アニメ、ゲームなどのエンタテインメントコンテンツをきっかけに博物館や美術館を訪れる女性が増えています。その人気ぶりは来館者数が通常の約7倍にまでなった施設もあるほど。そんな女性たちの熱い視線は芸術家にも向けられつつあるようです。このトレンドを一早くゲームに盛り込んだ新作ゲームアプリ『パレットパレード』がついに9月19日にリリース予定です。

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『パレットパレード』では、世界の美の巨匠がキャラクターとして登場し、様々なストーリーが繰り広げられます。女性ユーザーをメインターゲットとした育成ゲームは既に多くある中、なぜ『パレットパレード』は美術史に基づいたキャラクター化に挑戦したのでしょうか。開発・運営を手がけるクレイテックワークスのプロデューサー、ディレクターにお話しを伺いました。

美術史を背景にしたキャラクター作り

――『パレットパレード』は歴史的に有名な芸術家たちをモチーフとした育成ゲームですが、その着想はどこから得られたのでしょうか。

プロデューサー(以降、P)もともと美術館を巡るのが好きで、話題の企画展を見学している内に、芸術家をキャラクター化してみたら面白いのではないかと閃いたのがきっかけです。折しも日本の文豪をキャラクターにしたコンテンツが人気を博していた時期だったということもあり、ビジネス面でも大きなチャンスでした。

もちろん、歴史上の人物がキャラクターとしてゲームに登場するケースは決して珍しくありません。ですが、美術史を背景として芸術家にフォーカスしたタイトルはまだ無かったので、そこを差別化のポイントにして企画を考えていきました。

――なるほど。ディレクターはどの段階から『パレットパレード』のプロジェクトに参加したのでしょうか。

ディレクター(以降、D)実は『パレットパレード』の企画段階では、まだ別の会社で開発の仕事をしていました。ですが、「世界の芸術家をキャラクターにした新規タイトルの開発プロジェクトが始まるらしい」という話を人づてに知り、これは私の転機になるかもしれないと直感したんです。

というのも、まず芸術家をキャラクター化するというアイディアに新しさを感じましたし、オリジナルIPのゲーム開発に携わるという経験は自分にとって大きなプラスになるんじゃないかと思って。滅多にないチャンスですから、すごくワクワクした気持ちで転職を決意しました。

――ちなみに、それまでゲーム開発に参加したご経験は?

DもともとはPCオンラインゲーム、スマートフォン向けゲームと、様々なプラットフォームでゲーム開発に携わってきました。スキルの幅を広げるため、ゲームではないWebサービスのプロジェクトに参加していた時期もありましたが、『パレットパレード』をきっかけにゲーム開発の現場に“戻ってきた”という感じですね。

――企画から完成までを振り返ってみて、いかがでしたか。

P誰もが知っている芸術家が魅力的な男性キャラクターとして登場し、美術史の知識を織り込みつつ、主に女性ユーザーを対象に楽しんでもらえるようなゲームにしたいという思いが最初に強くあったので、そのコンセプトは十分に表現できたと満足しています。

苦労したのはやはりキャラクター作りですね。デザイン自体はわりとすんなり決まったのですが、性格、口調、好きなことや苦手なことなど、キャラクターそれぞれの“らしさ”を練り上げるのにかなり時間がかかりました。

――メインビジュアルでは一番前に「ゴッホ」がいますが、劇的な人生を過ごした画家であるフィンセント・ファン・ゴッホが『パレットパレード』で「ゴッホ」というキャラクターに生まれ変わるまでにはどのような経緯があったのでしょうか。

Pメインキャラクターとなる存在ですから、特に知名度が高く、かつ、作品のみならず本人の性格や生涯までもよく知られている芸術家でなければなりませんでした。そこで押しも押されもしない有名画家として選ばれたのがゴッホです。

ただ、実際のゴッホは苦労の多い人生で、精神的にも不安定な時期が長かったと言われています。自ら片耳を切り落としたという逸話も有名ですし、彼に陰鬱な印象を抱く人も少なくないでしょう。

けれども、ゴッホの人生と作品を丁寧に紐解いてみると、彼のベースは決して暗い衝動だけではないんですよ。友人のゴーギャンとは共同生活を解消した後も手紙でのやり取りは続いていましたし、親友として互いにリスペクトしあう関係だったのだろうと私は考えています。

また、美術についてはほぼ独学でしたが、当時の前衛だった印象派に強く影響を受け、その探究心は日本美術にまで及びました。絵画への情熱と知的好奇心は猛烈なものがあり、まさにゴッホは“炎の画家”です。そういった彼の側面から『パレットパレード』の「ゴッホ」は赤をイメージカラーに設定しました。

ゴッホ

――「ゴッホ」のデザインはよく見ると、左耳が髪で隠れていますね。

Pそうですね。「ゴッホ」は明るい性格のキャラクターではありますが、史実のとおり、複雑な感情を内に秘めているところもあり、ゲームを進めていくうちに段々と彼の内面が明らかになっていきます。そのあたりはぜひ楽しみにしていただければと。

D美術史を知れば知るほどキャラクターの魅力が増し、キャラクターを知るほど美術史が見えてくるという構成になっています。ゲームを通して両面から楽しんでいただきたいですね。

――キャラクター同士の人間関係にも美術史が反映されているのでしょうか。

Dもちろんです。ゴッホは後期印象派の画家ですが、印象派の先鞭をつけたのはマネでした。19世紀後半のフランス画壇において権威であったアカデミズムに対し、真っ向から挑んだのが彼だったのです。やがて、マネの下にはモネやルノワールといった印象派の画家が集い、マネも彼らを手厚く支援しました。

このような史実を踏まえ、『パレットパレード』では同窓の「モネ」、「ルノワール」、「シスレー」、「バジール」は仲良し4人組、「マネ」は彼らの憧れの存在として描かれています。

マネ
モネ
ルノワール
シスレー
バジール

――逆に、なかなか相容れない関係のキャラクターもいますか?

Dはい。たとえば、「アングル」と「ドラクロワ」ですね。それぞれ19世紀前半に活躍した画家、ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングルとウジェーヌ・ドラクロワがモデルです。

アングルは、ギリシャ時代やルネサンスを理想とする新古典主義の立場から創作を続け、優美な裸婦像を得意としました。新古典主義は全体の構図とデッサン(描き込み)を何よりも重視する理性派で、アングルによる裸婦像「グランド・オダリスク」では構図全体のバランスを優先するあまり、人体のプロポーションを意図的に歪ませて描いたほどです。

また、新古典主義は時の皇帝ナポレオンによって称揚されたことから、アングルもナポレオンの肖像画を手掛けています。他にもアングルには多くのエピソードがあるのですが、「アングル」のデザインには彼の時代的背景を示す要素がちりばめられています。

一方、同時代にドラクロワによって完成された流派がロマン主義です。ドラクロワといえば「民衆を導く自由の女神」が有名ですよね。彼の作品からもわかるとおり、ドラクロワは、荒々しいタッチと鮮やかな色使い、そして動的な構図で、観る者を圧倒する激情を表現しています。

新古典主義がオフィシャルな理性を重視したのに対し、ロマン主義はドラマティックな人間的感性をテーマとし、当時のフランス美術界全体を巻き込む大論争にまで発展しました。それは「アングル」と「ドラクロワ」のライバル関係としてゲームに反映されています。

アングル
ドラクロワ

丁寧に創り上げたものは自ずと伝わる

――お二人とも美術に造詣が深く、驚くばかりです。

D実は私たちも最初から詳しかったのではなく、開発を通して少しずつインプットしていきました。キャラクター一人登場させるにも、とにかく膨大な専門知識が求められるので、そこが開発の難所でもありましたね。

P『パレットパレード』に携わるようになって、美術関係の蔵書が一気に増えました。開発チームでよく美術館に足を運び、そこで手に入れた画集やパンフレットを持ち寄ったりしています。ミケランジェロの彫刻が原寸大で印刷されたポスターをオフィスの壁に貼ったりして、開発ルームというより、学校の美術室やアトリエみたいな雰囲気になってきました。

――メインシナリオはどのように書き進められたのでしょうか。

D美術史を根幹に置きながら、『パレットパレード』ならではのストーリー性を縦軸に、キャラクター同士の繋がりや同時代性を横軸にしてストーリーを構成しました。特に、横軸は出会いや悩み、芸術への共感など、キャラクター同士の様々なコミュニケーションによって変化するので、マイページ(ホーム画面)の会話だけでも大量のパターンを用意してあります。

各時代を代表する芸術家が一堂に会するというのが『パレットパレード』の大きな特長なので、ほかではなかなか味わえない面白い会話劇になっていると思います。

P書き上げたシナリオは、社内の女性スタッフを中心に点数で評価してもらいながら推敲を繰り返しました。それが毎回シビアで……(笑)。

Dクレイテックワークスのクリエイターはコンテンツ作りに並々ならぬ情熱を注いでいるので、私たちの作ったシナリオにも妥協を許さず、時には手厳しいコメントをもらうこともありました。ですが、そのおかげで、キャラクターの個性や関係性を良いバランスでシナリオに落とし込めたのではないかと思います。

『パレットパレード』は美術史を背景に世界の芸術家をモチーフにしているため、ある程度の専門知識や繋がりを説明した方がより楽しめる場合もあります。しかし、何もかもを説明してしまうと、かえってユーザーの気付きや好奇心が損なわれてしまいますから、そのあたりの絶妙なさじ加減は社内のフィードバックを基に期限ギリギリまで調整し続けました。

――主に女性ユーザーに向けた育成ゲームはすでに多くのタイトルがひしめきあうジャンルでもありますが、『パレットパレード』もヒットタイトルに引けを取らないクオリティに作り込まれているのですね。

Pはい。キャラクターはもちろん、シナリオも一字一句までこだわりましたから、これまで育成ゲームをプレイしたことのある方はもちろん、美術に興味のある方にも十二分に楽しんでいただけるゲームになっていると自負しています。

実は、事前登録キャンペーン中にとあるキャラクター宛てのファンレターが届いたこともあったんですよ。
まだ本格的なプロモーションは打っていなかったのに、キャラクターに深い愛情を注いでくださる方がいらっしゃるのだと、開発メンバー一同、心から感動しました。丁寧に創り上げたものは自ずと伝わるものがあると思うと、本当に励みになります。

――ゲームシステムはどのような仕組みになっているのでしょうか。

D芸術家を編成して依頼を引き受けながら、絵画を完成させていくというのが基本的なサイクルです。シナリオをスムーズに読み進めていただけるように、ゲームシステムはあえてシンプルな形にしました。絵画を制作していくとキャラクターとの親密度が高まり、キャラクターの個別ストーリーが解放されるようになっています。

また、キャラクターはステータスの上昇という意味での成長もしますが、シナリオが進むと共に内面的にも大きく成長していく姿を見ることができます。応援すればするほど、芸術家たちが壁を打ち破る瞬間はきっと心打つものになるはずです。

――では、最後に『パレットパレード』ファンに向けてメッセージをお願いします。

P『パレットパレード』は来たる2019年9月19日にリリース予定です。昨年の夏にリリース延期を発表して以来、長くお待たせする結果となってしまいましたが、みなさんから寄せられた応援のメッセージを励みに今日まで開発を続けてきました。開発チーム一同、心から感謝しています。

お陰様で『パレットパレード』は本当に面白くて素敵なゲームに仕上げることが出来ました。今後もご期待に応えられるよう、精一杯努めてまいりますので、リリースまで今少し楽しみにお待ちいただければと思います。

Dリリース延期は私たちにとっても苦渋の決断でしたが、創ることの難しさを経験した分、キャラクターもシナリオも非常に厚みのあるものへとブラッシュアップすることができました。みなさんに個性的な芸術家たちと楽しい毎日を過ごしていただけるよう頑張っていきたいと思っています。

インタビュー:原 孝則(Pick UPs!)/テキスト:神谷 美恵(Pick UPs!)/撮影・編集:CREATIVE VILLAGE編集部

企業プロフィール


ゲームコンテンツの企画・開発・運営を行う企業。企業理念は「感情を揺さぶるクリエイティブを創造し提供する」。社名は、クレイ(粘土)のように無から有を生み出し、自由自在にその形を変え、最新テクノロジーを組み合わせることで高いクリエイティブを創造する企業集団を目指す、という思いが込められています。代表作は「BRAVELY DEFAULT FAIRY’S EFFECT」(提供 スクウェア・エニックス)の開発・運営。現体制のオリジナルタイトル第一弾「パレットパレード」は、事前登録受付中(2019年9月19日リリース予定)。

社名 株式会社クレイテックワークス
所在地 東京都港区新橋4-1-1 新虎通りCORE
設立年月日 2018年7月4日
代表者 青木克仁
事業内容 ゲームの企画・開発・運営
資本金 700万円
URL https://claytechworks.co.jp/