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【イベントレポート】デジタルアニメーション制作トレンドセミナー CACANiの活用と未来について

2018年7月7日に、大日本印刷株式会社FUN’S PROJECTの主催、株式会社ワコムと株式会社クリーク・アンド・リバー社の共催で、自動中割作成ツール「CACANi」の活用についてのセミナーが開催されました。

「CACANi」とは
シンガポールのカカーニ社が開発した自動中割生成機能付き2Dアニメーション制作ソフト。
Computer Assisted Cel Animationの略称で、アニメ制作における効率化およびアニメーターの作業負担軽減を目的に開発されました。最大の特徴は、自動中割り生成機能。中割とは、アニメ制作においてキーフレームとキーフレームの間の絵を描く作業のことで、「CACANi」はその中割を自動で生成し、彩色する機能が備わっています。従来のアニメ制作の工程では、スムーズな動作に見せるためにキーフレームを繋ぐ膨大な量の絵を描く必要がありましたが、「CACANi」の登場によりその作業時間を圧倒的に短縮することが可能となりました。

日本国内の販売における総代理店:株式会社クリーク・アンド・リバー社
https://www.creativevillage.ne.jp/39570

オープニングトーク

まずは主催の大日本印刷株式会社FUN’S PROJECT推進部 浅羽慎太郎氏のオープニングトークです。
FUN’S PROJECTは、大日本印刷がクリエイターを目指す人や既にクリエイターとして活躍している方々に学びの場を提供したりサポートしたりする活動で、この一環でCACANiについてのセミナーを開催したという背景が語られました。
会場の地下でも、月2回くらいのペースでイベントを開催しているとのことでした。

FUN’S PROJECTとは
コンテンツ文化の発展とクリエイティブ業界への貢献を目的としたクリエイター共創サービスで、日本のコンテンツについて深く学び楽しみながら体験できる場を、最前線で活躍するクリエイターや制作会社の方々とご提供しています。
https://funs-project.com/

サンライズオリジンスタジオ講演

続いて、サンライズオリジンスタジオの講演がはじまりました。
作画監督の西村博之氏と動画検査の杉浦雄高氏が、『機動戦士ガンダム ジ・オリジン』の制作過程でどのようにCACANiを利用したか、具体例を説明してくださいました。

・一部が画面の外にある場合は、外側を作った上で作業が必要な場合もあります

・一つの場面の中でも3Dで作成した部分とCACANiを使用した部分がある

・中割り枚数が多くても正確に割ってくれるので、元の原画の精度が高ければとても時間と人材の削減になる

・大判でじわっと動くものはガタガタしてしまう可能性が高いが、CACANiを利用すればとても綺麗にできる

その他、状況に応じてメリットを感じた部分と苦労した部分についてもお話しいただきました。
実際に放映されたものと、制作途中の画面を比較して見ながらの説明だったため、参加者のみなさんも作業する時のイメージがつかみやすかったのではないでしょうか。

まとめ

実験的に使った結果、適切な状況と箇所に合わせて使用すれば、人的リソースや作業工数を減らし、きれいな中割を作成してくれる非常に優秀なツールである。というお話でした。

デイヴィッドプロダクション講演

続いてデイヴィッドプロダクションの作画室長の宇治部正人氏とアニメーターの玉栄翔氏講演です。

デイヴィッドプロダクションについて、宇治部氏が、”アニメーションの力で地球の元気を創出します”を企業理念にチャレンジを続けていると語りました。

まずはCACANiを開発しているシンガポールの南洋工科大学の環境の写真の紹介と、日本の高品質のアニメを作ろうとすると人手がかかるので、極力効率化するためにCACANiが生まれたという開発の背景が語られました。


デイヴィッドプロダクションでは2015年5月からCACANiを使用していて、ノウハウが蓄積されているということで、この後、実際にキャプテン翼のキャラクターを使い、主にCACANiのベクターでのトレース機能や、中割機能を使った振り向きのカットの作り方が説明されました。

ポイント

  • トレースは中割のことを考えて作業する必要がある
  • 特徴として、書き順によってCACANiが線情報を保持して自動で中割を作成する
  • 途中で簡単にキャンバスサイズを変えられるのが便利
  • 原画と原画の間の枚数が多ければ多いほど工数がかかるが、そこを解消するのがCACANiの最大の特徴
  • ベクター線は後で修正できるのがメリット

まとめ

面倒な中割をごく短時間で作成できるため、補填ソフトとして非常に重宝しているという感想をお話くださいました。
実際にCACANiのインターフェイス画面を表示しながら細かい機能とその使い方について解説頂いたので、参加者のみなさんもソフトについての理解が深まった様子でした。

パネルトーク

ワコムの轟木氏のファシリテーションでパネルトークが始まりました。

以下まとめです。

CACANiについて思うこと

  • 初めてCACANiを知った時には、自分の仕事が無くなるかもと危機感を持った。(杉浦氏)
  • このソフト愛してるかもと思った。笑 人材が定着しないという問題を解決する可能性があるソフトがついに出たと感動した。(宇治部氏)
  • 自動化のソフトを使って作業する専門職が出て来れば作業量をこなすことで報酬もある程度担保できるかもしれない。演出の幅も広がるだろう。(西村氏)

CACANiを使うことで今後アニメの制作工程が変わることがあるか?

  • 今は早く手を動かすことが報酬を増やすことになっているが、機動力をつかって動画にプライドを持てるような報酬と役割を持たせられないか考えている。(宇治部氏)
  • 今までは海外などに依頼していたが、オペレーターが作業することにより、報酬もアップする可能性がある。(杉浦氏)
  • 制作管理は少し難しくなるかも。ただ仕事の量は減るかもしれない。(玉栄氏)

ベクターデータのメリットは?

  • 改変に向いているので、工程を大幅に変えることも可能かもしれないのでメリットは大きい。(宇治部氏)
  • 初めて使った時、使いやすいと思った。(玉栄氏)

実装して欲しい機能

  • 現状で満足している。笑 フリーズなど不具合はあまりなくなり安定している。(杉浦氏)
  • 制作者の補填をサポートしているというプライドをもって、作業の効率化にスポットをあてて開発を続けて欲しい。(宇治部氏)

会場からの意見・質問

  • キャプテン翼の中で、CACANiを使ってどれくらいの割合をつくっているか?→4000から5000枚ほど
  • 習熟のプロセスについては紙の動画と比較してどうか?大変?→ CACANiの場合はシルエットを最初に教える。自動で割られたカットを美しく修正する必要があり、動画の楽しい部分に時間を使える。

今後のアニメーション業界を目指す方々にメッセージは?

  • CACANiのようなツールが作業負担を減らしてくれれば、楽しい部分にフォーカスできるので、こういう仕事を楽しめる人に来て欲しい。(福嶋氏)
  • こんなおもしろい仕事はないと思うので、是非飛び込んで欲しい。(杉浦氏)
  • 手描きのアニメーションが将来的にどの程度魅力を保てるか分からないが、映像制作という広い括りで考えて欲しい。(西村氏)
  • 表現者として何か創りたいものをもって、外に発信する手段を身につけておいて欲しい。ツールは大いに活用するべき。毎日クロッキーの練習してください。(宇治部氏)
  • CACANiを使って、うまく割れてると褒められたので、褒められるのがモチベーション。どんなことにも興味を持って欲しい。(玉栄氏)

「©創通・サンライズ」
©高橋陽一/集英社・2018キャプテン翼製作委員会

最後にもう一度質問コーナー

参加者の方からは、CACANiだけにとどまらず、業界でのキャリアについてなど様々の質問があがり、それに対しパネラーのみなさまも真摯にお答えくださり、最後まで熱気に満ちたセミナーとなりました。

テキスト・撮影・編集:CREATIVE VILLAGE編集部