としては書籍という形式にとどまらず、映像、音楽、空間表現など、さまざまなメディアへの広がりも見込まれている。その創作は自由、純粋性、即興性を核に据え、人と人との出会いを触媒としながら、時に偶然を取り込みつつ進化していくという。
今展が提示したのは、アートの形式やジャンルを超えた、表現そのものの可能性であり、夢と現実の境界を曖昧にする詩的な試みだった。66人のアーティストが一冊の本と一つの空間に結集した『Dream—Sleep issue』は、現代アートが向かう新たな方向性を示す実験でもあった。
konomadの創作活動は、2016年にニューヨーク・ブルックリンでスタートし、2020年以降は東京を拠点に展開。独自の世界観と国境を越えたネットワークを武器に、国内外での影響力を着実に広げている。今後の活動にも期待が高まる。


