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シリーズ30周年記念作品『イドラ ファンタシースターサーガ』の開発舞台裏 ディレクター・陳智政さんが目指すユーザーと開発メンバーの幸せとは

2018年11月末にセガゲームスよりリリースされたスマートフォン向け運命選択RPG『イドラ ファンタシースターサーガ』は、累計1,000万人が遊んだ「ファンタシースター」シリーズの30周年記念作品として、リリース早々に300万ダウンロードを突破するなど、往年のファンはもちろん、新規ユーザーからも支持されている大人気タイトルです。

「ロウ」と「カオス」2つのパーティーを切り替えて戦うコマンドバトル、プレイヤー自身がボスになり全国のプレイヤーたちと戦うイドラバトルなど、斬新なゲームシステムを取り入れた本作においてディレクターを務めた陳さんは、いかにして『イドラ ファンタシースターサーガ』を現在の形に完成させたのでしょうか。本稿では、セガゲームスならではの開発スタイル、先輩からの教えなど、多角的な視点から掘り下げていきます。

陳 智政(ちん・ともまさ)
株式会社セガゲームス ディレクター
1982年生まれ、東京都出身。2005年、セガに入社。
『戦場のヴァルキュリア』ではマッププランナーとして配属され、
続く『戦場のヴァルキュリア2 ガリア王立士官学校』ではマップリーダーとしてマップデザイン全般を担当。
その後『RISE OF NIGHTMARES』でチーフゲームデザイナー、『ファンタシースターオンライン es』として活躍。
最新作『イドラ ファンタシースターサーガ』ではディレクターとして制作の総指揮を担っている。

企画書作りに魅せられ、化学専攻からゲームプランナーへ

――人気を博している『イドラ ファンタシースターサーガ』でディレクターを務める陳さんですが、そもそも業界には何年在籍されているのですか。

新卒でセガゲームスに入社してからですので、かれこれ14年ですね。

――大学の専攻はどちらでしょう。

実は化学でした。にもかかわらず、就活はゲームプランナー志望……(笑)。

――あまり結びつかない分野な気もしますが(笑)、ゲームプランナーを目指すきっかけはなんだったのでしょうか。

就職活動の際に企画書を作る機会があったのですが、それに魅せられたのがきっかけですね。当時はゲームの企画書ではなく、ものづくり系の企画書だったのですが、その時に企画を考える楽しさ、相手に伝える面白さに気付いたのです。専攻は化学でしたが、それ以上にゲームも大好きだったので、ゲーム会社を中心に就活することにしました。

――“企画書を作る楽しさ”を知ったのですね。ただ、ゲームの企画書を実際に作るのは……。

もちろん一度もありません。ゲーム会社の入社課題の時に初めて作りました。当時は、自宅でWordを使用しながら手探りでゲームの企画書を作っていたのですが、時間が経つのも忘れるほど夢中になってしまい、気付けば朝になっていることもよくありました(笑)。その時、これだけ夢中になれるのであれば、自分にとってプランナー職はきっと天職なのだろうと強く思いましたね。

――当時はどういうゲームの企画書を作ったのですか。

RPGとシミュレーションが多かったです。売れるゲームというよりかは、自分が作ってみたいという欲望が全面に出た企画でしたが(笑)。

――余談で恐縮ですが、陳さんが影響を受けたゲームタイトルはなんですか。

いろいろありますが、ひとつは『スーパーマリオワールド』(スーパーファミコン, 1990年)です。よく遊んでいたのは私が小学1年生の頃でしょうか。アクションゲームとしての面白さはもちろんですが、隠し要素がたくさん取り入れられていたのが思い出深かったです。クリアしても100%にならずに、何度も繰り返し遊べる楽しさがありました。

もうひとつは『ロマンシング サ・ガ2』(スーパーファミコン, 1993年)ですね。バトル中に突然技を習得する“閃きシステム”は、今考えても革新的なシステムだと思います。どこかRPGって、ゲームを進めていくにつれてバトルにも慣れてしまい、単調でマンネリ化してしまうものですが、あの閃きシステムのおかげで緊張感や思わぬ逆転劇を引き起こしてくれるなど、とてもドラマ性を感じさせてくれたと印象に残っています。

――ありがとうございます。就活中はいろいろなゲーム会社を志望されたと思いますが、セガゲームスを志望された理由は。

最初は、大学の教授が求人票を持ってきてくれたのがきっかけでしたが、書類や面接を進めていくにつれて、セガゲームスの社風に共感したり、ほかの人よりゲームの知識が乏しい私でも熱意やクリエイティビティを見てくれたりと、素直に「ここの会社で頑張っていきたい」と思いました。あとは純粋にソフト・ハード含めて思い入れがあるというのも理由です。

――入社当時のこともお聞かせください。最初はどのような業務を担当していたのですか。

入社後は、『戦場のヴァルキュリア』(PlayStation3, 2008年)のプロジェクトにマッププランナーとして配属されました。新規のオリジナルIPで、なおかつシミュレーションRPGのバトルの要(かなめ)を握るマップ制作は責任重大でしたね。

――当時の業務はいかがでしたか。

もともとシミュレーションゲームが大好きだったので、本当に楽しかったですね。『戦場のヴァルキュリア』では、Excelの方眼紙ベースで大まかなマップを構築し、専用ソフトでクリエイティビティを組み立てて、繰り返し遊びながら問題点はないか、本当に面白いかを検証していきました。

――まだまだ駆け出しの新人プランナーだったと思いますが、『戦場のヴァルキュリア』のプロジェクトではどのようなことを学びましたか。

本当にたくさんのことを学びました。なかでも印象に残っているのは、当時のベテランプランナーの方が、マップ作りのコツを自分に教えてくれた時のことです。バトルのマップは戦略的な面白さはもちろんですが、それと同じようにドラマ・ストーリーを作るような感覚を大事にした方がいい、という話でした。

ターン制のシミュレーションRPGは、敵と味方が交互に行動すると、どうしても単調になりがちです。ですが、きちんと時間軸を意識したり、戦況が突如変わったりと、ターン制ながらもリアリティを感じさせるためのドラマ性を取り入れることで、物語の深みが変わってきます。たとえば、櫓(やぐら)を登ると視界が広がり、隠れていた戦車を見つけられるなど、単純に戦略的なマップを作るだけではなく、どのようにバトルが展開していくか、自身でドラマ・ストーリーを意識的に落とし込むかで、質の高いマップに仕上がっていくのです。

――なるほど。システムだけに寄らずに、世界観やストーリーなどの余白部分もきちんと意識することで、さらにバトルが昇華されていったのですね。

あと“学んだ”ではなく、衝撃的だった出来事があります。『戦場のヴァルキュリア』のディレクターは、現在『イドラ ファンタシースターサーガ』でプロデューサーを担当している田中(田中俊太郎氏)なのですが、彼がリリース3ヵ月前に、「マップの遊び部分が面白くないから変える」と大掛かりな修正を決めたのです。

当時、私は初めてのプロジェクトだったので、「開発現場はこういうものかな」と思ったものですが、今考えればなかなか大変な決定だったようです。ただ、最終的にそこでマップの大幅なブラッシュアップをしたことで、ゲームがより面白くなり、新規のオリジナルIPながらもユーザーさんからは高評価を受けて、今でも長く愛されるシリーズとなりました。

当然、スケジュール通りに進行するべきものですが、そのなかでも面白さの追求を天秤にかけた時、どのように現状を打破して取り入れていくのかは、新人としていろいろ考えさせられた出来事でもありましたね。

自らボスに変身、パーティー切り替えなどの新要素

――ここからは『イドラ ファンタシースターサーガ』のことをお聞きできればと思います。月並みな質問ですが、そもそもの開発経緯から教えてください。

もともと私とプロデューサーの田中が、シリーズのスマホタイトルにあたる『ファンタシースターオンライン2 es』を手掛けていました。そんな折、ちょうどシリーズが30周年を迎えるタイミングでもあったので、『ファンタシースター』シリーズの魅力をより多くの方に届けたいという思いのもと、本作のプロジェクトが立ち上がったのです。

ちなみに『イドラ ファンタシースターサーガ』は、我々の企画だけではなく、社内コンペという形で50本ほどの企画が集まりました。最終的に、私と田中による合作の企画書が社内で通り、本格的に開発がスタートした流れになります。

――「ファンタシースター」シリーズといえば、今やオンラインアクションRPGとしての認知度が高いかもしれませんが、そもそもはシンプルな王道RPGが始まりですよね。実際に『イドラ ファンタシースターサーガ』は、コマンド型のバトルシステムを採用しているところから、30周年記念作品として、どこか原点回帰を意識されたのではないでしょうか。

仰る通りです。「ファンタシースター」シリーズは、オンライン上で遊ぶアクションRPGとして十分な認知度があります。そこからさらに、まだリーチできていないユーザー層に向けて、このシリーズを楽しんでもらうためにはどうすればいいのか、と田中とも話して考えたところ、原点回帰としてコマンド型のRPGに行き着きました。

――一見、新規IPにも見えますが、オリジナル要素と原作要素、そこの取り入れ方のバランスも絶妙だと思いました。

名称に関しては、分かりやすさなども考慮して、変える部分と残す部分の線引きはしました。たとえば、通貨の単位であるメセタ、シリーズお馴染みの必殺技名の〇〇ブラスト、マスコットキャラクターのラッピーなどは踏襲していますね。また、シリーズのなかでも珍しく、あまりSFに寄り過ぎずに、「ファンタシースター」独自の魅力に触れてもらえるような拡がり方は取り入れています。

――バトルはコマンド型ですが、シンプルながらも奥深さを感じます。特に意識された点はどこでしょうか。

ひとつはビジュアル面ですね。昨今、3Dモデルを用いたゲームが多い中、2Dライクのゲームも非常にニーズがあると感じています。先ほど挙げた原点回帰として昔ながらの雰囲気、親しみやすさも考えた絵作りをバトルでは徹底しました。必殺技もアニメーションのカット割りなどを意識しながら制作しています。

――必殺技なんかは、毎回スキップせずに見入ってしまいますね。

ありがとうございます。バトルはユーザーさんからも「面白い」と言っていただける声が多いですね。なかでも本作では、ふたつのパーティーを入れ替えながら戦うため、キャラクターの組み合わせや育成要素に関しても遊び応えのあるタイトルになっていると思います。

――バトル中に「ロウ」と「カオス」のパーティーを入れ替えるリバースラッシュですよね。

はい。シリーズの特徴として、キャラクターの展開が分岐することがあるのですが、ここも本作では再現したいと考え、システムとして練り込んで取り入れました。キャラクターも運命分岐を通して、「ロウ」か「カオス」に変更できるという育成の楽しさと、途中でパーティーを入れ替えることも考慮した編成の楽しさなどが味わえると思います。

――また、自らがボスにもなれるイドラバトルも派手な演出ですよね。

従来のソーシャルゲームには、ほかのプレイヤーと一緒に戦うレイドボスというモードがありますよね。ただ同じ遊びを出すのでは芸がないので、本作ならではの新しい体験の提供として、自らがボスになるという試みにチャレンジしました。相互にインタラクティブ性を加えることで、ひとつのモードのなかにも全く違った楽しみ方が生まれると思っています。

ユーザーと開発メンバーの幸せを考える

――新卒から14年間、セガゲームスで業務を続けてこられた陳さんですが、社内の雰囲気はいかがですか。

職種・上下関係問わず、ゲームに対する意見は自由に交わすことが多いですね。そのコンテンツが少しでも面白くなるのであれば、意見は積極的に挙がります。実際に本作でも「もっとこうした方がいいんじゃないか」と意見は飛び交っていましたね。その影響か社内の各チームは本当に明るくて、クリエイティビティが高い方が多く揃っています。

――フットワークの軽さは魅力ですね。そういえば、御社は2018年8月に大崎にオフィスが移転されました。分散しているグループ各社の本社機能を集約される形となりましたが、実際に新オフィスはいかがですか。

開発環境のスペースは広くなりましたね。あとは大型の社員食堂が設置されたり、コンビニがあったり、ランチワゴンは日替わりでバラエティ豊かなメニューを取り揃えてくれたりと、個人的に食生活はとても豊かになりました(笑)。

また、グループ会社が集約したことで、これまでは接点がなかったアトラスさんやアーケード部門の方々とも社内で会えたり、情報交換できたりするようになったものグループ全体としての強みになります。まだ直接的なやり取りはないにしても、いつかはシナジーが期待できそうです。

――これまで14年間ゲーム業界に携わってこられて、今と昔で働き方に変化はありますか。

そういえば、徹夜をすることがほとんどなくなりました。弊社でも働き方改革として、残業時間を減らす取り組みもしっかり行ってきています。私が所属している事業部でもノー残業デーや有給取得推奨日を設けるなど、いろいろ改善されています。あとは、どうしても運営が伴う事業ですので、リモート作業における環境も整えられていますね。

――常に改善されているのですね。

ただ、難しい側面もあります。先ほどの話じゃないですが、ゲーム開発現場の共通課題として、計画しているスケジュール通りに最大限のクオリティを引き出せるかは、常に意識しますね。実現のために、スケジュール管理を徹底することはもちろん、クオリティラインの線引きをしたり、作業の優先度付けをディレクションしたりしています。

……ただ、そんなふうに気を付けていても、想定外のトラブルが起こるのが開発現場です。そのため、きちんとルールとして必ず守る部分と、柔軟に調整できる部分のバランスをコントロールするのは大事だと思っています。

――陳さんは今や教える立場だと思いますが、後輩や部下の育成について気を配っている点などはありますか。

作業を依頼する時に、得意なことと、苦手なことへの取り組み方と成果は意識的に見るようにはしています。これをきちんと把握することで、本人の長所や短所、伸びしろ・課題などが見えてくるのです。誰しも得意なことは率先してやるものですが、苦手なことを任せられた時に、なにも自分だけで解決せずに、どういうふうに周囲と連携したり、カバーしたりするかも大事なので、それまでの過程と成果は見届けますね。

あとは、良い部分はきちんと「良かった」とフィードバックすることも心掛けています。ユーザーさんからの声が開発の励みになることもあるように、こちらからも積極的に声を届けることで、開発現場は明るくなりますね。良いものを手掛けたのであれば、正当な評価を受けて、それを糧にまた次の良いものを作るサイクルにまわしていきたいです。

――現在セガゲームスでは、どのような人物を求めていますか。

常に全職種で募集していますが、職種問わず共通して求めている点としては、自分の作業分野に関してプライドと責任感を持って取り組める方ですね。ぜひ私もそういう方と一緒に働きたいと思っています。

――それでは、最後に陳さんの今後の展望をお聞かせください。

まずは『イドラ ファンタシースターサーガ』をより多くの方々に遊んでいただき、楽しみ続けて欲しいので、継続して開発に取り組んでいきたいと思います。シリーズが30周年も続いているのも、ひとえにユーザーさんからの支えがあったからこそです。今後も皆さんの声を大事にして、数年後には世界中で遊ばれるタイトルになるよう成長させていきます。

また、私が携わるタイトルは、今後も第一にユーザーさんに楽しんでもらい、さらに一緒に働くメンバーたちにとっても良い環境で作り続けてもらいたいという思いでつくっていきます。そして、いつかセガゲームスをNo.1エンターテインメントコンテンツ会社にできるように、これからも尽力していきたいです。

――ユーザーと開発メンバー、双方が幸せになれるゲーム開発の実現、楽しみにしております! 本日はありがとうございました!

インタビュー:原 孝則(Pick UPs!)/テキスト:神谷美恵(Pick UPs!)/撮影:SYN.product/編集:CREATIVE VILLAGE編集部

作品紹介

イドラ ファンタジースターサーガ

物語の舞台は、戦乱の大地「ヴァンドール」。
剣と魔法が支配するこの世界を「イドラ」と呼ばれる謎の巨大な怪物が徘徊し、人々は自らの生活を脅かすイドラと戦う日々を送っていた。

そんな中、太古の昔に封印された災神「ダークファルス」が復活の胎動を始める。

人々は、ダークファルスの復活を阻止できるのか?
そして、ダークファルスの眷属とされる「イドラ」の真の正体とは?

タイトル:イドラ ファンタジースターサーガ
対応機種:iOS、Android
サービス形態:基本プレイ無料・アイテム課金
ジャンル:RPG

https://idola.sega-online.jp/