時間を効率よく使えば副業で収入アップが見込めますが、副業にも税金がかかるケースがあることをご存知ですか?
知らなかったでは済まされない「副業収入の確定申告」について、税理士監修のもと詳しく説明します。

記事監修
添田裕美|税理士(添田裕美税理士事務所)
平成13年税理士登録。税理士事務所において延べ中小企業100社以上に関与。その後独立し添田裕美税理士事務所を開設。 経営計画書作成の支援や決算分析、節税、相続対策など、中小企業経営者の身近な相談役を目指す。

そもそも確定申告とは

確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得金額と、その額に応じて支払う所得税や復興特別所得税の額を計算し、申告手続きをすることをいいます。

サラリーマン(会社員)の場合は、会社が年末調整を通じてこれらの手続きを代行してくれるので自分で確定申告をしなくて済むケースがほとんどです。
ただし、サラリーマンであっても住宅ローン控除や医療費控除、さらに副業収入が一定額以上ある場合は確定申告が必要です。

副業で確定申告が必要なケースとは?副業所得20万円が目安!


確定申告が必要かどうかは、副業による所得や勤務先での年収額などによって変わってくることを頭に入れておきましょう。

ここでは、どんなケースだと確定申告をしなければいけないのかを説明します。

確定申告が不要なケース

副業収入があっても、以下のような場合は「確定申告不要」に当てはまります。

例)本業がサラリーマン
・会社が年末調整を済ませている
・給与所得と退職所得以外の副業の所得金額が年間で20万円以下

さらに、住宅ローン控除や医療費控除のように確定申告が必要な控除手続きがなければ、副業収入があっても確定申告が不要になります。

確定申告が必要なケース

以下のような場合は「確定申告が必要」に当てはまります。

・副業の所得金額が20万円以上
・副業の収入から源泉徴収されているので、還付を受けたい場合
・副業が赤字のため、他の所得と相殺したい、または赤字を繰り越したい場合
・住宅ローン控除や医療費控除など、控除手続きがある場合
・副業所得が20万円以下でも、給与所得と退職所得がある場合

上記の理由から副業所得が20万円以下であっても確定申告を行う場合には、年末調整済みの給与所得と副業所得を合算して所得税の再計算を行うことになります。

どれか1つでも当てはまるときには、期日内に確定申告の手続きを済ませましょう。

副業の確定申告で経費を認められるには?


この段落では、副業収入の所得を計算するために収入から引くことのできる経費について解説します。

経費が認められる所得

副業で得る所得区分が、事業所得・不動産所得・雑所得の3つに当てはまる場合、経費が認められます。

例えば、ネットオークションで副業している場合、雑所得に当てはまります。
売り上げが25万円あったとしても、仕入れにかかる費用が10万円あった場合には、所得は15万円なので確定申告は必要ありません。

このように、所得を発生させるために必要になった費用は「経費」として認められます。
ただし、経費として認められる条件として以下のルールが定められています。

(1) 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2) その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
参照:やさしい必要経費の知識|所得税|国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm

確定申告の可能性がある人は、副業による収入がどの所得に分類されるのか、どこまでが経費として認められるかを確認しておきましょう。

経費になるもの・ならないものは、以下詳しく説明します。

経費になるもの

所得を減らせば支払う税金を少なくすることも可能です。経費として認められる費用例は以下のものになります。

・販売する商品の仕入れや商品の発送費用
・商品保管のために借りている倉庫の賃料
・取引先との飲食代やお中元/お歳暮/香典/お祝金
・ネットやチラシなどに広告を掲載した際の広告費
・文房具/書籍/パソコン/カメラ/仕事机などの備品や道具

仕事に必要な出費は経費として認められるため、通信費(インターネット代・携帯代など)や不動産所得がある人は不動産賃貸物件の固定資産税や不動産所得税なども含めることが可能です。また、事業所得者の賃貸物件の賃料や光熱費も対象となります。

経費にならないもの

経費が増えれば、その分課税対象となる所得も減るので、いろいろな支払いを経費に計上しようとする人もいます。しかし、プライベートな出費は経費として認められないため見極めが必要です。

経費として認められない費用例は以下のものになります。
・医療費や保険料
・プライベートな旅行の交通費
・友人との飲食代
・プライベートで使用するパソコンや携帯代

経費として認められるのは、あくまで仕事に直接関連のあるプライベートな出費以外のものであることを覚えておきましょう。

証拠書類の保存

経費にする支出は、レシートや領収書などの証拠書類を保存しておく必要があります。レシートや領収書なら封筒に入れてわかりやすく保存しておきましょう。月ごとにわけておくと確定申告の書類作成時に把握するのも便利です。

通帳から引き落とされる経費については、経費とわかるようにマーカーで印をつけておくのもひとつの方法です。家事按分(かじあんぶん)した経費は、按分した割合を記載しておきましょう。

※家事按分(かじあんぶん)とは?
自宅で仕事をしている場合、生活費と事業費が混在している状態となります。しかし、家賃や光熱費の一部は売上のために必要な経費であると考えることができます。
このように全体における経費のうち、事業にかかった経費を合理的な基準によって分けることを家事按分といいます。
引用:家事按分を活用して生活費を経費にするための5つのポイント|BIZ KARTE

副業で確定申告が不要でも住民税の申告は必要?

副業で確定申告が不要になっても、住民税の申告は必要です。確定申告の義務がないからといって住民税がかからないというわけではありません。

ここからは、住民税の計算方法や納税方法について解説します。

住民税の計算方法

住民税は副業所得にかかる税金のひとつです。住民税は所得額に関係なく申告が必要となります。

住民税の計算方法3つのステップ
1)副業による収入-必要経費=副業による所得を計算する
2)給与所得+副業による所得-各種所得控除=課税所得を計算する
3)課税所得×10%+均等割額(約4000円程度)-調整控除額=住民税

均等割額は自治体によって金額が異なるので確認が必要です。均等割額や副業による所得がわかれば、おおよその住民税額を予想することができます。

納税方法

副業で確定申告をしなかった場合、住民税は住民票がある市町村役場で所得を申告します。

【特別徴収の場合】
市町村から会社へ副業分の住民税が加算された税額が連絡され、連絡がいくと給与から天引きされる形で納税します。

【普通徴収の場合】
住民税の納付書が自宅に届くので、納付書を用いて納付します。
一括納付もしくは4期分割のどちらかの方法を選択して納税できます。

役所や銀行窓口での納付以外にも、自治体によってはインターネットバンキングやクレジットカードも対応していることがあります。

要注意!副業の確定申告を忘れると余計な税金を支払うことに

副業収入が年間20万円を超えていて、確定申告が必要なのに手続きをしないと、余分な税金を支払うことになるかもしれません。

無申告加算税

無申告加算税は、確定申告を期限内にしなかった場合に発生します。本来納付すべき税額だけでなく、それに応じた罰金も加算されることを知っておきましょう。

副業収入が20万円を超えている場合は、確定申告の条件に当てはまるか確認が必要です。
ただし、法定申告期限から1カ月以内に自主的に申告があった場合や期日内申告をする意思があったと認められる場合は、無申告加算税が不要になることもあります。

延滞税

延滞税とは、期限までに納付しなければならない税金を収めていない場合に発生する罰金のことです。
延滞税の額は、申告期日から申告書を提出した日までの日数に応じて決まります。申告が遅れればその分延滞税も多くなるので注意が必要です。

副業収入で確定申告が必要な場合の手続き

副業収入で確定申告が必要な場合、どのような手続きが必要か知っておけば、初めての申告もスムーズに完了することができるでしょう。
ここでは、確定申告初心者が知っておきたい必要書類や手続きの流れについて紹介していきます。

確定申告に必要な書類

副業が給与所得の場合は、本業と副業の源泉徴収票を両方提出しなければいけません。

確定申告の流れ

副業の確定申告をするなら、インターネットで申告書を作成できる「確定申告書作成コーナー」が便利。

「確定申告書作成コーナー」は、画面の案内に沿って必要項目を入力するだけで、自宅で申告書類を作成できる国税庁のサービスです。

書類を作成したら申告書を印刷して管轄の税務署へ郵送または持参します。一緒に申告書の控えも印刷できるので、大切に保管しておくことが大切です。

副業の確定申告は難しくない!住民税の申告も忘れずに!

副業の確定申告は難しそうというイメージを持つ人も少なくありません。しかし、手順に従って行えばスムーズに進めることができます。

申告期限があることを忘れずに、前もって準備をしておけば慌てることなく申告を済ませられるでしょう。

また、確定申告が不要の場合でも、住民税の申告は必要なので注意が必要です。不安な点があれば、管轄の税務署に問い合わせてみましょう。