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『ドラゴンクエストビルダーズ』プロデューサー・藤本則義さんが語る、若手プロデューサーに託したエニックスイズム

2018年3月1日にNintendo Switch版がリリースされた『ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ』。ドラゴンクエストシリーズでは初のサンドボックス型ゲームであり、その斬新な面白さはファンに驚きをもたらし、高く評価されています。名作シリーズの新しい局面を切り拓いたのは、同作のプロデューサーであるスクウェア・エニックスの藤本則義さん。エニックス入社から現在に至るまでの経験と、プロデューサーに必要なコミュニケーション力について語っていただきました。

藤本 則義(ふじもと・のりよし)
株式会社スクウェア・エニックス ドラゴンクエストシリーズ プロデューサー
2001年4月、株式会社エニックス入社。
「ドラゴンクエスト」のナンバリングタイトルのリメイクや移植シリーズをはじめ、『ドラゴンクエストビルダーズ』、『スライムもりもりドラゴンクエスト』、『いただきストリート』、『ドラゴンクエストX』のおでかけ便利ツールなど、数十作品のドラゴンクエストシリーズのプロデューサーを担当。
柴犬をこよなく愛しており、ゲーム内にいつか柴犬を登場させたいと目論んでいるが、今のところ実現していない。

受け継がれる“エニックスイズム”

ゲームクリエイターというと、子供の頃からゲームが大好きで、その憧れを持ったままゲーム業界に入ってくる人も多いと思います。けれど、僕がゲーム業界を志したのは、大学生になって就職活動を始めた時でした。

もちろん元々ゲームは好きでしたけど、僕の家はゲームに厳しい家庭で、本当に1日1時間しか遊ばせてくれなかったんですよ(笑)。ゲームを好きなだけ遊べるようになったのは大学生になってからで、就職活動のシーズンになって、やっとゲーム業界に興味を抱くようになりました。

ゲーム業界への入り口はプランナー、デザイナー、開発職という基本的な職種がありますが、それは今も同じです。けれど、当時は求人情報の中で1社だけ、プロデューサー職を新卒で採用しているゲーム会社があったんです。珍しいですよね。どんな人も数年は経験を重ねて、やっとプロデューサーになれるというのが一般的なのに。そういう、かなりトガった人材採用をしていたのが、当時「エニックス」という名前のゲーム会社でした。

エニックスには、心から作りたいと思うゲームがある人を全力で応援しようという文化があって、若手にもかなり思い切った金額の予算をどんどん預けていくんですよ。肩書きとか年齢にかかわらず、本当に面白いゲームを作り上げてこそ一人前のゲームクリエイターだと僕も思いますし、そういう考えから、新卒でもプロデューサーというポジションが与えられるんです。

この流儀はスクウェア・エニックスとなった今でも、連綿と受け継がれていますね。エニックスのこういうチャレンジングな姿勢は僕の目にすごく魅力的に映りましたし、何よりも、僕の初めて買ったゲームが『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』だったんです。もうこれは運命だと思って、迷わず入社しました。

僕が入社したのは2001年。当時のエニックスは、不動の人気シリーズ「ドラゴンクエスト」を掲げつつも、それとはまた一味違うゲームの面白さを模索していた時で、『アストロノーカ』(PlayStation, 1998年)、『せがれいじり』(同, 1999年)、『鈴木爆発』(同, 2000年)といった新しい……というか、斬新すぎて時代を完全に置いてけぼりにしたタイトルが次々と作られていました(笑)。

そういう時代でしたから、社内は誰もがゲームを作るチャンスを狙える、とても活気のある環境でしたね。一方で、あらゆる場面で自分から積極的に提案したり、尋ねたり、交渉したりしなくてはいけないという厳しい面があったのも事実です。その中で僕は入社1年目で何とか自分のプロジェクトを立ち上げ、プロデューサーとして最初の一歩を踏み出すこととなりました。

エニックスにはいくつか変わったルールや習慣があって、そのひとつに「スタッフコンタクト会議」というのがありました。毎週社外の異業種の人にコンタクトをとり、その人のアイディアや考え方、ゲーム企画について打ち合わせをして、その内容を発表する会議なんですが、いや、これがなかなか大変で(笑)。コンタクトできていないと結構叱られたんですよ、「お前は1週間何をやっていたんだ」って。

まだTwitterもFacebookもありませんでしたから、電話で1件1件コンタクトのお願いをして、「ゲームセンターあらし」のすがやみつる先生、「GTO」の藤沢とおる先生といった著名な漫画家の方にお話を伺ったり、ホログラムを製作している技術者の方にもお会いしましたね。本当にたくさんの人と会って、一期一会という言葉を感じました。ありがたいことに、コンタクトをお願いして、僕は一度もお断りされたことがないんですよ。プロデューサーの仕事はやはりコミュニケーションが命ですから、そこはスタッフコンタクトを通してかなり鍛えられたと思います。

伝説の名作をリメイクするということ

「ドラゴンクエスト」シリーズの作品に携わるようになったのは、『スライムもりもりドラゴンクエスト2 大戦車としっぽ団』(ニンテンドーDS, 2005年)が最初です。その後、ナンバリングタイトルである『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』『ドラゴンクエストVI 幻の大地』のリメイクを手掛けました。

「ドラゴンクエスト」シリーズはリメイクや派生作品も含めて、すべて堀井雄二さんに手掛けていただいています。堀井さんは僕より20歳以上も年上でいらっしゃいますが、本当にエネルギッシュでアイディアが泉のように湧き出てくるんですよ。ゲームクリエイターとして心から尊敬していますし、全ての「ドラゴンクエスト」作品は堀井さん無くしては語ることができません。堀井さんは「老若男女誰もが安心して遊ぶことができ、しかもワクワクできるゲームか?」という大切な、そして最も難しい問いを僕たちにいつも投げかけてくれて、その答えを探して朝まで議論を交わすこともあります。

最近は旧作のリメイクがにわかに盛んですが、リメイクにはリメイクの難しさがやっぱりあるんですね。特に「ドラゴンクエスト」シリーズのような初出から30年以上経った国民的タイトルともなれば尚更です。名作ゲームはなぜ名作なのか。それは、ゲームを遊んだ人にとって楽しくて幸せな思い出と結びついているからです。良い思い出は時が経つほど、美化されてしまいます。実際はバグがあって泣く泣くリセットボタンを押したり、ゲームバランスが不均衡だったり、とてもシンプルなシナリオしか入っていなかったはずなのに、みんなの思い出として残っているのは、壮大なストーリーや熱いバトル、そして、笑い話に昇華できたハプニングだったりします。だから、リメイクは難しい。

たくさんの人と時間に磨かれた美しい思い出の中の“ドラクエ”に負けてはいけないし、同時に、逸脱してもダメなんです。旧作をそのままなぞるのではなくて、みんなの心の中にある“ドラクエ”をもう一度再現することがリメイクの本質だと思います。だから、「今回のリメイクをプレイしたけど追加要素は入ってなかったよね」というフィードバックが僕にとって一番の褒め言葉なんです。実際は追加要素が入っているのですが、元から入っていたと思っていただけたのですから。

僕のリメイクしたナンバリングタイトルはいずれも相当な箇所に変更を施しているんですよ、本当はね。特にUI周りは毎回かなり改修していますし、冒険の仲間キャラクターとの会話を完全新規に入れたり、ゲーム進行で迷わないように導線を敷いたり、キーとなる人物の生き様をもう少し掘り下げたり、ダンジョンの地形を新しく作り直したこともありました。たとえそれらの追加要素や変更箇所に気付いてもらわなくても全然構わないと思っています。ファンそれぞれの思い出にすっと溶け込んで、まるで久しぶりに実家に帰ってきたような(笑)、そんな懐かしさを感じてもらえるようにしたいんです。

「何でもできる」は結局「何にもできない」

3月1日にNintendo Switch版が発売された『ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ』(以下、『DQB』)は、サンドボックス型ゲームに「ドラゴンクエスト」のRPGが融合した新しい派生作品です。サンドボックス型ゲームと言えば、やはり世界的人気を博した『Minecraft』がその代表ですが、ブロックや素材を組み合わせれば、何でも作れてしまう、どこにでも行けてしまう自由さが最大の魅力と言えます。

一方で、「ドラゴンクエスト」はひとつの大きなストーリーをベースにしてゲームが進行していくタイプのゲームです。さて、この相反する要素をどうやって織り込んでいけばいいのか。リメイクとは違い、『DQB』はほぼ完全新作として、かなり思い切った挑戦をしています。

『DQB』ではたくさんの難題にぶつかりました。難題の一つが、“自由さ”の設計でした。きちんと設計しておかないと、たとえば、あるクエストの進行中に、次のクエストが発生する予定の建物を先に変形させたり、破壊してしまったりして、それ以降のクエストが発生不能に陥る――という問題が起きるわけです。そうなれば、せっかく用意されていたストーリーをスキップしてしまうことになり、ストーリー重視の「ドラゴンクエスト」作品としては大問題です。

けれども、がんじがらめにルールで縛っては、サンドボックスならではの自由なクリエイションを楽しんでもらえなくなってしまう。そこで、主人公の持つ武器のパワーを調整して、その時点ではまだ破壊できないブロックという最小限の制約を設け、ストーリーの進行と作る自由を両立させていきました。

ゲームにおける“自由さ”について僕が常々思うのは、「何でもできるという自由を与えると、プレイヤーは結局何にもできない」という逆説的な現象を引き起こすことです。これは特にライトユーザーに当てはまるかもしれません。ですから、老若男女全てのユーザーに楽しくプレイしてもらうために、あえて筋道や制約を設けることがあります。『DQB』でも、町の住人から「よく眠れるベッドを作ってほしい」とか「モンスターから町を守るために城壁を築こう」とリクエストが寄せられたり、ちょっと手の込んだ建物を作る時は「設計図」というお手本が示されるようになっています。

現在開発中の続編『ドラゴンクエストビルダーズ2』は、より一層クリエイションの幅が広がっていきます。しかし、それは単に自由度を上げるのではなく、プレイヤーが作りたいものをもっと見つけやすく、もっと作りやすくしようという試みです。昔と違って、SNSなどを通じてユーザーからダイレクトにフィードバックを受けることができるようになりました。皆さんの期待をひしひしと感じつつ鋭意開発中ですので、是非楽しみにしていてください。

良いコミュニケーションが信頼を生む

こうして振り返ってみると、入社して以来、スクウェア・エニックスという会社も今やすっかり大企業に成長しました。僕が若手だった頃は少人数でプロジェクトを進めていくのが主流で、プロデューサーだろうが何だろうが、必要に応じてプロモーションの仕事もやるし、デバッグも、ユーザーサポートの電話対応までやりました。一人で3つも4つも役割をこなさなくてはならず、今でこそ良い経験だったと言えますが、当時の僕はとにかくいっぱいいっぱいで(笑)。どの仕事も「こんな苦労があるのか」と驚かされましたね。

今は業界も会社自体も大きくなって、組織の力でプロジェクトが推進されるようになりました。つまり、メンバーそれぞれが自分の得意分野で本領発揮しやすくなり、自分が苦手なところは他の誰かがちゃんとカバーしてくれるようになったわけです。僕があたふたしながらやっていたユーザーサポートも、今では専門の部署がきちんと対応していますし、デバッグなら品質管理部という部署にスペシャリストが集められています。その中でプロデューサーは数少ないゼネラリストのポジションです。プロジェクトを俯瞰して全体のバランスを細かくチューニングできる人が、プロデューサーに向いているのではないでしょうか。

僕のチームは若手を含むプロデューサーが何人か所属していて、僕は彼らを育成する立場でもあります。プロデューサーは仕事で様々な関係者の間に立つことが多いのですが、だからこそ、周りから信用される存在にならなくてはいけないと思います。と言っても、それは一朝一夕でなれるものではなく、日頃から自分の存在意義や個性を積極的に示していくことが重要です。ちょっとしたミーティングでも、ただ議事録を作って終わり、じゃなくて、若手でもアシスタントでも、議論に参加してしっかり自分の意見を述べるべきだし、そのためにはアジェンダを事前にきちんと把握して、わからないことはちゃんと調べておくという入念な準備が必要です。

そうして得た知識は確実に積み重なって良いコミュニケーションを生み出し、さらに良いコミュニケーションが積み重なって信用が生まれる。自分の言葉を真剣に受け止めてくれる人だな、と思ってもらえることが最初の一歩で、何か困った時に相談相手として最初に思い浮かべてもらえるようになれれば、プロデューサーとして一人前だと思います。

世の中には“コミュ障”なんて言葉もあって、コミュニケーションが苦手という人も多いかもしれません。でも、コミュニケーションは才能ではなく、スキルなんです。だから、誰でも練習すれば習得できるはず。そう思って僕は若手プロデューサーたちを育成してきて、嬉しいことに、未来を託せる存在がすくすくと育ってきています。当たり障りのない会話ができるとか、格好いいプレゼンができるとか、そういうことじゃなくて、「面白いゲームを作りたい」という熱いモチベーションを自分の言葉で語れるかどうか。僕はそういう人と一緒に仕事がしたいし、自分もそうでありたい。

もうベテランと呼ばれる年齢になってしまいましたが(笑)、まだまだ最前線でゲームをプロデュースしていくつもりです。今年は『DQB』でゲーム業界を盛り上げていきますので、期待していてください!

インタビュー・テキスト:原 孝則(Pick UPs!)/撮影:TAKASHI KISHINAMI/編集:CREATIVE VILLAGE編集部

企業プロフィール

株式会社スクウェア・エニックスは、エンタテインメント分野において、創造的かつ革新的なコンテンツ/サービスのヒット作品を生み続けるリーディングカンパニーです。当社グループの自社IPの代表作には「ドラゴンクエスト」シリーズ、「ファイナルファンタジー」シリーズ、「トゥームレイダー」シリーズ、「スペースインベーダー」シリーズなどがあります。

社名:株式会社スクウェア・エニックス
所在地:東京都新宿区新宿6丁目27番30号 新宿イーストサイドスクエア
設立年月日:2008年10月1日
代表者:代表取締役社長 松田 洋祐
事業内容:デジタルエンタテインメント事業、アミューズメント事業、出版事業、ライツ・プロパティ事業
URL:http://www.jp.square-enix.com/

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