「自分の役割に強いこだわりはない」。
そう言い切るメルカリのデザイナー、山田静佳さん。
自分のキャリアよりもメルカリというプロダクトの発展に貢献することを第一に掲げ、時にはオウンドメディアを運営したり、メルカリの配送方法をデザインしたりと、メルカリの発展に貢献する役割を柔軟に担ってきました。

2016年に入社して約3年。山田さんが、メルカリで加速度的に成長を遂げた末に選んだキャリアとは?
メルカリで多彩な能力を発揮する中で構築された山田さんのキャリアの流儀について伺いました。

株式会社メルカリ デザイナー 山田 静佳(やまだ・しずか)
広告代理店、事業会社にてメディアやアプリの制作経験を経て、2016年4月メルカリに入社。デザイナーとしてフリマアプリ「メルカリ」のデザイン全般を担当するほか、オウンドメディア「メルカン」や、「メルカリ」のQ&Aサービス「メルカリボックス」の立ち上げなどを幅広く経験。現在はデザインチームのマネジャーを務める。

社員全員が“ワンプロダクト”の下で一体感を持って働く姿勢に共感

――山田さんがメルカリへ転職したきっかけは何だったのでしょうか。

メルカリ社の社内外交流イベント「Drink Meetup」に参加したことがあり、現在取締役CPOを務めている濱田やメルペイ社の取締役CPOの松本などとの交流を通して、トップの方々もものづくりに参加していること、大きなワンプロダクトに全員で向き合っていることを知り、とても衝撃を受けたことを覚えています。

その後、当時勤めていた会社が合併してトップや会社自体のものづくりに対する思想が大きく変わり、このままここでデザイナーを続けるべきか否かを考えるタイミングがありました。それと同時に、自分が愛を込めてつくったプロダクトのマネタイズがうまくいかず、事業に終わりが見えていたタイミングでもあったことから、ものづくりの思想に共感できる会社で働きたいという思いが強まり、次の転職先を決めずに退職しました。

そして転職先を探す際に「Drink Meetup」のことを思い出し、採用面接を受けて入社に至りました。

――実際に入社して、どのような印象を受けましたか?

私が以前勤めていた会社は複数のプロダクトを同時に手掛けていたため、社員全員がフリマアプリの「メルカリ」というワンプロダクトを和気あいあいとつくっている様子に憧れを抱いていたのですが、思い描いたままの光景が広がっていました。

経営トップでさえも、プロダクトの問題点やちょっとした変化を指摘します。社員全員が「メルカリ」を良いプロダクトにしたいと考えているため、たとえ意見が割れたとしても気持ちのいい議論ができています。

メルカリ社には、組織的な上下関係がないことも特徴ですね。マネジャーやプレイヤーといった役職はありますが、それはあくまでも役割であって、どちらが偉いということもありません。とてもフラットな環境なので誰に対しても意見を言いやすく、とても仕事がしやすいと感じています。

“顧客満足”にコミットするデザインとは何か?を追求する新たな挑戦

――これまでに手掛けた業務のなかで、ご自身のスキルやキャリアアップに大きく影響を与えたものはどんなものでしたか?

メルカリは本体だけでなく周辺のサービスやメディアがたくさん展開されており、私の最初の仕事は「メルカン」という採用のオウンドメディアの立ち上げだったのですが、サービス本体のデザインではなく「採用」という切り口からメルカリに入り込んでいったのはちょっと意外でした。
でもその仕事を通じてメルカリという企業の理解に繋がったので、「メルカリ社の入門編」として良い勉強期間になったかなと思います。

その他にキャンペーン広告のデザインなどクリエイティブ関連の業務に携わった後、メルカリの配送方法のデザイン、メルカリボックスというQ&Aサイトではプロダクトマネジャーも兼務し、サービスの立ち上げに関わるなど、一つのプロダクトの中でも様々な機能やサービスのデザインに携わり幅広くスキルを磨けたと思います。

その中で、デザイナーの経験として大きかったと感じているのは、新たに2種類の配送方法の追加に伴うデザインを任されたことです。

一口に配送方法をデザインすると言っても単に配送フローを見やすくキレイにデザインすれば良い、という訳ではありません。
出品者側と購入者側の両方のフローでも裏側には考慮すべきフローが複数あり、複雑なロジックで設計しています。
はじめはそこを十分に理解しきれないままデザインを提案してしまい、うまくいきませんでした。そこで配送についてより隅々まで理解しようと、自らメルカリであらゆるケースの配送方法を試して実体験しました。

また、デザイナー以外の職種の方と密にコミュニケーションを取り合って、配送に関わる社員それぞれの役割についても理解を深めていきました。
例えばカスタマーサービスに寄せられる配送についての問い合わせ内容や量などから、配送方法の仕組みが分かりにくいと、カスタマーサービスへの問い合わせが増えてしまい、メンバーの負担にも繋がってしまうため、そうしたことをなるべく増やさない仕組み作り、そしてお客さまになるべくストレスを与えないデザインが必要なのだと分かりました。

このプロジェクトに携わってみて、メルカリの中の配送という一つのシステムから、顧客満足とは何か、それをデザインに落とし込むとはどういうことなのかという、前職では経験したことのなかった観点からの体験のデザインが求められたことは、デザイナーとして大きなブレイクスルーとなった仕事でしたね。

メルカリの向上発展のために、キャリアに柔軟でいられることを重視

――メルカリという大きなサービスプロダクトを手掛けるにはいわゆるデザイナーという枠を超えて、顧客満足への深い理解やサービスを支える内側の円滑な開発体制構築など、多角的な観点を持って携わることが求められたのですね。デザイナーとして大いにキャリアアップされたとお見受けしますが、今はどのようなことを手掛けられているのですか?

現在は、デザイナーチームのマネジャーという立ち位置になり、現場で手を動かすよりもチームメンバーのサポートや、問題が起きたときの調整など、管理的な役割を担っています。

ただ、もともとものづくりが好きだったので、マネジャーになるのには正直抵抗がありました。
一人で悩んでも答えが出せなかったので、先輩に相談することにしたのですが、その先輩に言っていただいたのは、私しかできないことをほかのメンバーに伝えることでチームのパフォーマンスを最大化できるようになれば、結果的に私の愛する「メルカリ」のためになるということ。「メルカリ」をより良いプロダクトにしたいという思いが私の根底にあるので、それならばと納得するとともに、新たなキャリアに挑戦する気持ちが湧きました。

――相談した甲斐がありましたね。気軽に相談できる環境だと安心感がありますね。

そうですね。当社は仕事やキャリアについてなど、気兼ねなく相談できる体制を設けています。例えば隔週で1on1面談というのを実施しているのですが、これは自分で面談相手を指名できるというもの。私も他部署の人から指名を受けて面談しますが、堅苦しくなくカジュアルに色々と話ができる良い制度だと思います。
他にも、メンター制度もあるので、相談事をしたりとフォローを受けやすい環境が整っていると思います。
今年2月にはDiversity & Inclusionという部署を発足して、社員の多様性を尊重しようという取り組みも始まりましたね。政府が掲げている女性の活躍推進も目的の一つとしています。
こうしたサポート体制が働く安心感に繋がっていると感じます。

――スペシャリストではなく、マネジャーというちょっと驚きの展開でしたが、山田さんの中でメルカリで働くことで目指すゴールをプロダクトの向上というブレない軸を持っているからこそ、そうしたポジションを受け入れられたのでしょうね。
山田さんの目指す将来像はどんなものですか?

マネジャーとしては半年くらいとまだまだ未熟で、期待されている役割を全然果たせていないという気持ちがあるので、まずはそこを達成したいですね。メンバーのパフォーマンスを最大化できるよう導くコーチングのようなスキルを磨きたいです。

ただ自分のキャリアに強いこだわりがないので、最終的に「メルカリ」というプロダクトを良くすることができれば、どのような立ち位置でも構わないと思っています。それを突き詰めると、いずれはデザイナーではなくなる日が来るかもしれませんね(笑)。

インタビュー・テキスト: 三ツ井 香菜(YOSCA)/撮影:TAKASHI KISHINAMI/編集:岩淵 留美子(CREATIVEVILLAGE編集部)

会社プロフィール


株式会社メルカリは、「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションに、フリマアプリ「メルカリ」の開発・運用を行っています。
世の中では多くのモノ・サービスが生産・販売されていますが、誰かには価値があるのに捨ててしまうなど、地球資源の無駄になっていることが多いと私たちは考えています。
「捨てる」をなくすために、個人間で簡単かつ安全にモノを売買できる「メルカリ」を日本とUSで展開しています。

■ 社名  :株式会社メルカリ
■ 所在地 :東京都港区六本木6-10-1六本木ヒルズ森タワー
■ 設立  :2013年2月1日
■ 代表者 :代表取締役会長兼CEO 山田 進太郎
■ 事業内容:フリマアプリ「メルカリ」の企画・開発・運用
■ URL:https://about.mercari.com/